Gong 氏が、2023年に結果を発表しています。掲載は Frontiers in Psychology 第14巻1243078番です。対象は中国語のニュースで、研究チームは脳波と事象関連電位を測りました。予備の実験は同一参加者10人、本実験は30人です。各クリップは30秒で、AIと人間はいずれも女性の声です。
別の実験では、逆の方向の結果も出ています。ドー、マクマハン、ウィスニェフスキの3氏が2022年に CHI で発表した実験では、参加者79人を3条件(標準的な合成音声・ニューラル合成音声・人の声)に割り当てました。ニューラル合成音声の仮想人物は、人の声の条件より有意に低い信頼性を示しました。忠実度を上げたことが、評価を悪化させた例にあたります。
文学の朗読では、差がほとんど出ない
用途によって結果が変わることを示す研究もあります。
Ahrens-Schwabe、Kosch、Stocker、Boomgaarden の研究チームが、2026年に結果を発表しています。掲載は Computers in Human Behavior Reports 第22巻101068番で、オーストリアの研究計画によるものです。
聴き手がその声を知っている場合、評価が下がる可能性があります。Rosi ほか(2025、Computers in Human Behavior: Artificial Humans 4巻100143、N=94)では、声を知っている参加者ではクローンの信頼性・魅力・有能さが実際の声より低いか同程度でした。社員や取引先は経営者の声をすでに知っていますので、複製が不利に働きやすい条件にあたります。
「不気味の谷」は音声でも起きますか
まだ確かめられていません。Ross ほか(2024、Speech Prosody 2024、1115〜1119頁、N=205)では、最も人らしい合成音声でも人らしさの平均が100点中46.1にとどまりました。谷を検証できるほど人らしい音声が用意できなかった、という結果です。一方で Do ほか(2022、CHI、N=79)では、ニューラル合成音声が人の声より有意に低い信頼性を示しています。
AIを使ったと表示すべきですか
Hebbel-Seeger (2026、Athens Journal of Mass Media and Communications、N=60)では、AIだと知らされた群のほうが「事実を自分で確かめる必要がある」と感じる度合いが低くなりました(U=262.0, p=.038, r=.280)。表示することで読者の警戒が緩む可能性がありますので、表示だけで済ませず、内容の裏づけを別に取ってください。ただし4つの検定のうち有意だったのは1件で、著者も追試の必要を述べています。
出典
Schanke, S., Burtch, G., & Ray, G. (2026). “Digital Lyrebirds: Experimental Evidence That Voice-Based Deep Fakes Influence Trust.” *Management Science*, 72(1), 386–405. 投資ゲームを使う統制実験、米国のオンライン成人標本。参加者本人のクローン声を持つエージェントは比較条件より有意に高い信頼を得た。AI開示は信頼上昇を有意に弱めず、効果の一部は「自分と似ている」感覚で説明され、音質が高いほど強まった https://doi.org/10.1287/mnsc.2022.03316
Barrington, S., Cooper, E., & Farid, H. (2025). “People are poorly equipped to detect AI-powered voice clones.” *Scientific Reports*, 15, 11004. 米国英語話者の録音を ElevenLabs で複製。話者同一性判断 n=304、人声・AI判断 n=300、計 N=604、Prolific 標本。クローンと元話者を同一人物と判断した割合は約80%、AI音声を見抜く率は約60%、人声の正答は約67% https://doi.org/10.1038/s41598-025-94170-3
Rosi, V., Soopramanien, & McGettigan, C. (2025). “Perception and social evaluation of cloned and recorded voices: Effects of familiarity and self-relevance.” *Computers in Human Behavior: Artificial Humans*, 4, 100143. 友人ペアの実声とクローンを比較。声を知る47人と知らない統制群47人、計 N=94、英国の成人英語話者。知人の声ではクローンの評価が低いか同程度、未知の声では逆転 https://doi.org/10.1016/j.chbah.2025.100143
Gong, X. (2023). “AI voices reduce cognitive activity? A psychophysiological study of the media effect of AI and human newscasts in Chinese journalism.” *Frontiers in Psychology*, 14, 1243078. 中国語ニュース、脳波と事象関連電位を測定。予備実験 n=10、本実験 N=30、各クリップ30秒。人声はAI声より信頼 t(9)=-4.00, p=.003, d=-1.265、聞きやすさ t(9)=-3.873, p=.004, d=-1.225 が高い。理解可能性は有意差なし https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1243078
Ross, J., Corley, M., & Lai, C. (2024). “Is there an uncanny valley for speech? Investigating listeners’ evaluations of realistic synthesised voices.” *Speech Prosody 2024*, 1115–1119. 同一女性話者のデータから作った5段階の合成音声と本人の声、N=205、Prolific の英語使用者。人らしさと快さは r(203)=.48, p<.001。最も人らしい合成音声でも人らしさ平均は46.1/100 https://doi.org/10.21437/SpeechProsody.2024-225
Do, T., McMahan, R. P., & Wisniewski, P. J. (2022). “A New Uncanny Valley? The Effects of Speech Fidelity and Human Listener Gender on Social Perceptions of a Virtual-Human Speaker.” *CHI ’22*. 3(標準合成音声/ニューラル合成音声/人の声)×2(聴取者性別)の被験者間実験、N=79、米国。ニューラル合成音声は人の声より有意に低い信頼性 https://doi.org/10.1145/3491102.3517564
Ahrens-Schwabe, Kosch, Stocker, & Boomgaarden (2026). “Who cares about artificial intelligence? Human and artificial voices in audiobooks.” *Computers in Human Behavior Reports*, 22, 101068. オーディオブック聴取者に文学作品の抜粋をAI声またはプロ声優の人声で提示。オーストリアの研究計画。AI対人声の評価差はごく小さく、期待も評価差を有意に調整しなかった。公開概要に標本数・平均差・効果量の記載なし https://doi.org/10.1016/j.chbr.2026.101068
Hebbel-Seeger, A. (2026). “Voices of Authority?! Trust in Human and AI-Generated Educational Podcasts.” *Athens Journal of Mass Media and Communications*. 同一のAI生成教育ポッドキャストを、AI生成と明示する群と出所情報なしの群へ提示。被験者間の準実験、N=60、ドイツ、刺激5分28秒。AI明示群は事実確認の必要性を低く感じた(U=262.0, z=-2.079, p=.038, r=.280)。4検定中の有意結果は1件 https://www.athensjournals.gr/ajmmc