TikTokのユーザー層:「若者だけ」は誤解、企業が知るべき最新データ

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この記事でわかること

  • TikTokユーザーの年代別利用率(国内データ)
  • 日本のTikTokユーザー平均年齢が約35歳である事実
  • 30代以上の利用拡大傾向とその背景
  • 年代別に異なる利用目的と視聴コンテンツ
  • 企業ターゲットへのリーチ可能性

「TikTokは10代が踊っているSNS」。そんなイメージを持つ経営者やマーケティング担当者は少なくありません。確かに若年層の利用率は高い。しかし、データを見ると異なる実態が浮かび上がります。

博報堂の調査によると、日本のTikTokユーザーの平均年齢は約35歳。2022年の34.7歳から2023年には35.9歳へと上昇しており、30代以上のユーザーが着実に増加しています。この記事では、TikTokユーザー層の実態を国内データに基づいて解説し、企業ターゲットへのリーチ可能性を考察します。


年代別利用率:10代6割、30代も2割超

TikTokの年代別利用率を見てみましょう。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査(2024年1月)によると、以下のような結果が出ています。

性年代別の利用率

年代全体女性男性
10代55.0%64.1%45.7%
20代33.7%38.9%28.4%
30代22.3%
40〜70代約1割程度

10代の利用率が突出して高いことは事実です。特に10代女性は64.1%と、3人に2人近くが利用しています。一方で注目すべきは、30代の利用率が22.3%に達している点です。前年比で12ポイント以上増加しており、若年層以外への浸透が急速に進んでいます。

総務省「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」でも同様の傾向が確認できます。10代で66.4%、20代で47.9%、30代で27.3%という結果が出ており、30代でも4人に1人以上がTikTokを利用している計算になります。

10代の利用率は4年で3倍に

10代のTikTok利用率は、この数年で急速に拡大しました。

  • 2020年:約2割
  • 2021年:約3割
  • 2022年:約4割
  • 2024年:約6割

4年間で利用率が3倍に増加しています。10代にとってTikTokは、もはや「流行りのアプリ」ではなく、日常的なコミュニケーションツールとして定着しつつあります。


平均年齢35歳という事実

「TikTokは若者向け」というイメージとは裏腹に、日本のTikTokユーザーの平均年齢は約35歳です。博報堂の調査によると、2022年の34.7歳から2023年には35.9歳へと上昇しており、1年で約1.25歳、平均年齢が上がっています。

この数字が示すのは、10代・20代だけでなく、30代・40代・50代のユーザーが相当数存在するという事実です。若年層の利用率が高いことは間違いありませんが、ユーザー全体で見ると「ミドル層に近い」構成になっています。

なぜ30代以上の利用が増えているのか

30代以上のTikTok利用が増加している背景には、いくつかの要因があります。

コンテンツジャンルの多様化
サービス開始当初は、ダンスや口パク(リップシンク)動画が中心でした。しかし現在は、料理、DIY、健康、子育て、ライフハック、ビジネスなど、幅広いジャンルのコンテンツが充実しています。30代以上のユーザーが関心を持つテーマが増えたことで、利用のハードルが下がりました。

情報収集ツールとしての認知
TikTokは「暇つぶしアプリ」から「情報収集ツール」へと役割を広げています。レストラン探し、旅行先の観光スポット、商品レビューなど、知りたい情報を短い動画で効率的に得られる点が、忙しい30代以上のユーザーに支持されています。

親世代への波及
10代・20代の子どもを持つ親世代が、子どもとの共通の話題としてTikTokを見始めるケースも増えています。家族間のコミュニケーションツールとしての側面も、利用拡大の一因となっています。


年代別に異なる利用目的

TikTokの利用目的は、年代によって異なる傾向があります。

10代・20代:エンタメと自己表現

10代・20代のユーザーは、エンタメ、ファッション、音楽などのトレンドに敏感です。流行のダンスやコンテンツに積極的に参加し、自ら動画を作成・投稿するユーザーも多い。TikTokを「見る」だけでなく「発信する」場として活用しているのが、若年層の特徴です。

就職活動においても、TikTokを情報収集に活用する動きがあります。ある調査によると、Z世代の就活生の約80%が「TikTokがきっかけで企業に興味を持った経験がある」と回答しています。企業の雰囲気や社員の人柄を、短い動画で直感的に把握できる点が支持されています。

30代・40代:情報収集とライフスタイル

30代・40代のユーザーは、情報収集やライフスタイル改善のためにTikTokを利用する傾向があります。料理、子育て、DIY、仕事術など、実用的なコンテンツへの関心が高い。

