ポッドキャストのユーザー層:「若者だけ」は誤解、企業が知るべき最新データ

この記事でわかること
- 「ポッドキャスト=若者向け」という理解が、現在の利用実態とどこでずれているか
- 国内リスナーの年代構成と、決裁権者・意思決定層の聴取行動
- リスナーがどのような時間帯・シーンでポッドキャストを聴いているか
- 「市場の聴取率」と「自社保有リスト」を分けて考える二段構えのリーチ設計
- 既存顧客・取引先・展示会で得た連絡先に音声を届けることの意味
ポッドキャストを社内で提案すると、「若者向けのメディアでしょう」と返されることがあります。B2B企業のターゲットは意思決定層の30代〜60代だから、若者中心のメディアに投資する意味は薄い、というロジックです。
この理解は、数年前であれば一定の根拠がありました。立ち上がり期のポッドキャストは、テック系の話題に詳しい若年層からの利用が先行していたためです。ただし、リスナーの裾野は広がり続けてきました。直近の調査では、利用層の構成が大きく変わっています。
オトナルと朝日新聞社の「PODCAST REPORT IN JAPAN 第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」(2025年12月実施、2026年2月発表)によると、国内のポッドキャスト月間利用率は18.2%に達しました。同調査が示すのは、利用者の年代分布が思っているより広いことと、ポッドキャストユーザーには「企業の決裁権者」が比較的多く含まれることです。「若者向け」という前提のままターゲットを見積もると、本来届く層を見落とす可能性があります。
この記事では、最新調査の数字に沿って、リスナーの実像を整理します。あわせて、B2B企業にとって見落とされがちなもう一つの観点も取り上げます。それは「市場の聴取率」と「自社保有リスト」を分けて考える、という発想です。B2B企業は、これまでの取引・展示会・問い合わせを通じて、すでに連絡を取れる相手のリストを持っています。市場でのポッドキャスト浸透が18.2%にとどまるという数字とは別に、自社の手元にあるリストへ音声を直接届けるという経路が成り立ちます。この二段構えで考えると、自社にとっての活用可能性が立体的に見えてきます。
「ポッドキャストは若者向け」という理解の出どころ
この理解が広がった背景には、いくつかの要因があります。
一つは、初期の利用層が偏っていたことです。スマートフォンの普及初期、ポッドキャストはApple Podcastsのアプリを能動的に開いて聴く必要があり、こうした行動を取りやすかったのはテック感度の高い若年層でした。配信側もテック・スタートアップ・海外文化など、若い層に親和性のあるテーマが中心でした。
もう一つは、海外で起きていた「Z世代の音声シフト」が日本でも先行報道されたことです。米国や欧州で若年層が音声コンテンツに流入している様子が紹介されると、「ポッドキャスト=若者」というイメージが先に流通しました。
ただし、メディアの利用層は時間とともに広がります。初期の偏りがそのまま固定されると考えるのは、立ち上がり期のデータを現在に当てはめてしまう古い読み方です。第6回調査の数字を、年代別に確認してみます。
国内リスナーの年代構成は、どうなっているのか?
第6回調査が示す月間利用率18.2%の中身を、年代別に見ると次のとおりです。
15〜19歳が40.5%、20代が28.8%と、若年層の利用率は確かに高くなっています。15〜29歳の利用率は、TVerやTikTokを上回る水準に達しました。この点だけを切り取れば、「若者中心」のメディアに見えます。
しかし、調査は「全年代でポッドキャストの聴取が伸長傾向にある」とも指摘しています。利用率は若年層が高いものの、メディア全体としての伸びは若年層だけで起きているわけではありません。30代以降の層でも、月単位で見れば一定の聴取行動が観察されています。
ここで押さえておきたいのは、利用率と「絶対人数」は別だということです。日本の人口構成では、若年層よりも中高年層のほうが人数が多くなっています。仮に利用率に差があっても、リスナーの絶対人数で見れば、ビジネスパーソン層が無視できる規模ではない可能性があります。
ポッドキャストのリスナーを「若者だけ」と片づける見方は、利用率の高さに目が向きすぎて、その他の年代の絶対量を見落としていることが少なくありません。
経営者・意思決定層は、どのくらい聴いているのか?
