TikTokのアルゴリズムを理解する:「おすすめ」の仕組み

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この記事でわかること

  • TikTokの「おすすめ」(For You)フィードの基本的な仕組み
  • アルゴリズムが評価する主要な指標
  • 加算式アルゴリズムと減算式アルゴリズムの違い
  • フォロワー数に依存しない拡散の仕組み
  • 企業運用で押さえておくべきポイント

TikTokの最大の特徴は、フォロワー数が少なくても多くのユーザーに動画を届けられる可能性がある点です。この仕組みを支えているのが「アルゴリズム」と呼ばれるレコメンドシステムです。

アルゴリズムを理解することで、「なぜこの動画は伸びたのか」「なぜこの動画は伸びなかったのか」を分析できるようになります。この記事では、TikTokのおすすめ表示の仕組みを解説し、企業運用に活かせる基本知識を提供します。


TikTokの「おすすめ」とは

TikTokを開くと最初に表示されるのが「おすすめ」(For You)フィードです。ここには、フォローしているアカウントの投稿だけでなく、フォローしていないアカウントの動画も表示されます。

この「おすすめ」に表示される動画は、ユーザーごとにカスタマイズされています。TikTokのアルゴリズムが、各ユーザーの行動データを分析し、興味関心に合致しそうな動画を自動的に選別して表示する仕組みです。

他のSNSとの違い

InstagramやX(旧Twitter)では、基本的にフォローしているアカウントの投稿がタイムラインに表示されます。フォロワーを増やすことが、リーチを拡大する前提条件となる。

TikTokは異なります。投稿した動画は、まずフォロワー以外のユーザーにも表示される。そこでの反応が良ければ、さらに多くのユーザーに表示される範囲が広がっていく。フォロワー数ではなく、「動画の質」がリーチを決める構造になっています。


アルゴリズムが評価する3つの要素

TikTokのアルゴリズムは、動画を評価する際に複数の要素を考慮しています。公式に発表されている情報と、運用者の間で共有されている知見を整理すると、大きく3つの要素に分類できます。

1. ユーザーインタラクション(行動データ)

ユーザーが動画に対してどのような行動を取ったかが、最も重要な評価要素です。

主な評価指標:

  • いいね(ハートボタン)
  • コメント
  • シェア(他のSNSへの共有、LINEへの送信など)
  • 保存
  • フォロー(その動画をきっかけにフォローしたか)
  • 視聴時間(どこまで視聴されたか)
  • 繰り返し視聴(リピート再生されたか)

これらの指標が高いほど、アルゴリズムは「この動画はユーザーに価値を提供している」と判断し、より多くのユーザーに表示するようになります。

2. 動画情報(コンテンツの属性)

動画そのものの情報も評価に影響します。

主な評価要素:

  • キャプション(説明文)に含まれるキーワード
  • ハッシュタグ
  • 使用している音源(BGM)
  • エフェクト

特にハッシュタグについては、動画の内容と関連性の高いものを使用することが重要です。人気のハッシュタグを無関係に多用しても、アルゴリズムは動画内容との一致度を評価するため、効果は限定的です。

3. デバイス・アカウント設定

ユーザーの基本情報や環境設定も、表示される動画の選別に影響します。

主な要素:

  • 言語設定
  • 居住地域
  • デバイスの種類
  • ネットワーク環境

日本のユーザーには、日本語の音源を使った動画や、国内のトレンドに関連する動画が優先的に表示されやすい傾向があります。


加算式アルゴリズムと減算式アルゴリズム

TikTokの動画評価は、「加算式」と「減算式」の2つのアルゴリズムで構成されていると考えられています。

加算式アルゴリズム:評価を上げる要素

以下の指標が高いほど、動画はおすすめに表示されやすくなります。

指標説明
視聴完了率動画を最後まで視聴した割合
平均視聴時間ユーザーが動画を視聴した平均時間
リピート再生率同じ動画を繰り返し視聴した割合
いいね数ハートボタンを押した数
コメント数投稿されたコメントの数
シェア数他のSNSやLINEに共有された数
保存数動画を保存した数
フォロー転換率その動画をきっかけにフォローした割合

2025年現在のアルゴリズムでは、単純な「いいね数」よりも「保存数」や「リピート視聴」など、ユーザーの本質的な関心度を示す指標が重視される傾向があります。

減算式アルゴリズム:評価を下げる要素

以下の指標が高いと、動画はおすすめに表示されにくくなります。

指標説明
早期離脱率動画の冒頭で離脱した割合
「興味ない」の報告ユーザーが「興味ない」と報告した数
視聴のスキップ動画を飛ばされた回数

特に重要なのは「早期離脱率」です。動画の最初の数秒でスキップされると、アルゴリズムは「この動画はユーザーの興味を引けていない」と判断します。


動画が拡散される流れ

TikTokで動画が拡散される一般的な流れを理解しておきましょう。

ステップ1:初期表示

投稿した動画は、まず少数のユーザー(一般的に数百人程度)の「おすすめ」に表示されます。この段階はフォロワー数に関係なく行われるため、新規アカウントでも一定の初期表示が確保されます。

ステップ2:反応の評価

初期表示されたユーザーの反応が評価されます。視聴完了率、いいね率、コメント率、シェア率などの指標が分析され、「この動画は他のユーザーにも価値があるか」が判断されます。

