拠点が増えてから、社長の考えの届き方や会社としての一体感に、拠点ごとの差が生じていませんか?その差を考えるうえで手がかりとなるのは、社員の意欲よりも、距離によって日々の会話の機会が減る仕組みです。
この記事では、距離と会話の関係を調べた研究の範囲と、訪問・全体会議・チャット・録音で埋められる拠点間の差について取り上げます。拠点ごとに聴ける条件の違いや、社長の訪問回数から接触機会の差を確かめる方法もお伝えします。
この記事でわかること
距離と技術的な会話の頻度との関係を示す研究結果
同じ建物や敷地内の距離を測った研究の範囲と限界
拠点間の情報共有の課題が企業規模によって現れる違い
変化の理由について非デスクワーカーが感じる情報不足
本社と拠点の社員のあいだで開く機会や前提の差
社長の方針を現場の条件に合わせて翻訳する拠点長の役割
訪問・全体会議・チャット・録音で社員に残るものの違い
拠点ごとに異なる聴ける時間と配信の長さを決める基準
全拠点への一律の音声配信が向かない会社の条件
拠点間の差を確かめる訪問回数の限界と理念浸透の尺度
目次
距離が離れるほどコミュニケーションは急減し、約50メートルを超えると低い水準でほぼ横ばいになる アレンの研究が測ったのは、同じ建物や敷地内での距離と会話の関係 拠点間の課題は、規模によって現れ方が違う デスクワーカーに比べ、非デスクワーカーでは変化の理由が十分に伝わっていないと感じる人が多い 拠点が増えると、何が差として開くのか 拠点長が担っているのは、翻訳の仕事 訪問・全体会議・チャット・録音で、拠点の社員に残るもの 拠点によって、聴ける条件が違う この方法が向かない会社 差が埋まったかどうかを、どう測るか まとめ この記事からわかるQ&A 出典
距離が離れるほどコミュニケーションは急減し、約50メートルを超えると低い水準でほぼ横ばいになる
マサチューセッツ工科大学のトーマス・アレンは、1970年代に、研究開発組織で働く技術者や研究者を対象として、座席間の距離と、技術的な話題について会話する頻度との関係を調べました。結果は1977年刊の著書『Managing the Flow of Technology』(MIT Press)にまとめられ、距離と頻度の関係を描いた曲線は、のちにアレン曲線と呼ばれています。
研究では、座席間の距離が大きくなるほど、技術的な会話の頻度が大きく低下する傾向が示されました。
アレンらが2006年に出した共著『The Organization and Architecture of Innovation』によると、技術的な会話が生じる確率は距離とともに急に下がり、約50メートルを超えると低い水準でほぼ横ばいのまま推移します(同書56頁)。
同じ共著でアレンらは、電話やメールが対面の代わりを務めるのかという問いにも答えています。アレンらのデータでは、電話を含むすべての連絡手段で、使われる頻度が距離とともに下がり、メールについても1986年の研究で同じ傾向が報告されていました(同書58頁)。
1989年の研究は、地理的に離れた複数の拠点を持つコンピューターメーカーで、拠点どうしの連絡を追った研究です。拠点の組み合わせの多くで、対面で話す確率と電話で話す確率はほぼ同じで、電話が対面の不足を埋める動きは見られませんでした(同書58〜59頁)。
アレンが測ったのは、研究開発組織の技術者や研究者が、技術的な話題で言葉を交わす頻度です。営業所や店舗、工場で働く社員を直接測った研究とは違うため、この記事では、距離がやりとりを減らす仕組みを読み取るために使います。
アレンの研究が測ったのは、同じ建物や敷地内での距離と会話の関係
測られたのは、同じ建物や同じ敷地のなかの距離です。本社と支店のように離れた拠点どうしの距離は、この研究の対象に入っていません。
ここで注意したいのは、距離が延びるほど比例して悪化するという読み方が成り立たない点です。アレン曲線では、ごく短い距離のうちに大半の減少が起きていました。約50メートルで下げ止まったあとは、ほぼ横ばいのまま推移します。
この形を本社と支店に当てはめると、距離が10キロでも100キロでも、関係は大きくは変わらないと読めます。曲線から読み取れる分かれ目は、同じ建物で日々顔を合わせているかどうかの一点です。拠点を1つ増やした時点で、その拠点の社員は、本社の社員どうしが日々交わす会話に加われなくなります。
