2026.03.05

Web制作の契約・著作権の注意点|制作物の権利帰属を解説

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Web制作の契約・著作権の注意点

この記事でわかること

  • Webサイト制作における著作権の基本的な考え方と帰属ルール
  • 契約書で必ず確認すべき5つのポイント
  • 保守・運用契約を結ぶ際の注意点
  • 制作会社を変更する際のデータ引き渡しとドメイン移管の手順
  • よくある契約トラブルの事例と予防策

Webサイト制作を外部に依頼する際、「完成したサイトは自社のものだから、好きに使える」と考えていないでしょうか。実は、制作代金を支払っただけでは、著作権は自動的に発注者に移転しません。

制作会社との契約内容があいまいなまま進めると、後になって「デザインデータを渡せない」「サイトの修正には追加費用がかかる」といった問題が発生することがあります。Web制作の契約トラブルは年々増加傾向にあり、訴訟に発展するケースも珍しくありません。

この記事では、Webサイト制作における著作権の基本から、契約書のチェックポイント、保守契約の注意点、解約時の手続きまで、発注者が知っておくべき実務知識を解説します。


Webサイトの著作権は誰に帰属するのか?

著作権の原則:制作者に帰属する

著作権法第17条により、著作権は著作物を創作した者に帰属します。Webサイト制作の場合、デザインやコードを実際に作成した制作会社(または個人のデザイナー・エンジニア)が著作者となり、著作権も制作会社側に発生するのが原則です。

ここで重要なのは、制作代金の支払いは「制作作業への対価」であり、著作権の譲渡対価ではないという点です。お金を払ったから自動的に著作権も移転する、というわけではありません。

著作権を発注者側に移転させるためには、契約書で明確に「著作権を譲渡する」旨を定める必要があります。

Webサイトのどの部分に著作権があるのか?

Webサイトを構成する要素のうち、著作権が認められやすいものとそうでないものがあります。

著作権が認められやすい要素:

  • オリジナルのイラスト・写真・画像
  • ロゴマーク
  • 文章・コピーライティング
  • オリジナルの動画・音声
  • 創作性のあるデザイン

著作権が認められにくい要素:

  • HTMLコード(東京地裁平成28年9月29日判決では、HTMLコードについて「誰が作成しても似たようなものになる」として著作物性が否定された事例があります)
  • 一般的なレイアウト構成
  • ありふれた配色やフォントの組み合わせ
  • 機能的な仕様・アイデア

ただし、デザインの著作物性は個別の創作性によって判断されるため、一概に「著作権がない」とは言えません。トラブルを避けるためには、契約書で権利関係を明確にしておくことが重要です。

注意が必要な「著作権法第27条・第28条」の権利

契約書に「著作権を譲渡する」と書かれていても、それだけでは不十分な場合があります。著作権法第61条第2項により、翻案権(第27条)と二次的著作物の利用権(第28条)は、契約書に明記されていない限り譲渡されないとされています。

これらの権利が譲渡されていないと、以下のような制限が生じる可能性があります。

  • Webサイトのデザインを改変・修正できない
  • サイトのリニューアル時に既存デザインを流用できない
  • 制作物を別の用途(パンフレット等)に転用できない

契約書には「著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む」と明記することが推奨されます。

著作者人格権の扱い

著作権とは別に、「著作者人格権」という権利があります。これは著作者の人格的利益を保護する権利で、以下の3つから構成されます。

  • 公表権:著作物を公表するかどうかを決める権利
  • 氏名表示権:著作者名を表示するかどうかを決める権利
  • 同一性保持権:著作物を無断で改変されない権利

著作者人格権は著作権法第59条により「譲渡できない」とされています。そのため、著作権を譲渡しても、著作者人格権は制作会社に残ります。

実務上は、契約書に「著作者人格権を行使しない」旨の条項(不行使条項)を入れることで対応します。この条項がないと、サイトの修正・改変の際に制作会社の同意が必要になる可能性があります。


契約書で確認すべき5つのポイントとは?

1. 納品物の範囲は明確か?

「Webサイト一式」という曖昧な記載では、何が納品されるのか不明確です。以下の項目について、契約書または仕様書で明示されているか確認しましょう。

  • HTMLファイル、CSS、JavaScriptなどのコードファイル
  • 画像データ(JPEG、PNGなど)
  • デザインの元データ(Photoshop、Illustrator、Figmaファイルなど)
  • CMSの管理画面アクセス情報
  • サーバー・ドメインの管理情報

特にデザインの元データ(ソースファイル)は納品物に含まれないケースが多いため、将来的に自社で修正する可能性がある場合は、事前に確認が必要です。

2. 修正回数と対応期間は定められているか?

多くの制作会社では、基本料金に含まれる修正回数を2〜3回程度に設定しています。契約書で以下の点を確認しましょう。

  • 無料で対応する修正回数の上限
  • 修正対応の期間(納品後○日以内など)
  • 修正範囲を超えた場合の追加費用の算定方法

「何度でも修正に応じてもらえる」と思い込んでいると、追加費用を請求されてトラブルになることがあります。

3. 著作権の移転条項は適切か?