TikTok For Businessが2021年に発表した「主婦・ママ白書」によると、25〜44歳の女性ユーザーのうち約4人に1人が主婦ユーザーでした。料理レシピ、子育てハック、収納術など、日常生活に役立つコンテンツが、この層に支持されています。

また、自身のビジネスを宣伝する手段としてTikTokを活用するケースも増えています。個人事業主や中小企業の経営者が、マーケティングツールとして利用する動きが30代以上で見られます。

50代以上:趣味と健康、家族とのつながり

50代以上のユーザーは、他の年代と比較すると割合は少ないものの、増加傾向にあります。リタイア後の新しい趣味を見つけたり、健康管理の情報を得たりする目的で利用するケースが目立ちます。

また、孫や子どもとのコミュニケーション手段としてTikTokを活用する動きもあります。家族が共有した動画を見ることで、世代間のギャップを埋めるツールとしての役割も担っています。


利用頻度:ヘビーユーザーが多い

TikTokユーザーの利用頻度は、他のSNSと比較しても高い傾向にあります。

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、TikTokユーザーのうち「1日10回以上」利用する割合は以下の通りです。

  • 10代:約3割
  • 20代:約3割
  • 30代〜50代:約2割

10代・20代の約3割が1日10回以上TikTokを開いているというデータは、プラットフォームへの接触頻度の高さを示しています。一度習慣化すると、繰り返し利用される傾向があるといえます。

この利用頻度の高さは、企業にとってはリーチの機会が多いことを意味します。同じユーザーに複数回接触できる可能性があるため、認知拡大や想起の強化につながりやすい環境といえるでしょう。


企業ターゲットへのリーチ可能性

これらのデータから、企業ターゲットへのリーチ可能性を考察してみましょう。

採用ターゲット(20代〜30代前半)

新卒採用や若手の中途採用を考える企業にとって、TikTokは有効なリーチ手段となり得ます。20代の利用率は33.7%、10代は55.0%と高く、採用ターゲット層との接点を持てる可能性があります。

特に、就活生がTikTokを通じて企業に興味を持ち、実際にエントリーするという行動が確認されている点は、採用目的での活用を検討する際の判断材料になるでしょう。

消費者ターゲット(幅広い層)

消費者向けのマーケティングでは、ターゲット層がTikTokを利用しているかどうかを見極める必要があります。

10代・20代がターゲットであれば、TikTokは有力な選択肢です。30代についても22.3%が利用しており、特に女性や子育て層へのリーチは十分に可能です。40代以上については利用率が1割程度にとどまるため、TikTok単独でのリーチには限界があります。他のチャネルとの組み合わせを検討する必要があるでしょう。

BtoBターゲット

BtoB企業の場合、TikTokの活用目的は主に採用とブランディングに限定されます。製品やサービスの直接的な訴求には向いていませんが、「人を見せる」ことで企業の魅力を伝えるという使い方は有効です。


「若者向け」という先入観を超えて

TikTokが「若者だけのSNS」ではなくなりつつあることは、データが示す通りです。しかし、だからといって「すべての企業がTikTokを始めるべき」というわけではありません。

重要なのは、自社のターゲット層がTikTokを利用しているかどうかを、データに基づいて判断することです。10代・20代がメインターゲットであれば、TikTokは優先度の高い選択肢となります。30代については、ターゲットの属性(性別、ライフスタイル、関心領域)によって判断が分かれるでしょう。40代以上がメインターゲットの場合は、他のチャネルを優先したほうが効率的かもしれません。

「若者向けだから自社には関係ない」という先入観も、「みんなが使っているから自社も始めるべき」という思い込みも、どちらも適切な判断を妨げます。データに基づいた冷静な検討が求められます。


まとめ

TikTokのユーザー層は、「若者だけ」という従来のイメージから変化しつつあります。10代の利用率が6割に達する一方で、30代も22%超が利用。日本のTikTokユーザーの平均年齢は約35歳であり、30代以上への浸透が着実に進んでいます。

年代によって利用目的は異なります。10代・20代はエンタメと自己表現、30代・40代は情報収集とライフスタイル改善、50代以上は趣味と健康、家族とのつながり。自社のターゲット層がどの年代に該当し、どのような目的でTikTokを利用しているかを理解することが、活用検討の出発点となります。

次の記事では、TikTokとInstagram、YouTubeの違いを比較し、どのSNSを選ぶべきかの判断軸を解説します。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
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