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中途社員が半年で辞めるのはなぜか。入社前の情報量と、現実的職務予告の研究

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中途社員の早期離職を防ぐために、入社後の面談やフォローばかりを増やしていませんか?対策を考える際には、入社前に仕事の負担や難しさまで伝え、候補者の期待と現実のずれを小さくする視点も欠かせません。

この記事では、早期離職の実態と、入社前に仕事の現実を伝える採用手法の研究について取り上げます。求人票・面接・職場見学・音声それぞれの役割と、入社者への聞き取りで自社の情報提示から抜けている点を確かめる方法もお伝えします。

この記事でわかること

  • 半年以内の早期離職の実態と調査の読み方
  • 定着策が入社後に偏る実態と効果の実感
  • 入社前に仕事の現実を伝える研究の蓄積と効果
  • 現実的職務予告が離職を下げる3つの経路
  • 現実を示す採用の応募数への影響と注意点
  • 求人票・面接・職場見学・音声で受け取れるものの違い
  • 同じ内容を文章と声で受け取る際の印象の違い
  • 音声で扱える仕事の現実と扱えない情報の範囲
  • 採用支援の効果を示す数値の留保と自社で測る指標
  • 入社前の情報提示が自社に向くかを判断する4つの確認点

半年以内の早期離職は、どれくらい起きているか

まず、公表データから半年以内の早期離職の状況を確認します。

エン・ジャパンが運営する人事担当者向けの情報サイト『人事のミカタ』は、直近3年間に社員が入社した企業の人事担当者を対象にインターネットでアンケートを行い、291社から回答を得ました(2025年3月11日〜4月7日に実施、5月9日に公表)。直近3年で半年以内の早期離職があったと答えた企業は、全体の57%です。

57%は、半年以内に辞めた人が1人でもいた企業の割合です。入社した人のうち何割が辞めたかを示す数字にはあたりません。設問がたずねているのは入社者全体で、中途採用者だけを取り出した数字は公表資料に載っていない点も押さえておきます。

規模別の数値は、49名以下の企業で46%、300〜999名で80%、1,000名以上で73%という結果でした。企業規模が大きいほど割合が高い、という単純な傾向は見られません。300〜999名の層が最も高く、そこから1,000名以上でわずかに下がります。

業種別に見ると、流通・小売関連とサービス関連がいずれも68%で、他の業種を上回りました。

この調査の対象は『人事のミカタ』を利用する企業の人事担当者であり、日本企業全体の縮図とは限りません。採用や定着に課題を感じている企業ほど、調査に回答する可能性があるという偏りも考えられます。それでも読み取れるのは、半年以内の離職が多くの会社で起きているという点です。

対策は入社後のフォローに偏っている

同じ調査では、定着率に課題を感じている企業が69%でした。定着率を上げるための施策を実施している企業は63%で、その中身の第1位は「直属の上司との定期面談」の58%です。

注目したいのは、その次の設問です。施策を実施している企業に、最も効果があったと感じる施策をたずねたところ、「直属の上司との定期面談」が24%で第1位となる一方、「特にない」が23%でほぼ並びました。施策を実施している企業の、およそ4社に1社が、どの施策にも効果を感じていませんでした。

今後の対応を検討している企業(75%)が予定している取り組みは、「上司など受け入れ側への研修」が39%、「直属の上司との定期面談」が30%です。十分な効果を実感できていない施策に、さらに注力しようとしている構図が見えます。

早期離職の要因についても、この調査は聞きました。早期離職があった企業の回答では、「仕事内容のミスマッチ」が57%で第1位でした。ここでいうミスマッチとは、入社前に抱いていた仕事内容や職場環境のイメージと、入社後の実態とのずれを指します。

調査に寄せられた退職の例には、倉庫作業で入社した人が、倉庫の中が想像以上に暑く、耐えられないという理由で辞めたというものがあります。入社前に描いた職場と実際の職場との差が、そのまま退職の理由になった例です。

