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社内報が読まれないのはなぜか。原因の分解と、音声にして変わる範囲

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この記事でわかること

  • 「読まれていない」という実感が、どの調査でどこまで裏づけられるのか
  • 社員が社内報に求めている内容と、実際にそこへ載っている内容のずれ
  • 同じ文章でも、声にすると書き手の思考が伝わるという心理学の実験結果
  • 紙・Web・朝礼・チャット・音声で、社員が受け取れるものがどう変わるか
  • 音声へ移して変わる範囲と、音声では変わらない範囲

社内報の閲読率が上がらないというお話を何度か耳にしたことがあります。社内報に関する出典が異なる3つの調査を比較すると、「4割しか読まれていない媒体」、「社員の6割が理念に触れている媒体」とする複数の結果がありました。

数字の食い違いは、それぞれの調査が測っている対象の違いから生まれました。詳細を確認すると、社内報が届けられているものと、そうでないものの境界線が見えてきます。社内報が届けきれていないのは、決まったことの内容よりも、その決定に至るまでに経営者が何を天秤にかけてその決定に至ったかという思考についてです。

アストライドは、代表が200社以上の経営者インタビューを重ねてきた経験を土台に立ち上げた会社です。その取材の蓄積のなかで、社内へ言葉が届いている会社と届いていない会社の違いを見てきました。


「読まれていない」は、どの数字を見るかで変わる

社内報の届き方を測った調査は、少なくとも3種類あります。それぞれの調査が違う質問をしているため、出てくる結論も違う方向を向きました。

産業編集センターが155社へ実施した調査では、Web社内報の閲覧率のボリュームゾーンが4割に集まっています。5割を超えていると答えた企業は、およそ3社に1社にとどまりました(2022年11月〜2023年1月実施)。同社はこの状態を「4割の壁」と呼んでいます。この調査が質問した相手は、社内報を出している側の会社でした。

いっぽう、タンシキ経営・広報研究所が全国の常勤役員と正規雇用者1,113名へ聞いた調査では、まったく違う絵が出ています(2026年2月25日実施)。自社で実施されている社内広報の施策について、「毎回必ず見る」と「たまに見る」を合わせた接触率は、主要な施策でおおむね8割前後でした。「全く見ない」と答えた層は1割を切っています。この調査が質問した相手は、受け取る側の社員でした。

3つ目に、電通PRコンサルティングの企業広報戦略研究所が上場企業で働く1,000人へ聞いた調査があります。企業理念を目にする機会をたずねた設問で、最も多く挙がった媒体が社内報の60%でした(2023年11月公表)。企業ウェブページが52%、社長のプレゼンテーションやメッセージが46%、動画が31%と続いています。社員が理念に触れる入り口として最も多く挙がったのは、社長本人の発言よりも社内報のほうです。

3つの数字は矛盾していません。会社側が測った閲覧率は4割前後にとどまり、社員側の自己申告では8割が何かしら目にしており、理念に触れる機会としては社内報が首位に立つ、という状態です。ただし3つ目の調査の対象は上場企業に勤める人であり、中小企業がそのまま当てはまるかどうかまでは、この調査から分かりません。

単純に閲読率が低いという理由で、社内報を廃止してしまうと、社員が理念に触れる最大の入り口がひとつ消えてしまいます。社内報が読まれないという悩みを、単に社内報の発刊をやめる方向に向けてしまうのは考え直すべきかもしれません。

トヨタが73年続けた紙をやめたとき、何を残したのか

紙をやめる判断を実際に下した会社もあります。トヨタ自動車は1950年から発行してきた紙の社内報を、2023年11月に終刊しました。73年の歴史に区切りをつけたうえで、その役割はオウンドメディアのトヨタイムズが引き継いでいます。

この判断が示しているのは、媒体の廃止よりも機能の移し替えです。同社はトップの考えと現場の動きを社内へ伝える機能を残したまま、それを載せる器のほうを入れ替えています。紙の制作と配布にかかっていた時間の振り向け先は、更新頻度と到達範囲のほうです。

同じ判断が中小企業にそのまま当てはまるとは限りません。トヨタが移した先は、専任の編集体制を持つオウンドメディアでした。移し替える先の体制を用意しないまま紙だけをやめた会社では、社内へ言葉が流れる経路が単純に1本減ります。

社員が求めている内容と、載っている内容のずれ

社員が社内報に期待している内容は、同じ調査から読み取れます。タンシキの調査には、閲覧する理由をたずねた設問がありました。第1位が「会社の経営方針やビジョンを知りたい」の35.8%で、僅差の第2位が「業務に必要な情報が得られる」の35.1%でした。「気分転換になる、コンテンツとして面白い」を挙げた人は15.1%にとどまります。