もう一つ押さえておきたいのは、この効果が個人の意欲と関係なく働く点です。支店の社員がどれだけ熱心でも、廊下で社長とすれ違う回数は増えません。経営者が拠点の温度差を意欲の問題として扱う限り、打ち手は空回りします。
拠点間の課題は、規模によって現れ方が違う
日本企業の人事担当者が感じている課題も、複数の調査に表れています。
HR総研は、企業の人事責任者と人事担当者331人にWEBアンケートを行い、2020年3月6日に結果を公表しました(調査は2020年1月31日〜2月7日)。社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になると答えた企業は95%、自社の社内コミュニケーションに課題があると答えた企業は76%です。コミュニケーション不足が障害になる業務として最も多く挙がったのは「部門間・事業所間の連携」で、障害になると答えた企業の73%が選んでいます。情報共有ができていないと答えた企業も、約4社に1社ありました。
課題を感じる関係を見ると、部門間が65%、経営層と社員のあいだが58%でした。HR総研の区分では、従業員1,001名以上が大企業、301〜1,000名が中堅企業、300名以下が中小企業です。経営層と社員については規模別の内訳が出ており、大企業50%、中堅企業58%、中小企業62%と、規模が小さいほど高くなっていました。
一方、事業所間のコミュニケーション課題は、企業規模が大きいほど高い傾向が見られました。大企業で4割を超える一方、中小企業ではおよそ2割という水準です。HR総研は、大企業では国内外に分散した事業所どうしのコミュニケーションに難しさを感じている様子がうかがえると述べています。
ただし、この結果の解釈には注意が必要です。拠点数の多い大企業ほど事業所間の課題を強く自覚しており、拠点が2つか3つの段階にある中小企業では、まだ課題として言語化されていないだけかもしれません。課題として挙がる件数の少なさが、問題の不在を示す証拠になるとは限らないところです。
2026年の調査では、企業規模と課題認識の関係は、2020年の調査ほど単純ではありませんでした。HR総研は2026年1月28日から2月6日にかけて人事責任者と人事担当者239人に調査を行い、4月7日に結果を公表しています。社内コミュニケーションに課題があると答えた企業は、大企業64%、中堅企業47%、中小企業58%でした。課題のある関係として「部門間」を挙げた割合は大企業69%、中堅企業71%、中小企業62%、「経営層と社員」は中小企業67%、中堅企業71%、大企業49%です。いずれの関係も、企業規模が大きいほど課題認識が一貫して高くなる結果ではありませんでした。
同じ調査で「事業所間」を挙げた大企業は44%でした。HR総研は、事業所や拠点が多い企業ほど、物理的な距離によるコミュニケーションの課題が生じやすい可能性があると見ています。中堅企業と中小企業の「事業所間」の値は、公開されている本文には載っていません。
デスクワーカーに比べ、非デスクワーカーでは変化の理由が十分に伝わっていないと感じる人が多い
拠点の違いに加えて、働き方の違いによる差も同時に生まれています。
ドイツの Staffbase 社と調査会社 YouGov は、2025年2月12日から21日に6か国の従業員3,574人へオンライン調査を行い、同年5月15日に結果を公表しました。調査では、主にパソコンで働く人をデスクワーカー(回答者の51%)、業務でパソコンをほとんど使わない、またはまったく使わない人を非デスクワーカー(同26%)と分けています。社内コミュニケーションの質に満足していると答えた割合は、デスクワーカーの47%に対し、非デスクワーカーでは29%でした。
会社で最近起きた変化の理由について、あまり、またはまったく知らされていないと答えた割合は、デスクワーカーで36%、非デスクワーカーで45%でした。変化の過程で自分の意見が考慮されていると感じる人の割合も、デスクワーカーの52%に対し、非デスクワーカーは39%にとどまっています。
