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経営者の孤独は「弱さ」か、それとも「強さの源泉」か。3つの類型と日本の実測

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経営者の孤独は「弱さ」か、それとも「強さの源泉」か。3つの類型と日本の実測

この記事でわかること

  • 研究の世界で孤独がどう定義されているか
  • 「上に行くほど孤独になる」の検証結果
  • 孤独が3つの型に分かれるという知見
  • 日本の経営者291人で測られた数値
  • 研究がまだ届いていない3つの範囲

「トップは孤独だ」という言葉を、経営者の方からお聞きすることがあります。この感覚について、海外では2020年代に入ってから研究が増えました。日本でも、中小企業経営者291人を対象にした調査が2023年に公表されています。

この記事では、2022年1月から2026年8月までに公表された査読論文と、日本の公的機関が刊行した研究を並べます。私たちが取り上げるのは、孤独の定義、孤独の類型、燃え尽きとの関係、そして言語化という4つです。

数値には、調査を行った機関名と対象者数を添えました。研究がまだ示していない範囲についても、私たちはその中身を記事の後半に節を立てて書いています。

経営者の孤独は、研究の世界でどう定義されているか

孤独という語は、日常では「一人でいること」と同じ意味で使われます。研究の側は、この2つを分けて扱います。

Lam らの研究チームが、2024年にレビュー論文を発表しています。掲載は The Leadership Quarterly 第35巻3号、論文番号は 101780 です。研究チームは1977年から2023年までの実証研究71本を集めました。

研究チームが示した定義は、次のとおりです。リーダーの孤独とは、リーダーシップの過程で重要になる仕事上の関係について、望む関係と実際に得られた関係のあいだに乖離があるときに生じる、不快な断絶感を指します。

この定義には、3つの含みがあります。1つ目は、物理的に一人かどうかを問わない点です。周囲に人がいても、率直に話せる相手がいなければ孤独は生じます。2つ目は、望む関係の水準が人によって違う点にあたります。3つ目は、肯定的な一人の時間と区別される点です。

研究チームは同時に、既存研究の限界も指摘しています。71本を通してみると、孤独はチームの望ましくない行動や意思決定の抑制と関連していました。ただし、孤独が組織の機能低下を引き起こすという因果関係を実証するには、71本をもってしても不十分だと研究チームは結論づけています。

「上に行くほど孤独になる」は、確かめられているか

「トップは孤独だ」という言い方は、地位が上がるほど孤独が増えるという意味を含んでいます。この点を直接調べた研究があります。

Silard と Wright の両氏が、2022年に管理職と非管理職の孤独を比較した横断調査を発表しています。掲載は Management Research Review 第45巻7号913〜928頁です。

結果は、多くの人の予想と逆になりました。管理職と非管理職のあいだに、孤独得点の有意な差は確認されていません。職場での情緒的なつながりと管理職の孤独との関係についても、研究チームは結論を保留しています。

ただし、この研究には制約があります。Lam らのレビューは、Silard らの管理職標本が28人と小さいことを指摘しました。CEOやオーナー経営者を直接の対象にした研究にもあたりません。

ポルトガルの Magalhães らは、同じ2022年に銀行業のリーダー職への質問紙調査を報告しています。掲載は Administrative Sciences 第12巻4号130番です。こちらでは、勤続年数、役職、学歴の3つがリーダーの孤独と関連しています。性別、年齢、週の労働時間は関連していません。

もう1点、この研究で注目すべき結果があります。孤独は意欲の低下と関連した一方で、同じ研究が用いた意思決定の尺度への影響は支持されませんでした。孤独が判断を鈍らせるという通説を、この研究は確かめていません。

孤独には、3つの型がある

孤独を一つのものとして扱わない研究も出ています。

Cardon と Arwine の両氏が、「起業家の孤独の多面性」という論文を発表しています。掲載は Personnel Psychology 第77巻225〜277頁で、2024年です。研究チームは、起業家が集まるオンライン・コミュニティの投稿を9,000件を超えて集め、データから型を立ち上げる形で分析しました。

