Webサイト制作の費用相場:中小企業が知っておくべき相場と選び方

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この記事でわかること

  • Webサイト制作費用の構成要素(何にお金がかかるのか)
  • 価格帯別の違い(30万円以下〜300万円以上)
  • 同じ「Webサイト制作」でも価格差が生まれる理由
  • 自社の予算の決め方
  • 安すぎる見積もりに潜むリスク

「Webサイト制作の見積もりを取ったら、会社によって金額が全然違う」——これは、初めてWebサイト制作を検討する方からよく聞く声です。

同じ「コーポレートサイト制作」でも、30万円という会社もあれば、300万円という会社もあります。この価格差は何によって生まれるのか。安ければ良いのか、高ければ安心なのか。

この記事では、Webサイト制作の費用構造と相場を解説し、予算に応じた選択ができるようになることを目指します。


費用の構成要素:何にお金がかかるのか

Webサイト制作の見積もりには、さまざまな項目が含まれています。主な構成要素を理解することで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

主な費用項目

項目内容費用目安
ディレクション費進行管理、打ち合わせ、スケジュール調整全体の10〜20%
企画・設計費サイト構成、ワイヤーフレーム作成5万〜30万円
デザイン費ページデザイン、ビジュアル作成トップ5〜15万円、下層1〜5万円/ページ
コーディング費HTML/CSS/JavaScriptの実装トップ3〜5万円、下層1〜3万円/ページ
CMS構築費WordPress等の導入・設定5万〜30万円
コンテンツ制作費原稿作成、写真撮影、動画制作内容により大きく変動
テスト・検証費動作確認、修正対応全体の5〜10%

見積書でよく見る項目の意味

ディレクション費(進行管理費)
プロジェクト全体の管理にかかる費用です。打ち合わせ、スケジュール調整、品質チェックなど、Webディレクターが行う作業が含まれます。「一式」と記載されることが多く、総額の10〜20%程度が目安です。

デザイン費
サイトの見た目を作る費用です。トップページは情報量が多く、企業の「顔」となるため、下層ページより高くなります。テンプレートを使う場合とオリジナルデザインの場合で、費用は2倍以上変わることもあります。

コーディング費
デザインをWebブラウザで表示できる形にする作業の費用です。スマートフォン対応(レスポンシブ対応)が含まれるかどうかで金額が変わります。現在はスマホ対応が必須なので、見積もりに含まれているか確認が必要です。

CMS構築費
WordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)を導入する費用です。CMSがあれば、公開後に自社で記事の追加や修正ができます。導入しない場合、更新のたびに制作会社へ依頼が必要になります。

コンテンツ制作費
サイトに掲載する文章や写真、動画を制作する費用です。自社で用意する場合は不要ですが、プロに依頼する場合は別途費用がかかります。社員インタビューの撮影や、商品写真の撮影などが含まれることがあります。


価格帯別の違い

コーポレートサイトを例に、価格帯別の違いを整理します。

30万円以下:最小限の構成

特徴:

  • ページ数:5ページ程度(トップ、会社概要、事業内容、お知らせ、お問い合わせ)
  • デザイン:テンプレートベース
  • CMS:なし、または簡易的なもの
  • コンテンツ:自社で用意
  • 制作期間:1〜2ヶ月

向いているケース:

  • とにかく早く、最低限のWebサイトが欲しい
  • 予算が限られている
  • デザインへのこだわりは少ない
  • 名刺代わりのシンプルなサイトで十分

注意点:

  • オリジナリティは出しにくい
  • 機能の追加や拡張に制限がある場合が多い
  • 公開後の更新がしづらいことがある

30万〜100万円:標準的な構成

特徴:

  • ページ数:10〜20ページ程度
  • デザイン:セミオリジナル〜オリジナル
  • CMS:WordPress等を導入
  • コンテンツ:一部制作会社が対応
  • 制作期間:2〜3ヶ月

向いているケース:

  • 自社の特徴を反映したデザインにしたい
  • 公開後に自社で更新したい
  • ある程度の情報量を掲載したい
  • 集客や採用に活用したい

この価格帯でできること:

