採用向けTikTokアカウントの設計パターン:会社全体型・職種特化型・社員キャラクター型の選び方

この記事でわかること
- TikTok採用アカウントの3つの設計パターンと、それぞれに適した企業規模・状況
- 応募につながるプロフィール設計の具体的なポイント
- 継続運用を可能にするコンテンツ構成の考え方
- 採用アカウントでよくある失敗パターンと、その回避策
TikTok採用を始めようと考えたとき、最初に直面するのが「どんなアカウントを作ればいいのか」という問題です。
すでに成功している企業のアカウントを見ると、ダンス動画で話題になった警備会社もあれば、社員の一日を淡々と紹介する製薬会社もある。料理動画で人気の建設会社もあれば、職種別に複数のアカウントを運営する航空会社もあります。
一見バラバラに見えるこれらの成功事例ですが、実は「アカウント設計」という観点で整理すると、大きく3つのパターンに分類できます。自社の状況に合ったパターンを選ぶことが、継続的な運用と採用成果につながる第一歩となります。
採用アカウントにはどんな設計パターンがあるのか?
TikTok採用アカウントは、主に3つの設計パターンに分類できます。それぞれに適した企業規模や状況が異なるため、自社の特性を踏まえて選択することが重要です。
パターン1:会社全体型(公式アカウント統合型)
企業の公式アカウントとして、採用情報と会社の魅力を一体的に発信するパターンです。
大京警備保障、三和交通、ライソン、リンクロノヴァなど、TikTok採用で話題になった多くの中小企業がこのパターンを採用しています。アカウントは1つで、採用に特化した投稿と企業の雰囲気を伝える投稿を混在させながら運用します。
このパターンが向いている企業の特徴:
- 従業員数が比較的少なく、職種も限定的
- 社長や幹部が積極的に動画に出演できる
- 運用リソース(人員・時間)が限られている
- 会社の「雰囲気」や「人柄」を最大のアピールポイントにしたい
このパターンの強みは、アカウント運営の負担を最小限に抑えながら、採用と企業ブランディングを同時に進められることです。中小企業がTikTok採用を始める際には、まずこのパターンから検討するのが現実的といえます。
パターン2:職種・部署特化型(採用専用アカウント型)
採用専用のアカウントを独立して運営するパターンです。大企業や、複数の職種を同時に募集している企業に多く見られます。
ANAでは整備士、客室乗務員、グランドスタッフなど、さまざまな職種の社員が登場し、それぞれの仕事内容や制服を紹介しています。USEN-NEXT GROUPは新卒採用専用のアカウントを運営し、「株式会社これから」のように採用募集中であることをプロフィールに明記している企業もあります。
このパターンが向いている企業の特徴:
- 複数の職種で同時に採用を行っている
- 本体の公式アカウントとはトーンを分けたい
- 採用担当チームが独立して運用できる体制がある
- ターゲット層が職種によって明確に異なる
このパターンでは、採用に関心のあるユーザーに特化した情報発信ができます。一方で、アカウント運営の工数が増えるため、継続的に投稿できる体制を事前に整える必要があります。
パターン3:社員キャラクター型(個人ブランド活用型)
特定の社員を「キャラクター」として前面に出し、その人の個性や人柄で視聴者を惹きつけるパターンです。
リンクロノヴァの「ながの社長」、株式会社BEEMの社長キャラクターなどが代表例です。「おじさんTikTok」として話題になった三陽工業も、4人の役員・課長・監査役・72歳社員という「キャラクター」を前面に出しています。
このパターンが向いている企業の特徴:
- TikTok運用に積極的で、継続的に出演できる社員がいる
- エンターテインメント性の高いコンテンツで差別化したい
- 「この人と働きたい」という動機づけを重視する
- 堅い業種イメージを払拭したい
このパターンは爆発的な拡散力を持つ可能性がありますが、リスクも伴います。出演している社員が退職した場合、過去の動画の削除を求められるケースや、シリーズの継続が困難になるケースがあるためです。一人に依存しすぎない設計や、複数人が登場する形式を検討しておくことが望ましいといえます。
プロフィールはどのように設計すればよいのか?