分析から出てきたのは、孤独が3つに評価され分かれるという結果です。

起業家が孤独をどう受け取っているか
脅威・害としての孤独誰にも理解されないという断絶感が、不安や消耗につながる
肯定的な独りの時間一人で考える時間を、集中と内省の機会として使う
無関連としての孤独孤独という経験を、事業や自分の状態と結びつけていない

同じ「孤独」という語で語られていても、受け取り方は3つに分かれます。研究チームは、この分かれ方を評価理論の枠組みで説明しました。心理的な健康や起業活動への悪影響が生じるのは、脅威として評価された孤独への対処に失敗した場合です。

旧来の紹介記事のなかには、この研究を「2つのカテゴリ」として書いたものが出回っています。原論文が示しているのは3つです。

研究チーム自身が挙げている限界もあります。データは自己選択された匿名の投稿ですので、どの型がどれだけの割合を占めるかを研究チームは推定していません。企業業績への影響について、この研究は測定を行っていません。

日本の経営者291人では、何が測られたか

日本にも、経営者の孤独を数値で扱った研究があります。

堀越昌和氏、尾久裕紀氏、金子信也氏、亀井克之氏、栗岡住子氏、そして Torrès 氏の6名が、2023年に調査結果を報告しています。掲載は『日本政策金融公庫論集』第60号71〜87頁です。調査は2021年10月から11月にかけてWebで行われ、対象は日本の中小企業経営者291人でした。燃え尽きの測定には BMS-10 という尺度が使われています。

主な数値は次のとおりです。

項目数値
バーンアウトの平均2.7
症状域以上(3.5以上)の割合17.2%
孤独とバーンアウトの相関r=.456(p<.01)
統制後の孤独の標準化係数β=.20(p<.01)
自律性阻害の標準化係数β=.17(p<.01)
モデルの調整済み決定係数R²=.45

経営者の6人に1人が症状域以上に達しています。孤独は、他の要因を統制したあとも燃え尽きの説明変数として残っています。

企業の属性についても、興味深い数値が出ています。個人企業が25.4%、経営を代行できる人がいない会社が22.3%、そして後継者がいない会社が54.6%です。研究チームは、個人企業と小規模企業の経営者ほど燃え尽きのリスクが高いと述べています。

代行者については、もう一段の分析があります。代行者の有無は、燃え尽きへの直接の関連としては有意になっていません。一方で、代行者と孤独のあいだには r=.133(p<.05)の相関が出ています。組織として代われる人を置くことが、孤独の側を和らげる可能性を示す数値です。

業績についても、同じ形の結果が出ています。業績の基調と燃え尽きの単純相関は r=.130(p<.05)でした。ただし他の要因を統制すると、この関連の有意性は消えます。業績の悪化が燃え尽きを起こす、という因果の主張を、この調査から立てることはできません。

なお、この研究は横断調査です。孤独が燃え尽きを引き起こしたのか、燃え尽きた人が孤独を強く感じるのか、どちらの向きも数値からは決まりません。対象者の91.8%が男性であり、団体の会員が中心という偏りもあります。

燃え尽きを押し上げているのは何か

孤独の周辺にある要因も、大きな標本で調べられています。

Torrès らの研究チームが、2022年にフランスの起業家2,336人を対象にした調査を発表しています。掲載は Small Business Economics 第58巻2号717〜739頁です。測定には、やはり BMS-10 が用いられました。

平均のバーンアウトは3.39です。感染のリスク、行動制限、倒産のリスクという3つは、いずれも燃え尽きと正の関連を示しています(各 p<.01)。説明力への寄与は、感染が3.4%、行動制限が9.0%、倒産のリスクが11.1%という並びです。

3つのうちで最も大きいのは、経済的な破綻の脅威です。感染そのものより、事業が立ち行かなくなるかもしれないという見通しのほうが、経営者の消耗を強く押し上げていました。

同じフランスで、Ben Tahar らの研究チームが2023年に別の調査を発表しています。掲載は Small Business Economics 第61巻2号701〜716頁で、対象は起業家273人です。

感情的な要求は、情緒的な消耗へ β=.455(p≤.001)という強さで結びついています。一方で、自律性と職務満足は消耗と負の関連を示しました。研究チームが重視しているのは、自律性が感情的な要求から消耗への経路を緩衝したという結果です。

