初対面の経営者との対談で、何から話を聴けばよいか迷っていませんか?同じ目的でコンテンツを作る場を整え、相手の歩みと考えを聴くことが、互いの理解を深める土台です。
この記事では、距離が変わる理由、目的による対談の使い分け、言葉と関係の変化の捉え方、準備と進行、避けたい進め方、ゲスト回への応用について取り上げます。番組内でゲストを招く役割を踏まえた、社内と外部の制作分担や見積もりの確認事項もお伝えします。
この記事でわかること
- 場の設定と自己開示から対談で距離が変わる理由を捉える考え方
- 相手と共有する目的に基づく対談と商談の使い分け
- 言葉の変化と対談後の関係の変化を分けて捉える考え方
- 相手が話せる順番を踏まえた対談の準備と進行の組み立て方
- 営業への誘導や言葉の変化の決めつけを避ける考え方
- ゲスト回の位置づけと内製・外注の分け方、見積もりの確認事項
対談で距離が変わる理由は、場の設定と自己開示にある
私は、経験した距離の変化を、一緒にコンテンツを作る場の設定、自己開示、お互いの解像度の向上という3つから捉えています。自己開示では、2時間遮られずに歩みと考えを聴いてもらい、話が進むほど互いを具体的に理解していきます。講演でも、この3つを距離が変わる理由としてお話ししました。
同じ目的に向かってコンテンツを作る
商談を「売る側と買う側がテーブルを挟んで向かい合っている状態」とすると、対談は「同じ目的に向かって二人が並んでいる状態」です。相手の話をコンテンツにするという目的を共有すると、話し手と聞き手は、同じものを作る仲間として対話に向き合います。
対談の主役は、最初から最後まで相手です。聞き手は黒子に徹し、その方が話したいことを聴きながら、内容が伝わるように支えます。事業への考えを伝える映像なら、構成の中心は相手の経験と言葉です。
歩みと考えを聴いてもらう自己開示が進む
講演では、2時間遮られずに自分の歩みと考えを聴いてもらうことを、自己開示の機会としてお話ししました。相手が自分の経験を話し、聞き手が受け止める時間も、関係が変わる理由のひとつです。
聞き手は、自己開示を支えるために、相手が話す筋道を尊重します。相手は、事業の説明に続いて、その仕事を始めた経緯や大切にしている考えを語る場合もあります。その際も、聞き手は急いで結論にまとめません。筋道を確かめながら、相手の話を聴いていきます。
話が進むほどお互いの解像度が上がる
自己開示が進むほど、お互いの解像度が上がります。ここでいう解像度は、その人を具体的に理解できる度合いです。会社名や役職に加えて、何を経験し、何を大切にしている方かが分かっていきます。
対談では、聞き手が話をどう受け止めるかも相手に伝わり、私は、この相互理解が距離の変化に関わると捉えています。一方、制作担当者は、映像にまとめる工程で、対談中に語られた言葉を形にします。
対談を選ぶかは、相手と共有する目的で判断する
対談を企画する担当者は、相手との関係を作りたいのか、具体的な提案を判断してもらいたいのかを先に整理します。関係づくりを目的とする場合は、相手の歩みと考えを聴く場が適しています。提案への判断を求める場合は、担当者が、その提案を検討する場を設けてください。
相手を知り、関係を作りたい場合
相手の事業や考えを知りたい場合は、企画担当者が、その方を主役にした対談を選べます。名刺交換の場よりもじっくりと話を聴ける点が、この対談の特徴です。担当者は、何をしている方かに加えて、なぜその仕事をしているかまで聴く機会を作れます。
企画担当者は、「営業の話というところはさておき、まずその方との関係を作る」という目的を明確にします。「相手を知る」と決めた企画に、自社の提案へ誘導する質問が混ざっていないかも確かめます。そうした質問があれば、担当者は、企画の目的に沿う内容へ見直してください。
商品やサービスを判断してもらいたい場合
価格、提供内容、導入条件などを確認してもらうことが目的なら、担当者は、そのための商談を設定します。何を判断する場かを相手と共有すると、担当者は、説明する内容と質問する内容を整理しやすくなります。
担当者は、対談では相手の経験と言葉をコンテンツにする目的を共有し、商談では相手と提案を検討します。その場で共有する目的に照らし、担当者は、企画名よりも、相手に何をお願いするかを基準に選びます。
映像や音声で相手の考えを伝えたい場合
経営者インタビュー映像やポッドキャストを企画する担当者は、誰に、どのような話を届けるかも判断に含めます。経営者、広報担当、採用担当の間で伝えたい内容と公開する場面をそろえたうえで、担当者は、相手に出演をお願いする流れを検討します。
以下は想定の例です。経営者の歩みを伝える企画と、現在の事業を説明する企画では、担当者が話を聴く重点も変わります。企画担当者は、出演者が話せる内容と、受け手に届けたい内容を照らし合わせて、重点を決めます。