早期離職の背景に入社前の期待と現実のずれがあるにもかかわらず、対策の多くは入社後に置かれています。ここにあるのは、原因と対策の焦点のずれです。

調査を行った『人事のミカタ』の編集長も、早期離職を防ぐポイントの1つ目に「期待と現実の乖離を防ぐ」ことを挙げています。具体策として示されているのは、求人情報や面接で「職場の良い面だけでなくマイナス面も正直に伝え」ることです。

入社前に仕事の現実を伝えることをめぐる、50年を超える研究

入社前の情報提示については、産業心理学の分野に長い蓄積があります。この分野が扱ってきたのは、現実的職務予告(Realistic Job Preview、以下RJP)と呼ばれる考え方です。

RJPとは、仕事や組織について、魅力だけでなく負担や制約、難しさも含めて候補者に伝える採用手法です。伝え方には、対面の説明、文書、映像などがあります。RJPの実践は1960年代から報告されており、1973年の Wanous 氏の論文を通じて、この呼び名が広く知られるようになりました。

Jean M. Phillips 氏は、40件の研究を統合したメタ分析を1998年に発表しました(Academy of Management Journal 第41巻6号、673〜690頁)。40件のうち26件は、公表された研究です。分析の対象には、採用プロセスからの辞退、入社前の期待の水準と正確さ、感情的な反応、職務成績、離職が含まれます。

結果として、RJPは職務成績の高さと関連していました。採用プロセス中の辞退、入社前の期待の水準、自発的離職、離職全体の低さとも関連しています。RJPをいつ、どの媒体で提供するかを、企業が重視する成果に合わせて設計すると、効果が高まる可能性も示されました。

RJPをめぐるメタ分析は、このほかにも3件が公表されています。Premack と Wanous(1985年)、McEvoy と Cascio(1985年)、Earnest、Allen、Landis(2011年)の3件です。

米国保健福祉省の児童局の資金で運営された研究センター QIC-WD は、2020年2月に、この4件をもとにした要約を公表しました。要約によると、RJPが在職と職務成績に与える効果はごく穏やかです。在職率の改善は、仕事内容が複雑な場合など、一定の条件下で小規模に確認されるにとどまりました。

読み方には注意が要ります。報告されているのは穏やかな改善で、劇的な効果は報告されていません。研究からいえるのは、RJPが離職率を小幅に下げる、という範囲です。

RJPが離職を下げる、3つの経路

なぜ入社前に仕事の現実を伝えると、離職が減るのか。この問いに対して、研究は主に3つの経路を検討してきました。

1つ目の経路は、期待と現実の一致です。入社前に描いた像と入社後の現実が近いほど、社員は裏切られたという感覚を持たずに済みます。初期のメタ分析(Premack と Wanous、1985年)は、RJPが入社前の期待を下げることで効果を発揮すると説明していました。

2つ目の経路は、役割の明確さです。仕事の内容や制約を事前に知っている候補者は、入社後に自分が何を求められているかを早く把握できます。現場で行われた実験の結果をまとめると、RJPを受けた人は、自分に求められる役割を明確に理解しているという感覚が、わずかに高まっていました(QIC-WD の要約)。

3つ目の経路は、組織の誠実さに対する認識です。きつい面まで話してくれた会社に対して、候補者は正直な組織だという印象を持ちます。4件のうち最も新しいメタ分析(Earnest、Allen、Landis、2011年。52件の研究、およそ1万7,000人)は、この認識を、RJPが自発的離職を下げる主な仕組みとして示しました。

実務の上でとくに重いのも、この3つ目の経路です。QIC-WD の要約は、組織を正直だと感じることが、「この会社は自分を気にかけ、支えようとしている」というメッセージとして新入社員に受け取られる、と説明しています。良い面だけを伝えていた会社で、入社後に都合の悪い実態が明らかになったとき、失われるのはこのメッセージです。

現実を見せる採用が、応募数の面で不利になりにくい理由

RJPを勧めると、応募が減るのではないかという懸念が出てきます。Phillips のメタ分析では、RJPを受けた候補者のほうが、採用プロセスの途中で辞退する割合は低くなっていました。この結果は選考の途中での辞退率についてのもので、応募者の数そのものとは分けて読む必要があります。