「話すこと」「書くこと」に、どこまで根拠があるか

孤独を語れば楽になる、という話を私たちはしばしば見かけます。ここで私たちは、研究の側の状況を整理しておきます。

まず、経営者を対象にした実験は見つかりませんでした。範囲を一般の成人まで広げると、メタ分析があります。

Guo 氏が2023年に、表現的筆記のランダム化比較試験31本を統合しています。掲載は British Journal of Clinical Psychology 第62巻1号272〜297頁で、合計の参加者は4,012人です。

効果量は、抑うつ・不安・ストレスに対して Hedges の g=-.12、95%信頼区間は -0.21 から -0.04 でした。1日から3日の間隔を空けて実施した場合は g=-.18(p=.01)となります。数値は小さいものの、統計的には有意です。

書き方によって差が出るという報告もあります。Zhang らの研究チームが2023年に、3群のランダム化比較試験を報告しています。掲載は Journal of Mental Health 第32巻3号582〜591頁です。参加者は登録が132人、筆記を完了したのが100人でした。参加者は4日連続で15分ずつ書いています。

過去のやりとりを書き直す群と、これから行う対話を想定して書く群を比べると、後者のほうが行動的な離脱が低く、感情の発散が高いという傾向が出ています。何を書くかによって、書く行為の意味が変わることを示す結果です。

リーダーへの自己開示については、Lam 氏の研究プログラムに数値があります。オンライン実験では453人を対象に、上司と部下のどちらへの頻繁な自己開示も孤独を下げるという結果が出ています。3波の時差調査では200人を対象に、主観的なパワーが自己開示を通じて孤独の低下と関連しました。補足の分析では、部下より上司への開示のほうが強く孤独を予防する可能性が示されています。

ただし、この研究プログラムは博士論文にあたります。独立した査読論文としての確証とは区別して、数値をお読みください。

ここまでの結果は、全社員に向けて弱さを開示することを支持していません。利害や評価の関係が比較的安全な相手を選ぶほうが、現時点の根拠には合っています。上位者、同格の信頼できる相手、外部の専門家の3者がその候補です。話す内容も、状況と感情と必要な支援に分けたほうが合理的です。

経営者に相談相手がいないという実態

研究とは別に、実態を測った調査も見ておきます。ここからは査読を経ていない調査ですので、証拠の強さは上の研究と分けて扱ってください。

中小企業基盤整備機構は、2022年11月1日から4日にかけて、中小企業・小規模事業者1,000人へインターネット調査を行いました。

設問回答の割合
経営課題を専門家に相談したい61.4%
自分だけでは判断できないジレンマがある52.0%
社内・近隣の経営者仲間と相談するだけで、専門家に相談したことがない53.2%
経営者として不安がある46.4%

相談したいと答えた人が6割を超える一方で、専門家に相談したことがない人も5割を超えています。

カナダでは、HEC モントリオールの Pôle D が公私の組織のCEOを対象に調査を行っています。調査は2023年6月に終了し、2024年に更新されました。回答を開始したのは154人以上、完了したのが95人です。仕事上の孤独を時々以上経験するCEOは80%、頻繁に経験する人は25%でした。定期的なセラピーの利用を挙げた人は14%です。

この調査は学術チームが行ったものです。それでも、査読は経ていません。回答者数も95人にとどまり、相関係数や回帰係数は公表されていません。

研究がまだ届いていない3つの範囲

2022年から2026年までの査読論文を探した結果、次の3つについては該当する研究が見つかりませんでした。

1つ目は、同族企業の経営者を独立に取り出して、孤独から健康や業績までを定量的に検証した査読論文です。事業承継、家族役員との役割の重なり、所有と経営と家族の関係が重なることは、社内で弱みを出せない条件を強めるという仮説として語られます。実証はされていません。日本の調査で裏づけられているのは、個人企業と小規模企業で代行者や組織的な対応を持ちにくいという点までです。

