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2026.07.02

Webサイト制作における「経営課題からの逆算」:要望をそのまま受けない理由

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Webサイト制作における「経営課題からの逆算」:要望をそのまま受けない理由

この記事でわかること

  • Webサイトリニューアルの多くが期待した効果を得られない理由
  • 「要望」と「課題」の違いと、経営課題から逆算する重要性
  • 5Why分析を使った本質的な課題の発見方法
  • 制作会社に要望ではなく課題を伝える対話の進め方
  • RFP(提案依頼書)を活用した戦略的なプロジェクト設計

「デザインを新しくしたい」「スマホ対応にしたい」「そろそろリニューアルの時期だから」——Webサイト制作を検討する際、こうした要望から話が始まることは珍しくありません。

しかし、WACUL(ワカル)が2019年に実施した調査によると、Webサイトリニューアル後に「効果があった」と回答した企業はわずか3割程度にとどまっています。東洋経済の分析では、リニューアルの約75%が期待した成果を得られていないと指摘されています。

この数字が示しているのは、多くのWebサイトリニューアルが「手段」を「目的」と取り違えているという現実です。


なぜ「デザイン刷新」だけでは成果が出ないのか?

「古臭いから」「しばらくリニューアルしていないから」という理由でWebサイトのリニューアルに踏み切る企業は少なくありません。

しかし、この発想には根本的な問題があります。デザインを新しくすること自体は、集客や売上、採用といった経営成果に直接つながるわけではないからです。

たとえば、「問い合わせが少ない」という課題を抱えている企業があったとします。この企業がデザインの刷新だけを行った場合、どうなるか。見た目は新しくなりますが、そもそも問い合わせが少ない原因——サイトへのアクセスが少ない、検索で見つけてもらえていない、訪問者が問い合わせページまで到達していない——といった本質的な問題は解決されないまま残ります。

リニューアル後に「デザインは良くなったけれど、数字は変わらなかった」という結果に終わる企業の多くが、この落とし穴にはまっています。

サイトリニューアルの要諦は、単なるデザイン刷新ではありません。既存サイトの根本的な問題を特定し、それを解決することにあります。


「要望」と「課題」はどう違うのか?

Webサイト制作の現場では、「要望」と「課題」という言葉が混同されがちです。

要望とは、「こうしてほしい」という具体的な解決策の指定を指します。「トップページにスライダーを入れたい」「問い合わせフォームを目立たせたい」「動画を掲載したい」といった内容がこれにあたります。

一方、課題とは、現状と理想の間にあるギャップを指します。「新規顧客からの問い合わせが月に3件しかない」「採用サイトからの応募がゼロ」「検索しても自社サイトが表示されない」といった内容です。

この違いは、一見すると些細に見えるかもしれません。しかし、Webサイト制作のプロジェクトにおいては、この区別が成否を分ける重要な分岐点となります。

要望から始めてしまうと、その要望が正しい解決策かどうかを検証しないまま制作が進んでしまいます。課題から始めれば、その課題を解決するための最適な手段が何かを、制作会社と一緒に検討できます。

経営戦略から経営課題を特定し、その課題を解決するためにWebサイトが果たすべき役割(目的)を定義する。その目的を達成するための具体的な目標(KPI)を設定し、ようやく手段(サイトの機能やデザイン)を検討する。この順序を守ることが、成果につながるWebサイト制作の大前提です。


5Why分析で本質的な課題を見つけるにはどうすればよいか?

