経営者インタビューの質問案を作る際、調べた情報から相手の答えまで決めていませんか?事前調査は話を理解する材料として使い、本人の言葉で背景や考えを聞く質問設計が大切です。
この記事では、調査の使い方、視聴者と媒体に応じた前提説明、創業の質問と数字の扱い、準備と当日の進め方、誘導と説明不足の直し方について取り上げます。調査と質問設計の担当を基に、内製と外注の分け方もお伝えします。
この記事でわかること
- 調査を理解に役立て、本人の答えを先回りしない質問の考え方
- 視聴者の知識と媒体に応じた前提説明の判断基準
- 創業の質問と数字の扱いから先回りを見分ける考え方
- 会社・業界・地域の調査から当日の前提確認までの手順
- 質問と前提共有で誘導や説明不足を直す考え方
- 調査と質問設計の担当に基づく内製・外注の分け方
調査は理解のために使い、答えは本人に委ねる
聞き手は、事前調査で知った内容を、相手の話を理解し、次の質問を考えるために使います。最初の質問では本人に前提を話していただき、聞き手の理解と照らし合わせてください。何をどう語るかは本人に委ね、調査した情報は理解を助ける材料として扱います。
調べた内容を質問の結論にしない
聞き手は、創業の苦労や社名に込めた意味など、経営者が過去に語った言葉を読むことがあります。その情報を質問に織り込んでしまう聞き方を、私は「先回り」と呼んでいます。
たとえば、「創業のときは資金繰りでご苦労されたとうかがっていますが、そのあたりはどうでしたか」という質問です。この聞き方では、聞き手が創業の話の中心を「資金繰りの苦労」に決めてしまい、相手はその理解に沿って説明しやすくなります。
私にも、下調べを深めたことが仇になり、質問の意図を匂わせすぎて相手の答えを先回りした失敗がありました。聞き手が答えの方向を先に決めていると、相手はその意図を感じ取ります。聞き手は調査内容を話の理解に使い、本人が語る答えまでは決めません。
相手の配慮を、本人の考えと取り違えない
そのような場面では、相手が「聞き手がほしそうな答えに合わせて話そうとしてくれる」ことがあります。私は、取材に協力しようとしてくださる相手なりの配慮と受け止めていますが、聞き手に合わせた答えが続く場面では、その方自身の言葉が出にくくなる点に注意が必要です。
調べて知っていることでも、前提情報を共有するため、私は最初に相手に話していただきます。こちらの理解が誤っている場合もあるからです。聞き手は、お互いの理解を確かめる過程で見えてきた違いを、次の質問を考える手がかりにします。
視聴者の知識と媒体に合わせて、前提説明を決める
聞き手は、誰が聞くか、どの媒体で届けるかに応じて、会話の中で説明する内容を決めます。映像とポッドキャストでは、会話以外で補える情報にも違いがあるためです。初めて会社を知る人には人物や事業の前提を、業界を知る人には具体的な判断や背景を伝えます。
初めて会社を知る人には、人物と事業の位置づけを伝える
聞き手と話し手だけが知っていることを前提に会話を進めても、視聴者が誰の、どんな話かをつかめるとは限りません。会社や業界を初めて知る人に届ける場合は、聞き手は専門的な話に進む前に、会社の事業と話し手の関わりを確かめます。
聞き手が具体的な話を優先して会社や事業全体の説明を省くと、初めて聞く人は内容を追いにくくなります。技術の話が続く場面では、聞く人にも理解のための専門知識が必要です。聞き手は会社・業界・地域の関係を調べ、全体の説明から具体的な話へ進む準備をします。
業界を知る人には、前提を確かめてから掘り下げる
業界を理解しないまま取材に臨むと、私の質問は浅くなり、相手の答えも概念や概要の説明にとどまりがちです。私自身、浅い質問をして、それを恥じる場面が多くありました。
業界に詳しい人へ届ける場合も、聞き手はまず本人の説明を聞き、双方の理解を確かめてから背景や考えを掘り下げます。その足がかりにするのは、双方で共有できた前提です。聞き手は、全体の説明と具体的な話のバランスを保つためにも準備を進めます。
映像と音声では、補足の方法を変える
雑誌のインタビューには、「記事を拝見しました」と伝え、過去の記事を足がかりに質問を深める手法があります。後から記者が文章を書く段階で、人物や出来事の説明を補える作り方です。私は、経営者インタビューの映像やポッドキャストでは、人物や出来事の説明を会話の中で伝える進め方を選んでいます。
映像では社屋などを見せて情報を補えますが、ポッドキャストでは、聞き手と話し手の会話そのものが、人物像や背景を伝える手段です。私は、記事を読んだと伝えるかどうかよりも、初めて聞く人が会話を理解するための説明があるかを確かめています。
