YouTubeとは?中小企業が知っておくべき長尺動画の可能性と限界

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この記事でわかること

  • YouTubeの基本的な仕組みと特徴
  • 長尺動画プラットフォームとしてのYouTubeの強み
  • TikTokやInstagramとの違い
  • 中小企業における4つの活用パターン
  • YouTubeでできること・できないこと(現実的な視点で)

「YouTubeを始めたほうがいいのだろうか」——動画活用を検討する中小企業の経営者や担当者から、こうした相談を受けることが増えています。

YouTubeは、日本国内で月間7,000万人以上が利用する巨大なプラットフォームです。しかし、「とりあえず始めてみよう」という姿勢では、時間とコストをかけても成果につながらないことがあります。

この記事では、YouTubeの基本概念から、中小企業における活用の可能性と限界までを解説します。自社にとってYouTubeが適切な選択肢かどうか、判断するための材料を提供します。


YouTubeとは何か

世界最大の動画共有プラットフォーム

YouTubeは、2005年にアメリカで誕生し、翌年Googleに買収された動画共有プラットフォームです。現在は世界で月間25億人以上が利用しており、検索エンジンとしてはGoogleに次ぐ規模を持っています。

日本国内では、2024年5月時点で18歳以上の月間利用者数が7,370万人を超えています。これは18歳以上の日本人口の約68%に相当します。全年代での利用率は約88%と、日本で最も利用されている動画プラットフォームです。

長尺動画を扱えるプラットフォーム

YouTubeの大きな特徴は、数分から数十分、場合によっては数時間の「長尺動画」を扱えることです。TikTokやInstagramリールが数十秒〜数分の短尺動画を主体とするのに対し、YouTubeでは情報量の多いコンテンツを届けることができます。

この特徴により、以下のようなコンテンツが可能になります。

  • 製品やサービスの詳細な説明
  • 技術やノウハウの丁寧な解説
  • 社員インタビューや会社紹介
  • セミナーや講演の配信
  • 製造工程や作業風景の紹介

検索エンジンとしての側面

YouTubeはGoogleの傘下にあり、Google検索との連携が強いという特徴があります。YouTubeに投稿した動画は、YouTube内の検索だけでなく、Google検索の結果にも表示される可能性があります。

「〇〇 使い方」「〇〇 やり方」といった検索で動画を探すユーザーは多く、YouTubeは「動画で情報を探す検索エンジン」としての役割も果たしています。

アーカイブ性:資産として残り続ける

YouTubeに投稿した動画は、削除しない限りプラットフォーム上に残り続けます。数年前に投稿した動画が、今でも検索経由で再生され続けるということが起こります。

TikTokやInstagramのストーリーズでは、コンテンツの寿命は短く、常に新しい投稿が求められます。一方、YouTubeでは過去の動画が「資産」として蓄積され、長期的に価値を発揮する可能性があります。


なぜ今、中小企業がYouTubeに注目するのか

幅広い年代にリーチできる

「YouTubeは若者向け」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には幅広い年代が利用しています。

2024年のデータによると、45〜64歳のYouTube利用者は2,740万人以上で、同世代人口の79%以上を占めています。40代が最も多く利用しているという調査結果もあり、ビジネスパーソンや意思決定者へのリーチも期待できます。

テレビからYouTubeへの視聴シフト

近年、テレビではなくYouTubeで動画を視聴するという行動が一般化しています。特に「コネクテッドTV」と呼ばれる、テレビ画面でYouTubeを視聴するスタイルが急速に普及しています。

2020年から2023年の3年間で、コネクテッドTV経由のYouTube視聴時間は2倍以上に増加したとされています。リビングのテレビで家族がYouTubeを視聴するという光景は、もはや珍しくありません。

検索経由での「発見」

Webサイトと同様に、YouTubeでも検索経由での流入が重要です。特定のキーワードで検索したユーザーが、自社の動画を発見し、興味を持つという流れが期待できます。

たとえば、製造業であれば「〇〇加工 方法」、サービス業であれば「〇〇 選び方」といった検索で、潜在的な顧客や求職者にリーチできる可能性があります。


他のSNSとの違い

YouTubeを検討する際、TikTokやInstagramとの違いを理解しておくことが重要です。

YouTube・TikTok・Instagram比較

項目YouTubeTikTokInstagram
動画の長さ数分〜数時間数十秒〜10分数十秒〜数分(リール)
主な利用年代全年代10〜20代中心10〜30代中心
コンテンツの寿命長い(アーカイブ性)短い(トレンド重視)中程度
検索性高い(Google連携)低い中程度(ハッシュタグ)
拡散力中程度高い中程度
制作コスト高め低め中程度
向いている目的信頼構築、情報提供認知拡大、話題化ブランドイメージ構築

