企業YouTubeの目的設定|採用・ブランディング・集客の戦略

この記事でわかること
- 企業がYouTubeで達成可能な5つの目的とその特徴
- 目的ごとに異なるコンテンツ設計の方向性
- 再生数だけに囚われないKPI設定の考え方
- 成果が出るまでの現実的な期間(6〜12ヶ月)
- 効果を判断するための評価サイクルの設計方法
「YouTubeを始めたい」という声が社内で上がったとき、最初に問われるべきは「何のために?」という問いです。
世界で約25億人、日本国内でも7,000万人以上が利用するYouTubeは、企業にとって大きな可能性を秘めたプラットフォームです。しかし、目的が曖昧なまま運用を始めると、動画の方向性が定まらず、成果も見えにくくなります。「とりあえず始めてみたが、効果がわからない」「何を指標にすればいいのかわからない」といった状態に陥る企業は少なくありません。
この記事では、企業がYouTubeで達成可能な目的を整理し、それぞれに応じたコンテンツ設計とKPI設定の考え方を解説します。目的なき運用を防ぎ、自社に合った目標設定の指針となれば幸いです。
企業がYouTubeで達成できる目的にはどのようなものがあるのか?
企業がYouTubeチャンネルを運用する目的は、大きく5つに分類できます。自社がどの目的を優先するかによって、制作すべきコンテンツや追うべき指標が変わってきます。
1. 採用活動
YouTubeは求職者へのアプローチ手段として有効です。求人媒体では伝えきれない「職場の雰囲気」や「社員の人柄」を動画で伝えることで、応募前の段階で企業文化への理解を深めてもらえます。
採用目的のYouTube活用には、潜在層へのリーチという特徴があります。転職サイトに登録していない層にも動画を届けられるため、「いつか転職するかもしれない」という潜在的な求職者との接点を作ることが可能です。
また、入社後のミスマッチ防止にも効果が期待できます。職場のリアルな様子を見せることで、「思っていた雰囲気と違った」という早期離職を減らす可能性があります。
2. ブランディング・信頼構築
企業の価値観やビジョン、社会貢献活動などを動画で発信することで、ブランドイメージの向上につなげる目的です。
テキストや静止画では伝えきれない「企業の温度感」を動画で表現できる点が強みとなります。経営者の想いや、製品開発の背景にあるストーリーを映像化することで、視聴者に「信頼できる会社」という印象を与えやすくなります。
動画は削除されない限りYouTube上に残り続けるため、長期的な資産形成という側面もあります。テレビCMのように期間限定ではなく、いつでもアクセス可能なブランド発信の場として機能します。
3. 技術伝承・ノウハウ共有
製造業や専門サービス業において、自社の技術力や専門知識を動画で発信する目的です。
業界の専門知識やノウハウを分かりやすく解説することで、「この会社は頼れる存在だ」という信頼感を醸成できます。文字だけでは伝えにくい技術的な内容も、動画であれば視覚的に理解してもらいやすくなります。
また、社内向けの技術伝承ツールとして活用するケースもあります。熟練者の技術を映像として記録し、若手育成に活用する企業も増えています。
4. 集客・リード獲得
YouTubeを検索エンジンとして活用し、見込み客を自社サイトや問い合わせへ誘導する目的です。
YouTubeはGoogleに次ぐ世界第2位の検索エンジンとも言われます。ユーザーが抱える課題に対する解決策を動画で提供し、興味を持った視聴者を自社サービスへ導く導線設計が重要になります。
動画コンテンツは文章と比較して約2倍の記憶定着率があるという調査結果もあり、製品やサービスの魅力を印象に残りやすい形で伝えられます。
5. 商品・サービス紹介
新商品の機能紹介やサービスの利用方法を動画で解説し、購買促進につなげる目的です。
実際の使用シーンを映すことで、顧客が利用イメージを描きやすくなります。テキストや静止画だけでは伝わりにくい商品の魅力も、動画であれば直感的に理解してもらえます。
YouTubeショッピング機能を活用すれば、動画から直接ECサイトへ誘導することも可能です。
目的によってコンテンツ設計はどう変わるのか?