Voicyが1,987名へ実施した調査は、社内報に求める改善点も聞いています(2023年9月20〜22日実施)。第1位に挙がったのは、業務連絡以外の親しみやすい内容を求める回答でした。第2位には、場所を選ばずどこでも確認できるようにしてほしいという回答が並んでいます。同じ調査で7割の従業員が社内報を重要だと答え、3割が実際には開いていないと答えました。

2つの調査が指しているのは、同じ方向です。社員が読みたい内容は経営の方針であり、業務連絡だけで埋まった紙面から社員は離れていきます。経営方針を知りたいという需要が最も大きく、その需要に応える紙面が最も足りていません。

ここで注意したい点があります。経営方針を載せていない会社は、そう多くありません。載っていないのは、その方針に至るまでに経営者が何と何を比べ、どちらを諦めたのかという過程のほうです。決定の結果は通達として書けるものの、決定の思考は通達の書式に収まりませんでした。

口で伝えた方針がどこで薄まるかは、朝礼で話した方針は、なぜ薄まるのかにまとめています。

読まれない原因は、3つに分かれる

紙面を作り直す前に、原因の切り分けが要ります。2つの調査が挙げた理由は、大きく3つに分かれました。

原因1:時間

Voicyの調査で、社内報を「あまり開かない」「全く開かない」と答えた人の理由の第1位が「社内報を開く時間がないから」でした。4割以上がこう回答しています。タンシキの調査でも「業務が忙しく見る時間がない」が30.9%で最多に並びました。

レイアウトを整えても、写真を大きくしても、社員が1日に使える時間そのものは増えません。紙面を磨いて閲読率を押し上げられる余地は、多くの経営者が見積もっているより小さいと私は考えています。

原因2:内容

タンシキの調査では「内容がつまらない、興味が持てない」も30.9%で、時間と同率の首位に並んでいます。Voicyの改善要望で業務連絡以外の内容を求める声が第1位に来たことと、この数字は同じ現象を別の角度から捉えたものです。

内容が原因である場合、経営者が先に手をつけるのは書き方よりも題材のほうになります。人事異動と表彰と行事の告知で埋まった紙面には、社員が読む理由がありません。

原因3:当事者性

「自分には関係ないと感じる」を挙げた人が18.6%を占めました。この層に届くのは、分量の削減でも読みやすさの改善でもありません。自分の仕事と会社の方針がどこで接続しているかを、社員自身が見つけられる形にする必要があります。

Voicyの改善要望の第2位に挙がった「どこでも確認できるようにしてほしい」は、この3つとは別の軸です。工場の作業台の前や配送中の運転席、施工現場の足場の上で働く社員の目は、文字に向く前に次の作業へ移っていきます。

同じ文章でも、声にすると書き手の思考が伝わる

内容と当事者性の問題に、媒体の選択がどう関わるのか。ここに、心理学の側から示唆を与える実験があります。

2015年の Psychological Science に、シカゴ大学のジュリアナ・シュローダーとニコラス・エプリーによる実験が載っています。同じ内容が読まれた場合と聴かれた場合で、評価がどう変わるかを比べたものです。実験では求職者が自分を売り込む文章を用意します。評価者が受け取るのは、その文章を読んだものか、本人が話すのを聴いたものか、映像で見たもののいずれかです。

結果は一貫していました。評価者は、同じ内容を読んだときより聴いたときに、その候補者をより有能で思慮深く知的だと評価し、採用したいと答えています。実験3では、候補者本人の代わりに訓練を受けた俳優や一般の成人が同じ文章を読み上げました。それでも同じ差が残っています。音声に映像を足しても、評価そのものは変わりません。実験4ではシカゴ・ブースの採用担当者が評価者となり、職業として採用に関わる人でも同じ方向の結果が出ています。

差を生んだのは、内容そのものよりも声の有無のほうです。声に乗る間の取り方、抑揚、強勢といったパラ言語の手がかりが、話し手の頭が働いていることを聴き手へ知らせています。文字には、その手がかりが残りません。落ちた分だけ、読み手は書き手の思考量を低く見積もる方向へ動いています。

社内報に置き換えると、次のことが起きている状態です。社長が時間をかけて考えた方針を、社長自身が文章に起こして紙面へ載せます。読んだ社員には、そこへ注がれた思考の量が伝わりません。伝わらないまま、社員はその紙面を「また通達が来た」として処理します。