著作権に関する条項では、以下の点をチェックします。

  • 著作権が発注者に「譲渡」されるか、「利用許諾」にとどまるか
  • 著作権法第27条・第28条の権利が含まれるか
  • 著作者人格権の不行使条項があるか
  • 権利移転のタイミング(代金完済時など)

「著作権は発注者に帰属する」という記載があっても、第27条・第28条の明記がなければ、翻案権等は移転しない可能性があります。

4. 第三者素材の扱いは明記されているか?

Webサイト制作では、以下のような第三者の素材が使用されることがあります。

  • ストックフォト(写真素材サービスの画像)
  • フリー素材
  • Webフォント
  • テンプレートやプラグイン

これらの素材には、それぞれ利用規約やライセンス条件があり、商用利用の可否、改変の可否、クレジット表記の要否などが定められています。

契約書では、以下を確認しましょう。

  • 第三者素材を使用する場合は事前に通知されるか
  • ライセンス料は制作費に含まれるか、別途発生するか
  • ライセンス違反があった場合の責任の所在

5. 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の範囲は?

納品後に不具合が発見された場合の対応について、契約書で定められているか確認します。

  • 契約不適合責任の対応期間(一般的に3ヶ月〜1年程度)
  • 無償修正の対象となる不具合の範囲
  • 対応期間を過ぎた場合の扱い

民法改正(2020年施行)により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されましたが、実務上の意味合いは大きく変わりません。


保守・運用契約ではどのような点に注意すべきか?

保守契約と制作契約は別物

Webサイトの制作契約と保守契約は、別々の契約として締結されるのが一般的です。制作費に保守費用が含まれていると思い込んでいると、公開後のサポートが受けられないことがあります。

保守契約の主な内容は以下の通りです。

  • サーバー・ドメインの管理と更新
  • SSL証明書の更新
  • CMS(WordPressなど)のアップデート
  • セキュリティ対策・監視
  • バックアップの取得・管理
  • 軽微なコンテンツ更新
  • 障害発生時の対応

保守契約の費用相場

保守契約の月額費用は、対応範囲によって大きく異なります。

  • 最小限の保守(サーバー・ドメイン管理のみ):月額5,000円〜1万円程度
  • 標準的な保守(セキュリティ対策・軽微な更新含む):月額1万円〜3万円程度
  • 充実した保守(コンテンツ更新・SEO対策含む):月額5万円〜10万円以上

費用の内訳と、何が含まれて何が含まれないのかを明確にしておくことが重要です。

保守契約で確認すべきポイント

  • 対応範囲の明確化:月額費用に含まれる作業と、追加費用が発生する作業の境界線
  • 対応時間・緊急時の連絡方法:平日のみか、土日祝も対応可能か
  • 解約条件:解約の予告期間、違約金の有無
  • ドメイン・サーバーの名義:誰の名義で契約されているか

特にドメインとサーバーの名義は重要です。制作会社名義で契約されている場合、解約時にトラブルになる可能性があります。


制作会社を変更する際の手続きはどうなるか?

解約前に確認すべき情報

制作会社を変更する際は、以下の情報を事前に把握しておきましょう。

  • ドメイン管理情報:どのレジストラで、誰の名義で管理されているか
  • サーバー情報:どのサーバー会社と、誰の名義で契約しているか
  • FTP情報:サーバーにアクセスするためのID・パスワード
  • CMS管理画面のログイン情報:WordPressなどの管理画面へのアクセス情報
  • 契約書の解約条項:解約の予告期間、データ引き渡しの条件

ドメイン移管の手順と注意点

ドメインを別の管理会社に移す「ドメイン移管」には、以下の手順が必要です。

  1. 現在のドメイン管理会社でレジストラロック(移管ロック)を解除
  2. Whois情報を最新の状態に更新
  3. 認証コード(Auth Code / EPPコード)を取得
  4. 新しいドメイン管理会社で移管申請
  5. メールでの承認手続き

ドメイン移管には数日〜2週間程度かかります。また、ドメイン取得から60日以内は移管できないルールがあります。

サーバー移行の手順と注意点

サーバーを変更する場合は、以下の手順で進めます。

  1. 旧サーバーのデータをすべてバックアップ
  2. 新サーバーを契約し、データを移行
  3. 新サーバーでの動作確認
  4. ネームサーバー(DNS)の設定変更
  5. 旧サーバーの解約

重要な注意点として、DNS設定の変更は即時反映されず、数時間〜最大2日程度かかります。この期間中は新旧どちらのサーバーにアクセスが来るかわからない状態になるため、旧サーバーの解約は移行完了後まで待つ必要があります。

データ引き渡しで起こりがちなトラブル

制作会社との関係が悪化した状態で解約すると、以下のようなトラブルが発生することがあります。

  • 「著作権がこちらにあるので、データは渡せない」と言われる
  • デザインの元データ(ソースファイル)を渡してもらえない
  • ドメインが制作会社名義のため、移管に応じてもらえない
  • 解約後にWebサイトを削除される

これらのトラブルを防ぐためには、契約時点で著作権の帰属、納品物の範囲、解約時のデータ引き渡し条件を明確にしておくことが重要です。


どのようなトラブル事例があるのか?