「問い合わせが少ない」という表面的な問題を、本質的な課題として掘り下げるには、どうすればよいか。ここで活用できるのが、トヨタ生産方式に由来する「5Why分析(なぜなぜ分析)」という手法です。

5Why分析は、「なぜ?」という問いを繰り返すことで、問題の根本原因を特定する手法です。Webサイトの課題発見にも応用できます。

Web制作における5Why分析の実例

たとえば、「Webサイトからの問い合わせが少ない」という問題を5Why分析で掘り下げてみます。

問題: Webサイトからの問い合わせが月に3件しかない

1回目のなぜ: なぜ問い合わせが少ないのか?
→ サイトへのアクセス数自体が少ないから(月間1,000PV)

2回目のなぜ: なぜアクセス数が少ないのか?
→ 検索エンジンで上位に表示されていないから

3回目のなぜ: なぜ検索上位に表示されないのか?
→ SEO対策がほとんど行われていないから

4回目のなぜ: なぜSEO対策ができていないのか?
→ 狙うべきキーワードが定まっていないから

5回目のなぜ: なぜキーワード戦略がないのか?
→ ターゲット顧客がどんな言葉で検索するか、分析していないから

この分析を経ると、当初の問題「問い合わせが少ない」に対する解決策は、「デザインを刷新する」ではなく「ターゲット顧客の検索行動を分析し、キーワード戦略を立てる」となります。

5Why分析を実践するときの注意点

5Why分析を有効に機能させるには、いくつかのポイントがあります。

まず、問題を具体的に定義すること。「問い合わせが少ない」という漠然とした表現ではなく、「問い合わせが月3件で、目標の月10件に達していない」のように、5W1Hで明確化します。

次に、客観的な事実に基づいて分析すること。「担当者のやる気がない」「うちの業界は特殊だから」といった主観や思い込みを排除し、データや事実をもとに掘り下げます。

また、人ではなく仕組みに原因を求めること。「担当者がSEOを知らない」ではなく「SEOの知見を持った人材がいない、または外部への委託体制がない」のように、組織の仕組みとして捉え直します。

この5Why分析は、Webサイト制作を依頼する前に、自社内で行っておくことをおすすめします。制作会社に依頼する際の出発点が、「デザインを新しくしてほしい」から「ターゲット顧客の検索行動を分析し、SEO戦略を組み込んだサイトを作りたい」に変わるだけで、プロジェクトの方向性は大きく変わります。


制作会社に「要望」ではなく「課題」を伝えるとどうなるか?

Webサイト制作を外部に依頼する際、多くの企業は「こんなサイトが欲しい」という要望を伝えます。「トップページはこんなデザインで」「メニューはこの構成で」「この機能を入れてほしい」といった内容です。

この伝え方には、大きなリスクがあります。

制作会社は、発注側の業界や商品、顧客について、発注側ほど深い知見を持っていません。発注側が「この機能が必要」と言えば、その機能が本当に最適かどうかを検証する材料を持たないまま、言われた通りに作るしかなくなります。

結果として、「言われた通りに作ったが、期待した成果が出ない」という事態が生じます。そして、発注側は「制作会社の腕が悪い」と考え、制作会社は「発注側の要件が曖昧だった」と考える。このすれ違いが、Webサイト制作の失敗を生み出しています。

課題から伝えれば、状況は変わります。

「新規顧客からの問い合わせを月3件から月10件に増やしたい。現状はサイトへのアクセス自体が少なく、検索でもほとんど見つけてもらえていない。ターゲットは○○業界の担当者で、△△という課題を抱えている人たち」

このように伝えれば、制作会社は自社の専門性を活かして、「それならこういうサイト構成とSEO戦略が有効です」「その目標を達成するには、こういうコンテンツが必要です」といった提案ができます。

Webサイト制作は、発注側の業界知識と、制作会社のWeb専門知識を掛け合わせて初めて成果が出るプロジェクトです。発注側が一方的に「こう作って」と指示するのではなく、課題を共有して一緒に解決策を考える関係性を築くことが、成功への近道となります。


RFP(提案依頼書)はどのように活用すればよいか?