ステップ3:表示範囲の拡大(または縮小)

反応が良ければ、表示される対象が数千人、数万人と段階的に拡大していきます。反応が良くなければ、表示は止まります。

ステップ4:バイラル化(一部の動画のみ)

反応が非常に良い動画は、さらに多くのユーザーに表示され、数十万〜数百万再生に達することがあります。これが「バズる」と呼ばれる状態です。

重要なポイント:最初の反応がカギ

この流れから分かるのは、最初に表示されたユーザーからの反応が、その後の拡散を大きく左右するということです。初期表示の段階で高い視聴完了率やエンゲージメントを獲得できなければ、動画は伸びません。


フォロワー数に依存しない仕組み

TikTokのアルゴリズムは、フォロワー数を直接的な評価指標としていないと考えられています。

フォロワーが10万人いるアカウントでも、投稿の反応が悪ければ再生数は伸びない。逆に、フォロワーが100人のアカウントでも、投稿の質が高ければ大きくバズる可能性がある。この「フォロワー数に依存しない拡散」が、TikTokの大きな特徴です。

ただし、フォロワー数が多いことには間接的なメリットがあります。フォロワーは「初期表示」の対象に含まれるため、フォロワーが多いほど初期段階での反応を集めやすくなります。反応が集まりやすければ、その後の拡散にもつながりやすい。

とはいえ、フォロワー数よりも「動画の質」が重要であることに変わりはありません。


「フィルターバブル」を避ける設計

TikTokのアルゴリズムには、同じようなコンテンツばかりが表示される「フィルターバブル」を避ける設計が施されているとされています。

ユーザーの過去の視聴履歴に基づいて似たようなコンテンツを表示しつつも、異なるテーマや新しいジャンルの動画も意図的に混ぜて表示する。これにより、ユーザーの興味を広げ、プラットフォーム全体の多様性を維持しています。

企業にとってこれは、ターゲット外のユーザーにも動画が届く可能性があることを意味します。想定していなかった層からの反応が得られることもあれば、ターゲット層に効率的に届かないこともある。良くも悪くも、予測が難しい側面があります。


企業運用で押さえておくべきポイント

アルゴリズムの仕組みを踏まえ、企業運用で押さえておくべきポイントを整理します。

冒頭の3秒で引きつける

早期離脱を防ぐためには、動画の冒頭で視聴者の興味を引く必要があります。「この動画は何についての動画か」が一目で分かる構成にする、あるいは冒頭にインパクトのあるシーンを配置することが効果的です。

最後まで見たくなる構成にする

視聴完了率を高めるためには、「最後まで見たい」と思わせる構成が必要です。結論を先に見せるか、あえて最後まで引っ張るか。動画の内容に応じて、適切な構成を検討しましょう。

エンゲージメントを促す

コメントを誘発する問いかけ、シェアしたくなる内容、保存しておきたい有益な情報。エンゲージメントを高める工夫を意識的に取り入れることが重要です。

関連性の高いハッシュタグを使用する

人気のハッシュタグを無関係に使用するのではなく、動画の内容に関連するハッシュタグを選定しましょう。アルゴリズムは、ハッシュタグと動画内容の一致度を評価します。

他SNSへの誘導に注意する

動画内で「続きはYouTubeで」「詳しくはInstagramへ」といった他SNSへの誘導を行うと、アルゴリズム上でマイナス評価を受ける可能性があります。プロフィールにリンクを設置することは問題ありませんが、動画内での過度な誘導は避けたほうが賢明です。

コミュニティガイドラインを遵守する

TikTokのコミュニティガイドラインに違反する内容(暴力的な表現、不適切な言葉遣いなど)は、アルゴリズムによって表示が制限されます。企業アカウントとして、ガイドラインの遵守は大前提です。


アルゴリズムは変化し続ける

TikTokのアルゴリズムは、固定されたものではありません。ユーザー体験を最適化するため、継続的にアップデートが行われています。2024年には「再生回数が急に伸びなくなった」という声が多く上がり、アルゴリズムの変更が話題になりました。

運用においては、アルゴリズムの変化に過度に振り回されないことも重要です。アルゴリズムの本質的な目的は「ユーザーに価値のあるコンテンツを届けること」。この目的に沿ったコンテンツを作り続けることが、長期的な成功につながります。


まとめ

TikTokのアルゴリズムは、ユーザーの行動データ、動画の属性情報、デバイス設定などを総合的に評価し、各ユーザーに最適化されたコンテンツを「おすすめ」に表示する仕組みです。

フォロワー数ではなく動画の質が評価される点が、TikTokの大きな特徴です。視聴完了率、エンゲージメント率、保存数などの指標が高い動画は、より多くのユーザーに表示される。逆に、早期離脱率が高い動画は、表示が伸びません。

企業運用においては、冒頭で興味を引く構成、最後まで見たくなる内容、エンゲージメントを促す工夫が求められます。アルゴリズムは変化し続けますが、「ユーザーに価値を提供する」という本質に沿ったコンテンツ作りを心がけることが重要です。

次の記事では、TikTok運用で知っておくべき用語を解説します。「FYP」「エンゲージメント率」「視聴維持率」など、基本用語を押さえておきましょう。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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