ポッドキャストのユーザー層:「若者だけ」は誤解、企業が知るべき最新データ

, , , ,

この記事でわかること

  • 国内ポッドキャスト利用率の推移と年代別の内訳
  • リスナーに占める決裁権者・就労者の割合
  • 実際のB2B番組で確認されたリスナー属性の傾向
  • 聴取頻度・ながら聴き・番組の長さに関する行動データ
  • 自社ターゲットとの重なりを○△×で判定する方法

アストライドが制作・運営するポッドキャスト番組「デザイン審美眼」のリスナーデータを開いたとき、ある数字が目に留まりました。リスナーの56.2%が45〜59歳。27歳以下は0%。「ポッドキャストは若者のメディア」という前提で企画していたら、この番組は存在していません。

B2B企業がポッドキャストを検討する際、「うちのターゲットは40代・50代の経営層だから、ポッドキャストは向いていない」という判断をよく耳にします。全年代の平均利用率だけを見ていると合理的に聞こえる判断ですが、リスナーの属性データを細かく見ていくと、結論が変わります。

この記事では、国内10,000人規模の調査データと、アストライドが実際に運営する2番組のリスナーデータを突き合わせて、「自社のターゲットにポッドキャストは届くのか」を判断するための材料を提示します。


国内のポッドキャスト利用率は5年間でどう推移したか?

オトナル・朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN」の第1回(2020年)から第6回(2025年12月実施、2026年2月発表)までの推移を見ると、月1回以上ポッドキャストを聴く人の割合は14.2%から18.2%へ拡大しています。

4ポイントの増加を「急成長」と呼ぶかどうかは見方が分かれる数字です。ただし母数は全国15〜69歳の10,000人。18.2%は実数にして推計1,800万人超に相当します。

年代別の利用率は以下の通りです(第6回調査)。

年代月1回以上の利用率B2B文脈での意味
15〜19歳40.5%新卒採用ブランディングの接点
20代28.8%若手ビジネスパーソン層
15〜29歳合算32.3%TVer・TikTokを上回る水準(同年代比較)

若年層の利用率が高いのは事実です。ただし、この表だけでは40代・50代の実態が見えません。全年代平均18.2%の中に、この年代がどの程度含まれているのか——利用率だけでなく、リスナーの属性データに踏み込む必要があります。


リスナーの中に、B2Bの意思決定者はどれだけいるか?

ポッドキャストリスナーの属性には、3つの特徴があります。

第一に、就労者比率が高い。 2021年版の調査によると、ポッドキャストユーザーのフルタイム就労者比率は70.6%。非ユーザーの58.9%を11.7ポイント上回っています。ポッドキャストを聴いている人の7割が働いている——B2Bターゲットとの親和性を示す基礎的な数字です。

第二に、決裁権者の比率が高い。 第3回調査(2022年版)では、ポッドキャストユーザーのうち経営者・役員・管理職が14.9%を占め、非ユーザーの9.6%を5.3ポイント上回りました。第6回調査(2025年12月実施)でもこの傾向は継続し、経営者/役員・管理職の構成比の差は5.2ポイントと報告されています。学生比率も非ユーザーより11.3ポイント高い。ポッドキャストは「経営層と学生が同時に聴いているメディア」という、他にあまり類を見ない属性構成を持っています。

第三に、アストライドの実データがこの傾向を裏付けている。 制作・運営している2つの番組のSpotify for Podcastersデータを確認すると、傾向がより鮮明に見えます。

指標デザイン審美眼(経営者向け)Webマーケティング特捜部(実務者向け)
最多年齢層45〜59歳: 56.2%35〜44歳: 42.3%
性別構成男性75%男性46.5% / 女性41.5%
27歳以下0%

経営者の経営哲学を扱う「デザイン審美眼」では、リスナーの半数以上が45〜59歳。Webマーケティングの実務を扱う「Webマーケティング特捜部」では35〜44歳が最多で、男女比はほぼ拮抗しています。番組のテーマと想定ターゲットが、リスナー属性に直結している。テーマ設計を間違えなければ、届けたい層に届くメディアだということが、この2番組の対比から確認できます。


リスナーは「聴き流す人」か「行動する人」か?

