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取引先と年1回しか会わない。この間隔を月1回に変える方法

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この記事でわかること

  • 接触の回数が満足度を変えていないという実測
  • 有意に働いたのはどういう接触だったか
  • 広く流通する「無関心68%」の数字の扱い
  • 新規獲得と維持のコスト比の正しい読み方
  • 月1回の接点を作る具体的な形

長く続いている取引先ほど、会う回数が減っていきます。納品が安定し、担当者どうしのやりとりがメールで済むようになると、顔を合わせる場面は年1回の挨拶だけになります。

この状態を変えようとするとき、多くの会社が最初に考えるのは接触の回数を増やすことです。ところが、回数そのものは満足度を変えていないという研究があります。有意に働いていたのは、回数よりも接触の中身のほうでした。

この記事では、その研究の中身を数値つきで並べます。あわせて、この領域で広く引用されている数字のうち、一次資料を確認できないものについても明記しておきます。


接触の回数そのものは、満足度を変えていなかった

延世大学のリア・ジョンと済州大学のソルウ・パクは、2020年に企業からの接触と顧客満足の関係を調べた研究を発表しています。

対象は韓国のサービス利用者199名です。銀行、保険、クレジットカード、百貨店などで、直近6か月以内に企業から関係構築のための接触を受けた人が集められました。

出てきた結果は、素朴な予想とは違うものになりました。

経路係数有意かどうか
接触頻度 → 企業への満足(直接)β = −.006(95% CI −.093〜.080)有意でない
接触頻度 → 担当者への満足 → 企業への満足β = .165(95% CI .056〜.276)有意

接触の回数が企業への満足へ直接つながる経路は、統計的に確かめられませんでした。一方で、担当者への満足を経由する間接的な経路のほうは有意に働いています。

有意に働いたのは、個別性のある対話だけだった

同じ研究では、接触の種類ごとの分析も行われています。

電話や対面といった個人的な接触では、回数が担当者への満足を高める経路が有意でした(β = .197, p < .01)。企業への満足への経路も有意です(β = .182, p < .05)。

これに対して、一斉メールのような非個人的な接触では、どちらの経路も有意になりませんでした。

つまり、月に1度のニュースレターを送り続けても、この研究の枠組みでは満足度に届きません。届いていたのは、担当者が相手の状況に触れて行う個別の対話のほうでした。

なお、この研究はBtoB専用に行われた調査とは違います。論文自身も、製造業やBtoBへの拡張を今後の課題として挙げています。数値をそのまま自社の取引先に当てはめる読み方は避けてください。

担当者に紐づいた関係をどう会社へ残すかは、営業担当が辞めると顧客も離れるのはなぜかをご覧ください。

「無関心が68%」という数字について

この領域では、顧客が取引をやめる理由として次の内訳が広く引用されています。

離脱の理由割合
知覚された無関心68%
製品・サービスへの不満14%
競争要因・価格9%
知人からの競合紹介5%
自然減4%

出どころは、マッコーリー経営大学院の客員教授であるジョン・ガットーナに帰属される2008年の調査とされています。

ただし、この数字については注意が要ります。原調査の報告書、標本の設計、対象の業種を直接確認できる公開資料が見当たりません。「BtoBの一般的な比率」として断定して引くことは避けるべき数字にあたります。

この数字を使う場合は、出どころを明示したうえで、広く流通している参考値として扱うほうが安全です。自社の取引先にそのまま当てはまるかどうかは、また別の話になります。

自社で測るなら、何を分けるか

放置の害を自社で確かめる場合、失注と解約のアンケートを設計する方法があります。

理由の選択肢は、次の6つに分けてください。並べるのは、価格、成果不足、担当交代、競合、連絡不足や理解不足、そして予算や組織の事情の6つになります。

あわせて、最終の接触から解約までの経過日数も集計してください。この2つを並べると、放置が原因になっている案件がどれだけあるかを自社のデータとして持てます。

一斉配信の指標をどう読み直すかは、メールマガジンに音声を足すと、何が変わるかをご覧ください。

新規獲得と維持のコスト比

もう1つ、広く流通している数字があります。新規顧客の獲得は既存顧客の維持より5倍のコストがかかる、というものです。

エイミー・ガロは2014年に、Harvard Business Review へ記事を寄せています。記事の題は「The Value of Keeping the Right Customers」です。ガロはこの記事で、この比を5倍から25倍という幅で整理しました。ガロは同時に、「どの研究か、どの業界かによる」とも明記しています。