公開する対談では、企画担当者が、関係づくりに加えて、話した内容を形にする目的も相手と共有します。担当者は、何のために話していただき、その言葉をどこで使うかまで含め、相手への企画説明を具体的に整えます。目的が曖昧な場合は、担当者が、収録方法より先に企画の説明を整えてください。
言葉の変化と、対談後の関係の変化を分けて捉える
私は、対談中の言葉の変化と、対談後の関係の変化を分け、30分を過ぎたあたりでは言葉の変化を観察してきました。距離が変わったことは、私が対談を終えたあとにいただいた言葉から受け止めています。
30分を過ぎたあたりから言葉が変わる
私の対談経験では、最初の10分、20分に相手の「よそゆきの言葉」が続き、30分を過ぎたあたりから「言葉がその方自身のものになっていく」場面がありました。講演でも、私は、この対談経験に基づいて言葉の変化をお話ししています。
私は、対談中に、相手の言葉が変わること、話すときのトーンが一段階上がること、目の輝きが強くなることを見ています。この3つが、言葉や話し方の変化を捉える手がかりです。
私は、「冒頭は相手がこちらを測っている時間」と考え、言葉の変化を記事「対談で相手の言葉が変わるのは30分を過ぎてから」で詳しく紹介しています。聞き手は、経過時間とともに、相手の実際の言葉や話し方を見てください。
対談後の言葉から関係の変化を受け止める
対談を終えたあと、「また会いましょう」「食事どうですか」と言っていただくことがありました。「こういう人紹介しますよ」「こういう人がいるから会ってみるといいよ」という言葉も、関係が変わったことを受け止める手がかりです。
「取材先の多くはこうしたご紹介でつながってきた」というのが、私の経験です。紹介については、記事「紹介が連鎖する構造」で詳しく紹介しています。
| 見る場面 | 確認してきたこと | 捉え方 |
|---|
| 対談中 | 言葉、話すトーン、目の輝きが変わる | 相手の言葉の変化として受け止めます。 |
| 対談後 | 再会、食事、紹介について言葉をいただく | 関係が変わったことの手がかりにします。 |
| 映像完成後 | 言葉を形にしたことへの感想をいただく | 制作物に対する受け止めとして扱います。 |
映像化は、話した言葉を形にする工程
私は前職で、1時間から2時間の対談を、10分から15分の映像にまとめて毎週配信し、質問者の声は使わず、テロップも最小限にしました。講演でも、私は、この制作経験をお話ししています。
完成した映像をご覧になった経営者から、「自分でも言葉にできていなかったものを形にしてくれてありがとう」と喜んでいただける瞬間に出会いました。これは、対談で語られた内容を映像にまとめた仕事への感想です。私は、対談で距離が変わる3つの理由と、完成した映像への評価を分けて捉えています。
準備と進行は、相手が話せる順番から組み立てる
対談の準備では、企画担当者が、相手が話す目的、話を聴く順番、公開する内容を整理します。聞き手は、下調べを相手の理解に役立て、話しやすい順番を考えて聴いてください。以下では、この考え方を企画に落とし込むための準備と進行の手順を紹介します。
企画の目的と社内の役割をそろえる
最初に企画担当者は、誰に何を伝えるコンテンツか、なぜその方に話していただきたいかを書き出します。経営者、広報担当、採用担当で目的が異なる場合は、担当者が、今回の対談で優先する内容を一つにまとめます。
次に企画担当者は、相手との連絡、当日の聞き手、公開内容の確認について、それぞれの担当者を決めます。少人数の体制なら、兼任も選択肢の一つです。企画担当者は、企画の説明、公開する場所、聞きたい内容のメモをまとめ、担当者間で共有します。
下調べを質問の誘導に使わないようにする
下調べの目的は、相手の事業を理解するために情報を整理することです。分かったことと本人に確かめたいことを分けておくと、聞き手は、自分の理解と相手の考えを区別して質問を準備できます。
質問を考える聞き手は、答えまで書き込まず、相手に前提から話していただける形を整えます。調べた内容と違う話が出た場合も、聞き手は、準備した理解のまま話を進めません。その違いを確かめながら、対談の中で理解を更新していきます。
現在から過去、未来へ話をつなぐ
私は、まず現在の事業から話を聴き、その後に過去、最後に未来へと進めます。経営者が商談や採用などで日々説明している現在の事業は、経営者にとって話しやすい内容だからです。私は、「冒頭は相手がこちらを測っている時間」という考えも踏まえて、この入り方を選びます。
聞き手が現在の事業に続いて過去の話を聴くと、相手は現在との違いを具体的に話しやすくなります。この順番は、相手の話を受け止めながら対談を進めるための軸です。聞き手がこれまでの歩みと今の奮闘を伺い、これからの展望へ話を進めると、相手は過去と未来をつないで話します。
