ブランディングがうまくいかない企業に共通する「言語化」の問題

この記事でわかること
- ブランディングに関する基本的な知識が社内にある企業はわずか20%という現実
- 理念やパーパスが「ふんわり」したままで終わる構造的な原因
- 経営者の想いを言語化することの難しさと、その打開策
- 映像というメディアが「言語化」を助ける理由
- ブランディングを前に進めるための現実的なアプローチ
「うちの会社の価値や魅力を一言でいうと何ですか?」
経営者や幹部にこう質問すると、端的に明確に答えられないケースは少なくありません。みらいコンサルティングの指摘によると、自分たちにとってあたりまえなことほど、意外と言語化がされておらず、第三者にうまく説明できていないことが多いといいます。
ブランディングテクノロジー社が全国約3,000名を対象に実施した調査では、ブランディングに関する基本的な知識が社内に「ある」と回答した企業はわずか20.3%にとどまりました。また、70.4%が投資できる年間予算が「分からない」と回答し、半数以上がブランディングの相談先が「思いつかない」と答えています。
本記事では、ブランディングがうまくいかない企業に共通する「言語化」の問題と、その解決策の一つとして経営者インタビュー映像がどのような役割を果たしうるかを考えます。
「言語化」されていない企業に見られる3つの特徴
経営者の想いが明確な言葉になっていない
パーソル総合研究所が行った「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」では、従業員が自社の理念に対して抱く印象として「内容が綺麗ごとばかりだ」(36.9%)、「内容がふんわりしている」(36.7%)、「表面的な世間体をつくろっている」(36.4%)という評価が上位を占めました。
これは、多くの企業理念が抽象的な言葉の羅列にとどまり、具体的な判断基準や行動指針として機能していないことを示唆しています。「お客様第一」「品質重視」「社会貢献」といった言葉は、どの企業でも使える一般的なものです。独自性とは言えません。
経営者の頭の中には、事業に対する想いや価値観が確かにあるはずです。しかし、それが具体的な言葉として表現されていなければ、社員にも顧客にも伝わりません。
パーパスの策定で終わり、浸透まで至らない
日経社がパーパス策定関与者400名を対象に実施した調査では、パーパスを策定したきっかけとして「組織風土改革をしたいから」(28.8%)、「SDGsへの取り組みを強化したいから」(23.5%)、「人事採用を強化したいから」(22.3%)が上位に挙がりました。
しかし同調査では、浸透で苦労した点として「社員からの評価」(35.9%)、「全支社・全事業所への浸透が大変」(31.8%)、「パーパスの社内浸透手法がわからない」(28.0%)といった課題も報告されています。
日本の人事部の記事でも、「理念を浸透させるための活動内容は理解しているものの、実践できていないという企業は少なくありません」という指摘がなされています。働き方の多様化や組織の複雑化によって、経営者から従業員へのメッセージ伝達自体が難しくなっているという背景もあります。
伝え方の手段が見つからない
日経社の別の調査では、パーパスの社外浸透で苦労した点として「社外への説明が難しい」(29.2%)、「パーパスの外部発信手法がわからない」(26.5%)、「発信する部署や人手が足りない」(21.8%)が上位に挙がっています。
ウェブサイトに理念を掲載しても、読まれないか、読まれても印象に残らない。パンフレットに特徴を並べても、競合他社との違いが伝わらない。こうした経験を持つ企業は多いのではないでしょうか。
なぜ「言語化」は難しいのか
経営者の想いを言語化することが難しい理由には、いくつかの構造的な要因があります。
日常の忙しさに追われる 経営者は日々の業務に追われており、自社の存在意義や独自性について深く考える時間を確保することが難しい状況にあります。「言語化の重要性は理解しているが、ついつい後回しになってしまう」という声はよく聞かれます。
自分にとっての「あたりまえ」は言葉にしにくい 長年事業を営む中で培われてきた価値観や考え方は、経営者自身にとっては「あたりまえ」のことです。しかし、あたりまえであるがゆえに、あえて言葉にする機会がなく、いざ説明しようとすると難しい。これは多くの経営者が経験することです。