Ipsos Loyaltyが2003年に公表した「Loyalty Myth 8」も、この5倍という説を扱っています。同社は、この説の起源が1980年代後半の TARP(Technical Assistance Research Project)にさかのぼる可能性を指摘しました。あわせて、単純な定説として扱うことへの疑義も示しています。

したがって、稟議の資料では「新規獲得は既存維持の約5倍」という書き方を避けるほうが堅実です。ハーバード・ビジネス・レビューは業種や調査によって5倍から25倍と整理しており、自社では顧客獲得コストと維持コストを同一の基準で測定する。この形にしておくと、出典の面でも経営の面でも説明が通ります。

月1回の接点をどう作るか

ここまでの研究が示しているのは、個別性のある対話でなければ届かないという点です。私たちはこの対話の回数を、年に1回から月に1回へ増やす方法を考えていきます。

営業の訪問を増やす形は、相手の時間を一方的に取ります。相手の側には、その訪問を受ける理由が乏しいところがあります。

これに対して、取材という形であれば、相手の側にも受ける理由が生まれるように思います。自社の話を語る場が用意され、その内容が記録として残るためです。

取材の依頼が受け入れられやすい理由については、取材の依頼はなぜ通るのかで詳しく記載しています。

いったん途切れた相手との再開については、連絡が途切れた顧客と、もう一度つながるにまとめています。

番組のゲスト回という形

ポッドキャストの番組を持っている会社は、この取材の場を定例で作れます。

週1回配信で年48本の番組であれば、番組を持つ側はそのうち12回をゲスト回に充てられます。割合にすると、ゲスト回は48本÷12回=4本に1本になります。番組を持つ側は1年で12社の取引先と、それぞれ1時間ずつ向き合う計算です。

1エピソードあたりの収録は30分程度で、そこから15分の番組を作ります。相手の時間を1時間より長くいただく形にはなりません。

収録の音源は、Spotify、Apple Podcasts、Amazon Music、KOEGURAの4媒体へ掲載されます。1回の出演で4件の掲載がたまりますので、相手の会社にとっても採用や広報で使える素材が残ります。

効果をどう測るか

この形で継続率が何ポイント上がるという数字は、私たちも持ち合わせていません。

ジョンとパクの研究が測っているのも、満足度のほうであって継続率そのものとは違います。研究の側でも、継続率をアウトカムにした検証は今後の課題として残されています。

自社で確かめる場合は、次の3つを見てください。1つ目は、ゲスト回に出た取引先からの発注が翌年にどう変わったかという点です。2つ目は、その会社から別の会社を紹介いただけたかどうかになります。3つ目は、公開後に先方の社内でその回が共有されたかどうかです。

まとめ

接触の回数そのものは、企業への満足へ直接つながっていませんでした(β = −.006、95% CI −.093〜.080)。有意に働いていたのは、担当者への満足を経由する間接的な経路のほうです(β = .165)。

接触の種類でも差が出ています。電話や対面といった個人的な接触では回数の効果が有意でしたが(β = .197, p < .01)、一斉メールのような非個人的な接触では有意になりませんでした。

顧客の離脱理由として広く引用される「知覚された無関心68%」は、原調査の設計や母集団を確認できる公開資料が見当たりません。この数字は出どころを明示したうえで、参考値として扱うべきものにあたります。

新規獲得と維持のコスト比も、ハーバード・ビジネス・レビューは5倍から25倍という幅で整理しています。この比率は、自社の基準で測り直すことをお勧めします。

もし取引先との接点を増やしたいのであれば、まず1社を選んで取材を申し込んでみてください。営業の訪問と違い、相手の側にも受ける理由が生まれます。

この記事からわかるQ&A

取引先への連絡を増やせば関係は保てますか

回数を増やすだけでは届きません。韓国のサービス利用者199名を対象にした2020年の研究では、接触頻度が企業への満足へ直接つながる経路は有意になりませんでした(β = −.006、95% CI −.093〜.080)。有意だったのは、担当者への満足を経由する間接的な経路です(β = .165、95% CI .056〜.276)。