一方で、QIC-WD の要約は、RJPが組織の魅力の評価を下げる点にも触れ、採用人数を満たすだけの応募者を確保できていない場面では使い方に注意が要るとしています。要約がその場合の方法として挙げるのは、入社直後の、新しく入った人を迎える研修の時期にRJPを行うことです。Earnest らの分析でも、入社後に口頭か文書で伝えるRJPが、最も効果の高い形である可能性が示されました。

採用にかかる費用の面から見ると、経営者の評価はさらに変わります。半年で辞めた社員1人にかかった募集の費用と、面接や教育に使った時間を書き出してみてください。入社前に現実を伝える手間と比べて、どちらが高くつくかは、自社の数字で計算できます。

つまり、応募数を目標に置くか、入社半年後や1年後に在籍している人数を目標に置くかで、RJPの評価は逆転します。応募数を追いかけている会社にとって、この手法は不利にしか見えません。

求人票・面接・職場見学・音声で、候補者が受け取れるもの

入社前に現実を伝える手段には、それぞれ運べる範囲の違いがあります。

求人票や募集要項は、労働条件や業務内容を正確に示すための基盤です。職業安定法と施行規則は、労働者を募集するときに、業務内容、契約期間、試用期間、就業場所、就業時間、休日、時間外労働、賃金、加入保険などを明示するよう定めています。2024年4月からは、業務と就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準も、明示する事項に加わりました(厚生労働省)。

制約になるのは、法定の記載事項を中心に項目が定まっているため、各社の記述が似通い、日々の仕事の様子までは書き込みにくい点です。候補者が求人票で見比べやすいのも、主に条件の違いにとどまります。

面接は、双方向のやりとりができる点で優れています。候補者が知りたい部分を、その場で直接たずねられる点も利点です。制約は場の性質にあり、評価される立場に置かれた候補者は、給与や残業、人間関係、評価など、聞きたいことがあっても質問を控えることがあります。

職場見学は、現場の様子をそのまま示せる手段です。設備も動線も社員の表情も、言葉による説明を抜きにして伝わります。制約になるのは実施の負荷です。すべての応募者に行おうとすると、日程調整や現場対応の負担が大きくなります。

社員インタビューの記事は、働いている人の言葉を載せられます。読み返せる点も利点です。制約は編集にあり、文字起こしや編集の過程で、言い淀みや沈黙、言葉を選ぶ間合いは削られやすくなります。

音声という手段が伝えられるのは、社員の言葉に加えて、声の調子や間、ためらいです。画面を見ずに聴けるので、候補者は移動中にも聴けます。一方で、給与や勤務条件など、正確な数値を確認してもらう用途には向きません。

この5つを並べると、役割が見えてきます。労働条件は求人票や募集要項で明示し、現場の環境は職場見学で示し、働く人の考えや迷いは音声で伝える。この振り分けが、入社前の情報量を増やす現実的な形です。

求人票という書式そのものの限界は、求人票で伝わらないものは何かにまとめています。

同じ内容でも、声で聞くと受け取られ方が変わる

音声を選ぶ理由には、情報量のほかに、受け取られ方の違いもあります。

シカゴ大学 Booth School of Business の Juliana Schroeder 氏と Nicholas Epley 氏は、採用の場面で実験を行いました(Psychological Science 第26巻6号、877〜891頁、2015年)。求職者が自分を売り込む文章を用意し、評価者はそれを読むか、本人が話すのを聴くか、映像で見るかのいずれかで受け取ります。

評価者は、同じ内容を読んだときより聴いたときに、その候補者を、より有能で、思慮深く、知的な人物だと評価しました。その結果、候補者への印象がよくなり、採用したいという意向も高まっています。実験4では、職業として採用に携わるリクルーターが評価者となり、同じ方向の結果が出ました。