目的が異なれば、制作すべきコンテンツの方向性も変わります。ターゲット、トーン、投稿頻度の3つの観点から整理します。
ターゲットの違い
採用目的であれば、求職者(特に若年層)がターゲットになります。彼らが知りたいのは「どんな人が働いているのか」「職場の雰囲気はどうか」といった情報です。
ブランディング目的であれば、既存顧客や取引先、投資家など幅広いステークホルダーがターゲットになります。企業の価値観や社会的な取り組みへの関心に応える内容が求められます。
集客・リード獲得目的であれば、自社サービスに関心を持ちそうな見込み客がターゲットです。彼らが抱える課題を起点にしたコンテンツ設計が必要です。
トーン・世界観の違い
採用目的のコンテンツは、親しみやすさや働く楽しさが伝わるトーンが適しています。社員の素顔が見える内容、時にはユーモアを交えた表現も効果的です。
ブランディング目的であれば、企業の品格や信頼性を損なわないトーンが求められます。映像のクオリティにもある程度の投資が必要になる場合があります。
集客・リード獲得目的であれば、課題解決に役立つ実用的なトーンが基本です。視聴者の疑問に対して誠実に答える姿勢が信頼につながります。
投稿頻度の考え方
採用目的の場合、採用シーズンに合わせた計画的な投稿が効果的です。通年採用であれば、定期的な更新で「活発に動いている会社」という印象を与えることも重要になります。
ブランディング目的であれば、頻度よりも1本あたりのクオリティを重視するアプローチもあり得ます。企業イメージを損なう低品質な動画を量産するよりも、練られた内容を適切な間隔で発信する方が効果的な場合があります。
集客・リード獲得目的であれば、一定の投稿頻度を維持することが重要です。YouTubeのアルゴリズム上、定期的な更新がチャンネルの評価向上につながるとされています。
KPI設定で再生数以外に注目すべき指標は何か?
「再生数」はYouTubeの成果を測る最もわかりやすい指標ですが、企業チャンネルにおいては再生数だけを追いかけることが必ずしも適切とは限りません。目的に応じた指標設定が重要です。
視聴維持率
動画がどれだけ最後まで視聴されたかを示す指標です。視聴維持率が高ければ、コンテンツの質が評価されている証拠であり、YouTubeのアルゴリズムからも好まれます。
視聴者が途中で離脱している場合、どの時点で離脱が多いかを分析することで、コンテンツ改善のヒントが得られます。
エンゲージメント率
コメント数、いいね数、共有数を視聴回数で割った数値です。視聴者がどれだけ能動的にコンテンツと関わったかを示します。
業界平均は2〜3%とされていますが、ニッチな専門領域では10%を超えることも珍しくありません。自社のチャンネルがどの程度のエンゲージメントを獲得できているか、定期的に確認することが大切です。
チャンネル登録率
1回の視聴でどれだけのユーザーがチャンネル登録に至ったかを示す指標です。企業チャンネルでは0.5%前後が平均的とされています。
チャンネル登録者は、登録していないユーザーに比べて2倍多く動画を視聴するというデータもあり、継続的な関係構築の基盤となります。
コンバージョン指標
YouTubeから自社サイトへの訪問、資料ダウンロード、問い合わせといった具体的なアクションを測定する指標です。
Googleアナリティクスとの連携により、YouTube経由の流入がどのような行動につながったかを追跡できます。集客・リード獲得を目的とする場合は、この指標が最も重要になります。
インプレッションとクリック率
インプレッション数は動画のサムネイルがユーザーに表示された回数、クリック率はそのうち実際に動画が再生された割合です。
YouTubeによると、全チャンネル・全動画の半数はクリック率が2〜10%の範囲にあるとされています。クリック率が低い場合は、サムネイルやタイトルの改善が必要かもしれません。
成果が出るまでにどれくらいの期間を見込むべきか?
YouTubeチャンネル運営において、短期的な成果を期待することは現実的ではありません。適切な期待値を持つことが、途中で挫折せずに継続するための鍵となります。
成果が見え始めるまでの目安
多くの企業チャンネルにおいて、成果が出始めるまでに4〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。SEOに取り組んでいる企業であれば、この感覚は馴染みがあるかもしれません。
YouTubeのアルゴリズムに評価され、安定して成果が出るまでには、半年から1年ほどかかると考えておく方が現実的です。チャンネル登録者数1,000人の達成には6〜12ヶ月、収益化条件である総視聴時間4,000時間の確保には平均して10ヶ月かかるというデータもあります。
B2B企業は時間がかかる傾向
B2B企業のYouTubeチャンネルは、B2C企業と比べて約2ヶ月ほど成果が出るまでに時間がかかる傾向があります。
これは、B2Bの商材が一般消費者向けに比べてニッチであること、意思決定プロセスが長いことなどが要因として考えられます。焦らずに質の高いコンテンツを積み上げていく姿勢が重要です。
長期的な視点を持つ
YouTubeチャンネルの運営は「マラソン」と捉えるべきです。動画を数本公開しただけで運営が成り立つわけではありません。軌道に乗るまで、企業に利益をもたらすようになるまでに1年以上かかることもあります。
一方で、一度軌道に乗れば、動画は資産として蓄積され続けます。過去に投稿した動画が将来の見込み客にリーチする可能性を持っている点が、他のマーケティング施策にはないYouTubeの強みです。
効果を判断するための評価サイクルはどう設計すべきか?
