Home ナレッジ企業ポッドキャストの効果は、どこまで測られているか
2026.08.102026.08.10

企業ポッドキャストの効果は、どこまで測られているか

, ,

この記事でわかること

  • 国内で実測されたブランドリフトの数値
  • AppleとSpotifyの指標の定義の違い
  • IABのガイドラインが保証する範囲
  • 「完聴率80%」の出所
  • BtoBの売上寄与を測った調査の有無

番組を始める前に、どこまで効果を測れるのかというご質問を、私たちはよくいただきます。稟議の資料に何を書けるかという、実務の話だとお考えください。

この記事では、出所をたどれる一次資料だけを並べます。制作会社の事例紹介や自己申告の数値は、意識的に外しました。

そして、測られていない範囲も同じ分量で書きます。稟議へ書けない数字を混ぜてしまうと、後から社内で信用を失うおそれがあるためです。数字の性格を先に分けておくことが、結局は早道になると私は考えています。


国内で実測された数値があります

大和コネクト証券が、stand.fmの音声広告でブランドリフト調査を公開しています。配信の期間は2023年9月4日から10月16日までです。

対象は、広告に接触した239人と、接触していない196人の合わせて435人でした。両群をアプリ内のアンケートで比べた結果が、次のとおりになります。

指標非接触者との差
ブランド認知+29.1ポイント(約2倍)
興味・関心+17.4ポイント
比較・検討+20.2ポイント
購入・利用意向+8.0ポイント

広告を認知できた接触者は80.6%、接触者の平均の接触回数は8.1回でした。

ただし、この数値の性格に注意が要ります。対象はプラットフォーム内の音声広告であり、企業が自社で番組を運営する形の効果とは別物です。また調査の設計も無作為化した比較試験とは違い、広告主と配信・調査の事業者が共同で公表した結果になります。

聴いた後の行動は、自己申告です

オトナルと朝日新聞社が2023年12月に行った調査もあります。対象は全体10,000人と、月1回以上の聴取者800人です。

ポッドキャストで得た情報を一定の頻度で検索した経験がある人は6割超、商品の購入や訪問の経験がある人は4割超という結果でした。

この数字は、リスナーの自己申告による経験率です。番組への接触が行動を生んだという増分の効果や、売上との因果を示すものとは違います。稟議の資料に載せる場合は、自己申告であることを併記してください。

AppleとSpotifyは、違うものを数えています

配信のプラットフォームが見せている指標を、定義から確かめておきます。

提供元主な指標定義の注意
Apple Podcasts Connectフォロワー、リスナー、熱心なリスナー、再生回数、再生時間、平均再生率「熱心なリスナー」は20分以上または40%以上の聴取。「リスナー」は0秒超の再生。番組データの表示に最低5人という閾値がある
Spotify for Creatorsリスナー、フォロワー、再生、リテンション曲線、中央値の再生時点、離脱・スキップ2026年6月以降の「Play」は30秒以上の視聴・聴取。過去の「Stream」は60秒超
Amazon Music for PodcastersStarts、Plays、Listeners、Followers、Trends公開されている文書がAppleやSpotifyより少ない。プラットフォーム内の指標であり、配信全体の到達とは違う

Appleは、ユニークデバイスごとの完了率と平均再生率へ重心を移していると明示しています。従来のダウンロード中心の把握から、同社は数え方の軸を変えつつあるのだと思われます。なお平均再生率が100%を超える場合は、同じリスナーが複数回聴いたことを意味します。

Spotifyの側で押さえておきたいのは、2026年6月の定義の変更です。「Play」が30秒以上へ変わりましたので、それ以前の60秒超の「Stream」と混ぜて時系列を作らないでください。

Spotifyのリテンション曲線からは、エピソードの各時点で聴いているリスナーの比率と、開始した人の50%が残っている中央値の再生時点を確認できます。番組の改善に使えるのは、この層のデータになります。

IABのガイドラインが保証する範囲

配信の側の規格も見ておきます。

IAB Tech Labが2024年5月に「Podcast Measurement Technical Guidelines v2.2」を公開しています。これは配信サーバーのログを基礎として、ダウンロード・オーディエンス・広告配信を一貫した方法で測るための技術ガイドラインです。

このガイドラインが保証しているのは、配信リクエストの整流化と、重複や無効なトラフィックへの対処になります。実際に何分聴かれたか、広告を認知したか、売上が生まれたかまでは保証していません。