納得していない社員ほど、文字は書き手を遠ざける

同じ研究チームは、意見が食い違う場面で何が起きるかも調べています。論文は Psychological Science の第28巻12号、1745〜1762頁に載りました(2017年)。

実験の参加者は、中絶、アメリカのアフガニスタン戦争、ラップとカントリーのどちらが好きかといった、意見の割れる話題について自分の考えを述べます。別の参加者が受け取るのは、その主張を映像で見たものか、音声で聴いたものか、書き起こしで読んだもののいずれかです。

自分と反対の意見を受け取ったとき、音声で聴いた参加者は、書き起こしで読んだ参加者よりも、相手を思慮深く心を持った存在として評価しています。反対に、文字で読んだ参加者は相手の知性を低く見積もる方向へ動きました。研究チームは4つ目の実験で、この差を生む声の手がかりを特定しています。

論文は結論をこう述べました。反対側にいる相手の心を見くびってしまう傾向は、文字どおりその相手に声を与えることで和らげられる、と。

この結果は、社内コミュニケーションの最も難しい場面に当たります。全社員が方針に納得している会社であれば、経営者はどの媒体を選んでも構いません。問題が起きるのは、方針に釈然としない社員が一定数いるときです。納得していない社員に文字で方針を読ませると、社員はその方針を書いた経営者を、あまり考えていない人として処理します。説明を重ねるほど紙面は増え、読まれない量も増えるばかりです。

声と文字で受け取られ方が分かれる理由は、なぜ声だと理念が伝わるのかにまとめています。

紙・Web・朝礼・チャット・音声で、社員が受け取れるもの

社内へ言葉を流す手段は複数あります。それぞれ運べるものと運べないものが違うため、経営者は置き換えよりも組み合わせで考えるほうが実際的です。

紙の社内報は、一覧性と保存性で優れています。数値と図表、制度の改定、人事の発令といった情報の置き場は、この媒体です。正確さが必要な情報については、社員が手元で読み返せる紙が最も確実になります。紙が運べないのは、書き手の思考の量のほうです。

Web社内報は、更新頻度と検索性の点で紙より優れています。産業編集センターの調査が示した4割の壁は、この媒体で測ったものでした。社員が能動的にアクセスする必要があるため、動線の外にいる職種にはこの媒体が届きにくくなります。

朝礼は、声が乗る点で文字より優れています。制約になるのは再現性です。その場にいた社員にしか届かず、交代勤務や外勤の社員は最初から対象の外に置かれます。話した内容が翌週まで残ることもありません。

チャットやグループウェアは、速度で他を圧倒します。流れる量が多いため、経営の方針は日々の業務連絡に押し流されがちです。3日前の投稿を遡って読み返す社員は、ほとんどいません。

音声配信では、声が乗ったうえで内容が記録として残ります。この媒体は、朝礼の持つ利点を保ったまま再現性の制約を外した形です。社員は移動中や作業中にも聴けるため、パソコンの前にいない職種にも経路が通ります。音声が運べないのは、数値と図表です。桁の多い数字や複雑な表を耳で追うと、正確さが落ちます。

この5つを並べると、経営者が何をどこへ載せるかの判断がつきます。制度の改定と数字は文字へ、決定に至った思考は声へ。この振り分けが、社内へ何をどう載せるかを決めるときの出発点になります。

社員は、社内音声で何を聴きたがっているか

社内向けの音声配信について、利用中の社員へ聞いた調査があります。オトバンクが社内ラジオを導入した企業の社員144名へ実施したものです(2025年6月16〜19日実施、対象は社内ラジオの再生実績がある人)。

満足していると答えた社員が95%、月5回以上聴いている社員が78%を占めました。会社への親しみが増したと答えた社員は93%、今後も続けてほしいと答えた社員は99%です。

数字の読み方には注意が要ります。この調査の対象は、すでに社内ラジオを聴いている社員に限られていました。導入したものの聴かれずに終わった会社の社員は、母集団に入っていません。したがって、これから始める会社がこの水準を見込む根拠には使えないものになります。

この調査で参照する価値が高いのは、満足度よりも次の設問です。社内ラジオで取り上げてほしいテーマを聞いた結果、業界情報やニュースが81%で首位に立ちました。経営陣の考えや今後の方針が69%で第2位、他部署の仕事紹介が60%で第3位です。

タンシキの調査で「経営方針やビジョンを知りたい」が閲覧理由の首位だったことと、この69%は同じ方向を指しています。媒体が紙であれ音声であれ、社員が最も求めているものは経営者の考えです。

