TikTokとは?企業が知っておくべき短尺動画の可能性と限界

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この記事でわかること

  • TikTokの定義と基本的な仕組み
  • 他のSNS(Instagram、YouTube)との違い
  • 国内利用実態と年代別の傾向
  • 企業活用における4つのパターン
  • TikTokで期待できる効果と、その限界

「TikTokを始めるべきか」。経営者やマーケティング担当者から、この相談を受ける機会が増えています。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査(2024年1月)によると、国内のTikTok利用率は18.0%に達し、10代では55.0%が利用する主要なプラットフォームとなりました。

しかし、TikTokは万能ではありません。向いている企業と、そうでない企業がある。期待できる効果と、期待すべきでない効果がある。この記事では、TikTokの基本を押さえながら、企業にとっての現実的な可能性と限界を整理します。


TikTokとは何か

TikTokとは、短尺動画を投稿・視聴できるプラットフォームです。2017年に中国のByteDance社が国際版としてリリースし、日本では同年からサービスを開始しました。当初は15秒〜60秒の動画が中心でしたが、現在は最大10分までの動画を投稿できます。

最大の特徴は、アルゴリズム主導の「おすすめ」機能です。ユーザーの視聴履歴やエンゲージメント(いいね、コメント、シェア、視聴維持率など)を分析し、個々のユーザーに最適化されたコンテンツを自動的に表示する。フォローしていないアカウントの動画も表示されるため、フォロワー数が少ないアカウントでも多くの人に見てもらえる可能性があります。

縦型の全画面表示、BGMやエフェクトの豊富なライブラリ、直感的な編集機能なども特徴です。スマートフォン1台あれば、撮影から編集、投稿までを完結できる手軽さが、多くのユーザーを惹きつけています。

他のSNSとの違い

TikTokを理解するうえで、他のSNSとの違いを整理しておきます。

Instagramとの違いは「発見のされやすさ」にあります。Instagramは基本的にフォロワーへの配信が中心であり、新規ユーザーへのリーチにはハッシュタグ戦略や広告が必要となる。対してTikTokは、アルゴリズムが「おすすめ」に表示するコンテンツを選別するため、フォロワー0の状態でも拡散される可能性を持っています。

YouTubeとの違いは「コンテンツの性質」です。YouTubeは検索流入やチャンネル登録者への配信が中心であり、長尺で情報量の多いコンテンツが強みとなる。TikTokは短尺でテンポの良いコンテンツが好まれ、「偶然の発見」を通じた認知拡大に適しています。

X(旧Twitter)との違いは「コンテンツ形式」です。Xはテキスト中心のプラットフォームであり、情報の速報性や拡散力に強みがある。TikTokは動画というリッチなコンテンツを通じて、視覚的・聴覚的な訴求が可能です。


国内利用実態:「若者だけ」という誤解

TikTokに対して「若者向けSNS」というイメージを持つ方は少なくありません。実際、若年層の利用率が高いことは事実ですが、近年は30代以上への浸透も進んでいます。

年代別の利用率

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査(2024年1月)によると、TikTokの年代別利用率は以下の通りです。

10代: 55.0%(女性64.1%、男性45.7%)
20代: 33.7%(女性38.9%、男性28.4%)
30代〜50代: 各年代とも約2割程度
60代〜70代: 約1割程度

10代の利用率は、2020年の約2割から2024年には約6割へと大きく伸びています。一方で、30代以上でも一定の利用者がいることがわかります。

総務省「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」でも同様の傾向が示されており、10代で66.4%、20代で47.9%、30代で27.3%という結果が出ています。

利用頻度の高さ

TikTokユーザーの利用頻度は高い傾向にあります。同調査によると、10代・20代の約3割が「1日10回以上」TikTokを利用(閲覧)しています。30代〜50代でも約2割が同様の頻度で利用しており、一度習慣化すると高い接触頻度を持つプラットフォームといえます。


