私は2018年から2023年までの5年間、毎週、経営者インタビューの映像を制作してきました。訪問した会社は250社を超え、直接お話をうかがった経営者は200名を超えています。
その5年のあいだに、私が確かめてきたことがあります。取材の前に調べることは、やはり欠かせません。ただし、調べ込んだ内容をそのまま質問に持ち込むと、相手の答えを先回りしてしまう場面が出てきます。
この記事では、私がこの2つをどう両立させているのかについて書いていきます。あわせて、私が調べたことをどこまで質問に使い、どこから先を相手に委ねているのかもお伝えします。
調べておくと減る質問
事前に調べておいた場合、聞き手が当日に聞かなくてよい質問はその分だけ減ります。
私が取材の前に押さえるのは、会社の沿革、直近の取り組み、そして業界の動きの3つです。この3つを押さえておくと、私は冒頭の20分で消えるはずだった時間を別の質問へ充てられます。
創業が何年か、何人の会社か、主力の製品は何か。こうした事実は、会社のホームページと業界紙の記事を読めば分かります。当日にこれを聞いた場合、相手は自分の会社の説明を10分ほどかけて繰り返すことになります。
対談で言葉が変わるのは30分を過ぎたあたりですので、私は冒頭の10分を事実確認で使いたくありません。
言葉が変わる場面については、対談で相手の言葉が変わるのは30分を過ぎてからで詳しく記載しています。
調べ込んだ結果として起きること
一方で、聞き手が調べ込むほど起きやすくなることもあります。
事前に読んだ記事の中には、その経営者の言葉が載っています。よく載っているのは、創業のときの苦労、社名に込めた意味、社員へ伝えている考え方の3つです。この3つの話は、多くの会社の記事に共通して出てきます。
読み込んだ内容が頭に入っている場合、当日に出てくる質問はこういう形になります。「創業のときは資金繰りでご苦労されたとうかがっていますが、そのあたりはどうでしたか」。この質問のしかたが、私の言う先回りにあたります。
この聞き方をした場合、相手が返せるのは「そうですね、そのとおりです」から始まる答えになります。すでにこちらが答えを持っている質問ですので、相手はそれを確認するだけの役へ下がります。
相手が先回りに気づいたとき
先回りの質問を重ねた場合、相手の方は早い段階でそこに気づかれます。
そこに気づいた相手は、こちらが用意した筋書きのほうに合わせはじめます。私はこの動きを、相手の方の悪意のない親切だと受け止めています。相手の方は、こちらが求めている答えのほうを差し出そうとしてくださっています。
ただし、そこから先でその方の言葉は変わりません。1時間から2時間の対談をいただいたとしても、素材として使えるのは会社案内に近い内容だけになります。編集でその素材を10分から15分に縮めたとき、映像へ入るのは整った説明ばかりになってしまいます。
私が調べたことをどこまで使うか
私は、調べて分かった内容を2つに分けて扱っています。
ひとつ目は、事実にあたるものです。ここに入るのは、創業年、従業員数、拠点の場所、そして直近の設備投資といった項目になります。私はここを当日に聞かずに済ませ、必要であれば「◯年の創業ですよね」と一言で確認します。
ふたつ目は、想いや判断にあたるものです。ここに入るのは、なぜその事業を選んだのか、なぜそのとき投資を決めたのかといった問いになります。私はここについて、調べて分かった気になっていても当日は知らない顔で聞きます。
私が調べ方の線を引いているのは、この2つ目のところにあたります。記事に載っている理由と、本人がその日に語る理由は、同じ出来事についてでも別の言葉になります。
「知っています」と言わない
準備した内容を相手に見せたくなる場面が、対談の中では何度も出てきます。私はここを、意識して抑えるようにしています。
「◯◯の記事を拝見しました」と対談の最初にお伝えするのは、相手への礼儀にあたります。ただし、それを質問のたびに繰り返した場合、相手は「もう知っているのに、なぜ聞くのか」と受け取ります。
私が調べたことを相手に見せるのは、対談の最初の1回だけにしています。そこから先の時間は、その日に初めてお話をうかがう人として座っています。
準備の量と質問の数
準備を積むほど、私が当日に使う質問の数は少なくなっていきます。
事前の準備が薄い場合、私は質問を多めに用意します。当日に何が出てくるかを読めないためです。準備を積んだ場合、聞くべきところが絞れますので、私が用意する質問の数は減っていきます。
私が用意するのは、大きな問いを3つほどです。柱にするのは、現在の事業、そこに至る過去、そしてこれからの話の3つになります。私は3つの柱に対する答えをうかがい、そのうえで次の質問を組み立てていきます。
質問の順番の設計については、聴く順番を設計するで詳しく記載しています。
ポッドキャストの台本設計への反映
アストライドのポッドキャスト制作では、月額に含まれる作業として構成台本を作成しています。私たちはこの台本も、ここまで書いてきたのと同じ考え方で組んでいます。
台本には、その回で扱う柱を3つほど置きます。1エピソードあたりの収録は30分程度で、そこから15分の番組を作りますので、柱を細かく刻みすぎると答えが短く切れてしまいます。
