Webサイト制作とは?中小企業が知っておくべき「資産としてのWebサイト」の考え方

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この記事でわかること

  • Webサイトの基本的な役割と、名刺・パンフレットとの違い
  • 「コスト」ではなく「資産」として捉える考え方
  • Webサイトがもたらす5つの価値(信頼構築、集客、採用など)
  • Webサイトの寿命と投資回収の考え方
  • 自社にWebサイトが必要かどうかの判断基準

「Webサイトを作りたいけれど、本当に必要なのか」「費用に見合う効果があるのか」——中小企業の経営者や担当者から、こうした声をよく耳にします。

総務省の通信利用動向調査によると、従業員100人以上の企業ではWebサイト開設率が9割を超えています。一方、従業員数の少ない小規模事業者では、Webサイトを持たない企業も珍しくありません。「持つべきか、持たざるべきか」という判断に迷う経営者は多いはずです。

この記事では、Webサイトを「コスト」ではなく「資産」として捉える考え方を解説します。制作を検討する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。


Webサイトとは何か:名刺やパンフレットとの違い

Webサイトの基本的な役割

Webサイトとは、インターネット上に公開された自社の情報発信拠点です。会社概要、事業内容、製品・サービス情報、採用情報など、さまざまな情報を掲載し、24時間365日、世界中どこからでもアクセスできる状態を維持します。

名刺やパンフレットも情報発信ツールですが、Webサイトとは根本的に異なる特徴があります。

項目名刺・パンフレットWebサイト
情報量限定的制限なく拡張可能
更新印刷し直す必要あり即時更新可能
アクセス手渡しが必要検索で自ら辿り着ける
稼働時間配布した時のみ24時間365日
効果測定困難アクセス解析で可視化

名刺やパンフレットは「渡す」ことで初めて機能しますが、Webサイトは相手が「探して見つける」ことができます。この違いが、Webサイトの本質的な価値を形作っています。

企業規模によるWebサイト保有状況の違い

総務省の通信利用動向調査(令和5年)によると、従業員100人以上の企業ではWebサイト開設率が9割を超えています。大企業にとって、Webサイトは「あって当たり前」のインフラとなっています。

一方、従業員数の少ない小規模事業者の状況は異なります。この調査は従業員100人以上の企業を対象としているため、日本企業の大多数を占める中小・小規模事業者の実態は含まれていません。

業種や地域、事業形態によって状況は大きく異なりますが、取引先や顧客がインターネットで情報を探すことが当たり前になった今、Webサイトの有無が事業機会に影響を与える場面は確実に増えています。


「コスト」ではなく「資産」という発想

経費と資産の違い

Webサイト制作を検討する際、「○○万円かかる」という費用面が最初に気になるものです。しかし、ここで考えたいのは、その支出が「経費」なのか「資産」なのかという視点です。

経費とは、消費されて終わる支出です。広告費や消耗品費がこれに当たります。一方、資産とは、将来にわたって価値を生み出し続けるものへの投資です。

Webサイトは、一度制作すれば3〜5年にわたって機能し続けます。その間、24時間365日休まず、情報を発信し、問い合わせを受け付け、採用候補者に会社の魅力を伝え続けます。この継続的な働きを考えると、Webサイトは「経費」よりも「資産」として捉えるほうが適切です。

24時間働く営業担当者という考え方

Webサイトを「24時間365日働く営業担当者」と表現することがあります。もちろん、人間の営業担当者と同じ働きをするわけではありません。ただし、以下のような役割を休みなく果たします。

情報提供の役割
見込み顧客が「この会社はどんな会社だろう」と思ったとき、Webサイトがあれば即座に情報を提供できます。営業時間外でも、休日でも、相手の都合に合わせて情報を届けられます。

信頼性の担保
「この会社は本当に存在するのか」「信頼できる会社なのか」——取引を検討する際、相手はまずWebサイトを確認します。Webサイトがなければ、その時点で候補から外れる可能性があります。

問い合わせの受付
「興味を持ったけれど、営業時間外だった」という機会損失を防ぎます。問い合わせフォームがあれば、相手は思い立ったタイミングで連絡できます。


Webサイトがもたらす5つの価値

Webサイトが企業にもたらす価値は多岐にわたります。ここでは、中小企業にとって特に重要な5つの価値を整理します。

1. 信頼構築

BtoB取引において、Webサイトは信頼性を判断する重要な材料となっています。

トライベック・ブランド戦略研究所の「BtoBサイト調査2023」によると、業務における商品・サービスの情報源として最も多かったのは「企業のWebサイト」でした。取引先を選定する際、まず相手のWebサイトを確認するのが一般的な行動パターンとなっています。

Webサイトがない、または情報が古いままの場合、「この会社は大丈夫だろうか」という不安を与えかねません。逆に、しっかりとしたWebサイトがあれば、会社の実在性や事業の実態を示す証拠となります。

2. 集客・リード獲得

中小企業庁の調査によると、Webサイトを開設している企業と開設していない企業では、販売先数の変化に明確な差が見られました。

  • Webサイトあり:「大幅に増加した」「やや増加した」と回答した企業は37.8%
  • Webサイトなし:「大幅に増加した」「やや増加した」と回答した企業は8.7%

この差は約4倍です。もちろん、Webサイトを持っているだけで集客できるわけではありません。ただし、見込み顧客が自ら情報を探す時代において、Webサイトがなければ「見つけてもらう」チャンスそのものを失っていることになります。

