Webサイト制作を、「デザインを新しくしたい」「問い合わせフォームを目立たせたい」という要望だけで進めようとしていませんか?要望の背景にある経営課題と現状を整理すると、企業と制作会社は、目的に合う制作内容を検討しやすくなります。
この記事では、経営課題からWebサイトの役割を考え、要望・事実・原因の仮説を分けて整理する方法について取り上げます。5Why分析の使い方、制作会社と共有する文書のまとめ方、社内と外部の分担を決める確認事項もお伝えします。
この記事でわかること
- 要望の背景を確かめて制作内容を決める順序
- 問い合わせ・採用・情報提供で異なる確認条件
- 5Why分析による原因の仮説と確認事項の整理
- 課題の整理からRFPの共有までの実行手順
- 原因の決めつけと関係者の認識のずれへの対処
- 社内で決める範囲と外部に依頼する範囲の判断
要望の背景を確かめ、経営課題から制作内容を決める
Webサイト制作では、希望するデザインや機能と、その背景にある課題を一緒に整理します。企業が達成したい成果、現在の状況、サイトに任せる役割を先に共有し、その役割に合う表現や機能を検討する順序が基本です。
要望・課題・原因の仮説を分ける
「動画を掲載したい」は、企業が希望する手段です。「訪問者に商品の特徴を理解してもらいたい」は、その手段で実現したい状態を表します。両方を記録すると、担当者は動画の目的や掲載する内容を説明しやすくなります。
一方、「商品の説明が不足しているから問い合わせが少ない」は、原因についての仮説です。担当者は、顧客から受けた質問や問い合わせの記録を確かめます。裏付けがない段階では、原因を確定した説明として扱いません。
担当者は課題を整理するときに、現状と目標の差を具体化します。たとえば、「問い合わせを増やしたい」という希望に現在の件数、問い合わせの内容、増やしたい顧客の条件を添えれば、担当者と制作会社は調べる範囲を絞れます。
経営上の目標から手段へ進む
検討の順序は、経営上の目標、サイトの役割、達成状況を確認する指標、制作内容です。新規顧客との商談を増やしたい場合、企業はサイトで誰の検討を支援するかを決め、その人が問い合わせるまでに知りたい情報を整理します。
その後に、担当者と制作会社がページ構成、文章、写真、動画、フォームを比較検討します。KPIは目標への進み具合を確かめる指標で、問い合わせ件数を使う場合は、担当者と制作会社がどの問い合わせを数えるかを先にそろえます。
デザインの刷新も、目的に合う手段の一つです。文字の読みづらさや情報の探しにくさが確認できた場合は、見せ方の変更を候補に含めます。好みや公開から経った年数に加え、訪問者の利用場面を判断に含めてください。
問い合わせ・採用・情報提供で、調べる課題を分ける
経営課題から逆算する際は、誰が、何を判断するためにサイトを使うかを確認します。問い合わせ、採用応募、商品情報の確認では、担当者が調べる資料も異なります。同じ「反応が少ない」という状態でも、選ぶ制作内容は一律に決まりません。
問い合わせを増やしたい場合
問い合わせが少ない場合は、サイトへの訪問が少ない状態と、訪問後に問い合わせへ進まない状態を分けて調べます。担当者がアクセスの記録を確認できるなら、訪問数と問い合わせ件数を同じ期間で比較します。
訪問が少ないときは、対象となる顧客がどのように情報を探すかを確認します。営業担当者が顧客から聞いた質問も検討材料です。検索経由の訪問を増やす目的なら、SEO、つまり検索で情報を見つけてもらうための取り組みも候補に含めます。
訪問者がいる場合は、商品説明や問い合わせまでの経路を確認します。「問い合わせが少ない」という結果だけから、検索の問題とは断定できません。企業が増やしたい問い合わせの条件も添えると、件数と内容の両面から検討できます。
採用応募を増やしたい場合
採用サイトから応募がない場合は、採用担当者が募集情報の閲覧状況と、応募者から受けた質問を整理します。仕事内容を知りたい人と、応募条件を確認したい人では、探す情報が異なります。対象者の検討段階も確認の対象です。
募集情報を読む人が少ないなら、まず訪問経路を調べます。閲覧されているのに応募へ進まないなら、仕事や応募条件の説明を確かめます。応募がないことだけを理由に、デザイン変更や機能追加へ絞りません。
商品や企業の情報を確認してもらいたい場合