この調査の対象はオーストラリア、オーストリア、ドイツ、スイス、英国、米国で、日本は含まれていません。回答者の多くは従業員1,000人を超える組織で働いており、27%は5万人を超える組織に属しています。測っているのは満足度と実感で、情報が実際に届いたかどうかの実測とは別です。それでも、デスクワーク中心ではない社員ほど、組織の変化に関する情報を十分に受け取れていないと感じやすい傾向は、拠点を持つ会社が自社の状況を点検するときの手がかりに使えます。
米国の調査会社 Gallup が2020年7月9日に公開した記事によると、自社のリーダー層が組織のほかの人たちと効果的にコミュニケーションを取っていると強く同意した従業員は13%にとどまります。Gallup は勤務地による内訳を示しておらず、本社で働く社員も含めた全体の数字です。
拠点が増えると、何が差として開くのか
ここまでの研究と調査を踏まえて、この記事では、拠点が増えた組織で生じやすい差を次の4つに整理しました。
社長の考えや言葉に直接触れる機会の差。本社の社員にとって、廊下ですれ違った社長に一言たずねるのは日常の一場面です。支店の社員が同じことを確かめるには、多くの場合、拠点長に相談するか、次の全体会議を待つことになります。アレン曲線で距離とともに減っていたのは、こうした日々のやりとりでした。
情報が届く時刻と順序の差。本社で朝に決まった内容が支店へ届くまでには、伝達の手段のぶんだけ時間がかかります。その間に支店で判断が必要になれば、社員は更新前の前提にもとづいて判断せざるを得ません。
質問と反応が本社へ戻る速さの差。支店の社員が疑問を持っても、その疑問が本社へ届くまでには拠点長という伝達・確認の段階が加わり、確認に時間がかかるほど、社員は質問して確かめるより、自分の判断で進める場面が増えます。
4つ目に開くのは、拠点ごとに共有されている前提の差です。うまくいった経験も失敗した経験も、その拠点のなかで共有されて次の判断の材料として使われ、その結果、同じ会社のなかに、拠点ごとに異なる暗黙の前提や仕事の常識が育ちます。
この4つのうち、音声で埋められるのは1つ目だけです。残る3つには、別の手立てが要ります。
拠点長が担っているのは、翻訳の仕事
経営者が拠点長を伝言の中継役として扱うと、拠点への打ち手を誤ります。拠点長の仕事は、社長の方針を現場の条件に合わせて翻訳することです。
人員の構成も設備も顧客の顔ぶれも拠点ごとに違うため、そのまま流した指示は現場の条件に合いません。翻訳こそが拠点長の役割です。翻訳を止めれば、現場は動けなくなります。
問題が起きるのは、社長の原意に社員が直接触れる経路がないときに限られます。この状態では、会社として決めたことと拠点長の運用上の判断とを、社員が見分けられません。拠点長への信頼が厚い職場ほど、両者は一つに見えます。
見分けがつかない状態が続くと、拠点長にも負荷がかかります。拠点長の判断が会社の方針として受け取られているため、方針が変わったときには、拠点長が経緯の説明まで担わなければならなくなるからです。
方針を部下へ伝える中間の管理職について、タンシキの経営・広報研究所が2026年6月1日に公表した調査報告(最終版)も、課長層が部下へ説明するときの材料(要点のまとめなど)を提供し、説明にかかる手間を軽くすることを改善策に挙げています。
社長の原意と拠点長の翻訳の両方が社員の手元にあれば、この混同は解消します。社員が、会社として決めたことと自分の拠点での運用とを分けて受け取れるようになり、拠点長も自分の翻訳が原意から離れていないかを照合できるからです。
伝達の過程で方針の意味が変わる仕組みについては、「朝礼で話した方針は、なぜ薄まるのか 」をご覧ください。
訪問・全体会議・チャット・録音で、拠点の社員に残るもの
拠点へ言葉を流す手段には、それぞれ届く範囲と残り方の違いがあります。
社長による現地訪問は、最も情報量の多い伝達手段です。表情や声の調子、間合い、現場の空気まで含めて、その場でやりとりできます。ただ、訪問の回数には限りがあり、拠点が増えるほど1拠点あたりの訪問頻度は下がる点が制約です。