なぜ今、企業がTikTokに注目するのか

企業がTikTokに関心を持つ背景には、いくつかの要因があります。

フォロワー数に依存しない拡散力

TikTokの最大の特徴は、フォロワー数が少なくても多くの人に見てもらえる可能性がある点です。投稿した動画は、まず少数のユーザーに表示され、その反応(視聴維持率、いいね、コメント、シェアなど)に応じて徐々に表示範囲が拡大していく。コンテンツの質次第では、開設初期のアカウントでも大きなリーチを獲得できます。

この仕組みは、まだ知名度の低い中小企業にとって魅力的です。他のSNSでは、フォロワーを獲得するまでにかなりの時間と労力を要しますが、TikTokではコンテンツの質で勝負できる余地があります。

採用活動との親和性

TikTokは採用活動のプラットフォームとしても注目されています。ある調査によると、Z世代の就活生の約80%が「TikTokがきっかけで企業に興味を持った経験がある」と回答し、そのうち約66%が実際にエントリーしたというデータがあります。

若年層が日常的に利用するプラットフォームで、企業の雰囲気や社員の人柄を伝えることができる。これは、採用サイトや求人広告では伝えにくい「働く環境のリアルな姿」を発信する手段として機能しています。

「TikTok売れ」の可能性

TikTokで紹介された商品が爆発的に売れる「TikTok売れ」という現象も、企業の関心を集める要因のひとつです。2021年には日経トレンディが選ぶヒット商品の1位に「TikTok売れ」が選ばれるなど、消費行動への影響力が認知されるようになりました。

ただし、「TikTok売れ」は狙って起こせるものではありません。多くの場合、一般ユーザーによる投稿がきっかけとなっており、企業が意図的にコントロールすることは難しい。期待しすぎず、可能性のひとつとして捉えるのが現実的です。


企業活用の4つのパターン

企業がTikTokを活用する目的は、大きく4つに分類できます。

1. 採用活動

TikTokを採用活動に活用する企業が増えています。社員の日常や職場の雰囲気を短い動画で伝え、「この会社で働いてみたい」という興味を喚起する。タクシー会社の三和交通が「踊るおじさん」として話題になり、中途採用の応募者増加と採用コスト削減につながった事例は、TikTok採用の代表例として知られています。

採用活動にTikTokを活用するメリットは、ターゲット層との接点を自然に作れる点です。就活生・転職希望者が日常的に使うプラットフォームで、企業の存在を認知してもらえます。

2. ブランディング・認知拡大

企業やブランドの認知度を高める手段としての活用です。商品やサービスの直接的なPRではなく、企業の価値観や世界観を伝えるコンテンツを発信し、ブランドへの好意度を高めることを目的とします。

この活用パターンでは、エンターテインメント性のあるコンテンツや、企業の「人となり」が伝わるコンテンツが効果的です。広告色を抑え、ユーザーに楽しんでもらえる内容を心がけることが重要となります。

3. 店舗集客・ローカルマーケティング

実店舗を持つ企業が、来店促進を目的として活用するパターンです。店舗の雰囲気、メニュー紹介、スタッフ紹介など、「行ってみたい」と思わせるコンテンツを発信します。

飲食店や美容室など、視覚的に訴求しやすい業種との相性が良いとされています。地域のハッシュタグを活用することで、近隣のユーザーにリーチしやすくなる効果もあります。

4. EC・商品PR

ECサイトへの誘導や、商品の認知拡大を目的とした活用です。商品の使用シーン、ビフォーアフター、開封動画など、購買意欲を刺激するコンテンツを発信します。

ただし、TikTokから直接的な購買につなげることは容易ではありません。興味を持ったユーザーがプロフィールのリンクからECサイトに遷移するという導線になるため、購買までの距離は遠い。「まず知ってもらう」「興味を持ってもらう」というファネルの上流での活用が現実的です。


TikTokの限界と注意点

TikTokは有効な手段となり得ますが、万能ではありません。導入検討にあたって、限界と注意点を理解しておく必要があります。

成果の不確実性

TikTokは「バズる」可能性がある一方で、投稿しても全く見られない可能性もあります。アルゴリズム主導のプラットフォームであるため、どの投稿が伸びるかを事前に予測することは困難です。