以下は想定の例です。企画時の質問例としては、「現在はどのような事業をしていますか」「その仕事を始めた経緯を教えてください」「これからどのように進めたいですか」と置けます。実際に話を掘り下げる手がかりは、相手から返ってきた言葉です。
公開する内容を目的に照らして確認する
対談を終えた制作担当者は、何を残せば企画の目的が伝わるかを検討します。話した順番と公開物の順番が変わる場合も、相手の言葉の意味を変えないようにする点は同じです。制作担当者は、編集した内容をその観点から確認します。
担当者は、相手との関係づくりと公開物の仕上がりを異なる観点で確かめ、社内で内容を確認する人と、公開を判断する人を明確にしておきます。制作を依頼する場合も、担当者は、誰がどの段階で確認するかを事前に相談します。
営業への誘導と、言葉の変化の決めつけを避ける
企画担当者と聞き手は、営業へ誘導すること、答えを先回りすること、時間だけで相手の変化を決めることに注意して対談を進めます。企画や質問にその傾向が出たら、担当者と聞き手は、相手を知る目的から離れていないかを確かめ、その目的に戻って前提と進行を見直します。
営業のための前置きに見せないようにする
企画担当者と聞き手は、営業に使う意図が相手に伝わり得ることを踏まえて、対談を企画します。そこで軸にするのが、「営業の話というところはさておき、まずその方との関係を作る」という姿勢です。担当者は、対談への招待と、自社の提案を検討してもらうお願いを、目的を分けて伝えます。
対談の直後に提案へ移る企画では、企画担当者が、相手にどう見えるかと、招待と提案の目的をそれぞれ伝えられる構成かどうかを事前に確かめます。対談を提案の前置きとして受け取られる構成なら、担当者は、提案を別の目的のやりとりとして整理します。
調べた内容で相手の答えを先回りしないようにする
私には「下調べを調べ込んだことが仇になり、質問の意図を匂わせすぎて、相手の答えを先回りしてしまう失敗」がありました。準備した内容への思い込みが強くなると、聞き手は、相手の言葉よりも自分が想定した筋道を優先しがちです。
聞き手が答えの方向を決めていると、相手が「聞き手がほしそうな答えに合わせて話そうとしてくれる」ことがあります。立て直す際には、聞き手と相手がお互いの前提を確かめるところから始めます。聞き手は、まず相手に前提を話していただき、その後に話を掘り下げてください。
聞き手は、準備した情報を、相手を理解するために役立てます。
30分を変化の期限にしないようにする
私は、30分を過ぎたあたりで相手の言葉が変わる場面を経験しました。聞き手がこの経験を全員に当てはまる時間の基準にすると、相手の話し方を無理に変えようとするおそれがあります。聞き手は、経過時間に加えて、相手が何を話し、どのような言葉を選んでいるかも見てください。
「言葉がほどけない」ときは、聞き手が無理に崩さず、仕事の進め方や数字を聞く方向に切り替えます。相手が話せる内容を手がかりに、対談を進めます。成果を振り返る際にも、聞き手が確かめる対象は、感情の強い話に限りません。その方の仕事の進め方や考えが伝わっているかも確認します。
紹介や再会を対談の必須成果にしないようにする
私が対談後に再会や紹介の言葉をいただいたのは、相手からの働きかけでした。相手の受け止め方は、一人ひとり異なります。紹介を得ることを先に目標にすると、聞き手の質問や対談後の対応にも、その期待が混ざる可能性があるため注意が必要です。
紹介への期待が先に立ったときは、企画担当者と聞き手が、今回の企画で相手にお願いした内容を確かめます。話を聴き、コンテンツを作ることが目的なら、担当者は、まずその仕事を完了させます。再会や紹介の言葉は、対談後に相手からいただいたものとして受け止めてください。
ゲスト回への応用は、招く役割と制作の分担を決めて進める
企画担当者は、ポッドキャストのゲスト回にも、招く側とゲストが一緒にコンテンツを作る場の設計を応用できます。内製・外注を検討する際は、担当者が、関係づくりを担う人と企画・収録・編集を担う人を整理し、自社で担える役割から判断します。
年間の番組計画にゲスト回を置く
以下は想定の例です。年48本を配信する番組で、そのうち12本をゲスト回にし、各回に異なる会社の方を招く設定なら、番組を運営する企業は、1年で12社の方をお招きできます。
年48本という設定の参照先は、公開サービスページ「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」に掲載している、配信頻度別の年間本数です。招く側の考え方については、記事「招くことは、営業の裏返し」で詳しく紹介しています。
