ポッドキャストのユーザー層:「若者だけ」は誤解、企業が知るべき最新データ

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この記事でわかること

  • 国内ポッドキャストリスナーの年代別構成比
  • 40代・50代の聴取率と聴取傾向
  • 経営者・意思決定層の聴取習慣(海外データ)
  • リスナーの所得・学歴の特徴
  • B2B企業がターゲットに届く可能性

「ポッドキャストって、若い人が聴くものでしょう?」

B2B企業の経営者やマーケティング担当者と話をすると、この認識を持っている方が少なくありません。確かに、若年層の利用率が高いことは事実です。しかし、最新のデータを見ると、この認識は一面的であることがわかります。

実は、ポッドキャストはビジネスパーソンや経営層にも浸透しているメディアです。海外では経営層の83%が毎週聴取しているというデータがあり、国内でも40代・50代の聴取者は確実に存在します。この記事では、国内外の最新データをもとに、ポッドキャストリスナーの実像を明らかにします。


国内リスナーの年代別構成

PODCAST REPORT IN JAPAN(第5回調査、2025年2月)によると、国内のポッドキャスト利用率は全年代平均で17.2%に達しています。2020年の第1回調査時点の14.2%から着実に増加しており、成長傾向が続いています。

年代別の利用率を見てみましょう。

年代利用率
15〜19歳34.0%
20代27.3%
30代約16%
40代約13%
50代約11%
60代約9%

確かに、若年層ほど利用率が高い傾向があります。10代では約3人に1人、20代では約4人に1人がポッドキャストを利用しています。

しかし、40代で約13%、50代で約11%という数字は決して小さくありません。これは、TikTokに次ぐ水準であり、NetflixやFacebook、雑誌を上回る利用率です。「若者だけのメディア」という認識は、データが示す実態とは異なります。

ビジネス層の聴取傾向

博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が実施した調査によると、ポッドキャストユーザーの年代構成は20〜40代が中心で、男性がやや多め(男性55.6%、女性44.4%)となっています。

特に注目すべきは、30〜40代の利用目的です。同調査では、30〜40代男性において「情報収集のため」(41.5%)、「専門的な知識を得るため」(38.3%)、「ニュースを知るため」(33.8%)、「教養を得るため」(32.4%)といった項目が高い割合を示しています。

つまり、30〜40代のビジネスパーソンは、単なる娯楽ではなく、情報収集や学習を目的としてポッドキャストを活用している傾向がある。これは、B2Bコンテンツとの親和性を示唆するデータといえます。

年代による聴取スタイルの違い

興味深いのは、年代によって好まれる番組の長さが異なる点です。PODCAST REPORT IN JAPANによると、15〜19歳では「20分未満の番組」を好む傾向がある一方、40代以上では「40分以上の番組」を好む傾向が見られます。

若年層は短尺コンテンツを好み、中高年層は長尺コンテンツを好む。この傾向は、B2B向けのポッドキャストを企画する際に重要な示唆を与えてくれます。ビジネステーマを深掘りする30〜40分程度の番組は、むしろ中高年層に受け入れられやすい可能性があります。


経営者・意思決定層の聴取習慣

B2Bマーケティングにおいて最も重要なのは、意思決定者にリーチできるかどうかです。この点において、海外のデータは非常に興味深い結果を示しています。

経営層の83%が毎週聴取

Signal Hill Insightsの調査によると、経営層(エグゼクティブ)の83%が毎週ポッドキャストを聴取しています。さらに、ビジネス意思決定者は週平均7.2時間をポッドキャストに費やしているという結果も出ています。

LinkedInとIpsosの共同調査でも、C-suite(最高経営責任者クラス)、VP(副社長)、部門長といった上級意思決定者の44%がポッドキャストを聴取していることが確認されています。この数字は、より下位の役職者(36%)と比較して高い水準です。

なぜ経営層はポッドキャストを聴くのか

経営層がポッドキャストを好む理由として、以下の点が考えられます。

移動時間の有効活用
多忙な経営者にとって、まとまった時間を確保することは難しい。しかし、移動中や待ち時間であれば、30分から1時間程度のコンテンツを消費できます。ポッドキャストは「ながら聴き」が可能なため、時間効率を重視する経営層のニーズに合致しています。

深い情報へのアクセス
Edison Researchの調査によると、ポッドキャストリスナーの74%が「学び」を目的として聴取しています。短尺のSNSコンテンツでは得られない、専門的で深い情報を求める層にとって、ポッドキャストは有効な情報源となっています。