3. 採用活動の強化

求職者の多くは、応募前に企業のWebサイトを確認します。求人サイトに掲載された情報だけでは、会社の雰囲気や文化を十分に伝えることはできません。

自社Webサイトでは、以下のような情報を自由に発信できます。

  • 代表者のメッセージや経営理念
  • 社員インタビューや働く環境の紹介
  • 具体的な仕事内容や1日の流れ
  • 福利厚生や研修制度の詳細

求人媒体に支払う費用と比較して、自社Webサイトでの採用情報発信は費用対効果が高い施策となる可能性があります。

4. 業務効率化

Webサイトは、問い合わせ対応の効率化にも貢献します。

よくある質問(FAQ)をWebサイトに掲載しておけば、定型的な問い合わせを減らすことができます。営業資料や会社案内をダウンロードできるようにすれば、資料送付の手間を省けます。

「電話で聞かれることは、たいていWebサイトを見ればわかる」という状態を作ることで、本来注力すべき業務に時間を使えるようになります。

5. ブランディング

Webサイトは、自社のブランドイメージを伝える重要な接点です。

デザイン、文章のトーン、掲載する写真や動画——これらすべてが、会社の「らしさ」を形作ります。名刺やパンフレットでは伝えきれない企業の世界観を、Webサイトであれば表現できます。

競合他社との差別化を図る上でも、Webサイトは有効な手段となります。


BtoB取引における変化:営業接触前の情報収集

BtoB(企業間取引)において、購買プロセスに大きな変化が起きています。

米国のコーポレート・エグゼクティブ・ボード社の調査によると、BtoBにおいては顧客の購買プロセスの57%が、営業担当者に会う前にすでに終わっているとされています。

つまり、見込み顧客は営業担当者と会う前に、自らインターネットで情報を収集し、候補となる企業を絞り込んでいるということです。この段階でWebサイトがなければ、そもそも候補に入ることができません。

日経リサーチが実施した調査でも、購買関与者の情報収集源として最も多かったのは「その企業のWebサイト」でした。経営者・役員クラスでは44%、管理職クラスでは41%が、企業のWebサイトを情報源として挙げています。

この傾向は今後も続くと予想されます。ガートナー社は、2025年までにBtoB購買におけるやりとりの80%がデジタルチャネルで行われるようになると予測しています。


Webサイトの寿命と投資回収の考え方

Webサイトの一般的な寿命

Webサイトは一度作れば永久に使えるわけではありません。一般的に、Webサイトの寿命は3〜5年といわれています。

リニューアルが必要になる主な理由は以下の通りです。

  • デザインの陳腐化:Webデザインのトレンドは変化するため、数年で「古く見える」ようになる
  • 技術的な問題:新しいブラウザやデバイスに対応できなくなる
  • 事業の変化:事業内容や組織体制の変化にサイト構成が追いつかなくなる
  • セキュリティ:古いシステムはセキュリティリスクが高まる

ただし、適切に運用・更新を続けていれば、寿命を延ばすことも可能です。

投資回収の考え方

Webサイト制作費用を「投資」として考えた場合、回収の目安はどのように考えればよいのでしょうか。

仮に制作費用が150万円、運用期間が5年とした場合、年間あたりのコストは30万円です。月額に換算すると約2.5万円となります。

この金額で、以下のような効果が得られるかどうかを判断基準にできます。

  • 月に1件、Webサイト経由で問い合わせがあり、そのうち数件が成約につながる
  • 採用活動において、求人媒体への掲載費用を削減できる
  • 既存顧客への情報提供が効率化され、対応工数が削減できる

もちろん、効果は業種や事業内容によって大きく異なります。重要なのは、「作って終わり」ではなく、運用しながら効果を測定し、改善を続けることです。


持つべきか持たざるべきかの判断基準

すべての企業にWebサイトが必要とは限りません。以下のチェックリストで、自社にとっての必要性を判断してみてください。

Webサイトが特に有効な企業

以下に当てはまる項目が多い場合、Webサイトの効果が期待できます。

  • [ ] 新規顧客を獲得したい
  • [ ] BtoB取引が主な事業である
  • [ ] 採用活動を強化したい
  • [ ] 会社の信頼性をアピールしたい
  • [ ] 競合他社はWebサイトを持っている
  • [ ] 営業エリアが広い(地域密着ではない)
  • [ ] 製品・サービスの説明が複雑で、詳しい情報提供が必要

Webサイトがなくても大きな問題がないケース

以下のような状況であれば、Webサイトの優先度は下がるかもしれません。

  • 完全に紹介ベースでビジネスが成り立っている
  • 地域密着型で、固定客が中心
  • SNSやGoogleビジネスプロフィールで十分に集客できている
  • 事業を縮小・終了する予定がある

ただし、「今は必要ない」と判断した場合でも、将来的な変化に備えて検討を続けることは重要です。


まとめ

Webサイトを「コスト」として見ると、「なるべく安く」「本当に必要か」という発想になります。一方、「資産」として見ると、「どのような価値を生み出すか」「投資に見合うリターンがあるか」という発想に変わります。

大企業ではWebサイトが「あって当たり前」のインフラとなっている一方、小規模事業者ではまだ持っていない企業も少なくありません。だからこそ、しっかりとしたWebサイトを持つことが差別化につながる可能性があります。

BtoB取引では、購買プロセスの多くが営業接触前に完了する時代です。見込み顧客が「この会社について知りたい」と思ったときに、Webサイトがなければ候補にすら入れません。

自社にとってWebサイトが必要かどうかは、事業内容や成長戦略によって異なります。この記事が、その判断の一助となれば幸いです。

次の記事では、Webサイトの種類と特徴について解説します。コーポレートサイト、ランディングページ、ECサイト、採用サイト——それぞれの目的と費用感の違いを整理します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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