TikTokのプロフィールは、動画を見て興味を持った視聴者が最初に確認する場所です。採用アカウントでは、この短いスペースで「採用を行っていること」「どんな仕事があるか」「どうすれば応募できるか」を明確に伝える必要があります。
採用中であることを明示する
プロフィール文の冒頭に「採用募集中」「一緒に働く仲間を募集」などの文言を入れることで、視聴者は一目で採用アカウントであることを認識できます。
「株式会社これから」のアカウントでは「24年度新卒・キャリア採用募集中!」と明記しています。ダイキン工業のアカウントも採用情報へのリンクを目立つ位置に配置しています。
募集職種・働き方を端的に記載する
プロフィールには文字数制限があるため、すべての情報を詰め込むことはできません。「エンジニア募集」「営業職採用中」「リモートワーク可」など、求職者が最も知りたい情報を厳選して記載します。
応募導線を設置する
TikTokのプロフィールにはURLを1つ設定できます。採用アカウントの場合、このリンク先は採用ページやエントリーフォームに直結させることが効果的です。
ダイキン工業はプロフィール下のリンクを直接リクルートページに設定しており、興味を持った視聴者がすぐに詳細情報にアクセスできる設計になっています。ライソンやリンクロノヴァはlit.linkなどのリンクまとめサービスを活用し、採用情報だけでなくYouTubeやInstagramなど複数の情報にアクセスできる導線を構築しています。
ハッシュタグは3〜4個に絞る
プロフィールに記載するハッシュタグは、検索からの流入を狙うために重要です。ただし、ハッシュタグが多すぎると動画にかぶる形で表示されてしまい、視聴体験を損なう可能性があります。
「#採用」「#求人」「#転職」「#新卒採用」などの基本タグに加え、業種や職種に関連するタグを組み合わせ、3〜4個程度に絞ることが推奨されています。
どんなコンテンツを、どのような比率で投稿すればよいのか?
採用アカウントのコンテンツは、大きく4つのカテゴリに分類できます。これらをバランスよく組み合わせることで、求職者が「この会社で働くイメージ」を具体的に描けるようになります。
カテゴリ1:職場紹介コンテンツ
オフィスツアー、社内の設備紹介、リラックススペースの紹介など、「どんな環境で働くのか」を視覚的に伝えるコンテンツです。
ロート製薬は「社員の一日」をテーマにした動画を投稿し、出社から退社までの流れを自然に見せています。スタイリー不動産は物件内見のような形式で、オフィスの内装を詳しく紹介しています。
カテゴリ2:社員紹介コンテンツ
入社理由、転職の決め手、仕事のやりがい、成長実感など、実際に働いている社員の声を伝えるコンテンツです。
調査によると、企業のTikTokを見た学生の66.2%が実際に企業にエントリーしており、その理由として「企業のイメージが持てた」という回答が多数を占めています(Nu Realize調査)。社員の生の声は、求人サイトの文字情報では伝わらない「空気感」を届ける効果があります。
カテゴリ3:仕事内容コンテンツ
実際の業務風景、プロジェクトの進め方、専門的な技術や知識など、「何をする仕事なのか」を具体的に見せるコンテンツです。
ANAでは整備士の作業風景や航空機の紹介、名門大洋フェリーでは船上での業務風景など、普段見ることのできない職場のリアルな姿が人気を集めています。製造業では工場見学風の動画や職人技の紹介が効果的です。
カテゴリ4:エンターテインメントコンテンツ
社内イベント、歓迎会、研修の様子、社員同士のやりとり、トレンドに乗った企画など、会社の「雰囲気」や「人間関係」を伝えるコンテンツです。
大京警備保障のダンス動画、リンクロノヴァの「社長の前で料理を始める」シリーズ、ライソンの社内料理動画など、成功している採用アカウントの多くがこのカテゴリで話題を集めています。
コンテンツの構成比率について
明確な「正解」の比率はありませんが、成功している企業の共通点として、エンターテインメント性の高いコンテンツで認知を獲得しつつ、職場紹介や社員紹介のコンテンツで具体的な情報を補完するという組み合わせが見られます。
「求人募集を前面に出した動画ばかりでは、ユーザーの興味関心を集めにくい」という指摘もあります。社内の様子や働く環境がわかる動画を主軸にしつつ、コメント欄やプロフィールリンクで応募への導線を設けるアプローチが効果的とされています。
採用アカウントでよくある失敗パターンとは?