聴取データを見ると、ポッドキャストリスナーの行動パターンには3つの傾向があります。

習慣化している。 第6回調査によると、ユーザーの約4割が週3回以上聴取。15〜19歳に限ると52.3%が週3回以上です。定期的に2〜5番組を聴いているユーザーは前年比5.6ポイント増加しており、複数番組を並行して聴く習慣が広がっています。

ながら聴きが主流を占めている。 同調査で80.8%のユーザーが「ながら聴き」で利用していると回答。通勤、家事、就寝前など、手や目がふさがっている時間に聴取されています。テキストや動画では獲得できない接触時間を、音声が切り開いています。

聴いた内容に基づいて行動する。 66.4%が番組で聴いた情報を検索した経験があり、54.8%が商品購入や場所への訪問経験があると回答しています(第6回調査)。「聴いて終わり」に終わらず、次のアクションにつながる傾向が数字で確認できます。

アストライドの番組データでも、この行動喚起の傾向は確認できます。デザイン審美眼はApple Podcastsからの聴取が39.9%と最も多く、Spotifyリスナーに限って流入経路を見ると78%がSpotify内検索から番組にたどり着いています。Webマーケティング特捜部はSpotifyが40.1%と最多プラットフォームで、Spotifyリスナーの64%が検索流入です。いずれもSpotifyの中での数字ですが、番組名を「指名検索」して聴きに来るリスナーが大半を占めている点が共通しています。両番組ともWeb Browser経由のアクセスが20〜30%あり、これはメルマガやSNS投稿に掲載したリンクからの直接流入を示唆しています。B2Bのニッチ番組は、SNSでのバズよりも、メルマガやQRコードによる直接導線の方が効果的に機能する——番組運営を通じて得た実感です。


番組の長さに対する好みは年代で異なるか?

ポッドキャストの番組尺は、ターゲット年代によって最適解が変わります。

若年層(15〜19歳)は20分未満の短尺コンテンツを好む傾向が確認されています。一方、40代以上のリスナーは40分以上の長尺番組を好む傾向があります。

経営テーマや業界の深掘りは、10分の短尺では表面的な内容にとどまります。30〜45分の尺があれば、ゲストの知見を十分に引き出し、複雑なテーマを順序立てて展開できます。実際、アストライドが制作する「デザイン審美眼」は1エピソード30〜40分の構成で、リスナーの56.2%を占める45〜59歳層から継続的な聴取を得ています。40代以上が長尺を受け入れるというデータは、B2B番組の企画にとって追い風です。

米国のデータも参照します。Edison Research「The Podcast Consumer 2024」(2024年5月発表)によると、週次リスナーの平均聴取時間は週7時間43分、平均エピソード数は週8.3本。日本の聴取頻度はこの水準には達していませんが、週3回以上の習慣的リスナーが約4割存在するという事実は、配信を継続する限りリスナーが定期的に戻ってくることを意味します。


グローバルではリスナー属性にどんな傾向があるか?

米国のデータを参照すると、日本で見られるリスナー属性の傾向がグローバルな潮流と一致していることが確認できます。

Edison Research「The Podcast Consumer 2024」の調査結果です。

指標ポッドキャストリスナー米国全人口
世帯年収7.5万ドル超56%48%
大卒率49%44%

年齢層別の月次聴取率を見ると、35〜54歳が55%で、12〜34歳の59%と大きな差がありません。米国ではポッドキャストはすでに「若者のメディア」を超え、ミドル層にも広く浸透したメディアになっています。

日本の18.2%という利用率は、米国の水準と比較すると成長初期段階です。裏を返せば、リスナーの質——就労者比率、決裁権者比率、行動喚起率——が高い今の段階で参入することは、競合が少ない中でターゲットとの接点を確保できることを意味します。


自社ターゲットにポッドキャストは届くか?——○△×で判定する

ここまでのデータを使って、自社のターゲットペルソナとポッドキャストリスナーの属性を突き合わせる方法を提示します。

以下の3項目を自社のターゲットに当てはめ、○△×で判定してみてください。

項目1: ターゲットの年齢層

  • ○: 35〜59歳が中心 → デザイン審美眼の事例で45-59歳が56.2%、米国でも35-54歳が55%の聴取率。データ上の合致が確認できる
  • △: 20代が中心 → 利用率28.8%。一定のリーチはあるが、母数が限られる
  • ×: 60代以上が中心 → 国内調査の対象は15〜69歳。69歳超は調査対象外で判断材料が不足している

