YouTube施策の社内稟議を通すコツ|決裁者を説得する方法

この記事でわかること
- 決裁者がYouTube施策に対して抱く4つの懸念と、その解消方法
- 稟議を通すための提案資料の構成と記載すべきポイント
- 「効果が測れない」「炎上が怖い」といった想定質問への具体的な回答例
- 他社事例を活用した説得の進め方
- 小さく始めて成果を見せる「パイロット提案」の考え方
「YouTubeを始めたい」という企画を立てても、社内で承認を得るのは簡単ではありません。
「効果が測れるのか」「炎上したらどうする」「誰が運用するのか」——決裁者からはさまざまな質問が飛んできます。特に、これまで動画マーケティングの経験がない企業では、投資対効果への不安から否決されるケースも珍しくありません。
この記事では、YouTube施策の社内稟議を通すために必要な準備と、決裁者の懸念を解消するための具体的なアプローチを解説します。
決裁者がYouTube施策に対して抱く4つの懸念とは?
YouTube施策の稟議が通らない背景には、決裁者が抱える典型的な懸念があります。これらを事前に把握し、対策を用意しておくことが承認への第一歩となります。
懸念1:効果測定の難しさ
「本当に成果が出るのか」「どうやって効果を測るのか」という点は、最も多く指摘される懸念です。
テレビCMや雑誌広告と異なり、YouTubeでは視聴回数、視聴維持率、クリック数、チャンネル登録者数など、複数の指標をリアルタイムで確認できます。2024年の調査では、動画マーケティングを実施した企業の90%が「良好なROI(投資対効果)を得られた」と回答しています(Wyzowl調べ)。
稟議書には、「何を指標として測定するか」を明記することが重要です。たとえば、「3ヶ月後に動画経由の問い合わせ10件」「6ヶ月後にチャンネル登録者500人」といった具体的な数値目標を設定すると、決裁者も判断しやすくなります。
懸念2:炎上リスクへの不安
「不適切な発言で炎上したらどうする」という懸念も根強くあります。
実際には、企業公式アカウントが炎上するケースは、個人アカウントと比較して少ない傾向にあります。多くの炎上事例は、事前チェック体制の不備や、ソーシャルメディアガイドラインの未整備が原因です。
YouTubeでは「コミュニティガイドライン」が定められており、違反した場合は警告(ストライク)が発行されます。3回のストライクでチャンネルが削除されますが、90日間違反がなければ累積は解除される仕組みです(2025年改定)。
稟議書には、「ソーシャルメディアガイドラインを策定する」「公開前に複数名でチェックする」「コメント管理のルールを設ける」といった対策を記載しておくと、決裁者の不安を軽減できます。
懸念3:運用体制への疑問
「誰が撮影するのか」「編集は内製できるのか」「担当者が辞めたらどうなるのか」という点も、よく挙がる懸念です。
内製か外注かによって対応は異なりますが、いずれの場合も「属人化しない体制」を意識することがポイントです。撮影・編集のマニュアル化、複数名での運用、外注先との役割分担の明確化などを稟議書に盛り込みましょう。
外注を活用する場合は、企画・撮影・編集・投稿・分析までを一貫して任せられる制作会社を選ぶことで、社内リソースの負担を抑えられます。
懸念4:継続期間と撤退基準
「いつまで続けるのか」「やめる判断はどうするのか」という出口戦略も、決裁者が気にするポイントです。
YouTubeは「ストック型メディア」であり、過去の動画が検索経由で継続的に視聴される特性を持っています。そのため、最低でも6ヶ月〜1年は継続して運用することで、効果が見えてくるケースが多いとされています。
稟議書には、「パイロット期間を3〜6ヶ月と設定し、設定した指標に基づいて継続・中止を判断する」といった撤退基準を明記しておくと、決裁者も安心して承認できます。
稟議書に記載すべき5つの項目とは?
YouTube施策の稟議書を作成する際は、以下の5項目を網羅することが基本です。
項目1:目的
「なぜYouTubeを始めるのか」を明確に記載します。採用強化、認知拡大、問い合わせ獲得など、自社の経営課題と紐づけて説明することが重要です。
「動画が流行っているから」ではなく、「採用サイトの応募数が前年比20%減少しており、求職者接点を増やすためにYouTubeを活用したい」といった形で、課題起点の説明を心がけましょう。
項目2:施策概要
「何をするのか」を具体的に記載します。チャンネルのコンセプト、想定するコンテンツの種類、投稿頻度、運用体制などを明示します。
たとえば、「製造工程の紹介動画を月2本投稿」「社員インタビューを月1本投稿」といった形で、具体的なイメージを持てる記載が望ましいでしょう。
項目3:費用
「いくらかかるのか」を明確に記載します。内製の場合は機材費や人件費、外注の場合は制作費や運用代行費を、初期費用と月額費用に分けて記載しましょう。
2024年の調査によると、日本企業のマーケティング予算は企業収益の約9.2%を占めており、60%の企業がマーケティング予算を増加させる予定と回答しています(Nielsen調べ)。動画広告市場も2024年に7,249億円(前年比115.9%)に達しており、企業の動画活用は拡大傾向にあります(サイバーエージェント調べ)。
このような市場動向を稟議書に記載することで、「自社だけが取り組むわけではない」という安心材料を提供できます。
項目4:期待効果
「どのような成果が見込めるのか」を記載します。ただし、根拠のない数値は避け、「〜の可能性がある」「〜を目指す」といった表現を用いましょう。
定量的な指標(視聴回数、問い合わせ数など)と定性的な効果(ブランドイメージ向上、採用における差別化など)の両方を記載することで、多角的な価値を伝えられます。
項目5:リスクと対策
「どのようなリスクがあり、どう対処するか」を記載します。炎上リスク、運用リソース不足、成果が出ない場合の対応などを、それぞれ対策とセットで示しましょう。
リスクを隠すのではなく、「リスクを認識した上で対策を講じている」という姿勢を見せることが、決裁者の信頼を得るポイントです。
決裁者からの想定質問にどう答えるか?