後者を知りたい場合は、AppleやSpotifyのプレイヤー内のログ、ブランドリフト調査、自社のサイトやCRMの計測を別に組み合わせる必要があります。

ダウンロード数は、聴かれた数と違います

ダウンロードとは、端末またはアプリが音声ファイルを取得したという配信側のイベントです。

ここには自動のダウンロード、後で聴くための保存、そして未再生のものも含まれ得ます。ですからダウンロード数という指標は、何人が再生したかとも、どこまで聴いたかとも一致しません。Spotify自身も、ダウンロードが実際の聴取を必ずしも意味しないと明記しています。

実務では、次の3つの層を分けてお考えください。

見る指標
到達可能性IAB準拠のダウンロード、ユニークリーチ、配信面・地域・アプリ別の内訳
実際の聴取Appleのリスナーと熱心なリスナー、Spotifyの30秒以上のPlay、再生時間
聴かれた深さ平均再生率、リテンション曲線、中央値の再生時点、離脱率

再生数と完了率と商談化の関係については、ポッドキャストの成果は、どこまで測れるのかにまとめています。

「完聴率80%」に、一次データは見当たりません

国内では「ポッドキャストの平均完聴率は80%」「悪くても60%」という数値が流通しています。

私たちはこの数値について、母集団・番組数・番組の尺・計測したプラットフォーム・集計の方法をたどれる一次データを確認できませんでした。稟議の資料や、効果を保証する根拠には使わないでください。

そもそも「完聴率」は、業界で統一された用語といえません。Appleの平均再生率は再生時間の平均の割合であり、Spotifyのリテンションは時点ごとに残っている開始者の割合です。どちらも「最後まで到達した人の割合」とは別の数字になります。

公開された国内の横断ベンチマークが見当たらない以上、番組の評価にはAppleとSpotifyの自社実測を使ってください。比べる条件は、同じ尺・同じ形式・公開後の同じ日数です。

BtoBの売上寄与を測った国内調査は、確認できません

最後に、御社が最も知りたいであろうところを書きます。

日本国内で、企業ポッドキャストの商談化率・受注額・売上の増分を、方法論と母数つきで公開した独立調査を、私たちは確認できませんでした。

「信頼が醸成される」「決裁者に届く」「商談につながる」という主張の多くは、制作会社の事例紹介か、自己申告か、広告一般の調査です。番組を起点とした因果を示す公開の一次データとは違います。

ですから、御社が売上への寄与まで測ろうとされるのであれば、自社で設計するほかありません。私たちがお勧めしているのは、各エピソード・ゲスト・CTAに固有のURLやQRコードを割り当て、問い合わせフォームへ流入元の項目を置く形です。この設計であれば、番組から商談までの線を運営側が自社で引けるようになります。

聴かれる場所がどう移ってきたかについては、ポッドキャストの20年もあわせてご覧ください。

まとめ

大和コネクト証券がstand.fmの音声広告で公開したブランドリフト調査では、接触者239人と非接触者196人を比べています。結果はブランド認知が+29.1ポイント、興味・関心が+17.4ポイント、比較・検討が+20.2ポイント、購入・利用意向が+8.0ポイントでした。対象はプラットフォーム内の広告であり、自社番組の効果とは区別が要ります。

オトナルと朝日新聞社の調査では、検索した経験がある人が6割超、購入や訪問の経験がある人が4割超でした。これはリスナーの自己申告による経験率です。

AppleとSpotifyは違うものを数えています。Appleの「熱心なリスナー」は20分以上または40%以上の聴取を指し、Spotifyの「Play」は2026年6月以降で30秒以上を指します。読み手は、過去の60秒超の「Stream」と混ぜないようご注意ください。

IABのガイドラインが保証するのは配信リクエストの整流化までであり、聴取分数も広告認知も売上も対象外になります。ダウンロード数は自動取得や未再生を含み得るため、この指標は聴かれた数と一致しません。

「完聴率80%」に一次データは見当たりません。BtoBの売上寄与を測った国内の独立調査も確認できません。売上まで追いかけるのであれば、固有のURLとフォームの流入元項目で、自社の線を引いていただくのが確実です。

この記事からわかるQ&A

効果を数字で示せますか

範囲を分けてお答えします。stand.fmの音声広告では、接触者239人と非接触者196人を比べてブランド認知が+29.1ポイントという実測が公開されています。一方で、企業が自社で運営する番組のBtoB売上寄与を、方法論と母数つきで公開した国内の独立調査を私たちは確認できませんでした。

