#20 ノースフェイスが「機能」を選ぶ理由 ── 経営判断としてのデザイン

今日のテーマは「ノースフェイスが『機能』を選ぶ理由──経営判断としてのデザイン」です。 ノースフェイスで30年活躍したパターナー・田巻孝一さんの発信を起点に、フードの「ペロン」と「立っている」の差を生む設計思想を読み解きます。ノースフェイスがヘルメットを想定してフードを大きく作るのは、街でのかっこよさよりも命を守る機能を優先する経営判断。「機能を追うと造形は格好悪くなる」というトレードオフを引き受ける覚悟こそが、ブランドの信頼を形作ると的場さんは語ります。
「すべてを良くしよう」とすると曖昧になるという警鐘も、経営者にとって見逃せない視点。さらに「かっこ悪さ」の正体は「意図のなさ」、人間の清潔感も同じ原理という話に的場さんも同意。「神は細部に宿る」という言葉の本質を、デザインと経営を重ねて考える一本です。
このエピソードで話していること
- ノースフェイスで30年活躍したパタンナー・玉置浩一さんの発信を起点に
- ハイネックに収納されたフードを出すと「ペロン」と垂れる、これが格好悪い
- マウンテンジャケットのフードが立っているのは設計の意図
- ノースフェイスはヘルメットを被る想定でフードを大きく作っている
- 街では格好悪く見える瞬間があっても、命を守る機能を優先する設計判断
- 「機能を追うと造形は格好悪くなりがち」という法則
- 機能美はフォルムの美しさとは別物、生き方や考え方がかっこいいという概念
- 経営判断と同じ:すべてを良くしようとすると曖昧になる
- ノースフェイスは「アウトドア用品メーカー」というアイデンティティを貫く
- どちらを選ぶかの決断がブランドの信頼を形作る
- かっこ悪さの正体は「意図のなさ」、雑然と乱雑にされた状態
- エントロピーの法則:ほっとくと世の中は乱雑な方に向かう
- 整理する意識がかっこよさを分ける、男性の清潔感も同じ原理
- 「神は細部に宿る」、意図された細部こそがかっこよさを生む
こんな方におすすめ
- 自社の製品やサービスの「かっこよさ」を言語化したい
- 機能性とデザインのトレードオフに悩んでいる
- ブランドの一貫性をどう保つか考えている
- 経営判断としてのデザインの本質を理解したい
- ノースフェイスのようなブランドの設計思想に興味がある
この記事からわかるQ&A
「ペロンと垂れたフード」と「立っているフード」の違いはどこから生まれるのですか?
設計者の意図の有無だと的場さんは語っています。ハイネックに収納されているタイプのフードを出すと「ペロン」と垂れて潰れますが、これは収納を優先した結果としてフードを下ろした時のシルエットが意識されていない状態です。一方で、マウンテンジャケットのように襲が立ち、フードを下ろした時にも頭の形が綺麗に残るものは、設計者がフォルムの美しさを意図して作っています。パタンナーの玉置浩一さんが熱心に発信しているのも、こうした「設計の意図」がフォルムの差を生むという話です。
ノースフェイスはなぜフードを大きく作るのですか?
ヘルメットをかぶった状態でもフードをかぶれるように設計しているからだと的場さんは説明しています。ノースフェイスはアウトドア用品メーカーであり、極限状態で命を守る道具としての機能を最優先しているため、必然的にフードが大きくなり、被っていない時にはペチャンと垂れてしまいます。街で着る分には格好悪く見える瞬間があっても、命を守る機能性を優先する──この選択がノースフェイスらしさを形作っています。
「機能美」とフォルムのかっこよさは何が違うのですか?
別物だと的場さんは語っています。機能美は「生き方や考え方がかっこいい」という概念的なもので、ガンダムがかっこいいといった文脈で使われる言葉です。一方、フォルムのかっこよさは形状そのものの美しさを指します。今回のフードの話は後者のフォルムの問題で、機能性を優先したノースフェイスは「フォルムのかっこよさ」を一部捨てている代わりに「機能美」のあるブランドとして信頼を獲得している、という構造になっています。
かっこ悪さの正体は何だと考えればいいですか?
「意図しない動きがそのままにされている雑然とした状態」だと、約紐さんが番組内で仮説を提示し、的場さんも「エントロピーの法則」として同意しています。世の中のものはほっとくと乱雑な方に向かうので、整理しようとする意識がなければ自然に格好悪くなる。逆に、デザイナーが意図して配置・整理した形は綺麗に立ち上がります。男性の清潔感も同じ原理で、剛り残しのある状態は「意識されていない」から格好悪く感じられる、というのが番組内で導かれた結論です。
経営判断とデザインはどう結びつくのですか?
「すべてを良くしようとすると曖昧になる」という構造が共通していると的場さんは語っています。ノースフェイスは「アウトドア用品メーカー」というアイデンティティを貫くために、街でのかっこよさを犠牲にしてでも機能性を選んでいます。この「どちらを選ぶか」という決断こそがブランドの信頼を形作り、結果的にファッション好きにも支持されるブランドになっている──デザインも経営も、すべてを取ろうとせず一方を選ぶ覚悟が、独自の価値を生む点で共通していると説明しています。
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番組情報
デザイン審美眼──社長の第六感をカタチにするデザインの話
タイポグラフィを探求し続けるデザイナー・的場仁利が、デザインの世界で積み上げられてきた「判断の原理」を経営者の言葉に翻訳し、社長の「第六感」を確かな判断軸に変えていくビジネス番組。AIがあらゆる選択肢を出力する時代に、「これは自社に合っているか」を見定める力——それが「デザイン審美眼」。毎週木曜配信。
メインMC

的場仁利
Mat N. Studio代表
https://japan-designers.jp/profile/1453/
タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。
サブMC

纐纈智英
アストライド-Astride- 代表
https://www.ast-ride.com
「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。
番組への感想、MCへのメッセージは以下までお寄せください。
制作
アストライド-Astride-(https://www.ast-ride.com)
サウンドロゴ(クレジットコール):松島史奈
カバーデザイン
的場仁利(Mat N.Studio)
※ この番組は「THE VIOCE PLATFORM」から配信されています。企業の番組参加については こちら
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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