自社の独自性を伝えられない企業が見落としている視点

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この記事でわかること

  • 「うちの会社、何が違うの?」と答えられない企業に共通する構造的な課題
  • ブランディングに取り組む企業が約3分の1にとどまる背景
  • パーパスを明確化できている企業とそうでない企業の業績差
  • 経営者の想いを「言語化」することの難しさと、映像という選択肢
  • 独自性を伝えるために必要な、具体的なアプローチ

「うちの会社、何が違うの?」

顧客や取引先、求職者からこう聞かれたとき、明確に答えられる経営者はどのくらいいるでしょうか。「品質が良い」「サービスが充実している」「価格が安い」——こうした答えは、競合他社も同じように言えるものです。

ブランディングテクノロジー社が全国約3,000名を対象に実施した調査によると、ブランディングに関する基本的な知識が社内に「ある」と回答した企業はわずか20.3%にとどまります。また、2022年版中小企業白書では、ブランドの構築・維持のための取組を実施している企業は約3分の1程度と報告されています。

多くの企業が「自社の独自性を伝えたい」と考えながらも、その方法がわからないまま、価格競争に巻き込まれているのが現状かもしれません。

本記事では、企業の独自性が伝わりにくい構造的な背景と、その解決策の一つとして経営者インタビュー映像がどのような役割を果たしうるかを考えます。


独自性が伝わらない企業に見られる3つの特徴

企業の独自性が伝わりにくい背景には、いくつかの共通した構造的な課題があります。

経営者の想いが言語化されていない

経営者が何を大切にしているのか、なぜこの事業をしているのか。こうした根本的な問いに対する答えが、明確な言葉になっていない企業は少なくありません。

日本の人事部が実施した調査では、自社のパーパス(存在意義)を「明確化できている」と回答した企業は50.0%にとどまっています。興味深いのは、この数字が業績と相関している点です。市況よりも業績が良い企業では54.7%が明確化できているのに対し、市況よりも業績が悪い企業では28.1%と低くなっています。

経営者の頭の中にある想いや価値観が言語化されていないと、社員も顧客も「この会社は何が違うのか」を理解できません。パンフレットやウェブサイトに「お客様第一」「品質重視」と書いても、それは多くの企業が掲げている言葉です。独自性とは言えません。

理念が「ふんわり」したままで具体性を欠く

パーソル総合研究所が行った「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」では、従業員が自社の理念に対して抱く印象として「内容が綺麗ごとばかりだ」(36.9%)、「内容がふんわりしている」(36.7%)、「表面的な世間体をつくろっている」(36.4%)という評価が上位を占めました。

これは、多くの企業理念が抽象的な言葉の羅列にとどまり、具体的な行動や判断基準として機能していないことを示唆しています。「社会に貢献する」「顧客満足を追求する」といった言葉は、どの企業でも使える一般的なものです。

独自性とは、「何をするか」ではなく「なぜそれをするのか」「どのようにするのか」という部分に宿ります。しかし、その「なぜ」と「どのように」が言語化されていなければ、外部に伝えることはできません。

伝え方の手法がわからない

オリゾ社が経営者108名を対象に実施した調査では、97.2%の経営者がパーパス浸透の重要性を認識しているにもかかわらず、そのうち約3割が「浸透していない」と回答しています。課題として挙げられたのは「パーパスに触れる機会が少ない」(42.4%)、「どのように発信すべきかわからない」(24.2%)といった項目でした。

また、日経社がパーパス策定関与者400名を対象に実施した調査でも、浸透で苦労した点として「社外への説明が難しい」(29.2%)、「パーパスの外部発信手法がわからない」(26.5%)が上位に挙がっています。

経営者の多くは、自社の独自性を伝えたいと考えています。しかし、テキストベースの情報発信では限界があることも事実です。ウェブサイトに理念を掲載しても、読まれないか、読まれても印象に残らない。そうした経験を持つ経営者は多いのではないでしょうか。


なぜ映像が独自性を伝えるのに有効なのか

経営者インタビュー映像は、こうした課題に対する一つのアプローチとなりえます。

非言語情報が信頼性を伝える

経営者が語る際の表情、声のトーン、間の取り方、目線の動き。こうした非言語的な情報は、テキストでは伝えることができません。しかし、人が誰かを信頼するかどうかを判断するとき、言葉の内容だけでなく、こうした非言語情報が大きな役割を果たします。

たとえば、「お客様のことを第一に考えています」という言葉。テキストで読むのと、経営者が真剣な表情で語るのを映像で見るのとでは、受け取る印象が大きく異なります。言葉の「温度」や「重み」は、映像でこそ伝わるものです。

語ることで言語化が進む

経営者インタビューには、もう一つの効果があります。それは、インタビューを受けること自体が、経営者自身の思考を整理する機会になるという点です。

普段は忙しさに追われ、自社の存在意義や独自性について深く考える時間がないという経営者は多いものです。しかし、インタビュアーからの問いに答えようとする過程で、これまで漠然と感じていたことが言葉になっていく。そうした経験をされる経営者も少なくありません。

「なぜこの事業を始めたのか」「何を大切にしているのか」「どのような未来を描いているのか」——こうした問いに対する答えを言葉にすることで、経営者自身の中でも独自性が明確になっていきます。

差別化と人材確保の関係

2024年版中小企業白書では、製品・サービスを差別化しているほど、人材の応募を獲得できている傾向があると報告されています。差別化度合いについては回答者の主観を含む点に留意が必要ですが、他社との差別化により自社の魅力を高めることが、採用面でも効果を持つ可能性が示唆されています。

経営者インタビュー映像は、採用活動においても活用できます。求職者が企業を選ぶ際、給与や福利厚生だけでなく、「どのような想いを持った経営者のもとで働くのか」を知りたいと考える人は増えています。経営者の人柄や価値観が伝わる映像は、テキスト情報では伝わらない企業の魅力を示す手段となりえます。


映像活用の現実的な限界

もちろん、経営者インタビュー映像を制作すれば、自動的に独自性が伝わるわけではありません。

映像はあくまで「伝える手段」です。伝えるべき独自性そのものがなければ、映像を作っても効果は限定的です。また、映像を制作しても、それを見てもらう機会がなければ意味がありません。ウェブサイトに掲載するだけでなく、採用活動や営業活動、社内研修など、具体的な活用場面を想定しておく必要があります。

さらに、インタビューの質も重要です。表面的な質問に対して用意された回答を読み上げるような映像では、独自性は伝わりません。経営者の本音や、これまで言語化されてこなかった想いを引き出すインタビュー技術が求められます。


独自性を伝えるための第一歩

「うちの会社、何が違うの?」という問いに対する答えは、すでに経営者の中にあることが多いものです。ただ、それが言語化されていないだけ、あるいは伝える手段が見つかっていないだけということも少なくありません。

まずは、自社の独自性について考えてみることから始めてはいかがでしょうか。なぜこの事業を始めたのか、何を大切にして仕事をしているのか、顧客にどのような価値を提供したいのか、10年後どのような会社でありたいのか。こうした問いに対する答えを、紙に書き出してみる。あるいは、信頼できる人に話してみる。そうした作業を通じて、自社の独自性が少しずつ明確になっていくかもしれません。

経営者インタビュー映像は、その言語化を助け、言語化された独自性を外部に伝える一つの手段です。映像という形式が自社に適しているかどうかは、業種や目的によって異なります。しかし、「独自性を伝えたい」という課題を抱えている経営者にとって、検討に値する選択肢の一つではないかと考えています。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。