制作会社に課題を伝え、質の高い提案を引き出すためのツールとして、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)があります。

RFPとは、発注側がプロジェクトの背景、目的、課題、予算、スケジュールなどを文書化し、制作会社に提供するドキュメントです。これを作成することで、発注側と制作側の認識のずれを防ぎ、複数の制作会社から同じ基準で提案を比較することが可能になります。

RFPに記載すべき主な項目

プロジェクトの背景と目的
なぜWebサイトを作る(またはリニューアルする)のか。経営戦略との関連、現状の課題、達成したい成果を記載します。

解決すべき課題
5Why分析などで特定した本質的な課題を記載します。「問い合わせを増やしたい」という抽象的な表現ではなく、「現状月3件の問い合わせを月10件に増やしたい。原因はSEO対策の不足と考えている」のように具体的に。

ターゲットユーザー
Webサイトを利用する想定ユーザーの属性、行動特性、抱えている課題を記載します。

予算とスケジュール
予算の上限と、公開希望時期を記載します。予算を伏せると、制作会社は「どこまで提案していいかわからない」状態になり、提案の質が下がることがあります。

必要な機能や要件
「こうしてほしい」という要望ではなく、「この課題を解決するために必要と考える機能」として記載します。制作会社からより良い代替案が提案される余地を残しておくことが重要です。

評価基準
提案を評価する際の基準を明示します。価格重視なのか、提案内容重視なのか、運用サポートを重視するのかを伝えることで、制作会社は自社の強みを活かした提案を組み立てやすくなります。

RFPを作成するメリット

RFPを作成する過程で、発注側は「そもそも何のためにWebサイトを作るのか」「本当の課題は何か」を言語化することになります。この作業自体が、プロジェクトの方向性を明確にする効果を持ちます。

また、社内の関係者間で認識を揃える役割も果たします。Webサイト制作のプロジェクトが迷走する原因の一つに、「担当者、上司、経営陣で求めるものが異なる」という問題があります。RFPを社内でレビューする過程で、この認識のずれを事前に解消できます。


制作会社との対話で気をつけるべきことは何か?

RFPを作成し、制作会社との対話が始まった後も、いくつかの注意点があります。

口頭だけで済ませない

打ち合わせでの会話は、必ず文書化して残します。認識のずれは、多くの場合「言った・言わない」「そういう意味ではなかった」から生じます。メールやドキュメントで記録を残すことで、こうしたトラブルを防げます。

制作会社に丸投げしない

「プロにお任せ」という姿勢は、一見謙虚に見えますが、実は危険です。制作会社は発注側の業界、商品、顧客について、発注側ほど深く理解していません。方針は発注側がコントロールし、専門的な部分は制作会社に相談しながら進める、という関係性が健全です。

情報を出し惜しみしない

競合情報、過去のマーケティング施策の成果、顧客の声など、制作に役立つ情報は積極的に共有します。制作会社が発注側の事業を深く理解すればするほど、的確な提案と制作が可能になります。

ヒアリングシートを軽視しない

多くの制作会社は、プロジェクト開始時にヒアリングシートへの記入を依頼します。会社情報、既存サイトの課題、ターゲット、デザインの方向性など、詳細な項目が並んでいることが多いでしょう。

このヒアリングシートへの回答を、「面倒な事務作業」と捉えてはいけません。ここに書いた内容が、制作の土台となります。曖昧な回答や「お任せ」という回答が多いと、制作会社は手探りで進めざるを得なくなり、後から「イメージと違った」という事態を招きます。


リニューアル後の運用まで設計できているか?

Webサイト制作のプロジェクトを成功させるには、公開後の運用まで視野に入れた設計が必要です。

多くの企業が「リニューアルすれば終わり」と考えがちですが、Webサイトは公開してからが本番です。アクセス解析でユーザーの行動を把握し、KPIの達成状況を確認し、問題があれば改善する。このPDCAサイクルを回すことで、初めてWebサイトは経営成果に貢献する資産となります。

