ポッドキャストで「専門性」を確立する:業界内でのオピニオンリーダーシップ

この記事でわかること
- オピニオンリーダーシップとは何か、なぜ重要なのか
- ポッドキャストが専門性確立に向いている理由
- テーマとポジショニングの設計方法
- 継続的な発信がもたらす「蓄積効果」の価値
- 権威性を高めるゲスト戦略の実践方法
「○○の分野といえば、あの会社」——そう真っ先に思い浮かべてもらえる存在になることは、多くの経営者が望むポジションです。
しかし、広告費をかけて認知を広げても、それだけでは「第一想起」を獲得することは難しい。重要なのは、業界内で「この人(この会社)の意見を聞きたい」と思われる存在、つまりオピニオンリーダーとしてのポジションを確立することです。
本記事では、ポッドキャストを活用して専門性と権威性を確立し、業界内でのプレゼンス向上を実現する方法を解説します。
オピニオンリーダーシップとは何か?
「業界の第一想起」を獲得する
オピニオンリーダーとは、特定の分野において高い影響力を持ち、他者の意思決定や行動に影響を与える人物や組織を指します。単なる「有名人」や「発信量が多い人」ではなく、専門的な知識や経験に基づいて独自の見解を形成し、周囲から信頼される情報源として認知されている存在です。
マーケティングの文脈では、オピニオンリーダーは新しい商品やサービスをいち早く取り入れ、その評価を発信することで、後続の購買者(フォロワー)の意思決定に影響を与える「アーリーアダプター」として位置づけられています。
B2Bビジネスにおいては、オピニオンリーダーシップの価値はさらに大きくなります。企業間取引では、「この分野の専門家として信頼できるか」という評価が、取引先選定や提携先決定の重要な判断基準となるためです。
なぜ今、オピニオンリーダーシップが重要なのか
国際社会経済研究所(IISE)の調査によると、ソートリーダーシップ(Thought Leadership:革新的な考えを世の中に提示し、共感によりステークホルダーを共創へ誘引するマーケティング手法)の認知度は現時点で約10%にとどまりますが、その内容を具体的に理解している人の割合は約6割と高い水準にあります。
つまり、オピニオンリーダーシップを意識的に実践している企業はまだ少数派であり、今から取り組めば先行者優位を確保できる可能性があるということです。
なぜポッドキャストは専門性確立に有効なのか?
深い議論ができるフォーマット
ポッドキャストが専門性の確立に向いている理由は、そのフォーマットの特性にあります。
オトバンク社の調査によると、マーケティング担当者がポッドキャストの魅力として挙げた上位項目は「深い内容や専門的なテーマを扱える」(37.5%)、「リスナーとの長期的な関係構築が可能」(36.6%)でした。
ブログ記事やSNS投稿では、複雑なテーマを十分に掘り下げることが難しい。動画は情報量が多すぎて、視聴者が内容に集中しにくい面があります。一方、ポッドキャストは30〜40分という長時間の番組でも高い聴取率(70〜80%)を維持できるため、専門的なテーマを深く議論するのに適したメディアです。
アドビ社でポッドキャスト番組を運営する担当者は、「人の肉声には説得力があり、想いや感情をリアルに伝えられます。音声だけのポッドキャストは、話している内容に集中できます」と、その効果を説明しています。
検索では見つからない知見の提供
ポッドキャストのもう一つの強みは、「検索では見つからない知見」を提供できる点です。
インターネット上の情報は、検索エンジンを通じて誰でもアクセスできます。しかし、経験に基づく洞察、業界の暗黙知、実務で得た教訓といった「暗黙知」は、検索では見つかりません。
ポッドキャストは、こうした暗黙知を音声で伝えるのに適したメディアです。話し言葉だからこそ表現できるニュアンスや、対談形式だからこそ引き出せる本音があり、それがリスナーにとっての「ここでしか聞けない価値」となります。
B2Bとの相性の良さ
B2Bビジネスにおいて、ポッドキャストは特に有効なツールです。その理由は以下の3点に集約されます。
1. 意思決定者へのリーチ
ポッドキャストリスナーには、学習意欲が高く、業界情報を積極的に収集するビジネスパーソンが多く含まれます。つまり、企業の意思決定に関わる層にダイレクトにリーチできます。
2. 長期的な関係構築
B2B取引は、1回の接触で成約するものではありません。定期的なポッドキャスト配信を通じて、見込み顧客との接点を継続的に維持し、信頼関係を構築できます。
3. 専門性の証明
製品やサービスの機能説明ではなく、業界の課題や解決策について深い議論を展開することで、「この分野に詳しい会社」という認識を醸成できます。
テーマとポジショニングはどう設計すればよいか?
