A5の中の最高峰を、世界のスパイスで——西澤シェフが届ける「垣根のない鉄板焼き」

三重県松阪市に、不定期で開かれる12席限定の食のイベントがあります。「twlv club」と名付けられたこの空間は、毎回異なるシェフを招き、一夜限りのコースを提供する実験的なキッチンスタジオです。

2024年4月、この特別な空間に招かれたのは、四日市市の鉄板焼き店「ステーキ ベンガル」のオーナーシェフ・西澤佳紀氏でした。テーマは「世界を巡る晩餐会」。A5最高級ランクの松阪牛を、世界各国のスパイスや食材と組み合わせるという挑戦的なコースが披露されました。


「鉄板焼きには固定概念がない」——ジャンルを超える自由

西澤シェフは、鉄板焼きというスタイルの特性をこう語ります。

「鉄板焼きはフレンチとか和食っていう固定概念がないので、じゃあもう世界中と10カ国以上の食材を使って、他の方がやらなそうなことをやりたいと」

フレンチには伝統があり、和食には作法がある。しかし鉄板焼きは、そうした枠組みに縛られない。その自由さを最大限に活かし、ジャンルの垣根を取り払ったスタイルを追求しています。


A5の中の最高峰——意外と知られていないランクの世界

松阪牛のA5ランクといえば、最高級の代名詞です。しかし西澤シェフは、さらにその先があることを教えてくれます。

「意外に知られてないですけど、A5って言ってもA5の中でランクがあるので、それの1番上のやつをたまたま譲っていただいて」

A5の中にも格付けがある。その最高峰を仕入れることができたからこそ、今回のイベントが実現しました。「日本のお肉のあれだけの素晴らしいものはやはり世界にはない」と西澤シェフは語ります。


20年もののバルサミコ、東南アジアのスパイス——世界の食材との融合

最高級の松阪牛を、どう味わうか。西澤シェフの答えは、世界各国の食材との組み合わせでした。

「普通通常だと使えないような20年もののバルサミコ買ってみたりとか、こだわりのある醤油とかわさびとかっていうもので食べていただいたり、東南アジアで取れるスパイスを一緒に添えて食べていただいたり」

和の調味料だけでなく、イタリアのバルサミコ、アジアのスパイス。世界中の食材を駆使して、松阪牛の新しい楽しみ方を提案しています。


「いいもの出したら食いついてくれる」——twlvで学ぶ面白さ

西澤シェフにとって、twlvは学びの場でもあります。

「やっぱりちゃんといいもの出したら、ここに食いついてくれるんだっていう面白さはやっぱり学べるので」

限られた12席のゲストは、食に対する感度が高い。本物を提供すれば、それに応えてくれる。その手応えが、シェフとしての成長につながっています。


「美味しかっただけじゃなくて、楽しかった」——演出への想い

西澤シェフが大切にしているのは、食事の「体験」としての価値です。

「特別な空間でありながら、食の楽しみ方なり、そこにもう1手間なり演出なりで、美味しかっただけじゃなくて、楽しかったとか人に言いたくなるような演出をできればなと思ってます」

美味しい料理を提供するだけでは足りない。楽しかった、面白かった、誰かに話したくなった。そう思ってもらえる演出を加えることで、食事は記憶に残る体験になります。


「自分がかしこまりすぎずに楽しむこと」

西澤シェフは、料理人としての姿勢をこう語ります。

「まずはお客さんを楽しませるために自分がかしこまりすぎずに楽しむことかなっていうのは思ってます」

シェフ自身が楽しんでいなければ、その楽しさはゲストには伝わらない。堅苦しくならず、自分自身が料理を楽しむ。その姿勢が、場の空気を和らげ、ゲストの体験をより豊かなものにしています。


アストライドのミッション

「美味しかっただけじゃなくて、楽しかったと人に言いたくなる」

西澤シェフのこの言葉に、私は深く共感しました。

食事も映像も、体験として記憶に残ることが本質的な価値です。誰かに伝えたくなる、共有したくなる。そう思ってもらえるものを届けること。それは、私がインタビュー映像を通じて目指していることと重なります。

私はこれまで、200社以上の経営者インタビューに携わる中で、さまざまな「想い」に触れてきました。twlvという空間で繰り広げられる一夜限りの饗宴もまた、シェフと主催者の想いが凝縮された表現の場です。

本映像では、西澤シェフの料理に対する姿勢——ジャンルの垣根を取り払う自由さ、最高級の素材へのこだわり、そして「楽しかった」と言ってもらうための演出への想い——が、調理の手元や語りの表情を通じて伝わってきます。

アストライドは、こうした「想い」を映像として記録し、より広く届けることに取り組んでいます。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。