インタビュアーの視点 – スズカトラクター|太田翔氏、紀子氏
スズカトラクターは、三重県鈴鹿市に拠点を置く農業関連企業です。みえの安心食材認証を取得し、品質基準(農産物検査1等米格付、玄米タンパク含有量6.8%以下)に合格したブランド米「結びの神」を生産。現在、代表の太田翔氏と太田紀子氏が事業を行っています。
『結びの神』は厳しい基準をクリアしたお米のみがその名前を使えます。農産物検査が一等米であること、タンパクが6.8以下でなければならない。肥料をたくさん使うと食味が下がると言われています。そこで6.8以下という基準を設けられています。こうした厳しい基準は、おいしいお米を作るための三重県の基準です
米市場という背景
日本の米市場は約1.5兆円の規模を有しますが、1人当たりの年間米消費量が1960年代の約120kgから2023年には約50kgに減少するなど、米離れが進行しています。米価格の低迷傾向も続いており、生産コストの上昇により、収益性の悪化が課題となっています。農家の高齢化と後継者不足も深刻で、米農家の平均年齢が65歳以上となっています。
このような業界環境の中で、スズカトラクターは独自の姿勢を貫いています。
安心安全は当たり前
「弊社の特徴として農薬を極力使わないように栽培しているので、真夏でも草刈りの作業は大変です。実際のところ農薬を使った方が楽です。作業もはかどりますし、でも、自分たちも農薬の多いお米は食べたくないですし、安心安全は当たり前というか」
太田翔氏はそう語ります。農薬を極力使わない栽培は、作業効率の観点からは大変です。しかし、自分たちが食べたいお米を作るという想いが、その姿勢を支えています。
冷めてもおいしい
「『結びの神』は粒感がしっかりしていて、粘りは強すぎないが、モッチリしている。冷めてもおいしいのが一番の特徴だと思います。あわせるおかずも、どんなお料理にも合いやすくて、自分たちが食べたいというのも大きな理由の一つです。でもやはり消費者に届けたいという想いで生産しています」
太田紀子氏は、主婦をやっている中で、「結びの神」は大変調理しやすいと語ります。
「余ったご飯で作るチャーハンでも、炊きたてでも、どんぶりでも、何でも美味しいので、そこを主婦の皆さんに知っていただきたいです」
美味しいものは心を豊かにしてくれる
「私の妻は味に強いこだわりを持っています。美味しいものだけを食べて生きていきたいし、美味しいものは心を豊かにしてくれるものですから」
太田翔氏はそう語ります。白飯でそのまま食べてもらうのが一番、米の旨味を感じてもらえる。精米しすぎず食べていただくのがお勧めで、一般的な精米の7割8割程度でおいしく食べていただける。香りが逃げてしまうので。
太田翔氏自身、ご飯が大好きで、ごはんを食べて満腹の上に、卵かけご飯をおかわりすることもあるといいます。
直接届けたい
「自分たちが育てたお米を消費者に直接届けたいという想いがあります。これまで祖父は農協に出荷したりもしていましたが、どうしても私たちの目では見えない消費者に届いてはいますが、直接お越しいただき、お渡しするところまで責任を持ちたいです」
太田翔氏はそう語ります。
「食べていただいて『おいしかった!』と言ってもらえると、1年間頑張ってきて良かったと感じられます」
生産者と消費者の直接的なつながり。その想いが、スズカトラクターの事業を支えています。
かっこいい農業をしたい
「かっこいい農業をしたいという気持ちがあります。単純に、僕はおじさんではありますが、格好いいお兄さんたちが農業をしていると、子供たちが将来やってみたいと思ってもらえるのではないでしょうか。その前にお米を好きになってもらうことが大事です。美味しいお米がこうして作られるなどの興味につながる」
太田翔氏はそう語ります。種まきから自社でやっていますが、ここまで細かい作業が必要なのかと感じるときもある。それでも美味しくなれと思って作業をしている。
主人は米に対して想いが熱すぎる人
「主人は米に対して想いが熱すぎる人です。想いの熱がありすぎることで周囲と気持ちの温度差が出てきますが、それだけお米に対して愛情を注いでいるから。お米もその味で応えてくれるのだと感じています」
太田紀子氏はそう語ります。
わが子のように育てるお米への愛情
「私たちが種から育てた”子どもたち”が大きく育つのを見られるのが一番やりがいです。『こんなに育ったの?』といった具合に、稲の顔を見て、会話をしながら作業しています」
「刈り取り、収穫の時の天気が一番気を使うところです。一番おいしい状態で収穫したいですね。今年は梅雨明けが早かったです。どうなることかと思いました。無事収穫できるので、子どもたちと一緒にいる感じで、楽しいです。稲が『早く刈ってよ』と言っているように思えます」
祖父の代から農業を継承したという原体験は、スズカトラクターの事業の根幹となっています。この原体験は、「わが子のように育てるお米への愛情」という信念と、「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちを生み出しました。
アストライドのミッション
「食べていただいて『おいしかった!』と言ってもらえると、1年間頑張ってきて良かったと感じられます」
太田翔氏のこの言葉は、私たちアストライドの使命と重なります。
私たちアストライドは、200社以上の経営者インタビューを通じて、経営者の想いを映像として記録し発信することを使命としています。太田氏夫妻が「まずは自分たちが美味しいお米を食べたい」というお米への純粋な愛から生産を始め、「おいしかった!」という言葉を励みに1年間頑張っているように、私たちもまた、経営者の想いを映像として記録し、その想いが伝わる瞬間を大切にしています。
「かっこいい農業をしたい」「子供たちが将来やってみたいと思ってもらえる」——太田氏のこの言葉には、農業の未来への願いが込められています。経営者の想いを映像として記録し、未来に継承していくこと。それが、私たちの果たすべき役割です。
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。前職を含め地域企業を中心とした200社以上の経営者インタビュー映像を制作。現在は「左脳と右脳のハイブリッド」を掲げ、戦略設計から映像・Web・各種コンテンツ制作まで手がける。 これまで音楽家として楽曲提供、行政職員として12年間 制度運用・予算編成等に従事。その後、NPO法人、映像・マーケティング分野に転じ、現在に至る。現在は大学非常勤講師として映像編集ソフトの操作指導も行う。


