2つ目は、経営者を対象に感情の言語化を実験した査読研究です。表現的筆記のメタ分析は一般の成人を対象にしたものであり、経営者に当てはめる根拠を私たちはまだ持っていません。

3つ目は、孤独が組織の機能低下を引き起こすという因果です。Lam らのレビューが71本を通して確認したとおり、この点は現時点で実証されていません。

分かっていないことを分かっていないと書くと、記事の説得力は下がるように見えます。私たちは逆だと考えています。ここまでの数値が何を支えていて、何を支えていないのかを線引きしておかないと、読者は数値を自分の判断に使えません。

この研究をどう見るか

ここまで並べた研究の多くは、海外の起業家と管理職を対象にしています。日本で数十人の社員を抱える会社の社長から見ると、離れている点が3つあります。

1つ目は、対象です。Cardon と Arwine が集めたのは、米国の起業家が集まるオンライン・コミュニティの投稿です。Silard と Wright が比べたのは、管理職28人と非管理職でした。日本の中小企業の経営者を直接測ったのは、堀越らの291人だけになります。

2つ目は、測った範囲です。研究チームが測っているのは、孤独の得点と燃え尽きの得点、そして両者の関連です。孤独を抱えた経営者が、どんな判断を誤ったのか、業績がどう変わったのかまでは、どの研究も測っていません。

3つ目は、打ち手の検証です。効果が測られているのは、経営者が自分で書くという方法までです。誰かに話すこと、とくに聞き手を置いて話すことについては、経営者を対象にした試験を私たちは見つけられませんでした。

一方で、規模を問わず残る部分もあります。相談できる相手がいないという状態と、決定を一人で背負っているという状態は、別のものとして測られている、という点です。Cardon と Arwine の3類型も、この2つを分けています。

御社の日常にも、この区別は現れます。幹部と毎日話していても、撤退や人員の判断だけは誰にも相談できない、という状態があります。話し相手の数を増やしても、この状態は変わりません。変えられるのは、その判断の中身を誰かに話せる場を持つかどうかです。

アストライドの考え

私たちは、ここまでの研究を次のように読んでいます。経営者の孤独は、話し相手の人数で決まるものというより、自分が下した判断の中身をどこまで人に話せるかで決まります。

御社の幹部や社員は、社長が何を決めたかを知っています。その決定に至るまでに社長が何と何を比べ、何を諦めたのかは、話す場がなければ誰も知らないままになります。私たちは、この読み方を制作の3つの場面に当てています。

1つ目は、聞く相手と場の設計です。Lam 氏の研究プログラムは、開示先によって結果が変わることを示しました。私たちはこれを踏まえ、収録の場を社内の会議とは切り離しています。社員が同席する場と、聞き手が外部の人間だけの場では、経営者が話せる範囲が変わります。

2つ目は、質問の順序です。Cardon と Arwine の3類型は、同じ経験でも受け取り方が分かれることを示しています。ですから私たちは、孤独をどう受け取っているかを最初に聞きません。事業の現在から入り、過去へ戻り、展望で閉じるという順序を、私たちは取っています。

3つ目は、限界の扱いです。映像や音声を作れば孤独が解消される、という説明を私たちはしません。研究が示しているのは、孤独が関係の乖離から生じる経験だという点までです。記録することの意味は、経営者が自分の言葉を後から聴き返せる形になること、そして次の世代がその言葉を受け取れる形になることにあります。

御社だけで確かめられることもあります。堀越らの調査が扱った5つの層を、紙に書き出してみてください。その5つは、率直に話せる相手の有無、一人で負っている決定の範囲、孤独をどう受け取っているか、睡眠や消耗の状態、そして代行できる人の有無です。書き出してみると、手を打つ相手が2つに分かれます。率直に話せる相手がいないのであれば、社長ご自身が誰と話す時間を持つかを決めることになります。決定を一人で負っているのであれば、御社はどの決定を誰に渡すかという、組織のつくりを見直す段階にあります。

まとめ

リーダーの孤独は、実証研究71本のレビューによって「望む関係と得られた関係の乖離から生じる不快な断絶感」と定義されています(Lam ほか 2024)。物理的に一人であることとは別の概念にあたります。