YouTubeの強み

情報量の多いコンテンツを届けられる
長尺動画が可能なため、製品の詳細説明、技術解説、会社紹介など、情報量の多いコンテンツを届けることができます。

検索経由で「見つけてもらえる」
Google検索との連携により、特定のニーズを持ったユーザーに発見してもらいやすい環境があります。

資産として蓄積される
過去の動画が継続的に再生される可能性があり、長期的な視点での投資対効果が期待できます。

YouTubeの弱み

制作に時間とコストがかかる
TikTokのようにスマートフォン1台で手軽に、というわけにはいきません。企画、撮影、編集にそれなりの時間とコストがかかります。

成果が出るまでに時間がかかる
チャンネルを開設してすぐに成果が出ることは稀です。継続的な投稿と改善を重ねて、徐々に視聴者を獲得していく必要があります。

拡散力ではTikTokに劣る
短期間で爆発的に広がる「バズ」は、TikTokのほうが起きやすい傾向があります。


中小企業における4つの活用パターン

中小企業がYouTubeを活用する目的は、大きく4つに分類できます。

1. 採用活動

求職者に対して、会社の雰囲気や働く人の姿を伝える活用法です。

活用例:

  • 社員インタビュー動画
  • 1日の仕事の流れ紹介
  • オフィスや工場の紹介
  • 社長メッセージ

求人票やWebサイトだけでは伝わりにくい「会社の空気感」を、動画で伝えることができます。特に、知名度の低い中小企業にとって、YouTubeは自社の魅力を発信する有効な手段になり得ます。

2. ブランディング・信頼構築

企業の専門性や姿勢を伝え、信頼を構築する活用法です。

活用例:

  • 業界の専門知識を解説する動画
  • 製品やサービスへのこだわりを紹介
  • 社会貢献活動の紹介
  • 経営者の考えや理念の発信

特にBtoB企業では、「この会社なら任せられる」という信頼感の醸成が重要です。動画を通じて専門性や誠実さを伝えることで、商談や取引につながる可能性があります。

3. 技術伝承・ノウハウ共有

社内向け・社外向けに、技術やノウハウを動画で残す活用法です。

活用例:

  • 製造工程や作業手順の記録
  • ベテラン社員の技術・ノウハウの記録
  • 新人教育用のマニュアル動画
  • 顧客向けの製品使い方ガイド

特に製造業では、熟練技術者の退職に伴う技術伝承が課題となっています。動画で記録しておくことで、貴重なノウハウを残すことができます。

4. 商品・サービス紹介

自社の商品やサービスを、動画で詳しく紹介する活用法です。

活用例:

  • 製品の特徴や使い方の紹介
  • 導入事例・お客様の声
  • サービスの流れや料金の説明
  • よくある質問への回答

文字や写真だけでは伝わりにくい製品の質感や使用感を、動画で伝えることができます。特に、比較検討段階にある見込み客に対して、有効な情報提供手段となります。


YouTubeでできること・できないこと

YouTubeを万能視せず、できることとできないことを正しく理解しておくことが重要です。

期待できる効果

認知の獲得
検索経由やおすすめ機能により、これまで自社を知らなかった人に発見してもらえる可能性があります。

信頼感の醸成
顔が見える、声が聞こえる動画は、Webサイトの文字情報よりも親近感や信頼感を生みやすい傾向があります。

情報の蓄積
投稿した動画は資産として蓄積され、長期的に価値を発揮する可能性があります。

採用活動の補助
会社の雰囲気や働く人の姿を伝えることで、採用活動を補助することができます。

過度に期待すべきでないこと

短期間での成果
チャンネルを開設して数ヶ月で大きな成果が出ることは稀です。最低でも1年程度の継続を想定する必要があります。

再生数=ビジネス成果
再生数が多くても、それが直接売上や採用につながるとは限りません。目的に合った指標で効果を測定する必要があります。

制作コストなしでの運用
質の高い動画を継続的に投稿するには、それなりの時間とコストがかかります。「片手間」での運用では成果が出にくい傾向があります。

向いている企業・向いていない企業

YouTubeが向いている可能性がある企業:

  • 伝えたい情報量が多い(製品説明、技術解説など)
  • 継続的に投稿できる体制が整えられる
  • 長期的な視点で投資できる
  • 採用や信頼構築を重視している
  • 検索されやすいキーワードを持っている

YouTubeが向いていない可能性がある企業:

  • 短期間で成果を求める
  • 動画制作にリソースを割けない
  • 一度作って終わりにしたい
  • 若年層への瞬間的な拡散を求める

まとめ:自社にとっての適性を判断するために

YouTubeは、長尺動画を通じて情報を届け、信頼を構築できるプラットフォームです。検索経由での発見、アーカイブ性による長期的な価値、幅広い年代へのリーチといった強みがあります。

一方で、制作に時間とコストがかかること、成果が出るまでに時間がかかること、継続的な運用が必要なことは理解しておく必要があります。

YouTubeを始めるかどうかを判断する際は、以下の問いを考えてみてください。

  • 何のためにYouTubeを活用したいのか(目的)
  • 誰に動画を届けたいのか(ターゲット)
  • 継続的に投稿できる体制を整えられるか(リソース)
  • 1年以上の長期的な視点で取り組めるか(時間軸)

次の記事では、YouTubeのユーザー層と視聴傾向について、データをもとに詳しく解説します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。