創業の質問と数字の扱いで、先回りを見分ける
創業の話、従業員数、ゲストの紹介では、答えの先回りや前提説明の違いが表れやすくなります。質問を点検する際は、答えの方向を聞き手が決めていないか、会話だけで前提が伝わるかを確認してください。以下では、創業の質問例、数字の扱い、ゲストを迎える番組の構成を取り上げます。
創業の話は、本人が置く出発点から聞く
以下は想定の例です。創業の経緯を扱う記事を読み、資金繰りの苦労を知っている聞き手が、最初の質問を考える場面を取り上げます。
| 質問の形 | 質問に入っている前提 | 使う際の判断 |
|---|
| 「創業のときは資金繰りでご苦労されたとうかがっていますが、そのあたりはどうでしたか」 | 聞き手が、創業で中心となる話を資金繰りの苦労に決めています。 | 前提を共有する前の質問では、聞き手による答えの先回りに注意が必要です。 |
| 「創業の経緯からお話しいただけますか」 | 何を出発点にするかを本人に委ねています。 | 最初の前提共有に使い、本人の話をもとに次の質問を考えてください。 |
二つ目の質問では、聞き手は調べた内容を踏まえても、本人が何から話すかまでは決めません。資金繰りの話が出た場合は、聞き手がその背景を掘り下げます。別の出来事が中心になった場合も、聞き手は事前に読んだ記事との違いを確かめてから、次の質問を考えます。
社名に込めた意味を聞く場合も、聞き手は自分の知識を示すことより、視聴者と前提を共有することを優先します。この考え方を使う際の分かれ目は、過去の記事にある説明を最初から質問に組み込むか、まず本人に語っていただくかです。聞き手は両者を分けて考え、会話の中で視聴者にも前提を伝えます。
従業員数は、事業の説明と組み合わせる
私は、従業員数を聞く際、その会社が何をしているかという説明と結びつけて考えています。従業員数は、事業が発展した先にたどり着いた数字だからです。
聞き手や制作担当者は、映像では社屋の様子を差し込み、ポッドキャストでは事業内容や店舗数を説明して規模を伝えます。情報を選ぶ際の基準は、数字を出すこと自体より、その会社を理解するために何が必要かです。
ゲストの紹介は、詳しい話に入る前に置く
「ガンジス川でスクロール」は、ゲストを招くことが多い番組です。制作側は1回の収録で1か月分のエピソードをまとめ、ゲストにはマンスリーゲストとしてお越しいただきます。聞き手は、ゲストが出演する最初の回で、人となりやキャリアをうかがいます。
この例では、聞き手が詳しい話に入る前に、聞く人がゲストを理解するための時間を設けています。制作担当者が考えるのは、人物紹介を入れる位置と、各回で話す内容です。事前に調べた経歴も、聞く人に伝わるよう会話の中で紹介します。
会社・業界・地域を調べ、当日は前提から確かめる
聞き手は準備の段階で会社・業界・地域の情報を読み、話の流れを整理したうえで、質問に答えを入れていないか点検します。当日は、本人の説明から前提を共有してください。聞き手は調査内容と本人の語りの違いを確かめながら、具体的な背景や考えを掘り下げます。
準備では、会社と業界を地域の中で捉える
私は前職の伝七ステーションで、2018年から2023年までの5年間、毎週、三重県内の経営者を訪問しました。訪問した会社は250社以上、直接話を聞いた経営者は200名超です。
取材の前には、その会社のこと、業界のこと、地域での成り立ちを調べ込みました。調べた内容をもとに話の流れを整理するところまでが、私の取材当日に向けた準備でした。業界の理解は質問の深さに関わるため、聞き手には、本人の説明を理解して掘り下げるための準備が必要です。
社内で準備する場合は、社内の担当者が、会社情報と業界の背景を整理する担当、当日に質問する担当を決めます。同じ人が両方を担う場合も、その担当者は調査内容の整理と質問の作成を別々に点検し、準備の段階で、調べた情報を答えとして質問に入れていないか確認します。
質問案は、確認したいことと想定する答えを分ける
調査後、聞き手は本人に確認したい前提と掘り下げたい話を整理します。過去の記事にある言葉を質問へ入れる際は、本人がその説明を確認するだけの質問になっていないかが点検の対象です。聞き手は、記事の内容に引っ張られて本人が何から話すかを狭めていないかも確かめます。
創業の質問では、資金繰りの苦労を質問に入れるか、創業の経緯から自由に話していただくかが分かれ目です。聞き手は質問案を確認し、想定した答えと異なる話からも本人が話し始められるかを確かめます。調査で得た情報は、本人の答えを理解して次の質問を考える材料として使います。