B2B企業にとって最も知りたいのは、自社のターゲットである意思決定層に、このメディアが届くかどうかです。第6回調査は、この点について明確な指標を示しています。
ポッドキャストユーザーは、非ユーザーと比べて「企業の決裁権者」の比率が高くなっています。主要7メディアとの比較で、ポッドキャストの決裁権者比率は新聞に次いで2番目の高さです。テレビ・雑誌・ラジオ・ウェブメディアなどよりも、ポッドキャストのリスナーには意思決定層が多く含まれている、ということが言えます。
なぜこの偏りが生まれるのか。確たる因果は調査からは読み取れませんが、いくつかの仮説は立てられます。一つは、ポッドキャストが「能動的に番組を選んで購読し、継続的に聴く」という性格のメディアであることです。受動的に流れてくるコンテンツとは違い、自分の興味・課題に沿った情報を能動的に集める姿勢が要ります。この能動性は、業務上の判断材料を集める意思決定層の情報行動と相性がよいと考えられます。
もう一つは、リスナーの行動意欲が高いことです。第6回調査によれば、リスナーの6割以上が番組で聴いた内容を後から検索しており、5割以上が購入や訪問につなげた経験を持っています。「聴いて、調べて、行動する」というサイクルが回っている層が、リスナーのなかに一定割合で存在します。
海外の調査も、似た傾向を示しています。LinkedInとEdelmanが3,484人の意思決定者・経営層を対象に実施した「B2B Thought Leadership Impact Report 2024」では、質の高いソートリーダーシップ(専門的な知見の継続的な発信)に触れた意思決定者の75%が「以前は検討していなかった製品・サービスを調べ始めた」と回答しています。約90%が「質の高い知見を継続的に発信する企業からの営業・マーケティングに、より好意的になる」と答えました。ポッドキャストは、こうした専門的な知見を継続的に届けやすいフォーマットの一つです。
Demand Gen Reportの調査でも、B2Bバイヤーの64%が、ポッドキャストを「認知から初期検討の段階」で好むメディアとして挙げています。「まだ取引先を探していない」段階の意思決定者にも、ポッドキャストは入っていけるメディアだということです。
どのような時間・シーンで聴かれているのか?
リスナーの実像を理解するうえで、もう一つ重要な観点が「いつ・どこで聴かれているか」です。
ポッドキャストの聴取は、目と手がふさがる別の作業と並行して行われる「ながら聴取」が中心です。通勤中の移動時間、家事をしている時間、運動や散歩の最中、就寝前のひととき。これらは多くのビジネスパーソンにとって、能動的にテキストや動画を消費するのが難しい時間帯にあたります。
Edison Researchが公表したデータでは、ポッドキャストのデイリーリスナーは1日平均およそ105分を聴取に費やしています。1時間半を超える時間を、別の作業と並行しながら音声コンテンツに割いている計算です。テキスト記事や短尺動画ではなかなか確保できない長さの接触時間が、音声では成立しています。
ビジネスパーソンの一日のなかで、こうした「耳が空いている時間」は意外に多く点在しています。通勤中の30分、昼食後の散歩の20分、夕方の家事の40分。これらを足し合わせると、テキスト・動画コンテンツでは届きにくい時間帯にも、音声であれば情報を運び込めます。
特に決裁権者・経営者層の場合、日中はメール・会議・意思決定に時間が占められ、長文の記事や動画にじっくり向き合える時間は限られます。一方で、移動・運動・家事の時間は手元に残っていることが多く、ここがポッドキャストの差し込み口になります。
「市場の聴取率」と「自社保有リスト」を分けて考える
ここまでの数字を踏まえると、B2B企業にとってのポッドキャストは、これまで語られがちだったロジックとは別の使い方が見えてきます。「市場のリスナー獲得」と「自社保有リストへの直接配信」を分けて捉える、という発想です。
市場の聴取率は「新規リーチの伸びしろ」を示す
月間利用率18.2%という数字は、市場全体でポッドキャストを聴く習慣を持つ人がどれくらいいるかを表します。この数字が意味するのは、新規リスナーを獲得しに行く場合のリーチ上限の目安です。テレビCMやウェブ広告のように万人にリーチするメディアではなく、リーチの絶対量は限られています。
ただし、リーチした層のなかには、決裁権者比率の高さに表れる「情報行動の質」があります。自分で能動的に情報を集め、聴いた内容を検索し、必要があれば行動につなげる人が、リスナーのなかに一定割合います。市場で新規のリスナーを獲得しに行くという発想で見たとき、ポッドキャストは「量より質」のメディアになります。