事例1:著作権が移転しておらず、サイトを修正できない

ある企業がWebサイトのリニューアルを検討した際、旧制作会社から「著作権はこちらにあるため、デザインを流用するなら追加費用が必要」と言われたケースです。

契約書を確認すると、著作権の譲渡条項がなく、「利用許諾」にとどまっていました。結局、新しいデザインを一から作り直すことになり、予算が大幅に増加しました。

教訓:契約時に著作権の「譲渡」か「利用許諾」かを確認し、将来的な修正・リニューアルを見据えて権利関係を整理しておく。

事例2:修正回数の認識違いで追加費用を請求された

Webサイト制作中に何度もデザイン修正を依頼したところ、制作会社から「契約で定めた修正回数を超えているため、追加費用が発生する」と連絡がありました。発注者側は「納得いくまで修正してもらえる」と思い込んでいたため、トラブルに発展しました。

教訓:契約書で修正回数の上限を確認し、超過した場合の費用についても事前に合意しておく。

事例3:ドメインが制作会社名義で、移管できない

保守契約を解約して別の制作会社に依頼しようとしたところ、ドメインが制作会社名義で登録されており、移管に応じてもらえないケースです。制作会社との関係が悪化していたため、交渉も難航しました。

最終的に、弁護士を介して交渉するか、新しいドメインを取得してサイトを再構築するかの選択を迫られました。

教訓:ドメインとサーバーは自社名義で契約するか、契約時に名義と移管条件を確認しておく。

事例4:納品後に動作不良が発覚したが、対応期間を過ぎていた

Webサイト公開後半年が経過してから、特定のブラウザで表示が崩れることが発覚しました。制作会社に修正を依頼したところ、「契約不適合責任の対応期間(3ヶ月)を過ぎているため、有償対応になる」と言われました。

教訓:納品後は速やかに検収を行い、対応期間内に不具合をチェックする。対応期間についても契約時に確認しておく。


まとめ

Webサイト制作における契約・著作権の要点を整理します。

著作権について:

  • 著作権は原則として制作者(制作会社)に帰属する
  • 著作権を取得するには、契約書で明確に「譲渡」を定める必要がある
  • 著作権法第27条・第28条の権利は明記しないと譲渡されない
  • 著作者人格権は譲渡できないため、不行使条項で対応する

契約書で確認すべきポイント:

  • 納品物の範囲(デザインの元データを含むか)
  • 修正回数と対応期間
  • 著作権の移転条項(第27条・第28条を含むか)
  • 第三者素材の扱い
  • 契約不適合責任の範囲

保守契約・解約時の注意点:

  • 保守契約の対応範囲と費用を明確にする
  • ドメイン・サーバーの名義を確認する
  • 解約時のデータ引き渡し条件を事前に合意しておく

契約書は「面倒な書類」ではなく、双方が気持ちよく仕事を進めるための「約束事」です。曖昧な点があれば契約前に確認し、将来のトラブルを未然に防ぎましょう。

この記事からわかるQ&A

制作代金を支払えば、著作権は自動的に移転しますか?

いいえ、自動的には移転しません。著作権法では、著作権は創作した者(制作会社)に帰属するのが原則です。著作権を発注者に移転させるには、契約書で「著作権を譲渡する」旨を明記する必要があります。

契約書に「著作権を譲渡する」と書いてあれば十分ですか?

それだけでは不十分な場合があります。著作権法第61条第2項により、翻案権(第27条)と二次的著作物の利用権(第28条)は、明記されていない限り譲渡されません。契約書には「著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む」と記載することが推奨されます。

デザインの元データ(PhotoshopやIllustratorファイル)は必ず納品されますか?

必ずしも納品されるとは限りません。納品物の範囲は契約によって異なります。将来的に自社で修正する可能性がある場合は、契約時にデザインの元データを納品物に含めるよう交渉しましょう。

制作会社を変更する際、ドメインやサーバーはどうなりますか?

ドメインやサーバーの名義が誰になっているかによって異なります。自社名義であればそのまま使用できますが、制作会社名義の場合は移管手続きが必要です。移管には数日〜2週間程度かかり、制作会社の協力が必要になるため、契約時に名義と移管条件を確認しておくことが重要です。

保守契約は必ず結ぶ必要がありますか?

法的な義務はありませんが、Webサイトの安定運用のためには推奨されます。特にWordPressなどのCMSを使用している場合、定期的なアップデートやセキュリティ対策が必要です。自社で対応できない場合は、保守契約を検討しましょう。

引用・参考資料

  • 著作権法(e-Gov法令検索)
  • 経済産業省「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」
  • 文化庁「著作権制度の概要」
  • 咲くやこの花法律事務所「Webサイト制作の請負契約書の重要ポイント」
  • Web幹事「ホームページ制作の契約書でチェックするべきポイント」
  • マネーフォワード クラウド契約「ホームページ制作に関わる契約」

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

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