  • 企業の特徴を反映したオリジナルデザイン
  • お知らせやブログの更新機能
  • 問い合わせフォームの設置
  • スマートフォン対応
  • 基本的なSEO対策

中小企業のコーポレートサイトでは、この価格帯が最も多く選ばれています。


100万〜300万円:充実した構成

特徴:

  • ページ数:20〜50ページ程度
  • デザイン:完全オリジナル、作り込み
  • CMS:カスタマイズ対応
  • コンテンツ:撮影・取材を含む
  • 制作期間:3〜6ヶ月

向いているケース:

  • ブランディングを重視したい
  • 複数の事業・サービスを紹介したい
  • 採用サイトや製品サイトを統合したい
  • 競合との差別化を図りたい

この価格帯でできること:

  • 戦略に基づいたサイト設計
  • プロカメラマンによる撮影
  • 社員インタビュー記事の制作
  • アニメーションやインタラクティブな演出
  • 複数言語対応
  • 高度なSEO対策

300万円以上:大規模・高機能

特徴:

  • ページ数:50ページ以上
  • デザイン:ブランド戦略に基づく設計
  • システム:独自機能の開発
  • コンテンツ:本格的な動画制作を含む
  • 制作期間:6ヶ月〜1年

向いているケース:

  • 大規模なコーポレートサイト
  • 会員機能やポータル機能が必要
  • 基幹システムとの連携が必要
  • グローバル展開を見据えている

この価格帯の特徴:

  • 専任のプロジェクトチームが編成される
  • 調査・分析から始まる本格的な戦略設計
  • 独自システムの開発
  • 長期的な運用・改善を見据えた設計

なぜ価格差が生まれるのか

同じ「コーポレートサイト制作」でも、制作会社によって見積もり金額に大きな差が出ます。その理由を理解しておきましょう。

1. 工数の違い

Webサイト制作の費用は、基本的に「かかる時間×単価」で決まります。

工数が増える要因:

  • ページ数が多い
  • デザインの作り込みが深い
  • 機能が複雑
  • 打ち合わせや修正対応の回数が多い

10ページのサイトと50ページのサイトでは、単純に作業量が異なります。また、テンプレートを使う場合と、ゼロからオリジナルデザインを作る場合でも、工数は大きく変わります。

2. 単価の違い

同じ作業でも、制作会社や担当者の経験・スキルによって単価が異なります。

単価に影響する要素:

  • 制作会社の規模(大手ほど高い傾向)
  • 担当者の経験・スキル
  • 制作会社の所在地(都心部ほど高い傾向)
  • 制作会社の専門性・実績

経験豊富なディレクターやデザイナーが担当する場合、単価は高くなりますが、品質や提案力も高くなる傾向があります。

3. 含まれる作業範囲の違い

見積もりに含まれる作業範囲は、制作会社によって異なります。

見積もりに含まれないことがある項目:

  • 原稿作成(テキスト)
  • 写真撮影
  • サーバー・ドメイン費用
  • 公開後の修正対応
  • SEO対策
  • アクセス解析の設定

見積もりが安く見えても、これらが別料金になっている場合があります。「何が含まれているか」を必ず確認してください。

4. サポート体制の違い

制作中・公開後のサポート体制も、価格に反映されます。

サポートの差が出やすい部分:

  • 打ち合わせの回数・時間
  • 修正対応の回数
  • 公開後のバグ対応期間
  • 問い合わせへの対応速度

安価なプランでは、打ち合わせ回数に制限があったり、修正対応が有料だったりすることがあります。


予算の決め方

「いくらかければいいのか」という問いに、一律の正解はありません。自社の状況に応じて判断する必要があります。

考え方1:期待する成果から逆算する

Webサイトに期待する成果から、投資可能な金額を考えます。

例:BtoB企業の場合

  • Webサイト経由で月1件の問い合わせを獲得したい
  • 1件の成約で平均100万円の売上がある
  • 年間で12件の問い合わせ、成約率30%として約4件成約
  • 年間400万円の売上増が見込める
  • 3年運用するとして、投資上限は200〜300万円程度と判断できる

