ブランディングに取り組んでも、経営者が大切にしていることを具体的に説明できず、パーパスを策定したままにしていませんか?その原因の一つとして、経営者の想いが明確な言葉になっていないことが考えられます。
この記事では、言語化されていない企業の特徴や言語化が難しい理由、インタビューと映像の役割、ブランディングと業績の関係について取り上げます。取り組みを始める際の注意点や、経営者に聞きたい問いを考える手がかりもお伝えします。
この記事でわかること
- 言語化されていない企業に見られる特徴
- 経営者の想いを言語化することが難しい理由
- インタビューと映像が言語化を助ける理由
- ブランディングと業績の関係を示す調査とその限界
- 経営者インタビュー映像を検討する際の進め方と注意点
「言語化」されていない企業に見られる3つの特徴
経営者の想いが明確な言葉になっていない
パーソル総合研究所が行った「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」では、従業員が自社の理念に対して抱く印象として「内容が綺麗ごとばかりだ」(36.9%)、「内容がふんわりしている」(36.7%)、「表面的な世間体をつくろっている」(36.4%)という評価が上位を占めました。
この結果から読み取れるのは、理念が抽象的な言葉にとどまり、具体的な判断基準や行動指針として受け止められていない可能性です。「お客様第一」「品質重視」「社会貢献」といった言葉は、どの企業でも使える一般的な表現で、それだけでは独自性を示しにくくなります。
経営者の頭の中には、事業に対する想いや価値観が確かにあるはずです。しかし、それが具体的な言葉として表現されていなければ、社員にも顧客にも伝わりません。
パーパスの策定で終わり、浸透まで至らない
日本経済社が2024年6月に公開した「第2回パーパス実態調査」は、パーパスの策定・浸透に関与した400名を対象としています。策定のきっかけとして、「組織風土改革をしたいから」(28.8%)、「SDGsへの取り組みを強化したいから」(23.5%)、「人事採用を強化したいから」(22.3%)が挙がりました。
一方、日本経済社とエスエムオーが2022年12月15日〜19日に実施した第1回の調査は、勤め先が3年以内にパーパスを策定し、本人がその策定に関与した全国の20〜69歳の400名を対象としています。社内浸透で苦労した点として、「社員からの評価」(35.9%)、「全支社・全事業所への浸透が大変」(31.8%)、「パーパスの社内浸透手法がわからない」(28.0%)が挙がりました。
日本の人事部の記事でも、「理念を浸透させるための活動内容は理解しているものの、実践できていないという企業は少なくありません」という指摘がなされています。その背景として挙げられるのは、働き方の多様化や組織の複雑化によって、経営者から従業員へのメッセージ伝達自体が難しくなっている点です。
伝え方の手段が見つからない
日本経済社とエスエムオーによる第1回の調査では、社外浸透で苦労した点として、「社外への説明が難しい」(29.2%)、「パーパスの外部発信手法がわからない」(26.5%)、「発信する部署や人手が足りない」(21.8%)が挙がっています。
ウェブサイトに理念を掲載しても、読まれなかったり、読まれても印象に残らなかったりする場合があります。パンフレットに特徴を並べた場合も、競合他社との違いが伝わるとは限りません。
なぜ「言語化」は難しいのか
経営者の想いを言語化することが難しい理由には、いくつかの構造的な要因があります。
日常の忙しさに追われる 経営者は日々の業務に追われ、自社の存在意義や独自性について深く考える時間を確保しにくい状況にあります。言語化の大切さを理解していても後回しになりやすいことも、言語化を難しくする理由の1つです。
自分にとっての「あたりまえ」は言葉にしにくい 長年事業を営む中で培われてきた価値観や考え方は、経営者自身にとっては「あたりまえ」のことです。あたりまえのことほど、あえて言葉にする機会が少なく、いざ説明しようとすると言葉が見つかりにくくなります。
抽象的な言葉に逃げてしまう 想いを具体的な言葉にするのが難しいため、経営者は「お客様第一」「品質重視」といった一般的で抽象的な言葉を選びがちです。ただ、そうした言葉だけでは独自性は伝わりません。
映像が「言語化」を助ける理由
経営者インタビュー映像は、こうした「言語化」の課題に対する一つのアプローチとなりえます。
インタビューという形式の効果
経営者インタビューでは、インタビュアーからの問いかけに答える形で話が進みます。「なぜこの事業を始めたのですか」「何を大切にしていますか」「10年後、どのような会社でありたいですか」といった問いに、経営者が自分の言葉で答えていくのが、インタビューの基本的な流れです。
この「問われて答える」やりとりを通じて、経営者は一人で考えているだけでは言葉にならなかったことを整理しやすくなります。
非言語情報の価値
経営者が語る際の表情、声のトーン、間の取り方といった非言語的な情報は、テキストでは伝わりません。