全体会議では、参加した社員に同じ内容を同時に届けられます。参加できる社員が限られる点と、開催の間隔が空く点が制約です。内容を記録として残さなければ、欠席者や参加者が後から正確に確かめることは難しくなります。
チャットやグループウェアは、速度と到達範囲で優れています。社員が遡って読み直せるのは、文字として残るためです。ただし流れる量が多く、重要な方針が日々の業務連絡に埋もれやすくなります。
録音の強みは、社長が話した言葉を、話した順序のまま全拠点へ届けられることです。聴く時刻を社員が選べるため、交代勤務や外勤の社員も対象に入ります。音声だけでは、数値や図表を正確に見返すことはできません。
この4つを並べると、役割の分担が見えてきます。現場の空気は訪問へ、決定の内容は文字へ、決定の背景や判断の過程は録音へ。この記事では、この振り分けを提案します。
拠点によって、聴ける条件が違う
音声を選ぶ場合でも、拠点ごとに条件が変わります。
工場の作業中に音声を流せるかどうかは、安全の管理と設備の音量で決まります。営業所の社員が聴ける時間帯は、移動の合間や業務開始の前後など、拠点ごとにさまざまです。運転中に聴くことを前提にする場合は、安全への配慮が欠かせません。店舗の社員に残された時間は、開店前の準備のあいだに限られます。
担当者は、拠点ごとに聴ける時間帯を先に調べたうえで、1本あたりの長さを決めます。全拠点の条件が揃わない前提に立ち、長さは聴ける時間が最も短い拠点に合わせるのが現実的です。
勤務中にどうしても聴けない拠点があれば、その拠点には文字の要約を併せて置きます。音声を全拠点へ一律に当てはめる設計は、避けたほうが無難です。
この方法が向かない会社
拠点のあいだで扱う商材も顧客もまったく違う会社には、全拠点に同じ内容を一律に流す運用が合いません。この場合は拠点ごとに別の番組を作るか、全社に共通する話題だけへ絞ってください。
拠点長と本社のあいだに対立が残っている状態でも、収録の前に一度止まる必要があります。社長の言葉が拠点長を介さずに届く仕組みを、拠点長は自分の役割を軽んじられたと受け取りかねません。先に拠点長へ趣旨を説明してから、配信を始めてください。
社員が方針の中身そのものに納得していない場合も、経路を足すだけでは動きません。この状態で必要なのは、伝達手段の追加よりも方針そのものの再検討です。
差が埋まったかどうかを、どう測るか
拠点間の差を訪問回数だけで測ると、経営者は判断を誤ります。訪問の回数は接触の時間や人数を示さず、オンライン会議や個別の連絡も数に入りません。
理念や方針の浸透を測る尺度は、研究の側から提案されています。廣川佳子氏と芳賀繁氏は、経営理念の浸透の度合いを測る尺度を開発し、『産業・組織心理学研究』第36巻2号に発表しました(J-STAGE での公開は2023年5月24日)。2人が2017年3月に、経営理念のある企業で働く正社員521人へ行った Web 調査をもとにまとめたのは、浸透を認知・共感的理解・行動の3つに分けて測る12項目(各4項目)の尺度です。認知には「内容を覚えている」「自分の言葉で他者に説明できる」、行動には「意思決定をする際のよりどころにしている」といった項目が入っています。
この研究の予備調査は、運輸会社2社の3つの拠点で働く社員(計1,374人)を対象に行われています。拠点ごとに分析すると、浸透の構造が2つの要素に分かれた拠点と、3つの要素に分かれた拠点がありました。著者らは、組織から経営理念の背景や運用を伝えられていない場合には「認知」が低くなる可能性があることや、この尺度を浸透の手段の有効性を確かめる研究にも使えることを述べています。
この尺度を拠点別に集計すれば、どの拠点でどの要素が低いのかが見えます。認知は高いのに行動が低い拠点と、認知そのものが低い拠点とでは、打つべき手は別です。
タンシキの経営・広報研究所は、2026年2月25日に全国の常勤役員と正規雇用者1,113名へインターネット調査を行い、4月1日に速報を、6月1日に最終版を公表しました。回答者全体のうち、社内広報に触れて「会社の経営方針や将来のビジョンへの理解が深まった」と答えた人は21.8%で、48.7%は「とくに変化はない/あてはまるものはない」と答えています。