KPIを設定して終わりではなく、定期的に測定し、効果検証・改善を行うサイクルを回すことが必要です。
月次での定期確認
基本的な指標は月に一度確認することを推奨します。YouTubeアナリティクスで確認できる主な項目として、総再生時間、視聴回数、チャンネル登録者数の推移、視聴者維持率、トラフィックソース(どこから視聴者が来ているか)などがあります。
特に総再生時間はチャンネルの評価に直結する重要な指標であるため、必ずチェックしましょう。
縦の比較を重視する
よくある分析として「競合チャンネルと比較して登録者数が少ない」「競合の方がコメント欄が盛り上がっている」といった横の比較があります。
しかし、競合と自社ではチャンネル運用の目的が異なる可能性があり、ターゲットやコンセプトも違うかもしれません。横並びで比較すると、見当違いな分析をしてしまう恐れがあります。
まずは自社チャンネルの過去のデータと直近のデータを比較する「縦の比較」を重視することを推奨します。先月と今月でどう変化したか、3ヶ月前と比べてどう成長したかを見ることで、自社の改善点が明確になります。
四半期ごとの振り返り
月次の確認に加えて、四半期ごとに大きな視点での振り返りを行うことも効果的です。
当初設定した目的に対して、チャンネルは正しい方向に進んでいるか。コンテンツの方向性を修正すべき点はないか。リソース配分は適切か。こうした問いを定期的に立てることで、目的を見失わない運用が可能になります。
改善アクションにつなげる
データを確認するだけでは意味がありません。再生数や視聴維持率が低ければ、サムネイルやタイトルの改善、動画内容の見直しなど、具体的な改善アクションにつなげることが重要です。
このPDCAサイクルを回し続けることが、YouTube運用で成果を出すための基本姿勢です。
まとめ
YouTubeチャンネルの運用を成功させるためには、「何のためにやるのか」という目的を最初に明確にすることが不可欠です。
採用、ブランディング、技術伝承、集客、商品紹介——目的によって制作すべきコンテンツも、追うべき指標も異なります。再生数だけに囚われず、自社の目的に応じたKPIを設定し、定期的に評価・改善を行うサイクルを回していくことが大切です。
成果が出るまでには6〜12ヶ月のスパンを見込む必要があります。短期的な成果を求めすぎず、長期的な資産形成という視点を持って取り組むことで、YouTubeは企業にとって価値あるマーケティングチャネルとなり得ます。
まずは自社がYouTubeで何を達成したいのか、改めて整理することから始めてみてください。
この記事からわかるQ&A
企業がYouTubeチャンネルを始める際、最初に決めるべきことは何ですか?
最初に決めるべきは「何のためにYouTubeを運用するのか」という目的です。採用、ブランディング、集客など、目的によって制作すべきコンテンツや追うべき指標が変わります。目的が曖昧なまま始めると、動画の方向性が定まらず、成果も見えにくくなります。
YouTubeの成果を測る際、再生数以外にどのような指標を見るべきですか?
目的に応じて、視聴維持率(動画がどれだけ最後まで見られたか)、エンゲージメント率(コメント・いいね・共有の割合)、チャンネル登録率、コンバージョン指標(サイト訪問や問い合わせ数)などを確認することが重要です。YouTubeアナリティクスでこれらの指標を測定できます。
企業YouTubeチャンネルで成果が出るまで、どれくらいの期間がかかりますか?
多くの企業チャンネルにおいて、成果が出始めるまでに4〜6ヶ月、安定して成果が出るまでには半年から1年ほどかかります。B2B企業の場合はB2C企業より約2ヶ月長くかかる傾向があります。短期的な成果を求めすぎず、長期的な視点で取り組むことが重要です。
目的によってコンテンツの作り方はどう変わりますか?
採用目的であれば社員の素顔や職場の雰囲気が伝わる親しみやすいコンテンツ、ブランディング目的であれば企業の価値観や信頼性を表現する品格のあるコンテンツ、集客目的であれば視聴者の課題解決に役立つ実用的なコンテンツが適しています。ターゲットとトーンを目的に合わせて設計することが大切です。
YouTubeチャンネルの効果をどのように評価すればよいですか?
月に一度、YouTubeアナリティクスで総再生時間、視聴回数、チャンネル登録者数、視聴者維持率などを確認することを推奨します。競合との比較よりも、自社の過去データとの比較(縦の比較)を重視し、改善点を見つけて具体的なアクションにつなげるPDCAサイクルを回すことが成果につながります。
引用・参考資料
- YouTubeクリエイターアカデミー「チャンネル登録者は、登録していないユーザーに比べて2倍多く動画を視聴する」
- YouTubeヘルプ「インプレッションのクリック率について:全チャンネルと全動画の半数ではクリック率が2〜10%の範囲」
- ウェブ解析士ナレッジ「企業YouTubeチャンネルの運営方法」(2024年5月)
- 株式会社エヌフォース「企業のYouTube運用の事例12選」(2025年2月)
- StockSun株式会社「YouTubeが集客/採用/ECをいかに助けるかプロが解説」(2025年6月)
- Region Growth Partners株式会社「信頼を数字に変える:企業YouTubeのKPI設計と分析術」(2025年7月)
- PR TIMES MAGAZINE「YouTubeの効果測定の方法」(2024年2月)
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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