顧客が営業担当者との会話の前後にサイトを使う場合、担当者は問い合わせ件数に加え、顧客が説明を読みたい情報を探せるかも調べます。その際、担当者は商談で繰り返し質問される内容と、現在掲載している情報を照合します。
この場合は、営業担当者が使う説明と掲載内容の一致も判断材料です。文章や構成を見直す目的が明確なら、その範囲から検討を始めます。サイトへの訪問数を増やす施策を、すべての課題に共通する出発点にはしません。
5Why分析で原因の仮説と確認事項を整理する
5Why分析は、「なぜ起きたか」を繰り返し問い、原因を掘り下げる方法です。Webサイト制作では、回答ごとに根拠と未確認事項を添えて使います。問いへの回答を、そのまま確定した原因として扱わず、次に何を調べるかまで整理します。
想定例:月3件の問い合わせを月10件に増やしたい場合
以下は想定の例です。企業は問い合わせが月3件で、月10件を目標にしています。ただし、サイトの訪問状況と問い合わせまでの行動は、まだ確認していません。この前提なら、最初からデザインやSEOの問題に絞らず、原因の候補を調べます。
| 問い | 原因の仮説 | 確かめる資料・状況 |
|---|
| なぜ問い合わせが少ないのか | サイトへの訪問が少ない可能性 | 同じ期間の訪問数と問い合わせ記録 |
| なぜ訪問が少ないと考えるのか | 対象顧客に見つけてもらえていない可能性 | 顧客が情報を探す方法、訪問経路 |
| なぜ見つけてもらえていないのか | 顧客が探す内容と掲載情報が合っていない可能性 | 顧客の質問、検索する言葉、掲載内容 |
| なぜ顧客が探す内容を把握していないのか | 顧客の質問を整理していない可能性 | 営業担当者の記録と社内の共有方法 |
| なぜ質問を整理していないのか | 情報を集める担当と手順が決まっていない可能性 | 収集・確認・更新の役割分担 |
この表の回答は、すべて確認前の仮説です。訪問数を確かめた結果、十分に閲覧されていると分かった場合は、問い合わせへ進む過程を調べます。最初の回答が変われば、その後の問いも組み替えます。
顧客が知りたい内容と掲載情報のずれを確認できた場合、担当者は説明する内容を見直し、その情報を理解してもらう方法として動画やデザインの変更を比較します。担当者は原因を調べる前に、採用する手段を固定しません。
問いを深める方法と、原因を分ける方法の比較
担当者は原因を深く掘り下げたいときに5Why分析を使い、複数の原因候補があるときは、それぞれを分けて確かめます。訪問数と問い合わせまでの行動を調べる場合も、担当者は問いを縦に重ねる方法と、候補を横に並べる方法を併用します。
| 整理方法 | 向く場面 | 注意する点 |
|---|
| 「なぜ」を重ねる | 確認した事実の背景を掘り下げる場面 | 回答の根拠を確認する |
| 原因候補を並べる | 複数の原因が考えられる場面 | 比較する期間と条件をそろえる |
| 顧客の質問と照合する | 掲載情報の不足を調べる場面 | 一人の意見を全体の傾向と扱わない |
採用応募の課題にも、同じ整理を応用できます。応募件数の少なさから出発し、募集情報の閲覧、掲載内容、応募までの手順を分けて調べます。分析の結果には、原因の候補と、それを確かめる担当者・資料を残してください。
課題の整理からRFPの共有までを進める
制作会社との共有に向けて、担当者は現状資料を集め、事実と仮説を分けます。担当者は目的と条件を文書にまとめ、原因が未確定なら調査の依頼範囲も記載し、社内確認を経て制作会社と検討の前提をそろえます。
工程1:経営上の目標と現状資料を集める
経営者や事業責任者は、制作によって支援したい経営上の目標を担当者と話し合います。担当者は問い合わせの記録、営業や採用で受けた質問、既存サイトの掲載内容を集め、アクセスの記録があれば、その対象期間も添えます。
資料を集める段階では、確認できた内容と不足している内容を区別します。問い合わせ件数が分かっても、訪問者の行動まで把握しているとは限りません。担当者は、確認に使った資料と、まだ調べていない範囲を記録します。
工程2:事実・仮説・要望を整理する
担当者は、集めた資料から現状と目標の差を書き出します。原因の候補には「仮説」と明記し、デザインや機能の希望には、期待する役割を添えます。5Why分析を使う場合も、確認できていない回答を事実の欄に混ぜません。