週1回配信で年48本の番組であれば、私たちはこの作業を年48回繰り返します。回を重ねると、話し手の癖と話す速さが分かってきますので、台本の細かさもそこに合わせて変えていきます。
調べる時間をどこから取るか
調べるための時間は、費用の中に見えにくい形で入っています。
私たちが月額でお願いしている作業には、構成台本の作成、収録とディレクション、編集、ノイズ除去とMA、配信入稿、そして公開後の運用支援が含まれます。事前に調べる時間は、このうち構成台本の作成に含まれています。
ゲストをお招きする回では、調べるための時間が長くなります。相手方の会社の情報と、その方の経歴の両方を読む必要があるためです。
まとめ
取材の前に調べておくことは欠かせません。会社の沿革、直近の取り組み、業界の動きの3つを押さえておくと、冒頭の20分で聞くべき質問が減ります。
ただし、調べた内容をそのまま質問に持ち込んだ場合、聞き手は相手の答えを先回りしてしまいます。先回りの質問に対して相手が返せるのは、こちらの想定を確認する答えだけになります。
私は調べた内容を、2つに分けて扱っています。事実にあたる部分は当日に聞かずに済ませ、想いや判断にあたる部分は知らない顔でうかがいます。
私が用意する質問は、大きな問いを3つほどです。柱にするのは現在の事業、そこに至る過去、そしてこれからの話の3つで、私はこの柱に対する答えを聞いてから次を組み立てます。
もし社内で取材の企画をお持ちであれば、事前に読んだ記事の内容を質問の中で口に出さない形を、1回だけ試してみてください。相手から返ってくる答えの長さが変わってきます。
この記事からわかるQ&A
事前準備はどこまでやればよいですか
会社の沿革、直近の取り組み、業界の動きの3つを押さえてください。この3つを事前に読んでおくと、冒頭の20分で聞くべき質問が減ります。対談で相手の言葉が変わるのは30分を過ぎたあたりです。事前に読んでおけば、聞き手は冒頭の時間を事実確認に使わずに済ませられます。
調べたことを質問で使ってよいですか
事実にあたる部分は使ってください。創業年や従業員数は「◯年の創業ですよね」と一言で確認する形にします。想いや判断にあたる部分については、調べて分かった気になっていても、当日は知らない顔で聞くようにしています。記事に載っている理由と、本人がその日に語る理由は別の言葉になるためです。
「記事を読みました」と伝えてよいですか
対談の最初に1回だけお伝えください。相手への礼儀にあたります。ただし質問のたびに繰り返した場合、相手は「もう知っているのに、なぜ聞くのか」と受け取ります。私は最初の1回だけにして、そこから先はその日に初めて聞く人として座っています。
質問はいくつ用意しますか
私は大きな問いを3つほど用意します。柱にするのは、現在の事業、そこに至る過去、そしてこれからの話の3つです。準備を積むほど聞くべきところが絞れますので、用意する質問の数は減ります。当日は3つの柱に対する答えをうかがい、そのうえで次の質問を組み立てます。
ポッドキャストでも同じですか
同じ考え方で組んでいます。アストライドは月額に含まれる作業として構成台本を作成しており、1エピソードあたりの収録30分程度から15分の番組を作ります。台本の柱を細かく刻みすぎた場合、答えが短く切れてしまいます。そのため私たちは、柱を3つほどに留めています。
出典
- 纐纈智英「CBN営業戦略」講演台本 v17(2026年6月18日/伝七ステーションでの2018年から2023年まで5年間・毎週の経営者インタビュー制作、訪問250社以上・経営者200名超、1〜2時間の対談を10〜15分へ編集、対談で大事にしてきた3つ=取材先を調べ込む・誘導しない・聴く順番を設計する、言葉が変わる30分過ぎの場面)
- アストライド「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」番組尺15分・配信頻度別の年間本数(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-podcast/
- アストライド「経営者インタビュー」インタビュー実績200社以上(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-interview/
- アストライド「ポッドキャスト番組制作のご提案」2026年6月26日版・全18ページ p15(提供内容8項目)/p17(各プラン共通のその他仕様=構成台本作成ほか)/p3(取材先の選定から質問設計までの一気通貫)
- 纐纈智英(アストライド代表)への確認記録「ポッドキャスト契約条件の確定事項」2026年8月9日版・確定3件(1エピソードあたりの収録時間30分程度ほか)
記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英
アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
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