稟議の場では、さまざまな質問が飛んできます。代表的な質問と回答例を紹介します。
「再生回数が少なかったらどうする?」
BtoB企業のYouTube活用では、再生回数よりも「誰に見られたか」が重要です。たとえば、300回の再生でも、そのうち1件が商談につながれば十分な成果といえます。
回答例:「再生回数は参考指標として見つつ、主たるKPIは動画経由の問い合わせ数や商談化率に設定します。BtoB領域では、量より質を重視した運用を行います。」
「他社はどうしているのか?」
BtoB企業でYouTubeを活用している事例は増えています。
たとえば、クラウド会計ソフトのfreee株式会社は、操作方法の解説動画と会計基礎知識の発信でチャンネル登録者約4万人を獲得しています。中小企業向けには、kintone(業務改善プラットフォーム)の活用術を発信するコムデック社が、YouTube経由で問い合わせ増大と採用力向上を実現した事例もあります。
回答例:「BtoB企業でもfreee、サイボウズ、コムデックなど、YouTube活用で成果を上げている企業があります。同業他社の事例も調査しており、参考にしながら運用します。」
「炎上したらどう責任を取る?」
炎上リスクへの対策を具体的に説明しましょう。
回答例:「公開前に複数名でのチェックを義務化し、ソーシャルメディアガイドラインを策定します。万が一問題が発生した場合は、迅速な削除と対応フローに従って対処します。また、コメント欄の管理ルールも事前に定めておきます。」
「すぐに効果は出るのか?」
YouTubeはストック型メディアであり、即効性よりも中長期的な効果を期待する施策です。
回答例:「即効性という点ではWeb広告に劣りますが、YouTubeは過去の動画が資産として蓄積され、検索経由で継続的に視聴される特性があります。6ヶ月〜1年をかけて効果を検証する計画です。」
「小さく始める」パイロット提案の有効性とは?
いきなり年間予算を要求するのではなく、まずは「パイロット(試験運用)」として小規模に始める提案が有効です。
パイロット期間の設定
3〜6ヶ月程度のパイロット期間を設け、その間に設定した指標を検証します。成果が見えれば本格運用に移行し、想定を下回れば撤退または見直しを行う——この「段階的アプローチ」は、決裁者にとってもリスクが限定されるため、承認を得やすくなります。
最小限の予算で検証
パイロット期間中は、外注費を抑えるために一部内製で対応したり、投稿本数を絞って運用したりする方法もあります。「まずは3本の動画で反応を見る」といった小規模スタートであれば、承認のハードルは下がります。
成果の見せ方
パイロット期間終了後は、視聴データや問い合わせ数などの実績をまとめ、「継続する根拠」を示します。数字で成果を見せることで、次の予算確保につなげやすくなります。
まとめ
YouTube施策の社内稟議を通すためには、決裁者の懸念を事前に把握し、一つひとつに対策を用意しておくことが重要です。
効果測定の方法、炎上リスクへの対策、運用体制、撤退基準——これらを稟議書に明記し、想定質問への回答を準備しておけば、承認を得られる可能性は高まります。
いきなり大きな予算を求めるのではなく、「パイロット期間を設けて小さく始める」という提案も有効です。まずは限定的な範囲で成果を出し、実績をもって次の投資につなげていく。そうした段階的なアプローチが、社内説得を成功させる鍵となります。
この記事からわかるQ&A
稟議書に記載すべき必須項目は何ですか?
目的、施策概要、費用、期待効果、リスクと対策の5項目です。特にリスクと対策をセットで記載することで、決裁者の懸念を軽減できます。
効果測定はどのような指標で行うべきですか?
視聴回数、視聴維持率、チャンネル登録者数といったYouTube上の指標に加え、動画経由の問い合わせ数や商談化率など、ビジネス成果に直結する指標を設定することが推奨されます。
炎上リスクへの対策として何を記載すべきですか?
公開前の複数名チェック体制、ソーシャルメディアガイドラインの策定、コメント管理のルール設定、問題発生時の対応フローなどを記載しましょう。
BtoB企業でもYouTubeは効果がありますか?
再生回数が少なくても、ターゲット層に届いていれば効果があります。freee、サイボウズ、コムデックなど、BtoB企業でYouTube活用に成功している事例も増えています。
パイロット期間はどのくらいが適切ですか?
3〜6ヶ月程度を目安に設定し、その期間で設定した指標を検証します。成果が見えれば本格運用へ移行し、想定を下回れば撤退または見直しを判断するという段階的アプローチが有効です。
引用・参考資料
- Wyzowl「Video Marketing Statistics 2024」
- Nielsen「Annual Marketing Report 2024」
- サイバーエージェント「2024年国内動画広告の市場調査」
- 矢野経済研究所「動画コンテンツビジネス市場に関する調査(2025年)」
- YouTube クリエイターアカデミー「コミュニティガイドライン」
- freee株式会社 公式YouTubeチャンネル
- 株式会社コムデック YouTube活用事例
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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