Silard & Wright (2022)が管理職と非管理職を比較した研究では、「上に行くほど孤独になる」という通説は支持されていません。孤独が意思決定を鈍らせるという通説も、ポルトガルの調査では確かめられていません(Magalhães ほか 2022)。

孤独は3つに分かれます。脅威・害としての孤独、肯定的な独りの時間、無関連としての孤独の3つです(Cardon & Arwine 2024、投稿9,000件超の分析)。悪影響が生じるのは、脅威として評価された孤独への対処に失敗した場合になります。

日本の中小企業経営者291人では、孤独とバーンアウトの相関が r=.456、統制後の標準化係数が β=.20 でした(堀越ほか 2023)。症状域以上は17.2%、後継者がいない会社は54.6%です。代行できる人がいることは、孤独と r=.133 の相関を示しています。

言語化については、表現的筆記のメタ分析(31研究・4,012人)で g=-.12 という小さな数値が確認されています(Guo 2023)。ただし対象は一般の成人であり、経営者を対象にした実験を私たちは見つけられませんでした。

まずは、率直に話せる相手が誰かを紙に書き出してみてください。名前が出てこないのであれば、御社はそれを関係の設計の問題として扱えます。

この記事からわかるQ&A

経営者の孤独は、学術的にどう定義されていますか

Lam ほかの論文は、実証研究71本をレビューしたうえで定義を示しています(2024、The Leadership Quarterly 35巻3号101780)。リーダーの孤独とは、リーダーシップの過程で重要になる仕事上の関係について、望む関係と得られた関係の乖離から生じる不快な断絶感を指します。物理的に一人でいることや、肯定的な一人の時間とは区別されます。

「上に行くほど孤独になる」というのは本当ですか

管理職と非管理職を比較した Silard & Wright (2022、Management Research Review 45巻7号)では、孤独得点に有意な差が確認されていません。ただし管理職の標本は28人と小さく、CEOやオーナー経営者を直接の対象にした研究にもあたりません。地位だけで孤独が決まるという見方を、現時点の実証は支持していません。

孤独が3つの型に分かれるとは、どういうことですか

Cardon & Arwine の論文は、起業家のオンライン投稿9,000件超を分析しています(2024、Personnel Psychology 77巻225〜277頁)。孤独は「脅威・害」「肯定的な独りの時間」「無関連」の3つに評価され分かれます。悪影響が生じるのは、脅威として評価された孤独への対処に失敗した場合です。どの型がどれだけの割合を占めるかを、研究チームは推定していません。

日本の経営者について、数値のある調査はありますか

堀越昌和ほかの研究チームは、中小企業経営者291人を対象に調査を行っています(2023、日本政策金融公庫論集 第60号71〜87頁)。実施は2021年10月から11月です。孤独とバーンアウトの相関は r=.456(p<.01)、他の要因を統制したあとの標準化係数は β=.20(p<.01)でした。症状域以上は17.2%です。横断調査ですので、因果の向きは決まりません。

孤独を言葉にすることに、根拠はありますか

一般の成人を対象にした表現的筆記のメタ分析(Guo 2023、31研究・4,012人)では、抑うつ・不安・ストレスに対して Hedges の g=-.12 という小さな数値が確認されています。経営者を対象にした実験は、2022年から2026年の範囲で見つかりませんでした。リーダーの自己開示については、上司への開示のほうが部下への開示より強く孤独を予防する可能性が示されています。ただしその研究は博士論文であり、独立した査読論文にはあたりません。