ダウンロード数を見ればよいですか

ダウンロードは、端末やアプリが音声ファイルを取得したという配信側のイベントです。自動ダウンロード、後で聴くための保存、未再生も含まれ得ます。Spotify自身も、ダウンロードが実際の聴取を必ずしも意味しないと明記しています。到達可能性・実際の聴取・聴かれた深さの3層を分けてご覧ください。

完聴率の平均はどのくらいですか

国内で流通している「平均80%」「悪くても60%」という数値があります。母集団・番組数・尺・計測プラットフォーム・集計方法をたどれる一次データを、私たちは確認できませんでした。そもそもAppleの平均再生率とSpotifyのリテンションは別の数字です。自社のAppleとSpotifyの実測を、同じ尺・同じ形式・公開後の同じ日数で比べてください。

AppleとSpotifyの数字を並べてよいですか

定義が違いますので、そのままの比較はお勧めしません。Appleの「熱心なリスナー」は20分以上または40%以上の聴取、「リスナー」は0秒超の再生です。Spotifyが数えている「Play」は2026年6月以降で30秒以上であり、それ以前の「Stream」は60秒超を指していました。時系列を作る場合は、定義の変更をまたがないようご注意ください。

商談への寄与を測るには、どうしますか

御社が自社で設計するほかありません。各エピソード・ゲスト・CTAに固有のURLやQRコードを割り当て、問い合わせフォームへ流入元の項目を置いてください。あわせて、商談の場で番組を聴いていたかを直接伺う形も、線を引く助けになります。国内の公開ベンチマークが無い以上、自社の線を引くところから始まります。

出典

  • 大和コネクト証券/stand.fm/オトナル「音声広告ブランドリフト調査」配信期間2023年9月4日〜10月16日。広告接触者239人・非接触者196人(計435人)をアプリ内アンケートで比較。ブランド認知+29.1ポイント、興味・関心+17.4ポイント、比較・検討+20.2ポイント、購入・利用意向+8.0ポイント、広告を認知できた接触者80.6%、平均接触回数8.1回。無作為化比較試験ではなく、広告主と配信・調査事業者の共同公表 https://otonal.co.jp/
  • オトナル×朝日新聞社「ポッドキャスト国内利用実態調査」2023年12月実施。全体10,000人、月1回以上の聴取者800人が対象。ポッドキャストで得た情報を一定頻度で検索した経験がある人は6割超、商品購入・訪問経験がある人は4割超。リスナーの自己申告の経験率であり、増分効果や売上因果を示す数値ではない https://otonal.co.jp/
  • Apple Podcasts for Creators「Podcast Analytics」2026年8月時点で公開されている版を参照。「熱心なリスナー」は20分以上または40%以上の聴取、「リスナー」は0秒超の再生。番組データ表示に最低5人の異なるユーザーという閾値がある。平均再生率が100%を超える場合は同じリスナーの複数回聴取を意味する https://podcasters.apple.com/
  • Spotify Newsroom / Spotify for Creators 2026年6月に「Play」の定義を30秒以上の視聴・聴取へ変更。過去の「Stream」は60秒超。リテンション曲線から各時点の残存比率と、開始者の50%が残る中央値の再生時点を確認できる。ダウンロードが実際の聴取を必ずしも意味しないと明記している https://creators.spotify.com/
  • IAB Tech Lab「Podcast Measurement Technical Guidelines v2.2」2024年5月公開。配信サーバーログを基礎に downloads / audience / ad delivery を一貫して測る技術ガイドライン。保証するのは配信リクエストの整流化と重複・無効トラフィックへの対処であり、実際の聴取分数・広告認知・売上は対象外 https://iabtechlab.com/
  • アストライド 実査記録 2026-08-12 版(買い手質問台帳 E104)。「平均完聴率80%」「悪くても60%」という国内で流通する数値について、母集団・番組数・番組尺・計測プラットフォーム・集計方法をたどれる一次データを確認できない。稟議資料や効果保証の根拠に使わない
  • アストライド 実査記録 2026-08-12 版(買い手質問台帳 E105)。2026年8月12日に、国内の公表資料・調査会社リリース・業界レポートを対象として実査。日本国内で、企業ポッドキャストの商談化率・受注額・売上増分を方法論と母数つきで公開した独立調査は確認できない
  • アストライド「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」月1回=年12本/月2回=年24本/週1回=年48本、番組尺15分、1エピソードの収録は30分程度。配信先はSpotify・Apple Podcasts・Amazon Music・KOEGURA(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-podcast/
  • アストライド「ポッドキャストの成果は、どこまで測れるのか」再生数・完了率・商談化の測り方と、測れない範囲を整理した記事 https://ast-ride.com/knowledge/14898/

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。