自社で担う役割と依頼する役割を分ける
自社で担う範囲を決める際は、企画担当者が、誰を招くか、何を聴きたいか、相手とどう連絡するかを整理します。聞き手、収録、編集、公開前の確認も含めて役割を整理したうえで、担当者は、実際に担当できる人がいるかを確かめます。
外注を検討する担当者は、依頼したい役割を具体的にし、収録や編集だけを頼むのか、企画や聞き手も含めるのかによって相談内容を分けます。依頼先に任せる工程と自社で判断する内容を分けて書くと、担当者は、同じ範囲で依頼先を比較できます。
見積もりでは完成物と確認工程を確かめる
見積もり時には、担当者が、完成物の形式、依頼する工程、修正の扱い、公開までに必要な社内確認を確かめます。その金額に含まれる作業の範囲を基準に、担当者は、見積金額を比較します。
関係づくりを目的にする場合は、企画担当者が、誰が相手を招き、誰が当日話を聴くかも確かめます。招く理由や届けたい内容を自社で共有しておくことも、大切な準備です。担当者は、番組を作る役割と、相手との関係を担う役割を整理して進めます。
まとめ
企画担当者は、最初に、対談を通じて相手を知りたいのか、具体的な提案を判断してもらいたいのかを確かめます。具体的な提案への判断を優先する場合は、担当者が、その提案を検討する場を設けます。
企画担当者は、目的をそろえてから、相手へのお願いを組み立てます。
対談を選ぶ場合は、企画担当者が、招きたい方、聴きたい内容、届けたい相手、公開する場所を書き出します。続いて、聞き手、制作担当、内容の確認担当を決めます。この担当分けを踏まえると、企画担当者は、内製する範囲と依頼する範囲を具体化しやすいです。
最初の企画では、企画担当者が、相手の話す目的を共有できているか、公開物がその目的に沿っているかを確認します。再会や紹介の有無も振り返ります。ただし、振り返る対象は、その有無に限りません。担当者は、相手の言葉をどう受け止め、形にしたかも確かめます。
この記事からわかるQ&A
一度の対談で必ず関係が変わりますか
私は、対談後に相手から再会や食事、紹介の言葉をいただいてきました。関係の変化を捉える際は、話した時間とともに、実際にいただいた言葉を見ています。相手の受け止め方は一人ひとり異なるからです。対談の価値を振り返る担当者は、企画で共有した目的と、完成した内容を基準に確かめます。紹介についての言葉に加えて、担当者は、企画の目的に沿った対談と制作ができたかも確認します。
対談には必ず2時間必要ですか
私の経営者との対談は、1時間から、長いときは2時間でした。講演では、この経験を振り返り、2時間の自己開示について話しました。30分を過ぎたあたりの言葉の変化も、私は、対談中の様子を捉える手がかりとして見ています。収録時間を考える際は、企画担当者が、相手に聴きたい内容と完成させたいコンテンツの範囲を整理し、それぞれの企画に合う時間を決めます。
対談のあとに自社の提案をしてもよいですか
提案をする場合は、担当者が、対談で共有した目的との関係を確かめます。関係を作るために招いた対談から、そのまま提案へ誘導しないよう、担当者は注意を払います。提案について相談したい場合は、担当者が、その目的を別に明示する方法を検討してください。タイミングを考える際も、担当者は、相手がそのやりとりを何のための場として受け止めるかを基準にします。経過時間とともに、担当者は、相手と目的を共有できているかも確かめます。
ポッドキャストにゲストを招けば、紹介につながりますか
企画担当者は、ゲストを主役にし、一緒にコンテンツを作る場の設計を中心に、ゲスト回への応用を考えます。再会や紹介については、相手から実際にいただいた言葉を手がかりに受け止めます。以下は想定の例です。年48本のうち12本をゲスト回にし、各回に異なる会社の方を招く企画を考えます。この場合、番組を運営する企業は、1年で12社の方と一緒にコンテンツを作る機会を設けられます。ゲスト回を検討する際の出発点は、誰を招き、どんな話を誰に届けたいかです。担当者は、その目的に合う人選と制作の分担を確認します。
映像や音声を完成させることが、距離の変わる理由ですか
私は、距離が変わる理由として、一緒にコンテンツを作る場の設定と、2時間遮られずに歩みと考えを聴いてもらう自己開示を挙げています。自己開示が進むほどお互いの解像度が上がることも含め、私は、理由を3つに整理します。一方、完成物は、対談で話した言葉を形にした成果です。私は、完成した映像への感想をいただいた経験を、制作物に対する評価として捉えてきました。関係の変化は対談後の再会や紹介の言葉から、完成物への評価は映像をご覧になったあとの感想から、私はそれぞれ受け止めています。完成後の感想を振り返る際も、担当者は、言葉を形にした制作物への受け止めとして捉えます。
出典