たとえば「品質を大切にしています」という言葉も、テキストで読む場合と、経営者が真剣な表情で、ゆっくりと、言葉を選びながら語る様子を映像で見る場合とでは、受け取る印象が異なります。言葉に込めた思い入れを読み取る手がかりになるのが、表情や声の調子です。
具体的なエピソードが引き出される
インタビューでは、抽象的な理念に加えて、具体的なエピソードが語られる場合もあります。たとえば「品質を大切にしている」という言葉の背景に、きっかけとなった出来事があれば、その出来事を語ってもらうのがインタビューの役割です。見る人は具体的なエピソードを通じて、抽象的な言葉の意味や、その会社の独自性を理解しやすくなります。
ブランディングと業績の関係
2022年版中小企業白書では、ブランドの構築・維持のための取組を実施している企業は約3分の1と報告されています。同白書によれば、取組を行っている企業のほうが、取組を行っていない企業より売上総利益率の水準がやや高い結果でした。
また、日本の人事部が実施した調査では、自社のパーパスを「明確化できている」と回答した企業は50.0%でしたが、業績別に見ると、市況よりも業績が良い企業では54.7%、市況よりも業績が悪い企業では28.1%という差が見られました。
これらの調査結果は、ブランディングやパーパスの明確化と業績との間に何らかの関連がある可能性を示唆しています。ただし、因果関係を断定することはできません。ブランディングに取り組んだから業績が良くなったのか、業績が良いからブランディングに取り組む余裕があるのかは、一概には言えないためです。
現実的なアプローチ
ブランディングを本格的に進めようとすると、多額の費用や専門家の関与が必要になる場合もあります。ただ、そうした費用や人手をすぐに確保できる企業ばかりとは限りません。
経営者インタビュー映像は、比較的取り組みやすい「言語化」の手段の一つと言えるかもしれません。大がかりなブランディングプロジェクトに必要な予算や人手を確保しにくい場合でも、経営者自身が語る映像を1本制作することは、検討しやすい選択肢の1つです。
ただし、映像を制作しただけでブランディングが進むとは限りません。映像はあくまで「伝える手段」で、伝えるべき独自性や想いが定まっていなければ、得られる効果は限られます。制作した映像をどのように活用するかも、事前に決めておきたい点です。
自社の独自性が伝わらない理由は、自社の独自性を伝えられない企業が見落としている視点で取り上げています。経営者インタビュー映像の制作を検討する場合は、アストライドの「経営者インタビュー映像制作」をご覧ください。
おわりに
「言語化」は、ブランディングの出発点です。経営者の想いが明確な言葉になっていなければ、社員にも顧客にも伝わりません。ただ、ここまで見てきたように、経営者が自分の想いを一人で言葉にするには、時間と手間がかかります。
経営者インタビュー映像は、その言語化を助け、言語化された内容を外部に伝える一つの手段です。経営者はインタビューで問いに答えながら考えを整理でき、その様子を映像にすれば、言葉に加えて表情や声の調子も見る人に示せます。
貴社では、経営者の想いをどのような形で言語化していますか。そして、その言語化された内容は、伝えたい相手に届いているでしょうか。
この記事からわかるQ&A
自社の想いが言語化されているか、何を確かめればよいですか?
確かめたいのは、経営者が大切にしていることを具体的な言葉で説明できるか、パーパスの策定後に社内外への浸透まで進んでいるか、その伝え方を検討できているかの3点です。「お客様第一」「品質重視」といった言葉を掲げている場合は、その背景にある考えや出来事まで説明できるかを確かめてください。
経営者の想いを言葉にするのが難しいのはなぜですか?
本文では、考える時間の確保、自分にとっての「あたりまえ」の説明、抽象的な表現への偏りを理由として挙げています。長年の事業を通じて培った価値観は、本人にとって当然のことが多く、言葉にする機会がなければ説明しにくいのが実情です。
インタビューでは、経営者にどのような問いを聞けばよいですか?
本文では、「なぜこの事業を始めたのですか」「何を大切にしていますか」「10年後、どのような会社でありたいですか」という問いを挙げています。まずはこの問いを手がかりに、自社の経営者に聞きたいことを書き出してみてください。答えを聞く際には、その考えの背景にある具体的な出来事も尋ねる方法があります。
ブランディングに取り組むと、業績は良くなりますか?
本文で紹介した調査では、ブランド構築・維持の取り組みやパーパスの明確化と、業績との関連が示されています。ただし、調査結果だけで因果関係は断定できません。取り組みによって業績が良くなったのか、業績が良いため取り組む余裕があるのかは、これらの結果からは判断が難しい点です。
経営者インタビュー映像を作る前に、何を考える必要がありますか?
経営者が語る独自性や想いと、完成した映像の活用方法を事前に検討する必要があります。インタビューは、問いに答えながら考えを言葉にする機会として活用できますが、映像の制作だけでブランディングが成功するとは限りません。映像では声や表情も記録できるため、その形式が自社の目的に合うかも検討してください。
引用・参考資料