「木から音が出る」という驚き——アイコニック名古屋が採用した、慈愛に満ちた音の空間

2024年2月、名古屋・栄に「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」がオープンしました。三菱地所グループが展開するラグジュアリーホテルで、「旅する、チュウブ」をコンセプトに掲げています。

このホテルのロビー、スイートルーム、そしてホテル内の中国飯店「BAR蒼」に、ある革新的な音響設備が導入されました。木そのものが共振して音を奏でる「木KION音」です。


「慈愛に満ちた優しさ」を音で表現する

木KION音の開発者・横濱金平氏は、ホテルのコンセプトを理解した上で、こう語ります。

「デザインコンセプトを聞きながら心の中に浮かんだのが、慈愛に満ちた優しさ。そういうものを表現できたらいいなという風に思いました」

従来のスピーカーとは全く異なる方法で、木材を共振させる技術。樹齢100年の杉の木の材を主体とした板を使い、1年ほど時間をかけて丁寧にチューニングを行いました。

「音は耳で聞くだけではなくて、実は触感で感じることができます」

木KION音の音は、従来のHi-Fiオーディオとは異なる、包み込むような音場と柔らかい音質が特徴です。


「包み込む、包まれる感」——設計担当者の印象

設計を担当した竹中工務店の黒栁亮氏は、木KION音の音をこう表現します。

「金平さんのスピーカーを入れたのは、スイートと、あとロビーのところも入れているんですけども、あれ聞いた時に、なんかこう、包み込む、なんかそんなような、包まれる感がすごくあるなってのが印象です」

ラグジュアリー層の顧客は、新しいものを求めている。いいスピーカーを知っている人たちに、驚きを与えたい。黒栁氏はその意図をこう語ります。

「その辺のスピーカーとは違う音の体験をここではしてみてくださいっていうことで、茶室では、茶室のお天井に金平さんのやつをつけて、それが上から音が降ってきながら包まれる。その中でお茶を飲んでみてください」


「これしかない」——初めて聴いた瞬間の確信

ホテル内の中国飯店「BAR蒼」を運営する春原康宏氏は、導入を決めた瞬間をこう振り返ります。

「一番感動したのは音、その優しい音ですよね。スイートルームの方で金平さんのスピーカーを拝見して、それに共感を得た。初めてそのスピーカー聴いた時に、いや、これしかないなと」

飲食店にとって、音は五感を通じた体験の重要な要素です。しかし春原氏は、それまで音をあまり意識したことがなかったと言います。

「やっぱり飲食って、音や、目で見た視覚、触覚、そういうのが全部五感を通じて成り立ってると思うんです。今まで音ってのはあんまり意識したことがなかったんですけども、スピーカーから流れてる音と違いますし」


「木全体から音が出ている」——1000人が驚いた体験

レセプションで約1000人のゲストにスピーカーを説明した際の反応を、黒栁氏はこう語ります。

「まず最初は、え、木の後ろにスピーカーがあるの?みたいな。いや、違います。触ってみてください。この木全体から音が出てきてるんですよって言ったら、もう皆さんも驚きの、え、そんなものがあるの?って。木から音が出るのっていうところから、あ、でも本当すごいってもう皆さん驚かれます」

人を感動させたり、驚かせたりすることが好きだという春原氏。飲食において大事なのはフードの部分だが、サービスと内装空間も同様に重要だと考えています。

「その三角形のバランスが、これを入れたことによって見事に取れたなというのが、今回導入して良かったなと思う点です」


「フィーリングが合う」——コンセプトを読み込む姿勢

黒栁氏は、横濱氏との協働についてこう語ります。

「こういうホテルのコンセプトにしたいんだよって冊を作って持ってったら、本当に隅々まで理解した上で、こういうホテルを作りたいですよねって言ってくれて。そこまで読み込んでくれてたんやと思って」

フィーリングが合うから一緒に仕事をする。その関係性が、1年をかけた丁寧な物作りを可能にしました。


「チェックアウト時に心が豊かになる」体験

黒栁氏は、このホテルが提供したい体験をこう締めくくります。

「チェックインする時よりも、チェックアウトする時の方が心がちょっと豊かになったかなっていうところで、今まで知らなかった体験を知ったっていうところが、本当になんか、人生でいいことがあったなみたいな風に思ってもらえると嬉しい」

木KION音は、その「今まで知らなかった体験」の一つとして、ホテルの空間に溶け込んでいます。


アストライドのミッション

「木全体から音が出ている」

触れてみてください、と言われて木に触れる。そこから音が出ている。その驚きは、映像を見ているだけでは伝わりきらないものです。しかし、導入を決めた方々の表情、言葉、そして「これしかない」という確信——それらを映像として記録することで、その驚きの一端を伝えることができます。

私はこれまで、200社以上の経営者インタビューに携わる中で、さまざまな「想い」に触れてきました。横濱氏が「慈愛に満ちた優しさ」を表現しようとした想い、黒栁氏が「いいスピーカーを知っている人を驚かせてやろう」と考えた想い、春原氏が「五感を通じた体験」を追求した想い——それぞれの想いが重なり、一つの空間が生まれています。

アストライドは、こうした「想い」を映像として記録し、より広く届けることに取り組んでいます。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。