TikTok採用を始めたものの、期待した成果が出ない企業には、いくつかの共通パターンがあります。
失敗パターン1:会社説明会の動画をそのまま転用する
パワーポイントを使った説明や、正面からカメラに向かって話す形式は、TikTokの文化にはなじみにくいとされています。TikTokユーザーは「エンタメ性」「テンポの良さ」「軽快さ」を求めており、堅い会社紹介ムービーはスワイプされてしまう傾向があります。
失敗パターン2:経営者のメッセージばかりを発信する
経営者の想いを伝えることは重要ですが、一方的なメッセージの発信だけでは視聴者との接点を作りにくい面があります。成功している企業では、経営者も「キャラクター」として社員とのやりとりに参加するなど、双方向性やエンタメ性を意識した演出が見られます。
失敗パターン3:更新が続かない
TikTok採用は短期間で成果が出る施策ではありません。アカウントを開設し、動画を投稿し始めてすぐに採用成果が出ることは稀であり、継続的な投稿でフォロワーを増やし、認知度を高めていく長期的な取り組みが求められます。
成功している企業の多くは週3回から毎日の投稿を継続しています。「片手間で効果が出る」と考えていると、数ヶ月で更新が止まってしまうケースが多いようです。
失敗パターン4:トレンドを無視した独自路線
TikTokでは流行りの楽曲やフォーマットを活用した動画が拡散されやすい傾向があります。「トレンド×独自性」の組み合わせが重要であり、独自性だけでは拡散力を得にくい面があります。
ただし、企業アカウントでは一般ユーザーが利用できる楽曲の一部が使用できない制約があります。TikTokが提供する「TikTok商用音源ライブラリ(CML)」から選ぶか、許諾を得た音源を使用する必要がある点は注意が必要です。
失敗パターン5:特定社員への過度な依存
社員キャラクター型で成功した場合に起こりやすい問題です。特定の社員をメインにしたシリーズが続いていた場合、その社員が退職すると継続が困難になります。退職後に本人から動画の削除を求められるケースもあり、アカウント運用に大きな影響を与える可能性があります。
対策として、一人に依存せず複数の社員が登場する形式にする、顔出しを必要としない動画フォーマットを活用するなどの工夫が求められます。
失敗パターン6:炎上リスク対策の不備
TikTokは拡散力が高い分、意図しない形で批判を受けるリスクも伴います。ユーモアを交えた動画が不適切と認識されたり、社内の雰囲気を伝える投稿が「ブラック企業」と誤解されたりするケースもあります。
投稿前に複数人でチェックする体制を整え、万が一問題が発生した際の対応方針を事前に決めておくことが重要です。
まとめ
TikTok採用アカウントの設計は、自社の状況に合ったパターンを選ぶことから始まります。
中小企業で運用リソースが限られている場合は「会社全体型」から始めるのが現実的です。複数職種を募集している場合や、採用担当チームが独立して運用できる体制がある場合は「職種特化型」も選択肢になります。エンタメ性で差別化したい場合は「社員キャラクター型」が有効ですが、特定社員への依存リスクには注意が必要です。
プロフィールでは「採用中であること」を明示し、応募への導線を設置します。コンテンツは職場紹介、社員紹介、仕事内容、エンターテインメントをバランスよく組み合わせ、継続的に投稿できる体制を整えることが成功の鍵となります。
短期的な成果を期待しすぎず、3ヶ月から半年程度の継続を見据えた運用計画を立てることで、TikTok採用の可能性を最大限に活かすことができます。
この記事からわかるQ&A
会社全体型と職種特化型、どちらを選べばよいですか?
従業員数が少なく職種も限定的な中小企業は「会社全体型」から始めることをお勧めします。運営負担を最小限に抑えながら、採用と企業ブランディングを同時に進められる点が強みです。複数職種の採用を行っている場合や、採用担当チームが独立して運用できる体制がある場合は「職種特化型」も選択肢になります。
プロフィールのリンクは何を設定すべきですか?
採用アカウントの場合、採用ページやエントリーフォームに直結させることが効果的です。複数の情報を提供したい場合は、lit.linkなどのリンクまとめサービスを活用し、採用情報を最上部に配置する方法もあります。
どのくらいの頻度で投稿すればよいですか?
成功している企業の多くは週3回から毎日の投稿を継続しています。TikTok採用は短期間で成果が出る施策ではないため、少なくとも3ヶ月から半年程度の継続を見据えた運用計画を立てることが重要です。
社員が退職した場合、過去の動画はどうなりますか?
退職後に本人から動画の削除を求められるケースがあります。一人に依存せず複数の社員が登場する形式にする、顔出しを必要としない動画フォーマットを活用するなど、事前にリスクを軽減する設計を検討しておくことが望ましいです。
炎上した場合はどう対応すればよいですか?
前に対応方針を決めておくことが重要です。投稿前に複数人でチェックする体制を整え、問題が発生した際の連絡フローや、謝罪・訂正の判断基準を明確にしておきます。また、コメント欄や自社に関する第三者の投稿を定期的に確認する習慣も有効です。
引用・参考資料
- TikTok For Business「TikTok プラットフォーム情報〜人材業界トレンド編〜」(2024年)
- Nu Realize調査「Z世代のTikTok活用実態調査」:企業のTikTokを見た学生の66.2%が実際に企業にエントリー
- TikTok公式データ:冒頭から人物が登場する動画は6秒以上視聴される割合が171%以上高い
- 各種企業アカウント事例:大京警備保障、三和交通、ダイキン工業、ANA、リンクロノヴァ、ライソン、株式会社BEEM、ロート製薬
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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