次に、担当者は経営者や関係部署が優先する課題を確かめ、問い合わせと採用の両方を扱う場合は、どちらを先に検討するかを決めます。目標が複数あるときは、担当者が同じ文書で優先順を共有します。
工程3:RFPに目的と依頼条件をまとめる
RFPは、制作会社に提案を求めるための提案依頼書です。IPA掲載の「提案依頼書に含まれる無理難題の分類」(2017年12月)は、発注企業が課題や目的・目標を伝え、技術仕様の提案を依頼する資料と説明しています。
Webサイト制作の依頼では、次の項目をまとめます。詳しい原因や仕様が未確定の部分は、その状態を記載します。希望する手段に加えて、制作会社が代替案を提案できる範囲も示してください。
- 背景と目的:経営上の目標、サイトに期待する役割
- 現状と課題:確認済みの事実、目標との差
- 原因の仮説:考えられる原因、未確認事項
- 対象者と場面:誰が、何を判断するときに使うか
- 依頼範囲:調査、設計、制作のどこを依頼するか
- 制約条件:予算の上限、公開希望時期、社内の対応範囲
- 要望と評価基準:必須条件、代替案を検討できる条件
工程4:社内確認後に制作会社と共有する
担当者は経営者、営業、採用などの関係者に文書を確認してもらい、目標、優先順、承認する人をそろえます。未決定事項には担当者が確認する人と時期を書き添え、制作会社との打ち合わせで疑問が出た箇所を追記します。
公開後に誰が達成状況を確かめるか、いつ確認するかも、依頼条件に含めます。ここでは確認の担当と時期まで決め、詳しい運用や計測方法は制作範囲に応じて別途整理します。
原因の決めつけと認識のずれを防ぐ
担当者は課題整理の際に根拠、決定事項、未確認事項を分けて記録し、原因の仮説が事実として広まっていないか、関係者が違う目標を想定していないかを確かめます。ずれが見つかった場合は、担当者が制作内容を決める前に前提を修正します。
一つの原因に絞りすぎない
問い合わせが少ないときに「SEO対策が足りない」と決めると、訪問後の説明や問い合わせまでの経路を調べる範囲が狭まります。担当者は、訪問数、掲載内容、問い合わせへの進み方を原因候補として並べ、資料で確かめます。
5Why分析で最初の回答を思い込みから決めると、担当者はその後の問いでも同じ方向に原因を探しがちです。担当者は根拠を確認できない回答を仮説に戻して別の候補を加え、確認結果が合わない場合は問いの途中から見直します。
担当者個人への評価で分析を止めない
「担当者が詳しくない」という説明だけでは、どの作業を変えるか決まりません。情報を集める人、判断する人、確認する手順に分けて調べます。役割が曖昧なら、社内と制作会社のどちらが対応するかを決めます。
担当者がヒアリングシートの未確認項目を推測で埋めると、制作会社は確定情報として受け取るかもしれません。担当者は「未確認」と記載して確認する相手を添え、回答後に事実が変わった場合は、変更した箇所を共有します。
打ち合わせの決定事項と提案を分けて残す
口頭で複数の案を話した場合、担当者と制作会社は採用した案と検討中の案を区別しきれないかもしれません。担当者は議事録や共有文書で決定事項と次回までに調べる事項を分け、認識が違っていた場合は記録を修正します。
経営者と担当部署が違う成果を期待している場合、デザイン案の選択を先に進めても、担当者は目的の違いを解消できません。担当者は優先順を再確認し、判断が変わった理由も記録して制作会社と共有します。
共有する情報の範囲を明確にする
企業側は社外に示せる範囲を確かめ、顧客の声や過去の施策を、背景を理解する資料として制作会社と共有します。詳しい情報を示せない場合は、担当者が相談内容や傾向を整理し、制作会社が提案に使える形で説明を加えます。
制作会社の提案が要望の実現方法だけに偏っている場合、担当者は想定している原因と根拠に加え、課題との関係や別の手段を採用する条件を尋ねます。担当者はその回答を記録し、企業と制作会社が同じ前提で提案を比較できるようにします。
社内で決める範囲と外部に依頼する範囲を分ける
企業側は経営上の優先順位や顧客についての情報をまとめ、現状分析や制作内容の比較を外部へ依頼する範囲を、社内の知識と対応できる時間に応じて決めます。課題整理をすべて社内で終えることを前提にせず、企業側は未確認部分も含めて外部との分担を調整します。
社内で整理を進めやすい条件