ニッチを狙う重要性
ポッドキャストで専門性を確立するためには、テーマ設定が極めて重要です。ここで陥りがちな罠は、「幅広いテーマを扱えば、より多くのリスナーを獲得できる」という考え方です。
実際には、その逆が正しい。テーマを絞り込むほど、「この領域ならこの番組」という認知を獲得しやすくなります。
ニッチなテーマ設定のメリット:
| メリット | 具体例 |
|---|---|
| 競合が少ない | 「製造業のDX」より「金属加工業の生産管理システム」 |
| 専門性が際立つ | 広く浅い内容より、特定領域の深い洞察 |
| リスナーの熱量が高い | 一般論を求める人より、特定の課題を持つ人 |
| ゲストを呼びやすい | 同じ専門領域の人は相互に関心がある |
「この領域ならこの番組」を設計する
テーマを設計する際のフレームワークとして、以下の3つの軸で考えることが有効です。
軸1:自社の専門性
自社が最も詳しい領域、独自のノウハウを持つ領域は何か。競合他社と比較して、圧倒的に語れるテーマを特定します。
軸2:ターゲットの課題
想定するリスナー(見込み顧客)が抱えている具体的な課題は何か。彼らが「知りたい」と思っている情報を把握します。
軸3:競合の空白地帯
すでにポッドキャストが存在する領域でも、特定の切り口や視点が手薄な部分がないかを探します。
これら3つの軸が重なる領域が、自社が取り組むべきポッドキャストのテーマとなります。
ポジショニングの言語化
テーマが決まったら、番組のポジショニングを明確に言語化します。
ポジショニングステートメントの例:
「[ターゲット]が抱える[課題]に対して、[自社の強み・視点]から[提供する価値]を届ける番組」
例えば、「中小製造業の経営者が抱える技術伝承の課題に対して、現場取材で得た知見から、明日から使える実践的なヒントを届ける番組」といった形で言語化します。
このステートメントは、番組の企画段階だけでなく、毎回のエピソード制作においても指針として機能します。
継続的な発信がもたらす「蓄積効果」とは?
継続的な発信がもたらす複利効果
ポッドキャストの大きな特徴は、過去のエピソードがアーカイブとして蓄積され、長期間にわたって価値を提供し続ける点です。これは、タイムラインを流れていくSNS投稿とは根本的に異なる性質です。
蓄積効果の具体例:
- エピソード10本: 番組の方向性が見え始める
- エピソード30本: 特定テーマの網羅性が高まる
- エピソード50本: 「この分野の参照先」として認知され始める
- エピソード100本: 業界の「定番番組」としてのポジションを確立
100エピソードに到達した番組は、それ自体が一種の「専門書」のような存在となります。新規リスナーが過去のエピソードを遡って聴取することで、番組への信頼と理解が深まり、ファン化していきます。
蓄積を前提とした番組設計
この蓄積効果を最大化するためには、番組設計の段階から「長期的な視点」を持つことが重要です。
設計のポイント:
1. エバーグリーンコンテンツを意識する
時事ネタだけでなく、数年後も価値が変わらない普遍的なテーマを織り交ぜます。業界の基礎知識、原則論、考え方のフレームワークなどは、長期間にわたって聴取されます。
2. シリーズ化・体系化を意識する
単発のエピソードを積み重ねるだけでなく、テーマごとにシリーズ化することで、リスナーが体系的に学べる構成を作ります。
3. アーカイブへの導線を設計する
新規リスナーが過去エピソードにアクセスしやすいよう、「初めての方へ」「人気エピソードまとめ」などの入口を用意します。
ゲスト戦略で権威性を高めるにはどうすればよいか?