当日は、現在から過去、未来へつなぐ
私は当日、現在の事業のお話から入り、過去へさかのぼり、最後にこれからの展望をうかがっていました。最初に現在の事業を説明していただき、相手との理解をそろえることを大切にしていたからです。その説明を踏まえて、これまでの歩みへ話を進めていました。
私は質問の順番の考え方を、「聴く順番を設計する」で詳しく書いています。当日の聞き手が次の質問を考える足がかりは、相手の語りを受け止め、共有できた前提です。
前職では、一対一で1時間から長いときは2時間お話をうかがい、対談を10分から15分の映像にまとめて毎週配信していました。公開する映像の長さと、本人から話を聞く時間は分けて考えてください。短い映像を制作する場合も、聞き手は収録中に人物や事業の前提を確かめる時間を確保します。
誘導と説明不足は、質問と前提共有で直す
取材中に想定どおりの答えがそろったり、専門的な話ばかりになったりした場面は、聞き手が質問の前提を見直す機会です。聞き手は、想定を確認するだけの会話になっていないか、初めて聞く人に必要な情報が抜けていないかを確かめます。問題が見えた箇所では、本人の説明を出発点に聞き直します。
想定どおりの答えが続いたら、質問の前提を点検する
先回りした質問が続くと、相手は取材に協力しようとして、聞き手の想定に沿った答えを返すことがあります。その方自身の言葉が出にくくなる点には、聞き手も注意が必要です。聞き手は相手の話し方と併せて、質問に入れた前提を確認します。
会話を立て直す際、聞き手は調査で得た説明を重ねる前に、まず本人の言葉で前提を話していただきます。会話を進め直す出発点は、本人の説明です。聞き手はこちらの理解と異なる点を確かめ、双方の前提がそろったところから背景や考えを掘り下げます。
詳しい話が続いたら、全体の位置づけへ戻る
聞き手は業界を理解する準備を進め、具体的な話と会社や事業全体の説明との関係も捉えます。技術の説明が続く場面で確認するのは、その話が会社のどの事業に関わるかです。聞き手は全体の説明と具体的な話を行き来し、初めて聞く人にも伝わる会話を心がけます。
ポッドキャストでは、聞き手と話し手は主に会話を通じて人物や背景を伝えます。前提を省きすぎたと気づいた場合は、聞き手は収録中に本人から説明していただく時間を確保し、音声だけで内容が伝わるかを確かめます。
言葉が変わるまでの時間を、成果の約束にしない
私の経験では、最初の10分、20分は「よそゆきの言葉」が続き、30分を過ぎたあたりから「言葉がその方自身のものになっていく」場面がありました。この時間は、私が立ち会った場面を説明する目安です。
私が見てきた変化は、「対談で相手の言葉が変わるのは30分を過ぎてから」で詳しく書いています。相手の言葉の変化は、それぞれの対談の様子に即して捉えてください。聞き手が確認する点は、経過した時間と、質問で答えを先回りしていないかです。
聞き直す際の選択肢は、調査した内容をいったん脇に置く聞き方です。私は、場合によっては何も知らないようなそぶりで質問することもあります。聞き手だけが知っている情報も本人の言葉で説明していただき、本人と視聴者が前提を共有するための聞き方です。
内製・外注は、調査と質問設計の担当を分けて考える
内製と外注を比べる際、依頼側の担当者は収録や編集に加え、調査と質問設計を誰が担うかも確認します。その際に分けて考えるのは、社内で整理する情報と、制作側に依頼する範囲です。見積もりでは、構成台本に含まれる内容と、人物や事業の前提を会話の中でどう伝えるかを確かめます。
内製では、社内の知識を初めて聞く人向けに整える
社内で取材する聞き手は、会社を知っている強みを生かし、初めて聞く人にも伝わる説明を用意します。聞き手と経営者にとって自明の話が、会社を初めて知る人にも伝わるとは限りません。社内の担当者は会話に説明を含めるとともに、質問を担う人と、聞く人の立場で構成を確認する役割を分けて考えます。
担当者が準備する情報は、会社のこと、業界のこと、地域での成り立ちです。担当者はその情報を共有し、本人から話していただく部分を整理します。社内で答えが分かっている項目についても、会話の中で説明する必要があるかを見極めます。
外注では、構成台本と調査範囲を確認する
アストライドのポッドキャスト制作・運用代行では、次の内容に対応しています。
- 企画立案。
- 台本・質問設計〔ホスト用の質問リスト、ゲスト用の事前共有資料〕。