もちろん、これは仮定に基づく計算であり、実際にその成果が出る保証はありません。ただし、「いくらまでなら投資できるか」を考える際の目安にはなります。

考え方2:同業他社を参考にする

競合他社のWebサイトを見て、自社がどの程度の品質を目指すべきかを判断します。

チェックポイント:

  • 競合他社のサイトはどの程度作り込まれているか
  • 業界標準として、どの程度の品質が求められるか
  • 競合と同等か、それ以上を目指すか

競合がしっかりしたWebサイトを持っている場合、自社だけ簡素なサイトでは見劣りする可能性があります。

考え方3:段階的に投資する

最初から大きな予算をかけず、段階的に投資する方法もあります。

段階的アプローチの例:

  1. まず最小限の構成でスタート(50万円)
  2. 効果を見ながらコンテンツを追加(30万円)
  3. 成果が出てきたらリニューアル(150万円)

この方法なら、リスクを抑えながらWebサイトを育てていくことができます。


安すぎる見積もりのリスク

「安いに越したことはない」と考えがちですが、安すぎる見積もりには注意が必要です。

よくあるリスク

1. 品質が低い
テンプレートの流用、デザインの作り込み不足、コーディングの粗さなど、品質面で問題が出ることがあります。公開後に「思っていたものと違う」となっても、やり直しには追加費用がかかります。

2. サポートが不十分
打ち合わせ回数の制限、修正対応の有料化、公開後のサポートなしなど、サポート面で不安が残ることがあります。困ったときに相談できないのは、大きなリスクです。

3. 追加費用が発生する
見積もりが安くても、後から「これは別料金です」と追加費用を請求されるケースがあります。最終的に、標準的な価格より高くなることも珍しくありません。

4. 制作が途中で止まる
極端に安い場合、制作会社の経営状況が不安定なことがあります。制作途中で連絡が取れなくなる、納品されないといったトラブルも報告されています。

安さの理由を確認する

安い見積もりが必ずしも悪いわけではありません。正当な理由で安くなっているケースもあります。

正当な理由の例:

  • テンプレートを活用して効率化している
  • 自社で用意する部分が多い(原稿、写真など)
  • 地方の制作会社で人件費が抑えられている
  • 新規顧客獲得のための特別価格

見積もりが安い場合は、「なぜこの価格なのか」を確認することをおすすめします。


見積もりを比較する際のポイント

複数の制作会社から見積もりを取る「相見積もり」は、相場を把握し、適切な制作会社を選ぶために有効です。

比較時のチェックポイント

1. 前提条件を揃える
各社に同じ条件で見積もりを依頼しないと、正確な比較ができません。ページ数、必要な機能、納期などを明確にした「提案依頼書(RFP)」を用意すると、比較しやすくなります。

2. 含まれる範囲を確認する
「一式○○万円」という見積もりでも、含まれる作業範囲は制作会社によって異なります。何が含まれ、何が含まれないかを必ず確認してください。

3. 金額だけで判断しない
最安値の会社に依頼したくなりますが、提案内容、実績、担当者との相性なども重要な判断材料です。総合的に判断することをおすすめします。

4. 見積もりの内訳を確認する
「制作費一式」としか書かれていない見積もりより、項目ごとに内訳が記載されている見積もりのほうが信頼できます。内訳があれば、どこにコストがかかっているかがわかります。


まとめ

Webサイト制作の費用は、ページ数、デザインの作り込み、機能、サポート体制などによって大きく変動します。同じ「コーポレートサイト」でも、30万円から300万円以上まで幅があります。

重要なのは、「安いか高いか」ではなく、「自社の目的に合っているか」という視点です。予算を決める際は、期待する成果や競合他社の状況を踏まえて判断してください。

安すぎる見積もりには注意が必要です。品質、サポート、追加費用の有無など、価格の裏側にある理由を確認することをおすすめします。

見積もりを比較する際は、前提条件を揃え、含まれる範囲を確認し、金額だけでなく総合的に判断することが大切です。

次の記事では、Webサイト制作の流れについて解説します。各フェーズで何が行われるのか、発注者側がやるべきことは何かを整理します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

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