音声にしても変わらないこと

社内報を音声へ移して効果が変わる範囲は限定的です。紙媒体の社内報よりも音声が劣っていると考えられる点についても見ていきたいと思います。

例えば、書かれている内容を社員が疑っている場合、経営者が媒体を変えても社員は聞き流します。紙面の記述と社員が日々見ている現実が食い違っているとき、当然ながら社員が重視するのは目の前の現実や事実の方です。この状態でいくら音声を足しても、聞き流される媒体が1つ増えるにとどまります。

数値と図表が中心の内容は、音声に向きません。決算の説明や制度の新旧対照、複雑な手順といった情報については、文字のまま残すほうが社員にとって確実です。

話し手が話すことに強い抵抗を持っている場合、収録は続きません。自分の言葉が整わないまま社内へ流れることに、経営者が耐えられるかどうか。ここは技術で埋められない部分です。

社員の大半がデスクにいて、社内報を開く時間が実際に取れている会社では、音声を足す優先度が下がります。この場合に必要な施策は、媒体の追加よりも題材やテーマの入れ替えのほうです。

浸透の度合いを、再生数から測り直す

社内音声配信の効果を再生数で測ると、経営者は続ける理由を社内へ説明できなくなります。再生数が測っているのは接触までであり、理念が判断に使われているかどうかまでは分かりません。

理念の浸透そのものを測る尺度は、研究の側から提案されています。廣川佳子と芳賀繁は、企業従業員385名を対象に統計的な検証を行いました。その結果、経営理念の浸透を測る17項目が3つの因子へ整理されています(『産業・組織心理学研究』第36巻2号、2022年)。3因子は認知、共感的理解、行動です。

この尺度の実務上の利点は、「知っている」と「行動している」を別の因子として独立に測れる点にあります。内容は覚えているものの意思決定の拠りどころにはしていない、という状態が数値として出てきました。そのずれが見えれば、経営者は打ち手をどちらへ向けるかを決められます。

半年に1回、この3つの観点で社員へ聞くだけでも、浸透の度合いの変化は追えます。再生数は、そこへ至るまでの途中の数字として扱うほうが正確です。

自社に向くかを判断する4つの確認点

社内向けの音声配信を検討するかどうかは、次の4点で判断できます。

読まれない原因は、時間と内容と当事者性のどれにあるか。時間と動線が原因であれば、経営者には音声へ移す余地があります。内容が原因であれば、先に題材を入れ替えてください。社員が書かれた内容そのものを疑っているのであれば、媒体の話は後回しになります。

社員がパソコンの前にいない時間は、1日にどれくらいあるか。工場、配送、施工、店舗。手と目がふさがっている時間が長い職種ほど、耳へ経路を通す価値が上がります。

社長が、整っていない自分の言葉を社内へ出せるか。外向けの広報として作り込むほど、言葉は整っていきます。整いすぎた言葉は、現場で判断に迷った社員の助けになりません。

続ける体制を組めるか。月1回か隔週かの頻度を決め、収録と編集と公開を誰が担うかまで決める必要があります。始めることよりも、続けることのほうがはるかに難しい媒体です。

この4つに自社の言葉で答えられる会社であれば、社内向けの音声配信は検討に値します。答えられない項目が残る会社にとっては、そこを先に片づけるほうが早道です。

まとめ

社内報が読まれないという悩みは、3つの調査を通してみるとより課題が明確になります。会社側が測った閲覧率は、4割前後です。いっぽう社員側の自己申告では8割が何かしら目にしており、理念に触れる機会としては社内報が社長本人の発言を上回って首位に立っています。社内報という媒体は、捨てる対象になりません。

読まれない原因は、社員の時間と紙面の内容と当事者性の3つに分かれます。時間が原因であるなら、経営者が紙面を磨いても社員の1日に空きは増えません。内容が原因であるなら、書き方の改善よりも題材の入れ替えのほうが先に来ます。

心理学の実験が示しているのは、同じ文章でも声にすると書き手の思考が伝わるという事実です。評価者は聴いたときのほうが話し手を有能で思慮深いと判断し、意見が食い違う相手についても、音声で聴いた人のほうが相手を心ある存在として扱います。

一方、音声がもたらす価値には、万能とは言い切れない限定的な側面もあります。数値と図表は文字のまま残り、書かれた内容への不信は媒体を変えても消えません。制度と数字は文字へ、決定に至った思考は声へ。この振り分けが、社内へ言葉を流す設計の出発点になります。

