インタビュアーの視点 – フォレストアドベンチャー・湯の山|大森ユキト氏
フォレストアドベンチャー・湯の山は、三重県菰野町にある自然共生型アウトドアパークです。2019年3月16日にオープンし、木の上に設置されたアスレチック、地面から15m近くある場所から滑り落ちるジップライン、綱渡り、ボルダリングなど、森の特徴に合わせたダイナミックな体験を提供しています。
「3人くらいのメンバーで来てもらって、平均2時間前後かかります。お客さんの言葉でも『ちょっと舐めてました、ここまでのものだと思わなかった』って」
大森ユキト氏はそう語ります。
スイスの企業研修から始まった
フォレストアドベンチャーは、最初は遊びではありませんでした。はじまりはフランスの「アルタス」という会社が、スイスの企業の研修施設を作るという依頼を受けて生まれました。
「海外は基本的に自己責任という意識強いじゃないですか。プラス体力もないと仕事できないよね。この2つができたら、じゃあ次に何が来るかったら、チームワーク。自分のことができて初めて仲間を見れますよね」
15メートルぐらいの高さに上がるということは、それだけリスクが上がります。万が一間違えたら、落ちて命を落としかねません。そういったリスクも考えながら、何ができるかというとこの遊びになってくる。
べったりつくのは最初だけ
大森氏は、この施設の運営において、一般的なレジャー施設とは異なる指導方法を取っています。
「普通のインストラクターとかになってきますと、べったりついて指導したりとかになるんですけど、僕らのある施設というのが、べったりつくのは最初だけ。どうしてもヒューマンエラーっていうのは起きるじゃないですか。お客さん自身にも意識してもらう、自分でやんなきゃいけないんですよって」
もちろんスタッフは、影からしっかり見て、ポイントを押さえつつ、スタッフ同士で意識共有しています。でもそれはお客さんに伝えない。
「どんな施設に行って、遊園地とか行っても、やっぱり施設側のほうが全面責任を持ってやらなきゃいけないとかそういったところの姿勢とか見てると、いやまぁ確かに責任持っていると嬉しいよねって思えるんですけど、でもそれが常識だったら、どうなんだろうという思い」
リスクを想像できる力
「こういったリスクあるんだよねって、リスクを想像できる。自分で想像できるのと、想像できないのって、その先起きたときの対処する力、そこが大きく違うと思うんですね」
大森氏はそう語ります。
「やっぱりイメージ力というの大事になってくるので、その時にリスクをちゃんとイメージできるか、それを遊びながらちょっとでもイメージできたら気づけるじゃないですか」
遊びながらちょっとプラス学びがあって、そこにちょっと築けることがあって、また何かに生かせたらいいよねっていうところがあれば面白い。参加者の人生に生きてくれる体験を提供することが、この施設の価値です。
森の木が一番の財産
設計はフランスの技師が行っています。この森にはこういったコースができますよ。この地形で木とか、その方が見ると、風をどう受けてとか、木の状態とか、その地形の関係とかわかる。経験則でやってるのかと思ったら、全部計算してる。それの歴史があるから、今までで大きな事故が起きてない。
「森の状態が良くなければ、フォレストアドベンチャーのコースができないんですよ。木が既存のコースになるので、木が状態悪かったら倒れていくじゃないですか。間伐をして風が通るようにして、森がそのまま生きていけるように」
「うちにとっては、この森の木が一番の財産です」
半自給自足生活という原体験
大森氏の家自体は少し個性的な家で、どちらかというと半自給自足。
「うちの父自体が『百姓』という言葉がすごく好きで、100のことができる人ですっていう。お米から畑のもの、もちろんやりますし、豚を飼ったり、ヤギ飼ったり、アヒル飼ったり」
炭焼きも子供の頃にやらせてもらった経験があります。
「ある程度は周りの木が切れていったら、移動していくんですよ窯を。2年3年4年してくると、最初のところがまた木が生えてきて、徐々に。その時に思ったのが、木が低い位置にあるので、鹿とか動物がご飯食べれるんです。食べやすいって言ったらいいのかな。わざわざ木の皮、食ったりせずに」
「ここの森自体も、色々歩かせてもらったら、昔の窯の後とか出てきて、あ、やっぱり炭焼きやってたんだな、共生して当たり前だよねって言う」
この原体験が、フォレストアドベンチャー・湯の山の事業の根幹となっています。自然と共に生きることの価値、森に手を入れることで生命が循環する様子を身をもって体験してきた信念。それが、自然共生型の施設設計と、地域連携の姿勢へとつながっています。
菰野町の1個の遊び
「フォレストアドベンチャーってのが、菰野町の1個の遊びだよねって認識してもらえたらすごく嬉しいなという。一つの施設で何かを完結するって、僕の中では、ないかなと思ってるんですよ」
大森氏はそう語ります。
「いい飲食屋さんも、もういっぱいある、菰野町には。じゃあそちらの方とうまく流れればいいじゃないか。あそこ行ったご飯さん美味しかったから、またご飯食べに行こうって。ごはん食べた後に、まだ時間があるし、じゃあせっかくだし、フォレストアドベンチャーまた行ってみようかぁっていう感じで、当日できてくれたりもする。あの不思議に流れができてくるので、そうするとお互いがwin-winの形になっていくっていうのが理想的かなと思うんですよね」
考えることをやめないでおこう
「仲間で『ああ、気をつけてね、こうしようよ』とか、ちょっと声を掛け合ってほしい。ここに来たことによって、お互い気づけたよね。今日これやった中で、10のことを教えたとしても、ひとつ自分の中で気付いたならもう、それでokです」
「考えることをやめないでおこう。これはこうだよねとかって、1個ずつ思ったことをしっかり考えて。それが今後の人生、生きてくれると嬉しいなーって言う想いがあったりしますね」
フォレストアドベンチャー・湯の山は、2019年にオープンした新しい観光施設ですが、その根底には、スイスの企業研修から始まった「自分の身は自分で守る」「リスクを想像できるようにする」という原点があります。大森ユキト氏の少年期の半自給自足生活と炭焼きの経験から学んだ「共生して当たり前だよね」という原体験が、この施設の姿勢を支えています。
アストライドのミッション
「考えることをやめないでおこう。それが今後の人生、生きてくれると嬉しい」
大森ユキト氏のこの言葉は、私たちアストライドの使命と重なります。
私は、200社以上の経営者インタビューで培った経験を生かし、今も経営者の想いを映像として記録し発信することを使命としています。大森氏が「遊びながらちょっとプラス学びがあって、そこにちょっと築けることがあって、また何かに生かせたらいい」と語るように、私たちもまた、経営者の想いを記録し、視聴者の人生に何かを残せる映像を目指しています。
少年期の半自給自足生活で学んだ「共生して当たり前だよね」という原体験。その想いを映像として記録し、未来に継承していくこと。それが、私たちの果たすべき役割です。
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。



