「フォロワーが増えれば安定する」とも限りません。TikTokはフォロワーへの配信よりも「おすすめ」への表示が主体であり、フォロワー数が多くても投稿ごとの再生数には大きなばらつきが生じます。

継続的な投稿が必要

TikTokで成果を出すには、継続的な投稿が必要です。週2〜3回以上の投稿頻度を維持し、数ヶ月〜1年単位で運用を続けることで、徐々にアカウントが育っていく。単発の投稿で大きな効果を期待することは難しいでしょう。

企画・撮影・編集・投稿という一連のプロセスには、一定のリソースと体制が必要です。社内で継続できる体制を構築するか、外部に委託するか、運用開始前に検討しておく必要があります。

効果測定の難しさ

TikTokの効果測定は、他のマーケティング施策と比較して難しい側面があります。再生数やいいね数は把握できますが、「それが最終的にどのような成果につながったか」を追跡することは容易ではありません。

特に採用やブランディング目的の場合、直接的なROIを算出することは困難です。「認知が広がった」「応募者が増えた気がする」という定性的な評価にとどまることも多く、社内稟議を通す際にはこの点を考慮した説明が必要となります。

炎上リスク

TikTokは拡散力が高いため、炎上リスクも存在します。不適切な表現、著作権侵害、コンプライアンス違反など、問題のある投稿が拡散されれば、企業イメージに大きなダメージを与える可能性があります。

投稿前のチェック体制を整備し、リスクのあるコンテンツを事前に排除することが重要です。また、炎上が発生した場合の対応フローも、運用開始前に準備しておくことをお勧めします。

向いていない企業もある

すべての企業にTikTokが適しているわけではありません。たとえば、以下のような企業は慎重な検討が必要です。

  • ビジュアルで伝えにくい商材・サービスを扱う企業
  • ターゲット顧客がTikTokを利用していない企業
  • 継続的な投稿リソースを確保できない企業
  • 短期的な成果を求められている企業
  • コンプライアンス上の制約が厳しい企業

自社にとっての適性を判断するために

TikTok導入の可否を検討する際、以下の問いが判断材料になります。

ターゲット層はTikTokを利用しているか?
自社のターゲット顧客がTikTokを利用しているかどうか。若年層をターゲットとする場合は有効ですが、シニア層が主要顧客の場合は効果が限定的かもしれません。

ビジュアルで伝えられる強みがあるか?
動画で見せることで価値が伝わる商材・サービスかどうか。「見せる」ことで魅力が伝わるものは相性が良い。逆に、文章や図解でないと伝わりにくいものは工夫が必要です。

継続できる体制はあるか?
週2〜3回の投稿を、最低でも半年から1年継続できる体制が組めるかどうか。社内リソースで対応するのか、外部に委託するのか。いずれにせよ、継続を前提とした計画が必要です。

何を成果とするか?
再生数か、フォロワー数か、採用応募数か、来店数か。成果指標を事前に定義しておくことで、継続の判断がしやすくなります。ただし、定量的な成果だけでなく、定性的な効果も含めて評価することをお勧めします。


まとめ

TikTokは、企業のマーケティングや採用活動において有効な選択肢となり得るプラットフォームです。国内利用率は18%に達し、10代では6割超が利用。フォロワー数に依存しない拡散の仕組みは、知名度の低い中小企業にも可能性を開いています。

一方で、成果の不確実性、継続的な投稿の必要性、効果測定の難しさ、炎上リスクなど、限界と注意点も存在します。TikTokが自社に適しているかどうかは、ターゲット層の利用状況、ビジュアルで伝えられる強みの有無、継続可能な体制、成果の定義という観点から検討する必要があります。

次の記事では、TikTokのユーザー層についてさらに詳しく解説します。「若者だけが使っている」という誤解を解き、年代別の利用傾向や利用目的の違いから、自社ターゲットへのリーチ可能性を考察します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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