営業や採用の記録があり、関係部署から情報を集められるなら、担当者は目的、対象者、現状、要望を社内でまとめます。経営者や事業責任者は、優先順位と予算の条件を確認します。専門的な原因分析まで社内で確定させません。
社内で整理する場合も、確認する時間を確保できるかを検討します。担当者が情報を集めても、判断する人が不明なままでは制作会社への説明が定まりません。文書をまとめる人と、方針を承認する人を決めます。
外部と一緒に調べる条件
アクセスの記録を読み取れない場合や複数の原因候補を比較しにくい場合、担当者は調べたい課題と手元の資料を示し、現状分析から外部へ依頼します。その際、担当者は制作会社に、調査対象、確認方法、結果のまとめ方を提示してもらいます。
原因が未確定の段階では、調査の結果に応じて制作範囲を決める進め方も候補です。分析と制作を一括で依頼する場合は、途中で方針を確認する時点を決めます。どちらの場合も、経営上の判断を誰が担うかは企業側で明確にします。
見積もりで課題整理の範囲を確かめる
担当者は見積もりを読む際に、調査、ヒアリング、課題整理、文書作成の範囲を確かめ、企業が用意する資料、制作会社が調べる事項、分析後の追加作業も比較します。制作費の総額だけでは、担当者は対応範囲の違いを読み取れません。
提案を比較するときは、課題と制作内容の関係、仮説を確かめる方法、社内の対応時間を同じ条件で確認します。依頼前に結論を固定せず、どの事実が分かれば方針を決められるかまで共有してください。
まとめ
次の打ち合わせでは、希望する機能やデザインに、その背景となる現状と目標を添えて共有します。担当者が確認済みの事実と原因の仮説を分けて記録すると、企業と制作会社は、何を調べてから制作内容を決めるかを話し合えます。
原因を判断する資料がそろっていれば、担当者と制作会社は制作案を比較し、資料が不足していれば、調査対象と担当者を決める段階から始めます。企業側は社内で整理する時間や知識も踏まえて、外部に依頼する範囲を調整します。
まずは、目的、対象者、現状、仮説、要望を一つの文書にまとめてください。未確認事項と社内の判断者まで示すと、次に確認する内容と、提案を評価する前提を共有しやすくなります。
この記事からわかるQ&A
デザイン案が決まっていても、経営課題から整理する意味はありますか?
デザイン案が決まっていても、担当者は改善したい状態と変更できる範囲を確かめ、文字の読みやすさや商品の探しやすさなど、案を評価する観点をまとめます。社内で承認済みの条件があれば、担当者はその条件を制作会社へ示し、変更が難しい範囲と目的に合わせて提案を受けたい範囲を分けて、相談を進める際に双方が迷いにくいように説明します。
原因が分からない状態で制作会社に相談してもよいですか?
企業側は原因が分からない段階でも、起きている状況と確認に使える資料を説明して相談できます。問い合わせ記録や顧客から受けた質問があれば、企業側は対象期間も示します。担当者は原因を推測で確定させません。相談時には現状調査が依頼範囲に含まれるかを担当者が確かめ、原因を調べる作業と、その結果を受けた制作の作業について、見積もりの範囲を分けて確認します。
数値目標を決められない場合は、何から始めればよいですか?
担当者は現在の状況を記録して確認したい変化を整理し、過去の問い合わせ件数が分からない場合は、件数と内容の記録から始めます。最初から根拠のない目標値を決めません。「顧客が商品情報を探せるようにしたい」などの目的なら、担当者は問い合わせ件数に加え、繰り返し受ける質問や掲載情報の不足も検討材料に含めます。
RFPを作る前に予算を確定する必要がありますか?
予算が未確定でも、担当者は社内で承認された範囲と検討中の範囲を分け、上限が決まっていれば、その条件も含めて制作会社と共有できます。予算を判断するために調査や提案を依頼する場合は、担当者がその目的を説明し、実施を決めた制作の見積もりと検討中の案の概算を混ぜず、それぞれの前提を確かめます。
専任のWeb担当者がいない場合、誰が課題をまとめればよいですか?
関係部署から情報を集められる人が取りまとめを担い、経営者や事業責任者が方針を確認する分担を検討します。一人で営業、採用、制作のすべてを判断する前提にはしません。兼務する担当者の時間が限られる場合は、制作会社にヒアリングや文書整理を依頼する方法もあります。その場合も、企業側で内容を確認する人と、未決定事項を判断する人を決めます。
引用・参考資料