信頼できる情報源
ポッドキャストは、ホストやゲストの専門性が前面に出るメディアです。経営層は、匿名性の高いSNS情報よりも、誰が発信しているかが明確なコンテンツを好む傾向があります。


リスナーの所得・学歴の特徴

ポッドキャストリスナーは、所得や学歴において特徴的な傾向を示しています。

Edison Researchの調査(米国データ)によると、月間ポッドキャストリスナーの特徴は以下の通りです。

  • 世帯年収$75,000(約1,100万円)以上:52%(一般人口では35%)
  • 大卒以上:51%(一般人口では約30%)
  • フルタイム雇用:69%

つまり、ポッドキャストリスナーは一般人口と比較して、高所得・高学歴・就業率が高い傾向にあります。この傾向は、B2Bマーケティングにおいてターゲットとなりやすい層と重なります。

別の調査では、ポッドキャストリスナーは年収$250,000(約3,750万円)以上の割合が45%高いというデータもあります。富裕層・高所得者層においてポッドキャストの浸透率が高いことを示唆しています。


どのようなシーンで聴かれているか

ポッドキャストがどのような場面で聴かれているかを理解することは、コンテンツ設計において重要です。

PODCAST REPORT IN JAPANによると、国内リスナーの聴取シーンは以下の通りです。

聴取シーン割合
車の運転中23.8%
公共交通機関23.5%
家事中23.4%
歩いている時23.3%
趣味の作業中22.2%

上位5項目がほぼ同率で並んでいることが特徴的です。リスナーの87.1%が「ながら時間」に聴取しており、ポッドキャストが日常生活のさまざまな場面に浸透していることがわかります。

博報堂メディア環境研究所の調査では、年代別の聴取シーンの違いも明らかになっています。

  • 10〜20代:通勤・通学時間
  • 30〜40代:家事中
  • 50〜60代:休憩中、就寝前

B2Bターゲットとなる30〜40代は「家事中」の聴取が多く、50〜60代は「休憩中」「就寝前」の聴取が多い傾向があります。これは、仕事から離れたリラックスした状態で聴かれていることを意味し、押し売り感のない自然なコンテンツが好まれる可能性を示唆しています。


B2B企業にとっての示唆

ここまでのデータから、B2B企業にとっての示唆を整理します。

ターゲットは確実に存在する

40代・50代の利用率は10%台であり、若年層と比較すると低い水準ではあります。しかし、これは「ターゲットがいない」ことを意味しません。国内のポッドキャスト利用者は推計1,700万人以上とされており、40代・50代だけでも相当数のリスナーが存在します。

特に、経営層や意思決定者の聴取率が高いという海外データは、B2Bマーケティングにおける可能性を示しています。

「学び」を求める層にリーチできる

ポッドキャストリスナーの74%が「学び」を目的として聴取しているというデータは重要です。情報収集や専門知識の習得を目的とする層は、B2Bコンテンツとの親和性が高いと考えられます。

30〜40代男性において「情報収集」「専門的知識」「教養」が利用目的の上位に来ていることも、B2B向けコンテンツの需要を裏付けています。

長尺コンテンツが受け入れられる

40代以上では「40分以上の番組」を好む傾向があります。これは、B2Bテーマを深掘りする番組にとって追い風です。複雑なビジネステーマを扱う場合、短尺では十分な情報を伝えきれないことがありますが、ポッドキャストであれば長尺でも聴いてもらえる可能性があります。

高所得・高学歴層にリーチできる

ポッドキャストリスナーは高所得・高学歴の傾向があり、これはB2Bの意思決定者プロファイルと重なります。購買力があり、情報感度が高い層にリーチできるメディアとして、ポッドキャストは有効な選択肢となり得ます。


まとめ

「ポッドキャストは若者向けメディア」という認識は、データが示す実態とは異なります。確かに若年層の利用率が高いことは事実ですが、40代・50代にも一定の利用者が存在し、特に経営層・意思決定層においては高い聴取率が確認されています。

B2B企業にとって重要なのは、「若者が多いからターゲットに届かない」と決めつけないことです。ポッドキャストリスナーは高所得・高学歴の傾向があり、「学び」を目的として聴取する層が多い。これは、B2Bコンテンツとの高い親和性を示しています。

次の記事では、ポッドキャストと他のメディア(ブログ、YouTube)を比較し、自社に最適なメディア選定の判断軸を提供します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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