最終版の報告書は、拠点の数による違いも示しています。勤務先で社内広報の施策が1つでも実施されていると答えた割合は、本社だけの会社で36.5%、本社を含めて2〜10拠点の会社で59.9%、11拠点以上の会社で78.8%です。社内広報を見ている人に理由を尋ねると、「会社の経営方針やビジョンを知りたいから」を選んだ割合は、本社だけの会社で24.0%、11拠点以上の会社で45.0%でした。報告書も、規模や拠点数が増えるほど、この理由を選ぶ割合が高い傾向にあると述べています。
社長の考えを拠点の社員に声で伝える番組を社内で始めたい場合は、アストライドの「社内ポッドキャストの導入と運用」 をご覧ください。
まとめ
拠点間の温度差を、支店で働く社員の意欲の問題として受け取る経営者もいます。実際に差を広げているのは、距離のほうです。
アレン曲線が示したのは、席が離れるほど言葉を交わす確率が急に下がり、約50メートルを超えると低い水準でほぼ横ばいになるという関係です。電話やメールも、距離とともに使われなくなっていました。減少の大半がごく短い距離のうちに起きるため、本社と支店の関係は、10キロでも100キロでも大きくは変わらないと読めます。
日本の調査でも、事業所間のコミュニケーションに課題があると答えた企業は、大企業で4割を超えていました(2020年の調査、2026年の調査では44%)。中小企業の約2割という数字は、問題の少なさよりも、まだ課題として言語化されていない段階を示している可能性があります。
拠点が増えると、社長の言葉に直接触れる機会・情報が届く時刻・反応が戻る速さ・共有された前提の4つに差が開きます。音声で埋められるのは1つ目だけです。残る3つには、別の手立てが要ります。
最初にやることを1つだけ挙げるなら、直近3か月で社長が各拠点を訪ねた回数を拠点ごとに数えてみてください。本社と最も訪問の少ない拠点との差は、社長へ直接触れる機会の格差を測る手がかりの1つです。
この記事からわかるQ&A
全拠点に同じ内容を届ければ、温度差はなくなりますか
同じ内容が届いても、拠点ごとに積み上がってきた前提までは揃いません。この記事では、拠点が増えたときに開く差を4つに整理しており、そのうち音声で埋められるのは社長の原意に触れる機会の差だけです。情報が届く時刻、反応が戻る速さ、共有された前提の3つには、別の手立てが要ります。拠点ごとの事情に合わせた説明は、これまでどおり拠点長の側の仕事です。
拠点長から説明してもらうだけでは足りませんか
拠点長の説明は、現場の条件へ合わせた翻訳として欠かせません。足りなくなるのは、社員が会社の決定と拠点長の運用判断を見分けたい場面です。HR総研の2026年の調査では、経営層と社員のあいだに課題があると答えた中小企業が67%に上りました(n=239)。原意と翻訳の両方があれば、社員はその2つを分けて受け取れます。
距離の問題は、オンライン会議で解決しませんか
アレンらの研究は、オンライン会議を対象にしていません。アレンらが2006年の共著で示したのは、電話やメールを含むすべての連絡手段が、対面と同じように距離とともに使われなくなるという結果です。離れた拠点どうしの連絡を追った1989年の研究でも、電話が対面の不足を補う動きは見られませんでした。設定された会議は、廊下で交わされる種類の会話を置き換えません。
誰がどこまで聴いたかを、個人単位で確認できますか
確認できません。アストライドが運営する閉鎖型の配信サービス KOEGURA は、聴く人のログインを求めない設計です。再生の統計は、再生数・完了率・推定ユニークリスナーを匿名で集計したもので、個人は特定しません。
社内音声配信をやらないほうがいいのは、どんな会社ですか
本文で挙げた3つの場合が、向いていない会社にあたります。1つ目は拠点のあいだで扱う商材も顧客もまったく違う会社、2つ目は拠点長と本社のあいだに対立が残っている会社、3つ目は社員が方針の中身そのものに納得していない会社です。オトバンクが2025年6月に行った調査では社内ラジオの継続希望が99%に達していますが、対象は社内ラジオの再生実績がある社員144名に限られており、始める前の判断材料には使えません。3つのどれかに当てはまる場合は、その課題の整理と対話を先に進め、そのうえで配信の設計に入ってください。
出典