メールマガジンでは足りませんか

同じ研究では、接触の種類ごとに分析が行われています。電話や対面といった個人的な接触では、回数が担当者への満足を高める経路が有意でした(β = .197, p < .01)。一斉メールのような非個人的な接触では、どちらの経路も有意になっていません。

「顧客の68%は無関心でやめる」という数字は使えますか

出どころを明示したうえで、参考値として扱ってください。この数字はジョン・ガットーナに帰属される2008年の調査とされていますが、原調査の報告書、標本の設計、対象の業種を直接確認できる公開資料が見当たりません。BtoBの一般的な比率として断定して引くことは避けるべき数字です。

新規獲得は既存維持の5倍のコストがかかりますか

ハーバード・ビジネス・レビューは、2014年の記事でこの比を5倍から25倍と整理しています。記事の中では同時に、「どの研究か、どの業界かによる」とも明記されました。Ipsos Loyalty は2003年に、5倍説の起源が1980年代後半の TARP にさかのぼる可能性と、定説として扱うことへの疑義を示しています。自社の基準で測り直してください。

番組のゲスト回で年に何社と会えますか

週1回配信で年48本の番組であれば、番組を持つ側はそのうち12回をゲスト回に充てられます。割合は48本÷12回=4本に1本で、1年に12社の取引先と向き合う計算になります。1エピソードあたりの収録は30分程度ですので、相手の時間を1時間以上いただく形にはなりません。

出典

  • Jung, L., & Park, S. (2020). 韓国のサービス利用者199名を対象に、企業からの関係構築接触と顧客満足の関係を分析。接触頻度→企業満足の直接効果は非有意(β = −.006、95% CI −.093〜.080)、担当者満足を介した間接効果は有意(β = .165、95% CI .056〜.276)。個人的接触では頻度→担当者満足(β = .197, p < .01)・頻度→企業満足(β = .182, p < .05)がいずれも有意、非個人的接触では有意でなかった https://www.econstor.eu/
  • John Gattorna(Macquarie Graduate School of Management 客員教授)に帰属される2008年の顧客離脱理由調査。知覚された無関心68%、製品・サービス不満14%、競争要因・価格9%、知人からの競合紹介5%、自然減4%。原調査の報告書・標本・対象業種を直接確認できる公開資料が見当たらないため、断定的な一般化は避けている https://cxl.com/blog/customer-retention/
  • Gallo, A. (2014). “The Value of Keeping the Right Customers.” *Harvard Business Review*. 新規顧客の獲得は既存顧客の維持より5倍から25倍のコストがかかると整理。ただし「どの研究か、どの業界かによる」と明記されている https://hbr.org/2014/10/the-value-of-keeping-the-right-customers
  • Ipsos Loyalty (2003). “Loyalty Myth 8.” 5倍説の起源が1980年代後半の TARP(Technical Assistance Research Project)にさかのぼる可能性を指摘し、単純な定説として扱うことへの疑義を提示 https://www.ipsos.com/
  • Reichheld, F. F., & Sasser, W. E. (1990). “Zero Defections: Quality Comes to Services.” *Harvard Business Review*, 68(5), 105–111. 離脱率のわずかな変化が利益の水準を大きく変えることを示した研究 https://hbr.org/1990/09/zero-defections-quality-comes-to-services
  • アストライド「ポッドキャストで新規開拓に取り組む|取材依頼から商談までの設計」CBN伴走支援の運用条件(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-podcast/networking/
  • アストライド「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」番組尺15分・配信先4媒体・配信頻度別の年間本数(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-podcast/
  • オトナル×朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN 第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」2025年12月5〜6日実施、全体10,000人/利用者800人・15〜69歳。月間利用率18.2%、決裁権者比率は主要7メディア中2位 https://otonal.co.jp/news/2955

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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