- 収録・ディレクション。
- 進行役・サブMC対応。
- 編集。
- ノイズ除去・MA。
- 番組サムネイル・BGM。
- 配信入稿。
- 概要欄・タイトルの作成。
- 公開後の運用支援。
提供内容の詳細は、公開サービスページ「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」をご確認ください。
依頼側と制作側は打ち合わせで、構成台本の作成範囲と、資料を読む担当や会社情報・経歴を整理する担当を確認します。併せて確かめるのは、調査の内容と、相互に共有する情報の範囲です。双方は、準備に関わる作業も依頼範囲に含めて明確にします。
アストライドでは、1エピソードの収録を30分ほどの目安で進め、事前取材は行いません。ポッドキャスト制作の準備では、ホスト用の質問リストとゲスト用の事前共有資料を共有することを中心に進めます。
パーソナリティの役割と質問の担当を合わせる
アストライドが運営する番組では、メインMCがテーマに沿って話を展開するのが基本です。制作担当者は、その方が何者かを伝える部分も構成の中で考えます。ゲストを迎える場合は、人物紹介と具体的な話をどこで分けるかを確認します。
外注先との打ち合わせでは、依頼側と制作側が、届ける相手、本人に語っていただく内容、調査情報の質問への使い方を共有します。構成台本の内容と、本人の答えを受けて掘り下げる余地も、双方で確かめる項目です。その確認を通じて、依頼側と制作側はそれぞれが担う役割を整理します。
まとめ
聞き手は、次の取材に向けて、まず最初の質問を点検します。事前の記事の結論が質問に入っている場合は、その結論を外し、本人の言葉で前提を話していただく方法を試してください。調査内容と本人の語りの違いも、聞き手が次の問いを考える材料です。
聞き手は、同じ相手に質問する場合も、聞く人や媒体に応じた説明を用意します。前提説明の量が変わるのは、初めて会社を知る人に届けるか、業界を知る人に届けるかによってです。聞き手や制作担当者は、映像で補える情報と、音声の会話で伝える情報も分けて考えます。
内製・外注のどちらでも、社内の担当者と制作側は、次に調査の担当と質問設計の範囲を確認します。資料を読む担当、当日に前提を共有する担当、本人の答えを受けて掘り下げる担当を整理してください。同じ人が複数の役割を担う場合も、社内の担当者と制作側は、各工程で何をするかを具体的に共有します。
この記事からわかるQ&A
事前調査は、どこで区切ればよいですか
聞き手は、資料の数や調査時間だけを、事前調査を区切る目安にはしません。会社・業界・地域の関係を理解し、本人に確認したい前提と掘り下げたい話を整理できるかで判断します。相手の話を理解して質問を考えられる状態が目安です。調べた情報で答えの筋書きが固まり始めた場合は、聞き手は質問を点検し、その結論を入れていないか確かめます。
本人の説明が、過去の記事と違った場合はどうしますか
私にも、自分の理解が誤っていた場面がありました。聞き手はまず本人の説明を受け止め、過去の記事で読んだ情報と照らし合わせて違いを確かめます。違いを確かめること自体も、次の質問を考える手がかりです。聞き手は、お互いの前提がそろってから話を掘り下げます。
「記事を拝見しました」と伝えるのは避けた方がよいですか
雑誌のインタビューには、聞き手が過去の記事を足がかりに質問を深める手法があります。映像やポッドキャストで聞き手が優先するのは、記事を読んでいない人にも話が伝わる構成です。聞き手は記事を読んだと伝えるかどうかより、そのあとに前提を説明できるかを確認します。過去の発言に触れる場合も、人物や出来事の説明を会話の中から省きません。
従業員数などの数字は、質問から外した方がよいですか
聞き手は、数字で何を伝えたいかを基準に、使うかどうかを判断します。規模や背景を伝える際の基本は、従業員数と事業の説明を組み合わせることです。聞き手や制作担当者は、映像では社屋の様子、ポッドキャストでは事業内容や店舗数も使い、媒体に合わせて規模感の伝え方を選びます。
構成台本があれば、事前取材や回答の準備も必要ですか
依頼側の担当者は、構成台本、事前取材、回答の準備を分けて確かめます。アストライドはポッドキャスト制作で、ホスト用の質問リストとゲスト用の事前共有資料を用意し、テーマや質問の順番を整理します。準備はこれらの資料の共有を中心に進め、事前取材は行いません。台本の役割は、制作側が回答内容まで決めるか、テーマや順番を整理するかによって変わります。依頼時に、用意する資料と準備の担当を確かめてください。
出典