出典

  • Lam, H., Giessner, S. R., Shemla, M., & Werner, M. D. (2024). “Leader and leadership loneliness: A review-based critique and path to future research.” *The Leadership Quarterly*, 35(3), 101780. 1977〜2023年の実証研究71本のシステマティックな批判的レビュー。リーダー孤独を「望む関係と得られた関係の乖離から生じる不快な断絶感」と定義し、組織機能低下との因果は実証されていないと結論 https://doi.org/10.1016/j.leaqua.2023.101780
  • Cardon, M. S., & Arwine, R. P. (2024). “The Many Faces of Entrepreneurial Loneliness.” *Personnel Psychology*, 77, 225–277. 起業家のオンライン・コミュニティ投稿9,000件超のデータから型を立ち上げる分析。孤独が「脅威・害」「肯定的な独りの時間」「無関連」の3つに評価され分かれることを示した https://doi.org/10.1111/peps.12614
  • 堀越昌和・尾久裕紀・金子信也・亀井克之・栗岡住子・Olivier Torrès(2023)「コロナ禍における中小企業経営者の健康問題と事業継続リスク——バーンアウトを代理変数とした探索研究——」『日本政策金融公庫論集』第60号, 71–87頁。2021年10〜11月のWeb調査、日本の中小企業経営者291人、BMS-10。孤独とバーンアウトの相関 r=.456(p<.01)、統制後 β=.20(p<.01)、調整済み R²=.45、症状域以上17.2%、後継者なし54.6% https://www.jfc.go.jp/n/findings/tyousa_gicyo.html
  • Silard, A., & Wright, S. (2022). “Distinctly lonely: How loneliness at work varies by status in organizations.” *Management Research Review*, 45(7), 913–928. 管理職と非管理職を比較した横断調査。孤独得点に有意差は確認されず。管理職標本は28人 https://doi.org/10.1108/MRR-02-2021-0104
  • Magalhães, C. M., Machado, C. F., & Nunes, C. P. (2022). “Loneliness in Leadership: A Study Applied to the Portuguese Banking Sector.” *Administrative Sciences*, 12(4), 130. ポルトガル銀行業のリーダー職への質問紙調査。勤続年数・役職・学歴が孤独と関連。意思決定尺度への影響は支持されず https://doi.org/10.3390/admsci12040130
  • Torrès, O., Benzari, A., Fisch, C., Mukerjee, J., Swalhi, A., & Thurik, R. (2022). “Risk of burnout in French entrepreneurs during the COVID-19 crisis.” *Small Business Economics*, 58(2), 717–739. フランスの起業家2,336人、BMS-10。平均3.39。説明力への寄与は感染3.4%・行動制限9.0%・倒産リスク11.1% https://doi.org/10.1007/s11187-021-00516-2
  • Ben Tahar, Y., Rejeb, N., Maalaoui, A., Kraus, S., Westhead, P., & Jones, P. (2023). “Emotional demands and entrepreneurial burnout: The role of autonomy and job satisfaction.” *Small Business Economics*, 61(2), 701–716. フランスの起業家273人。感情的要求から情緒的消耗への β=.455(p≤.001)。自律性がこの経路を緩衝 https://doi.org/10.1007/s11187-022-00702-w
  • Guo, L. (2023). “The delayed, durable effect of expressive writing on depression, anxiety and stress.” *British Journal of Clinical Psychology*, 62(1), 272–297. ランダム化比較試験31本・参加者4,012人のメタ分析。Hedges の g=-.12(95%CI -0.21〜-0.04)、1〜3日間隔では g=-.18(p=.01) https://doi.org/10.1111/bjc.12408
  • Zhang, W., Jhang, J., & Greenwell, M. R. (2023). “Effects of replay and rehearsal expressive writing on mental health.” *Journal of Mental Health*, 32(3), 582–591. 3群ランダム化比較試験、登録132人・完了100人、4日連続15分の筆記。これからの対話を想定して書く群のほうが行動的離脱が低い https://doi.org/10.1080/09638237.2021.1979488
  • 中小企業基盤整備機構「中小企業・小規模事業者1,000人に経営の悩みを聞きました」2022年11月1〜4日、インターネット調査、n=1,000。専門家に相談したい61.4%、自分だけでは判断できないジレンマ52.0%、専門家に相談したことがない53.2%、経営者として不安46.4% https://mindsurvey-2022.smrj.go.jp/
  • HEC Montréal / Pôle D “Loneliness at the Top” 2023年6月終了・2024年更新。カナダの公私組織CEO、回答開始154人以上・完了95人、英仏オンライン調査。仕事上の孤独を時々以上経験するCEO 80%、頻繁に経験25%、定期的なセラピー利用14%。査読を経ていない https://poledirigeant.hec.ca/

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

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