抽象的な言葉に逃げてしまう 具体的に言語化しようとすると難しいため、「お客様第一」「品質重視」といった一般的で抽象的な言葉に落ち着いてしまう。しかし、そうした言葉では独自性は伝わりません。
映像が「言語化」を助ける理由
経営者インタビュー映像は、こうした「言語化」の課題に対する一つのアプローチとなりえます。
インタビューという形式の効果
経営者インタビューでは、インタビュアーからの問いかけに答える形で話が進みます。「なぜこの事業を始めたのですか」「何を大切にしていますか」「10年後、どのような会社でありたいですか」——こうした問いに対して、経営者は自分の言葉で答えようとします。
この「問われて答える」というプロセス自体が、言語化を促進する効果を持っています。一人で考えているだけでは言葉にならなかったことが、問いに答えようとする中で明確になっていく。多くの経営者がこうした経験をされています。
非言語情報の価値
経営者が語る際の表情、声のトーン、間の取り方。こうした非言語的な情報は、テキストでは伝えることができません。
「品質を大切にしています」という言葉。テキストで読むのと、経営者が真剣な表情で、ゆっくりと、言葉を選びながら語るのを映像で見るのとでは、受け取る印象が大きく異なります。言葉の「温度」や「重み」は、映像でこそ伝わるものです。
具体的なエピソードが引き出される
インタビューでは、抽象的な理念だけでなく、具体的なエピソードが語られることが多くあります。「品質を大切にしている」という言葉の背景には、何かきっかけとなった出来事があるはずです。そうした具体的なストーリーこそが、抽象的な言葉に血を通わせ、独自性を伝えるものとなります。
ブランディングと業績の関係
2022年版中小企業白書では、ブランドの構築・維持のための取組を実施している企業は約3分の1程度であることが報告されています。同白書では、取組を行っている企業の方が、取組を行っていない企業と比較して売上総利益率の水準がやや高いことも示されています。
また、日本の人事部が実施した調査では、自社のパーパスを「明確化できている」と回答した企業は50.0%でしたが、業績別に見ると、市況よりも業績が良い企業では54.7%、市況よりも業績が悪い企業では28.1%という差が見られました。
これらの調査結果は、ブランディングやパーパスの明確化と業績との間に何らかの関連がある可能性を示唆しています。ただし、因果関係を断定することはできません。ブランディングに取り組んだから業績が良くなったのか、業績が良いからブランディングに取り組む余裕があるのかは、一概には言えないためです。
現実的なアプローチ
ブランディングを本格的に進めようとすると、多額の費用や専門家の関与が必要になることがあります。しかし、すべての企業がそうしたリソースを確保できるわけではありません。
経営者インタビュー映像は、比較的取り組みやすい「言語化」の手段の一つと言えるかもしれません。大がかりなブランディングプロジェクトを立ち上げるほどのリソースはなくても、経営者自身が語る映像を一本制作することは、多くの企業にとって現実的な選択肢です。
ただし、映像を制作すれば自動的にブランディングが成功するわけではありません。映像はあくまで「伝える手段」であり、伝えるべき独自性や想いがなければ、効果は限定的です。また、制作した映像をどのように活用するかを事前に検討しておく必要があります。
おわりに
「言語化」は、ブランディングの出発点です。経営者の想いが明確な言葉になっていなければ、社員にも顧客にも伝わりません。しかし、その言語化こそが最も難しい部分でもあります。
経営者インタビュー映像は、その言語化を助け、言語化された内容を外部に伝える一つの手段です。インタビューという形式が思考を整理する機会を提供し、映像という形式が非言語情報を含めて伝えることを可能にします。
貴社では、経営者の想いをどのような形で言語化していますか。そして、その言語化された内容は、伝えたい相手に届いているでしょうか。
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表 纐纈がこれまで200社以上の経営者インタビュー映像を制作してきたノウハウとインタビュースキルを軸として、BtoBマーケティング視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた、各種クリエイティブをご提案・制作します。

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