インタビュアーの視点 – 鳥羽グランドホテル|上野哲男氏

鳥羽グランドホテルは、三重県鳥羽市小浜町に位置する、1968年創立の老舗ホテルです。伊勢志摩国立公園内の鳥羽湾を一望できる高台に建ち、ロビーから臨む鳥羽の小浜湾と三ツ島と呼ばれる小島の絶景が、お客様に飽きを感じさせぬ美しさを提供しています。

「私どものホテルの特徴の一番は、この景観になります。三ツ島というのは鳥羽の象徴ですけれども、この三ツ島が最も美しく見える角度に立っている旅館ということで、お客様からチェックインをされた時に、この窓ガラス越しに喜んでいただける。これが私どもの第一番の特徴になっております」

上野哲男氏はそう語ります。

宿泊業界の現状

日本の宿泊業市場は約5兆円の規模を有しますが、ホテル・旅館数は全国に約8万施設と、競争が激化しています。人材不足の深刻化も課題となっています。

このような業界環境の中で、鳥羽グランドホテルは「お客様に喜んでいただくことが第一の目標」という姿勢を貫いています。

毎週1回の口コミ会議

「インターネットの口コミというのは本当のお客様の生の声ですので、大変ありがたいことだということに気がつきました」

上野氏はそう語ります。

「それ以来毎週1回、口コミに対する会議を開いて、そしてそれに対する対策を考えて実行していく。そして、それがちゃんと継続できているかというところまで追跡をして、お客様に喜んでいただけるかということを追求してまいりました」

長い間ずっと毎週1回、品質を向上する会議を続けてきた。その結果、組織全体が「お客様に喜んでいただくことが第一の目標」という姿勢を常に意識するようになりました。

「この会社はこういう方針でお客様が喜んでいただくことが第一の目標だということを常に意識をしてもらうということが、一番大事かなというふうに思っております」

お客様が何を求めているかから入る

料理においても、上野氏は独自の姿勢を持っています。

「まず僕がこう考える時に一番大事にしているということが、自分がやりたい料理ではなくて、お客様が何を求めているかから入ります」

「鳥羽だったら一番最初に浮かぶのは魚介類というふうに思うんですよ。それはすべて魚介類がいいのかということなんですね。やっぱりバランス的に肉も欲しい。牛肉が欲しい、豚肉が欲しい、鶏肉が欲しい。やっぱりすべて魚介類で固めるというよりも、バランス的なものも考えております。もちろんその三重県産というものにはこだわっております」

料理のコンサルタントとの協働

より良いものを提供したいという思いから、料理のコンサルタントを活用した改革も実施しました。

「やっぱり僕らみたいな会社を使うというのは、経営者様っていうのはかなり勇気があると思います。中に入っている人たちは、コンサルが来たって言ったらあまり納得しないんですよね。納得しないということは同じ方向を向いてくれないということは、結果が出ないということなんですよ」

「お客様の反応が良かった。この人の言った通りやってたら間違いないんじゃないかな。お客様の反応がいいというのは、これは僕の手腕ではなくて、実際に提供している調理スタッフの料理で喜んでもらえるということをしっかりと認識してもらって。それで美味しかったのは、みんなが頑張ってくれたからっていう位置づけに持っていったら、大きく変わってくるということを、僕も自身も学びました」

レシピ・分量の統一による味の確立

「地方の旅館で働いていただける調理スタッフっていうのも、いろんなところで経験されて来られる方が多いんで、料理のやり方が全て違うんですよ。例えばだしの取り方一つにしても、やっぱりその土地柄や使用した場所によって全く変わる」

「そこらへんはやっぱり統率してやるっていうのは、やっぱりレシピだとか分量もはっきり『これでやりますよ、鳥羽グランドホテルの味はこれでいきます』という形で進めたら、人によって味が違うとか、だしのきき方が悪いからっていうこともないです」

お客様の表情を重視する

「一番大事なのはやっぱり表情だと思います。来館いただくお客様に、チェックインからチェックアウトまでいかに楽しんでいただけるか。その中に料理があるって言うだけで、もちろん料理が美味しくなかったらかなり不満足だと思います」

「やっぱり接客、料理、客室の設備など、すべてが良い時間を過ごしていただくということなので、お客さんの表情は評判口コミなんかを見て、『これじゃあやっぱダメだったな』と思ったら、レシピを変える、やり方を変える、分量を変える、すぐ変えちゃいますよ」

何世代にも先につないでいく道をつくる

上野氏は、若い世代への伝承についても語ります。

「今が良ければいいのかっていうことではなくて、僕らなんかも歳をとって、感覚がどんどん古くなっていったら、やっぱりもういらないよって言われる時が来ると思います。その時には若い世代に沿ってもらわないと、そういう先はないと思うので」

「やはり僕らがいなくても、今の若い子たちで盛り上げて、いろんな発想、そういう考え方、お客様中心の料理の構成というのをやっぱり伝承して、その中で素晴らしい料理を提供して、何世代にも先につないでいく道をつくるというのも、やっぱり僕の仕事じゃないかなと思っていますので」

1968年の創立以来、鳥羽グランドホテルは「お客様に喜んでいただくことが第一の目標」という姿勢を守り続けてきました。毎週1回の口コミ会議、お客様が何を求めているかから入る姿勢、レシピ・分量の統一による味の確立。これらが、鳥羽グランドホテルの価値を支えています。


アストライドのミッション

「何世代にも先につないでいく道をつくるというのも、やっぱり僕の仕事じゃないかなと思っています」

上野哲男氏のこの言葉は、私たちアストライドの使命と重なります。

私たちアストライドは、200社以上の経営者インタビューを通じて、経営者の想いを映像として記録し発信することを使命としています。上野氏が「お客様中心の料理の構成というのをやっぱり伝承して、何世代にも先につないでいく」と語るように、私たちもまた、経営者の想いを映像として記録し、次世代に継承していくことを目指しています。

「お客様に喜んでいただくことが第一の目標」という姿勢を、毎週1回の口コミ会議を通じて組織に浸透させてきた上野氏の取り組み。その想いを映像として記録し、未来に継承していくこと。それが、私たちの果たすべき役割です。いう原体験。その想いを映像として記録し、未来に継承していくこと。それが、私たちの果たすべき役割です。

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。