「社長の想いが社員に伝わらない」企業が直面する課題とは?映像を通じた理念浸透の可能性

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経営者の想いが届かない企業が直面する課題——映像を通じた理念浸透の可能性

この記事でわかること

本記事では、日本企業の従業員エンゲージメントが国際平均を大きく下回る現状と、その背景にある構造的な要因について解説します。理念が「浸透している」と認識する企業がわずか6%にとどまる理由、経営者と社員の間に生まれる「視点の違い」がコミュニケーションのギャップを生むメカニズムを考察します。また、映像というメディアが持つ「非言語情報」の力と理念浸透における活用可能性、経営者の想いを「記録」として残すことの次世代継承における意味についても触れています。


「何度説明しても、社員に理念が伝わらない」

多くの経営者が口にする言葉です。社内報に載せても、朝礼で話しても、なかなか浸透しない。経営者にとっては考え抜いた一字一句であっても、社員にとっては「他人事」として受け取られてしまう。この構造的なギャップは、日本企業に共通する課題といえるかもしれません。


日本企業が直面するエンゲージメントの現実

米国ギャラップ社が2024年に発表した「グローバル職場環境調査」によると、日本の従業員エンゲージメント(仕事への熱意や職場への貢献意欲を持つ人の割合)は6%にとどまり、調査対象140カ国以上の中で最下位水準にあります。国際平均の23%と比較すると、その差は歴然としています。

この数字が示唆するのは、日本企業において多くの社員が「ただ職場にいて、終業時間を待っている」状態にあるという現実です。ギャラップ社のレポートでは、日本の「エンゲージしていない従業員」は72%、「全くエンゲージしていない従業員」は23%と報告されています。

なぜ、これほどまでにエンゲージメントが低いのか。その要因の一つとして、経営者の想いが社員に届いていないことが挙げられます。


理念浸透の壁——わずか6%という現実

HR総研が実施した「企業理念浸透に関するアンケート調査」では、理念浸透の必要性を認識する企業は98%に達する一方、「社員に浸透している」と認識する企業はわずか6%にすぎませんでした。「やや浸透している」を含めても4割強であり、半数以上の企業が浸透に課題を感じています。

浸透を阻む要因として最も多く挙げられたのは、「経営層が旗振り役になれていない」(54%)という回答でした。次いで「社員の帰属意識の希薄化」(38%)、「企業理念に基づいた体制・制度になっていない」(30%)と続きます。

パーソル総合研究所の調査でも、企業理念を「内容を十分理解している」と回答した社員は41.8%にとどまり、「理解」から「実践」「習慣」へとフェーズが進むにつれて数値は低下する傾向が確認されています。

つまり、多くの企業で理念は「壁に貼られた額縁」のような存在になっているのかもしれません。


言葉だけでは伝わらない——コミュニケーションの構造的限界

経営者と社員の間には、視点の違いから生まれる認識のズレがあります。Great Place To Work Institute Japanの分析によると、経営者は10年先を見据えて行動する一方、一般社員は目の前の業務に集中し、1カ月程度の短期的視点で会社を捉える傾向がある。見ている視界が異なるため、同じ言葉でも意味するところが微妙に異なり、思わぬところで認識の不一致が生まれてしまいます。

社内報に文章で書いても、社員総会で話しても伝わりにくいのは、この視点の違いに加えて、文字や口頭でのコミュニケーションには「非言語情報」が欠落しているからではないかと考えています。

経営者がなぜその理念を掲げるに至ったのか。どのような経験を経て、その価値観を持つようになったのか。言葉の背景にある文脈や感情は、テキストだけでは伝わりにくい。社員にとっては「正論」として受け取られ、自分事として捉えられないまま終わってしまうことが少なくありません。


映像が持つ可能性——非言語情報の力

ここで注目したいのが、映像というメディアの特性です。

映像には、言葉だけでは伝えられない情報が含まれます。経営者が理念を語る際の表情、言葉に込められた熱量、考えを巡らせる間、視線の動き——これらの非言語情報は、見る人の感情に直接働きかけます。

コロナ禍においてリモートワークが広がった時期、GPTWが実施した調査では、従業員の自律性を高めるために有効な施策として最も多い回答があったのは「会社のミッション・ビジョン・バリューの共有と浸透」でした。上司の管理や指示が細かく及ばない状況でも、理念が共有されていれば個人が適切な判断を下せる。理念浸透は、単なる「スローガンの周知」ではなく、組織の自律性を支える基盤として機能する可能性を持っています。

経営者インタビュー映像は、その手段の一つとして検討に値するのではないかと考えています。経営者の人となりや価値観が可視化されることで、社員は「なぜこの会社で働くのか」という問いに対する手がかりを得られるかもしれません。


映像を活用した理念浸透——いくつかの視点

経営者インタビュー映像の活用を考える際、いくつかの視点があります。

一つは、繰り返し視聴できるという特性です。経営者の想いは、一度聞いただけでは定着しにくい。しかし、映像であれば新入社員研修の際に共有したり、定期的に見返したりすることができます。ある経営者は「判断に迷ったときに、自分が語った映像を見返すことで原点に立ち返れる」と話していました。

もう一つは、経営者と社員の「距離」を縮める効果です。経営者の人間的な側面——どのような思いで事業を始めたのか、どのような困難を乗り越えてきたのか——が伝わると、「この人と一緒に働きたい」という共感が生まれることがあります。

ただし、映像を制作すれば自動的に理念が浸透するわけではありません。制作後にどのように活用するか、社員がどのように受け止めるかは、組織の文化や運用次第です。映像はあくまで手段であり、浸透のための継続的な取り組みが不可欠となります。


「想いを記録する」という選択

経営者インタビュー映像には、もう一つの側面があります。それは、経営者の想いを「記録」として残すことです。

企業文化は、経営者が変わったときに失われてしまうリスクを常に抱えています。創業者や先代経営者が何を大切にしてきたのか、どのような価値観で意思決定をしてきたのか。それを言葉だけでなく、表情や語気を含めた映像として残すことは、次世代への継承という観点で意味を持つかもしれません。

10年後、20年後に振り返ったとき、その映像は「過去を知る」ための資料として価値を持つ可能性がある。企業の歴史を形作る一次資料としての役割です。


おわりに——伝わるための工夫を考える

日本企業のエンゲージメントが低いという現実は、単に「社員のやる気がない」という問題ではなく、経営者の想いが届きにくい構造的な課題を示唆しています。

理念を浸透させるための施策は、パンフレット配布や朝礼での唱和だけにとどまりません。経営者自身が「旗振り役」となり、想いを伝えるための工夫を重ねることが求められます。その手段の一つとして、映像というメディアの可能性を探ってみる価値はあるのではないかと考えています。

経営者の想いを、どのようにすれば社員の心に届けられるのか。その問いに対する唯一の正解はありませんが、さまざまなアプローチを試みながら、自社に合った方法を見つけていくことが大切ではないでしょうか。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。