項目2: ターゲットの職位・意思決定権限

  • ○: 経営者・管理職がメインターゲット → 決裁権者比率が非ユーザーより5.2pt高い。デザイン審美眼では経営者層が過半数を占める
  • △: 中堅実務者がメインターゲット → Webマーケティング特捜部の事例で35-44歳が42.3%。テーマ設計次第でリーチ可能
  • ×: 新入社員・アルバイト層がメインターゲット → 就労形態データとの合致が弱い

項目3: 期待するリスナー行動

  • ○: 検索・問い合わせにつなげたい → 66.4%が検索経験あり。デザイン審美眼ではSpotifyリスナーの78%が番組名の指名検索で流入
  • △: ブランド認知を高めたい → ながら聴き80.8%で接触時間は長いが、認知効果の定量測定が困難
  • ×: 即時の大量リーチが必要 → 利用率18.2%はテレビやYouTubeと比較すると母数が限定的

○が2つ以上であれば、ポッドキャストをB2Bマーケティングのチャネルとして検討する根拠があります。△が多い場合は、番組テーマと配信導線の設計を慎重に行うことが前提です。×が2つ以上であれば、現時点では他のメディアを優先した方が合理的です。

ポッドキャストリスナーは「意欲的な情報収集層」であり、B2Bの意思決定者を含む確率はSNS経由のリーチより高い。ただし、日本の利用率18.2%は「まだニッチ」であり、リーチの絶対量は期待できません。この両面を見た上で、自社にとっての優先度を判断してください。


まとめ

ポッドキャストリスナーの実像は、「若者中心」という一般的なイメージとは異なります。就労者比率70.6%(2021年版調査)、決裁権者比率の5.2ポイント差(第6回調査)、検索行動66.4%——これらの数字は、B2Bターゲットとの親和性を具体的に示しています。

一方で、全年代の利用率は18.2%。テレビやYouTubeのようなマスリーチは見込めません。ポッドキャストの価値は「量」より「質」にあり、少数でも意思決定権を持つリスナーに深く届くメディアです。

○△×判定で自社ターゲットとの重なりを確認した上で、ポッドキャストと他のメディア(ブログ・YouTube)をどう使い分けるかが次の論点になります。別コラム「ポッドキャスト vs ブログ vs YouTube」で、3メディアの判断軸を取り上げています。

この記事からわかるQ&A

国内のポッドキャスト利用率はどれくらいですか?

オトナル・朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN」第6回調査(2025年12月実施)によると、全国15〜69歳男女の月1回以上利用率は18.2%です。第1回(2020年)の14.2%から4ポイント拡大しています。

40代・50代のビジネスパーソンもポッドキャストを聴いていますか?

アストライドが運営する経営者向け番組「デザイン審美眼」では、リスナーの56.2%が45〜59歳です。国内調査でもフルタイム就労者比率70.6%(2021年版)、経営者/役員・管理職の構成比が非ユーザーより5.2ポイント高い(第6回調査)というデータが確認されています。

リスナーは聴いた内容に基づいて行動しますか?

第6回調査によると、ユーザーの66.4%が番組で聴いた情報を検索し、54.8%が商品購入・場所訪問の経験があります。アストライドの番組でもSpotifyリスナーの78%が番組名の指名検索から流入しており、能動的な情報収集層がリスナーの中心です。

B2B向けの番組に最適な長さはどれくらいですか?

年代によって好みが分かれます。15〜19歳は20分未満を好む一方、40代以上は40分以上の長尺を好む傾向があります。B2Bテーマの深掘りには30〜45分が適しており、40代以上のターゲットにはこの尺が受け入れられやすいデータです。

自社にとってポッドキャストが合っているかどう判断すればよいですか?

本記事の○△×判定フレームを使ってください。ターゲット年齢層、職位・意思決定権限、期待するリスナー行動の3項目で自社ターゲットと突き合わせ、○が2つ以上ならポッドキャストを検討する根拠があります。

引用・参考資料

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。