自社の強みを説明しても同業他社との違いが伝わらず、価格で比較されることを繰り返していませんか?差別化のメッセージを持つことと、買い手がその差を識別できることは別の問題です。
この記事では、買い手が違いを判別できない理由と、比較の際に見ている項目、会社の信頼性を示す判断の理由について取り上げます。他社との違いを確かめる材料を増やす語り方と語る場の選び方、社内で判断を書き出す方法もお伝えします。
この記事でわかること
買い手がデジタル上で違いを判別できない実態
差別化のメッセージと買い手による識別の差
比較候補が平均2.9社に絞られることの意味
意思決定者が実際に重視している3項目
会社の信頼性を確かめる材料となる判断の理由
買い手が識別できる情報を増やす語り方
判断の理由を語る場としての音声の特徴
この方法が向かない場合と社内で確かめる判断
目次
買い手の64%は、違いを判別できていない 差別化のメッセージと、識別の差 比較候補は、平均2.9社に絞られている 意思決定者が実際に見ている3項目 「会社の信頼性」は、カタログでは出ない 語り方を変えると、識別できる情報が増える 語る場をどこに持つか この方法が向かない場合 まとめ この記事からわかるQ&A 出典
買い手の64%は、違いを判別できていない
調査会社のGartnerが2021年に、B2B顧客を対象とした調査の結果を公表しています。調査そのものは2020年12月に実施され、1,100人を超える顧客が回答しました。
設問 回答 デジタル上で供給者の違いを判別できるか 64%が「判別できない」 デジタルでの接点後に行動を変えたか 76%が「何も違う行動を取らなかった」
この64%という数字が測っているのは、製品やサービスそのものの性能差とは違います。測られたのは、Webサイト、オンラインのツール、デジタルのコンテンツを通じて、体験の上での差が伝わっていないという状態でした。
差別化のメッセージと、識別の差
Gartnerの数字は、次の2つがまったく別の事柄だと示しています。
1つ目は、自社が差別化のメッセージを持っているかどうかという点です。2つ目は、買い手の側がその差を実際に識別できているかどうかを指します。
多くの会社は、1つ目のほうをすでに持っています。会社案内にもWebサイトにも、他社との違いが書かれているためです。それでも実際には、買い手の側の64%が違いを判別できていません。
差についての主張そのものは届いています。届いていないのは、その主張を確かめるための材料のほうです。
比較候補は、平均2.9社に絞られている
もう1つ、日本国内で行われた調査のデータがあります。
トゥモローマーケティングが2026年に行った調査では、BtoBサービスの意思決定または候補選定に関わる全国のビジネスパーソン180人が回答しました。
比較の候補として挙がる会社の数は、平均で2.9社という結果でした。中央値のほうは3社です。
この数字が意味しているのは、買い手が3社ほどに絞り込んでから比較を始めるという点です。この絞り込みの段階で候補に入らなければ、比較の土俵にも乗れません。同じ調査では、最も重視される要素として価格が71%、製品・サービスの特徴が69%という結果も出ています。
意思決定者が実際に見ている3項目
ワンマーケティングは2025年に、全国の仕入・購買・契約に関わる600人へ調査を行いました。このうち意思決定者は195人です。
順位 意思決定者が重視する項目 割合 1位 製品・サービスの内容・品質 45.6% 2位 会社概要・信頼性 33.3% 3位 費用・見積金額 32.8%
候補の提案を評価する場面では、全体の回答で内容・品質が72%、会社の信頼性が68%、費用・見積金額が67%という並びでした。
ここで注目していただきたいのは、2位の項目です。意思決定者に限ると、会社の信頼性が33.3%で費用を上回っています。同じ調査では、高額な購買ほど信頼性を重視する傾向も示されました。
「会社の信頼性」は、カタログでは出ない
内容・品質と費用は、資料の上で比較できます。仕様と金額が並んでいれば、買い手が自分で比較表を作れるためです。
会社の信頼性のほうは、この作り方では表に出てきません。実績の件数や創業年数を並べても、それは規模の情報であって信頼性そのものとは違います。
では、買い手にとって何が信頼性の材料になるのか。ここで手がかりになるのは、判断の理由のほうです。
たとえば、なぜその仕様を選んだのかという理由があります。過去にどの案件で失敗し、そこから何を変えたのかという経緯も、その1つです。どういう相手とは組まないと決めているのかという判断も含まれます。この3つは、他社と重ならない情報です。
語り方を変えると、識別できる情報が増える
会社案内に書かれているのは、多くの場合、結論のほうだけです。「高品質」「短納期」「一貫対応」といった語が並び、この3つの語は同じ業界のどの会社の資料にも見つかります。
判断の理由まで語ると、ここに他社との差が出てきます。書き手が「一貫対応」という言葉の代わりに語るのは、なぜ工程を分けずに持つと決めたのか、その判断で何を捨てたのかという内容です。