自社保有リストは、市場の聴取率とは別の経路
ここで見落とされがちなのが、B2B企業がすでに持っている「自社保有リスト」の存在です。
これまでの取引先、過去に商談した見込み客、展示会で名刺交換した相手、ウェブサイトから問い合わせをくれた人、ウェビナーに参加してくれた人。B2B企業の手元には、こうした「すでに連絡を取れる相手」のリストが必ず蓄積されています。法人としての関係はあるけれど、現在は能動的なやりとりが止まっている──そんな相手が、リストのなかに眠っていることが多くなります。
このリストに対して定期的にエピソードのURLを直接届けることは、市場の聴取率とは独立した別の経路です。市場の18.2%という数字を見て「自社のターゲットには届かない」と判断する前に、自社のリストに何件の連絡先があるか、そこに音声を届けることに意味があるかを考えてみる価値があります。
顔を合わせたことのある相手に、月に一度・二度のペースで、自社の専門領域に関する考えを音声で届ける。10分の音声には、メール文面で書ききれない人柄・熱意・思想が乗ります。一度名刺交換しただけで止まっていた関係が、定期的な音声接触によって緩やかに継続される。この使い方は、ポッドキャストを「市場のリーチを取りに行くツール」ではなく「既存接点を温め続けるツール」として捉え直す発想です。
二段構えで考える
B2B企業のポッドキャスト活用は、次の二段構えで考えると整理しやすくなります。
| 経路 | 対象 | 数字の意味 |
| ① 市場のリスナー獲得 | まだ接点のない見込み客・業界内の認知拡大 | 月間利用率18.2%(リーチ上限の目安)/決裁権者比率の高さ(質の根拠) |
| ② 自社保有リストへの配信 | 既存顧客・休眠顧客・展示会名簿・問い合わせ履歴 | 市場の聴取率に依存しない(リストの規模が活用可能量) |
①が中心の戦略であれば、ターゲットの音声習慣が成否を分けます。次の3点で確認します。
- 自社のターゲットは、通勤・運動・家事など「耳が空いている時間」を持っているか
- 自社のターゲットは、業務や関心領域の情報を、自分で能動的に集める習慣を持っているか
- 自社のターゲットの年代分布が、ポッドキャストの利用層と重なっているか
②が中心の戦略であれば、市場の聴取率は判断材料から外せます。問うべきは別のことになります。
- 自社にはどれくらいの規模の保有リストがあるか
- そのリストの相手に、定期的に届けたい「自社の専門知識・思想・現場の知見」があるか
- 既存のメール配信・ニュースレターに音声URLを乗せる運用は可能か
①と②は両立する戦略です。市場で新規リスナーを獲得しつつ、自社リストに直接届けて関係を温める。同じ番組で両方の役割を担えるのが、ポッドキャストの効率の良い点です。「ポッドキャストは市場の聴取率が低いから自社には向かない」という結論で止まらず、二段構えの可能性を点検してみてください。
まとめ
ポッドキャストを「若者向けのメディア」と理解する前提は、現在の利用実態とずれてきています。第6回調査が示す月間利用率18.2%のなかには、決裁権者・経営者層が主要7メディアで2番目に高い比率で含まれており、リスナーの6割以上が番組で聴いた内容を検索し、5割以上が購入や訪問につなげた経験を持っています。
利用率の絶対値で見れば、ポッドキャストはまだ大衆メディアではありません。テレビや新聞のような圧倒的なリーチは期待できません。ただし、自分で情報を集める意欲が高く、聴いた内容を検索し、必要に応じて行動につなげる層が、リスナーの中に厚く含まれています。市場でリスナーを獲得しに行くなら、リーチの絶対量よりも、この「情報行動の質」が価値の源泉になります。
そして、市場の聴取率とは別に、B2B企業の手元にはすでに「自社保有リスト」があります。これまでの取引先、過去の見込み客、展示会名簿、問い合わせ履歴。顔を合わせたことのある相手に、定期的にエピソードのURLを直接届ければ、市場の18.2%という数字に依存せず関係を温め続けられます。市場のリスナー獲得(①新規リーチ)と自社リストへの直接配信(②既存接点)は、両立する二段構えの戦略です。
ポッドキャストを「市場のリーチを取りに行くツール」と狭く捉えるのではなく、「市場と自社リストの両方に音声を届ける手段」として捉え直す。この視点を持つだけで、自社にとっての検討の余地が広がります。
FAQ
Q1. ポッドキャストの月間利用率は、若年層と中高年層でどれくらい差がありますか?