リニューアル後の運用を見据えて、以下の点を制作段階で設計しておくことをおすすめします。

KGI・KPIの設定
何をもって「成功」とするのか、具体的な数値目標を設定します。問い合わせ数、アクセス数、コンバージョン率など、測定可能な指標を選びます。

効果測定の仕組み
Google Analyticsなどのアクセス解析ツールの設定、コンバージョンの計測方法などを、制作段階で組み込んでおきます。

更新しやすい設計
コンテンツの追加や修正を、社内で行えるようにしておきます。更新のたびに制作会社に依頼が必要な構造は、運用コストを押し上げ、更新頻度を下げる原因となります。

SEOの考慮
リニューアル時は、SEOを改善する好機です。同時に、URL変更時の301リダイレクト設定など、既存のSEO評価を引き継ぐための対策も必要です。この点を考慮しないと、リニューアル後に検索流入が激減するリスクがあります。


まとめ

Webサイト制作の成否を分けるのは、デザインの良し悪しや機能の豊富さではありません。「そもそも何のために作るのか」という目的の明確さと、その目的に至るまでの設計の質にあります。

制作会社に依頼する際は、「こんなサイトが欲しい」という要望ではなく、「こんな経営課題を解決したい」という課題から伝える。5Why分析などを活用して本質的な課題を特定し、RFPとして文書化して共有する。この手順を踏むことで、プロジェクトの方向性が定まり、制作会社からもより的確な提案を引き出せます。

Webサイトは、作って終わりではありません。経営課題の解決という目的に向けて、継続的に改善していく「運用」が前提です。その運用を見据えた設計を、制作段階から組み込んでおくことが、投資に見合った成果を得るための条件となります。

この記事からわかるQ&A

Webサイトリニューアルで期待した効果が出ない主な原因は何ですか?

多くの場合、「手段」が「目的」化していることが原因です。デザイン刷新や機能追加といった具体的な施策から始めてしまい、「そもそも何の経営課題を解決するためにリニューアルするのか」という目的設定が曖昧なまま進行してしまいます。調査によると、リニューアル後に「効果があった」と回答した企業は約3割にとどまっています。

5Why分析とは何ですか?

トヨタ生産方式に由来する問題分析手法で、「なぜ?」という問いを繰り返すことで問題の根本原因を特定します。Web制作では、「問い合わせが少ない」→「アクセスが少ない」→「検索上位に表示されない」→「SEO対策がない」→「キーワード戦略がない」のように掘り下げ、本質的な課題を見つけるために活用できます。

RFP(提案依頼書)には何を記載すればよいですか?

プロジェクトの背景と目的、解決すべき課題、ターゲットユーザー、予算とスケジュール、必要な機能や要件、評価基準を記載します。特に重要なのは、「こうしてほしい」という要望ではなく、「こういう課題を解決したい」という形で記載することです。これにより、制作会社からより的確な提案を引き出せます。

制作会社との対話で最も重要なことは何ですか?

「要望」ではなく「課題」を伝えることです。「トップページにスライダーを入れたい」という要望ではなく、「新規顧客からの問い合わせを増やしたい」という課題を伝えることで、制作会社は専門知識を活かした最適な解決策を提案できます。また、口頭だけで済ませず文書化すること、制作会社に丸投げせず方針は自社で決めることも重要です。

リニューアル後の運用で気をつけるべきことは何ですか?

KGI・KPIを設定し、効果測定の仕組みを制作段階で組み込んでおくことが重要です。アクセス解析ツールの設定、コンバージョンの計測方法を事前に設計します。また、コンテンツの更新を社内で行えるようにしておくこと、SEO評価を引き継ぐためのリダイレクト設定なども、制作段階で考慮しておく必要があります。

引用・参考資料

  • WACUL「Webサイトリニューアル効果調査」(2019年7月)
  • 東洋経済「Webサイトリニューアルの成功率分析」
  • TOPPAN「サイトリニューアル失敗の5つの原因と失敗しないための対策を解説」
  • IIP「戦略設計・要件定義」
  • FORTUNA Magazine「Web サイト戦略とは何ですか? 5つの戦略チェックリストを公開」
  • SHIFT「Webサイトリニューアルの失敗事例と対策」

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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