最初にやることを1つだけ挙げるなら、直近の社内報を1号だけ手に取り、載っている記事のうち「なぜそう決めたのか」が書かれているものを数えてみてください。その数がゼロに近いほど、社員が読みたがっているものと紙面の中身が離れています。

この記事からわかるQ&A

社内報をやめて、音声配信に切り替えたほうがいいですか

両方を残している会社がほとんどです。企業広報戦略研究所の調査では、社員が企業理念に触れる機会の第1位が社内報の60%で、社長のプレゼンテーションの46%を上回りました。制度の改定や数字の告知は文字のまま残し、決定に至った思考のほうから音声へ移してください。

社員が聴いてくれるか不安です。業務命令にする必要がありますか

聴取を義務にした会社ほど、番組はかえって続きません。勤務中に聴ける環境だけを用意して、聴くかどうかは本人に委ねる運用が一般的です。義務にせずに聴取率が伸びるかどうかを見れば、経営者は番組の中身の良し悪しをそのまま判断できます。

社長が話し慣れていません。それでも作れますか

作れます。シカゴ大学の実験では、候補者本人の代わりに訓練を受けた俳優や一般の成人が文章を読み上げた条件でも、読まれた場合より高い評価が出ました。話し方の巧拙よりも、声が乗っているかどうかが評価を分けています。台本を用意する代わりに、聞き手のほうで質問を設計してください。

効果はどう測ればいいですか

再生数だけで測ると、経営者は続ける理由を社内へ説明できなくなります。廣川・芳賀が2022年に『産業・組織心理学研究』第36巻2号で発表した経営理念浸透尺度は、n=385の検証を経て認知・共感的理解・行動の3因子で構成されました。半年に1回この3つを社員へ聞けば、経営者は知っているだけの状態と行動に使われている状態を分けて把握できます。

社内音声配信をやめたほうがいいのは、どんな会社ですか

社員が書かれている内容そのものを疑っている会社です。紙面の記述と現場が見ている現実が食い違っている状態では、媒体を音声に変えても社員は同じように聞き流します。伝えたい内容が数値と図表で構成されている場合と、社長が話すことに強い抵抗を持っている場合も、先に別の手を検討してください。

出典

  • 株式会社タンシキ 経営・広報研究所「社内広報の接触状況に関する実態調査(速報)」2026年2月25日実施、インターネット調査、全国の常勤役員・正規雇用者 n=1,113(従業員99人以下が36.7%) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000180748.html
  • 産業編集センター「Web社内報の閲覧率、”4割の壁”」155社への調査、2022年11月〜2023年1月実施 https://www.shc.co.jp/column/6217/
  • 電通PRコンサルティング 企業広報戦略研究所「企業理念に関する調査」上場企業で働く1,000人、2023年11月公表(Business Insider Japan による報道) https://www.businessinsider.jp/post-278832
  • 株式会社Voicy「社内コミュニケーションに関する調査」2023年9月20〜22日実施、インターネット調査、社内報がある企業に所属する Voicy リスナー n=1,987 https://corp.voicy.jp/2023/10/05/10377/
  • 株式会社オトバンク「社内ラジオ利用調査レポート」2025年6月16〜19日実施、社内ラジオ導入企業の社員(再生実績がある人)n=144 https://note.com/audiobook/n/n7ceb4756b808
  • Schroeder, J., & Epley, N. (2015). “The Sound of Intellect: Speech Reveals a Thoughtful Mind, Increasing a Job Candidate’s Appeal.” Psychological Science, 26(6). 実験1〜3bは一般の評価者、実験4はシカゴ・ブースの採用担当者が対象 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25926479/
  • Schroeder, J., Kardas, M., & Epley, N. (2017). “The Humanizing Voice: Speech Reveals, and Text Conceals, a More Thoughtful Mind in the Midst of Disagreement.” Psychological Science, 28(12), 1745–1762. 意見が対立する話題について4実験 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29068763/
  • 廣川佳子・芳賀繁「経営理念浸透尺度の開発」『産業・組織心理学研究』第36巻2号、2022年、企業従業員 n=385、17項目3因子(認知・共感的理解・行動) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaiop/36/2/36_173/_article/-char/ja/
  • トヨタ自動車の紙の社内報「トヨタイムズMagazine」終刊(1950年発行開始、2023年11月終刊、73年) https://toyotatimes.jp/
  • HR総研(ProFuture株式会社)「社内コミュニケーションに関するアンケート2026」2026年1月28日〜2月6日実施、人事責任者・担当者 n=239。「経営層と社員」の間に課題があると答えた割合が中小企業で67%

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

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