聞いた側は、語られた理由を他社のものと比べられます。比べられる情報が増えた分だけ、買い手が識別できる差も増えていきます。
判断の理由をどう語るかと、企業が語れる題材については、ナラティブとは何か で詳しく記載しています。
LinkedInとEdelmanの2社は2024年に、意思決定者・経営層3,484人へ調査を行っています。質の高いソートリーダーシップに触れた意思決定者のうち、75%が以前は検討していなかった製品やサービスを調べ始めたと回答しました。約90%は、発信した企業からの営業やマーケティングに好意的になったと答えています。
語る場をどこに持つか
判断の理由というものは、資料の形にしにくいところがあります。文章にすると長くなり、読み手が最後まで追ってくれません。
音声という形であれば、送り手はこの長さを負担にせずに届けられます。1本15分の番組で1つの判断を扱った場合、聞く側がそれを受け取るのは、移動中や作業中の時間です。
週1回配信で年48本の番組であれば、番組を持つ側は1年で48個の判断について語れる計算です。この48本は、同じ業界の他社が同じようには作りにくい内容だと私たちは考えています。
専門性を示す本数の考え方については、専門性は何回語れば伝わるのか で詳しく記載しています。
この方法が向かない場合
ここまで書いてきた方法が働かない場面もあります。
買い手がすでに仕様を固め、価格だけで選ぶと決めている入札のような場面では、語る場を持っていても結果は変わりません。Gartner の調査で76%が「接点後に何も違う行動を取らなかった」と答えているのも、この構造と重なります。
自社の判断に、他社と違うところが実際にない場合も同じです。語ることで差そのものが生まれる、という順序でもないように思います。もともとある差が、語ることで見えるようになるだけだからです。
まず社内で、他社と違う判断を3つ書き出してみてください。書き出せなかった場合、語る場を持つより先に、その判断そのものを作る作業が要ります。
自社の判断の理由を番組で語り、新規の相手との接点を作りたい場合は、アストライドの「ポッドキャストで新規開拓に取り組む」 をご覧ください。
まとめ
B2B顧客1,100人超を対象にしたGartnerの調査では、64%が「ブランド間のデジタル体験の違いを判別できない」と答えました。76%は、デジタルでの接点後に何も違う行動を取っていません。
自社が差別化のメッセージを持っているかどうかと、買い手がその差を識別できるかどうかは別の問題です。差についての主張は届いていても、それを確かめる材料のほうが届いていません。
日本の調査では、比較の候補が平均2.9社に絞られています。意思決定者が重視するのは、製品・サービスの内容・品質が45.6%、会社概要・信頼性が33.3%、費用・見積金額が32.8%という並びです。
会社の信頼性は、仕様と金額の表では出てきません。なぜその仕様を選んだのか、過去にどの案件で失敗して何を変えたのかという判断の理由が、他社と重ならない情報にあたります。
まず社内で、他社と違う判断を3つ書き出してみてください。書き出した判断は、買い手の側で識別できる差の候補です。
この記事からわかるQ&A
買い手はどれくらい違いを見分けられていますか
Gartner が2020年12月に実施し、2021年に公表した調査があります。B2B顧客1,100人超のうち、64%が「ブランド間のデジタル体験の違いを判別できない」と答えました。76%は、デジタルでの供給者との接点後に何も違う行動を取っていません。
差別化のメッセージを作れば伝わりますか
メッセージを持つことと、買い手が差を識別できることは別の問題にあたります。Gartnerの64%という数字が示しているのは、Webサイトやデジタルのコンテンツを通じて、体験上の差が買い手に伝わっていない状態です。差の主張は届いていても、それを確かめる材料のほうが届いていません。
意思決定者は何を見て選んでいますか
ワンマーケティングが2025年に、全国の仕入・購買・契約関与者600人へ調査を行っています。意思決定者195人の上位3項目は、製品・サービスの内容・品質45.6%、会社概要・信頼性33.3%、費用・見積金額32.8%でした。意思決定者に限ると、会社の信頼性が費用を上回っています。
比較される会社は何社くらいですか
トゥモローマーケティングが2026年にビジネスパーソン180人へ行った調査では、比較の候補として挙がる会社が平均2.9社、中央値3社という結果でした。買い手は3社ほどに絞ってから比較を始めますので、絞り込みの段階で候補に入る必要があります。
何を語れば違いが伝わりますか
判断の理由です。なぜその仕様を選んだのか、過去にどの案件で失敗してそこから何を変えたのか、どういう相手とは組まないと決めているのか。この3つは他社と重ならない情報にあたります。LinkedInとEdelmanの2社が2024年に行った調査の対象は、3,484人です。質の高いソートリーダーシップに触れた意思決定者のうち、75%が以前は検討していなかった製品やサービスを調べ始めたと回答しました。
出典