インタビュアーの視点 – 三重化学工業株式会社|山川大輔氏
11956年創業の三重化学工業株式会社。三重県松阪市に本社を構え、保冷剤、作業用手袋、医療用品の3つの製品領域で事業を展開しています。代表取締役社長の山川大輔氏は、三代目として、創業者から受け継いだ「社員の幸せを最優先にする」という経営理念を継承しています。
化学工業業界の現状
日本の化学工業・機能性材料製造業界では、デジタル技術を活用した材料開発や、IoT・AIを活用した製造プロセスの効率化が進んでいます。
このような業界環境の中で、三重化学工業は独自の姿勢を貫いています。
洗濯のりから保冷剤へ
「私の祖父が立ち上げた会社で、その立ち上げ当初は洗濯のりとか固形石鹸とかそういったものを作ってたんですけれども、そういう原料であったり配合のノウハウを活用して保冷剤とか冷え枕とかそういった形の方に移っていったと思います」
三重化学工業は、山川社長の祖父が立ち上げた会社です。創業当初は洗濯のりや固形石鹸を製造していましたが、その原料や配合のノウハウを活用して、現在の保冷剤や冷え枕などの製品へと事業を展開してきました。2017年には医療用品ブランド「メディアン」を立ち上げ、医療・介護分野への展開も進めています。
1個1個手作りで作っている
「その商品が1個1個手作りで作っている商品になります。オリジナルの形になってますので、機械で作っていこうと思うとその対応が難しくて、1個1個手作業で丁寧に製品を作らせていただいております」
保冷剤「スノーパック」は、手作業で丁寧に製品を作っています。ケーキなどに付いてくる小さい保冷剤を一番最初に考えたのは、実は三重化学工業です。
「他社にないような保冷剤も作れるし、防寒手袋のシェアは一番だし」
山川社長は、ニッチな市場を攻めているいい会社だと自負しています。防寒手袋「ミエローブ」は業界トップシェアを誇り、多くの製造現場で使用されています。
社員の幸せを最優先にする
「僕は三代目の世代になるんですけど、社員の幸せを高めるという経営なんですね。それはもう創業者から変わらないんですよ」
「昔よくあったと思うけどお客様のほうが先だったんですよ。社員の幸せを一番に持っていきます、もう書き換えたんです順番を」
創業者から変わらない「社員の幸せを高める」という経営理念。山川社長は、お客様よりも社員の幸せを一番に持っていくという順番に書き換えました。
「みなさんの幸せが高まるために何をする、何をする、何をするっていうことでストーリーを作ってやっていたんで、社長が何のために変革してるんだっていうと自分たちのためなんだっていうふうに認識してくれていると僕は思ってますけど」
先義後利の精神
「経営者になりたての頃は、ちゃんと利益を上げる会社にしていかなければいけないと。年を重ねて40代とかになってくると、先にそこが来るんじゃなくて、やっぱり社会貢献とか地域を盛り上げるとか、そういったものが来てそっちからみたいな」
「先義後利っていう言葉があるように、先に何か人のためにすることが当社としてね、本業を通じてですよもちろん、本業を通じて何かできれば、多分リターンはあるんじゃないかなと思っているので」
山川社長は、40代になって価値観が変化したと語ります。利益を上げることよりも先に、社会貢献や地域を盛り上げることが来る。その結果として、リターンがある。
ブランディングを意識した活動
「知らないんです他の方々が三重化学の名前を。それが結構残念で、こんなに面白い商品、すごくニッチなところを攻めているいい会社だと思っているのに」
「やっぱりそこをなんとか上げていくことが企業の変革につながるんじゃないかなって思ったんで、ブランディングというのをすごく意識して活動してきましたね」
BtoB企業でありながら、ブランディングを意識した活動を展開しています。CMを流しても響かない。だから、社会に貢献できる、地域に貢献できることをやっていけば、自ずと知られてくるのではないかと考えました。
10年以上前からずっと続けているのは子育て支援。地元の小学生、中学生、高校生に工場を見てもらったり、保冷剤作り体験をしています。
「昔は松阪駅でタクシーに乗っても三重化学までっていうとつかなかったんですって。結構ショックで。だけど今はなんとつきます」
ミエラボという場
「ミエラボって三重化学のラボラトリーっていう意味なんですけど、当社の場合はものづくりが主役なんで、オフィスの中心にものづくりの場がくるっていうのは僕すごく意識してて」
「三重県松阪にも入ったことのない方も実はミエラボでつながったりするんですよ。本当にいろんな方々が来ていただいて、アイディアを出し合ったり、もちろん商品企画でもいいんですけど、仕組みとかねサービスのことを話し合って、そしてそれを実現していく場だと思っているので」
ミエラボは、オープンイノベーションのプラットフォームとして機能しています。東京に住みながら副業として三重化学工業とつながる個人も参加しています。
ミエラボは僕の集大成かもしれない
「ミエラボは僕の集大成かもしれないですね」
山川社長は、ミエラボを経営者としての集大成と位置づけています。
「そうやって展開させながら実は社員の成長も期待してるんですよ。こんな発想あるんだなぁと本当に感心する部分がありますね。なのでやっぱり物事って結構深みがあるんだなというふうに感じます」
18歳から70代まで
「うち一番最年長のベテランは73歳の方がいるんですよ。70代が5人もいるんですね。働かせてくれてるから健康を保てるとかって言ってくれてるんで、いつまでもいてねって話をしてるんですけど」
「世代ギャップすごいじゃないですか18と70。そうすると考えたも全然違うので、やっぱりそれぞれに合わせたやり方、言い方を知らなければいけないので」
18歳から70代まで、幅広い世代の社員が働いています。山川社長は、世代ギャップを認め、それぞれに合わせたやり方・言い方を知らなければいけないと考えています。
「いろんな人がいるんだなっていうことを、そういうものとして捉えるしかないなと思っているんで」
自分が幸せでなかったら
「自分が幸せでなかったら人に幸せにしようとも思わないし、自分も自分の家族も幸せを感じられてて、そして他の人にもなんか一緒になってね力にあるっていうのがあると思うので、やっぱりそのベースとなるものはしっかりしないといけないっていうのは大事ですよ」
山川社長の言葉には、自分自身の幸せを基盤として、他者の幸せを実現したいという想いが込められています。
「皆さんが輝けるというか、輝ける仕組みが作るからあとは楽しんでねみたいな」
アストライドのミッション
「ミエラボは僕の集大成かもしれないですね」
山川大輔社長のこの言葉は、私たちアストライドの使命と重なります。
私たちアストライドは、これまでに携わった200社以上の経営者インタビューを踏まえ、経営者の想いを映像として記録し発信することを使命としています。山川社長が「社員の幸せを最優先にする」という創業者から受け継いだ経営理念を継承し、ミエラボという場を通じて次世代に伝えようとしているように、私たちもまた、経営者の想いを映像として記録し、未来に継承していくことを目指しています。
「先義後利」——先に何か人のためにすることが、本業を通じてできれば、多分リターンはあるんじゃないか。山川社長のこの言葉は、私たちアストライドの姿勢とも重なります。
経営者の想いを映像として記録し、未来に継承していくこと。それが、私たちの果たすべき役割です。命としています。経営者の想いや哲学、企業の独自性を丁寧に伝え、その価値を未来に継承していきます。
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

