ゲスト出演の3つの効果
ポッドキャストにゲストを招くことは、専門性と権威性を高める上で効果的な戦略です。ゲスト戦略には、主に3つの効果があります。
効果1:権威の借用
業界で著名な専門家や経営者をゲストに招くことで、その人物の権威性が番組に「転移」します。「あの人が出演している番組」という認知は、番組全体の信頼性を高めます。
効果2:コンテンツの多様化
自社の視点だけでは得られない知見やエピソードを、ゲストから引き出すことができます。これにより、番組の内容が充実し、リスナーにとっての価値が高まります。
効果3:相互送客
ゲストが自身のSNSやメールマガジンで出演告知をすることで、ゲストのフォロワーに番組を知ってもらえます。双方にとってメリットのある「相互送客」が実現します。
効果的なゲスト選定の基準
ゲストを選定する際には、以下の基準を参考にしてください。
| 基準 | 確認ポイント |
|---|---|
| 専門性の合致 | 番組のテーマ領域において、深い知見を持っているか |
| 発信力 | 自身のフォロワーやオーディエンスを持っているか |
| 対話適性 | 音声メディアでの対話に適したコミュニケーションができるか |
| 相互補完性 | ホストとは異なる視点や経験を提供できるか |
ゲストとの対話で専門性を引き出す
ゲストを招いた際に重要なのは、「ゲストの話を聞く」だけでなく、「対話を通じて新しい洞察を引き出す」ことです。
効果的な対話のポイント:
1. 事前準備を徹底する
ゲストの著書、過去の講演、SNSでの発言などを事前にリサーチし、表面的な質問ではなく、深い議論ができる準備をします。
2. 「なぜ」を掘り下げる
ゲストの発言に対して「なぜそう考えるのか」「どのような経験からその結論に至ったのか」を掘り下げることで、リスナーにとって価値のある洞察を引き出せます。
3. ホストの意見も提示する
一方的なインタビューではなく、ホスト自身の見解も提示しながら対話することで、議論が深まり、番組としての専門性も示すことができます。
まとめ
ポッドキャストは、業界内でのオピニオンリーダーシップを確立するための有効な手段です。深い議論ができるフォーマット、検索では見つからない知見を提供できる特性、そしてコンテンツが蓄積されていく性質——これらの特徴を活かすことで、「この分野ならこの会社」というポジションを獲得できます。
実践のための3つのステップ:
- テーマを絞り込む: 幅広く浅くではなく、狭く深く。自社の専門性、ターゲットの課題、競合の空白地帯が重なる領域を見つける
- 継続を前提に設計する: 100エピソードの蓄積を見据え、エバーグリーンコンテンツを意識した番組設計を行う
- ゲスト戦略を活用する: 権威の借用、コンテンツの多様化、相互送客の効果を狙い、戦略的にゲストを招く
マーケティング担当者の76%がポッドキャストを認知している一方、企業のマーケティング活動における活用率は12.8%にとどまっているという調査結果があります。今はまだ、ポッドキャストを活用した専門性確立に取り組んでいる企業は少数派です。
だからこそ、今から取り組めば先行者優位を確保できる可能性があります。自社の専門領域で「第一想起」を獲得するための第一歩として、ポッドキャストの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事からわかるQ&A
オピニオンリーダーシップとは何ですか?
特定の分野において高い影響力を持ち、他者の意思決定や行動に影響を与える人物や組織を指します。単なる「有名人」や「発信量が多い人」ではなく、専門的な知識や経験に基づいて独自の見解を形成し、周囲から信頼される情報源として認知されている存在です。B2Bビジネスでは、取引先選定や提携先決定の重要な判断基準となります。
なぜポッドキャストは専門性の確立に向いているのですか?
主に3つの理由があります。①深い議論ができるフォーマット:30〜40分の番組でも70〜80%の聴取率を維持でき、専門的なテーマを深く議論できます。②検索では見つからない知見を提供できる:経験に基づく洞察や業界の暗黙知を、話し言葉ならではのニュアンスで伝えられます。③B2Bとの相性の良さ:意思決定者へのリーチ、長期的な関係構築、専門性の証明が可能です。
ポッドキャストのテーマ設定で重要なポイントは何ですか?
「ニッチを狙う」ことが重要です。幅広いテーマを扱うより、テーマを絞り込むほど「この領域ならこの番組」という認知を獲得しやすくなります。具体的には、①自社の専門性、②ターゲットの課題、③競合の空白地帯、の3つの軸が重なる領域を見つけることが有効です。
継続的な発信がもたらす「蓄積効果」とは何ですか?
過去のエピソードがアーカイブとして蓄積され、長期間にわたって価値を提供し続ける効果です。エピソード100本に到達した番組は「専門書」のような存在となり、業界の「定番番組」としてのポジションを確立できます。蓄積効果を最大化するには、エバーグリーンコンテンツを意識し、シリーズ化・体系化を進めることが重要です。
ゲスト戦略にはどのような効果がありますか?
主に3つの効果があります。①権威の借用:著名な専門家をゲストに招くことで、その権威性が番組に転移します。②コンテンツの多様化:自社の視点だけでは得られない知見やエピソードを引き出せます。③相互送客:ゲストのフォロワーに番組を知ってもらえ、双方にメリットがあります。
引用・参考資料
- オトバンク「ポッドキャストに関する調査」(2024年10月)マーケティング担当者300人対象
- 国際社会経済研究所(IISE)「マーケティング課題とソートリーダーシップの実態調査」(2024年)
- PitPa「企業ポッドキャストの可能性を探る」日本のポッドキャスト月間アクティブリスナー約1,680万人(2023年12月時点)
- Web担当者Forum「アドビがマーケター向けポッドキャストを配信中!」(2024年4月)
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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