A. オトナル・朝日新聞社の「PODCAST REPORT IN JAPAN 第6回調査」(2025年12月実施、2026年2月発表)によると、全体の月間利用率は18.2%、15〜19歳が40.5%、20代が28.8%です。15〜29歳の利用率はTVerやTikTokを上回る水準ですが、全年代で伸長傾向が続いており、若年層だけのメディアではなくなってきています。
Q2. ポッドキャストには本当に決裁権者が多いのですか?
A. 第6回調査では、ポッドキャストユーザーの決裁権者比率が主要7メディアのなかで新聞に次いで2番目に高い結果が出ています。リスナーの6割以上が聴いた内容を検索し、5割以上が購入・訪問につなげた経験を持つ、行動意欲の高い層です。
Q3. リスナーは、どのようなタイミングでポッドキャストを聴いていますか?
A. 通勤中の移動時間、家事の合間、運動や散歩中、就寝前など、目と手がふさがる別の作業と並行する「ながら聴取」が中心です。Edison Researchによれば、ポッドキャストのデイリーリスナーは1日平均およそ105分を聴取に費やしています。
Q4. B2B企業のターゲットに、ポッドキャストは届きやすいですか?
A. ターゲットの情報行動の特性によります。自分で能動的に情報を集める層、通勤・運動・家事などで耳が空いている層、専門的な知見の継続的な発信に関心がある層には届きやすいメディアです。逆に、受動的にコンテンツを消費する層には届きにくくなります。
Q5. 「ポッドキャストは若者向け」という理解は、なぜ広まったのですか?
A. 立ち上がり期の利用層がテック感度の高い若年層に偏っていたことと、海外で先行した「Z世代の音声シフト」が日本でも報道されたことが背景にあります。ただし、メディアの利用層は時間とともに広がるものであり、現在のデータは若年層に限らないリスナー像を示しています。
Q6. 市場の聴取率が18.2%なら、自社のターゲットには届きにくいということではないですか?
A. 市場での新規リーチを取りに行く場合は、その通り上限の目安になります。ただし、B2B企業はすでに自社保有リスト(既存顧客・取引先・展示会名簿・問い合わせ履歴など)を持っているはずです。市場の聴取率とは別に、自社リストへ直接エピソードのURLを届けるという経路があります。両者は独立しており、市場での聴取率が低くても自社リストへの配信には十分な意味があります。
引用・参考資料
- PODCAST REPORT IN JAPAN 第6回ポッドキャスト国内利用実態調査(オトナル・朝日新聞社、2025年12月実施、2026年2月発表)
- LinkedIn × Edelman “B2B Thought Leadership Impact Report 2024” https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2024-02/_2024%20Edelman-LinkedIn%20B2B%20Thought%20Leadership%20Impact%20Report%20Final.pdf
- Edison Research “Weekly Insights – The Growth in Podcast Listening Time”(Share of Ear データ、2023年10月) https://www.edisonresearch.com/weekly-insights-10-4-2023-the-growth-in-podcast-listening-time/
- Demand Gen Report “2018 Content Preferences Survey Report” https://www.demandgenreport.com/resources/2018-content-preferences-survey-report/4979/
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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