文章を俳優や一般の人が読み上げた音声でも、結果は同じでした(実験3a・3b)。音声に映像を加えても、候補者の評価は、音声だけの場合と変わっていません。

この研究が測ったのは、候補者が企業から評価される向きです。企業の側が候補者から評価される向きを直接測ってはいません。同じ研究者らが2017年に発表した研究(Psychological Science 第28巻12号)は、意見が対立する話題でも、声で聞いた相手を、同じ内容を文章で読んだ相手より考える力のある人だと評価する傾向を確かめ、どのような声の特徴がその印象と結びつくかも検討しました。それでも、声に乗るパラ言語の手がかりが話し手の思考量を伝えるという機構そのものは、向きを変えても働くと私は考えています。

社員インタビューを記事で読んだ候補者と、同じ内容を音声で聴いた候補者を比べたとき、後者のほうが話している社員を思慮深い人として受け取る可能性は高くなります。

音声で扱える範囲と、扱えない範囲

音声で伝える内容と、必ず文字でも明示すべき内容は、分けて考える必要があります。

給与や勤務時間や休日の日数は、文字で示してください。これらは募集のときに明示する事項でもあり、求人票や募集要項に書いて、候補者があとから確かめられるようにしておく必要があります。音声だけで伝えた数値は、候補者が正確に記憶・確認できるとは限らず、後日の認識違いのもとにもなりかねません。

反対に、音声が向いているのは、業務の難しさや負荷、迷いを含む、仕事のきつい部分についての語りです。繁忙期の忙しさも、判断に迷う場面も、この仕事が向いていない人の特徴も、声であれば話せます。文章だけでは厳しく受け取られやすい内容でも、本人の声や話す速度、ためらい、前後の説明が加わることで、背景を含めて受け取ってもらいやすくなるのが、声の利点です。

扱えないのは、まだ実現していない制度や、確定していない将来の計画の話です。これから整備する制度や来期から始まる予定の取り組みは、この範囲に入ります。入社時点で存在しない制度や環境を事前情報に含めた場合、入社後の期待外れは大きくなり、候補者の期待を現実に近づけるというRJPの狙いと逆の結果です。

そして、社員が現状に強い不満を持っている場合、収録した音声はそのまま外へ出せません。この状態で必要なのは、発信の前に社内の課題へ手をつけることです。

効果の数値を、どう読むか

採用の文脈で音声を使った事例については、事業者側から数値が公表されています。

オトバンクの企業ポッドキャスト事業 PitPa は、2025年3月17日に音声の採用支援サービス「リクルーティングラジオ」の提供を始め、サービス開始前に手がけたデジタルガレージ社の事例の数値を公表しました。採用率が1面談あたり12.15%増、辞退率が1面談あたり8.55%減という内容です。

この数値の読み方には、いくつも留保が要ります。この数値は1社の事例であり、事業者側の公表であって、母数と測定期間と比較条件のほか、増減が比率の差なのかポイントの差なのかも公表されていません。指標が「1面談あたり」である点も見落とされがちです。採用した人数が同じでも、面談の総数が減れば、1面談あたりの採用率は上がります。

自社で効果を測るのであれば、別の指標を置くほうが確実です。応募から入社までの辞退率、入社半年後の在職率、入社した社員への聞き取りの3つを、指標の候補として挙げておきます。この3つの指標であれば、経営者が社内のデータだけで追える範囲です。

自社に向くかを判断する4つの確認点

入社前の情報量を増やす取り組みを検討するかどうかは、次の4つの確認点で判断できます。

早期離職の要因が、仕事内容のミスマッチにあるか。給与や勤務地の条件が原因であれば、情報提示よりも条件の見直しが先に来ます。エン・ジャパンの調査で要因の第1位がミスマッチの57%だったことは、多くの会社に当てはまる可能性を示しました。

きつい面を候補者へ話す用意が、社内にあるか。良い面だけを示す設計へ戻るのであれば、RJPの3つの経路はどれも働きません。

話せる社員がいるか。経営者の言葉だけでは、候補者が最も知りたい部分まで届きません。実際にその仕事をしている社員の語りが要ります。

採用の目標は、応募数と定着人数のどちらに置かれているか。応募数を追いかけている状態のかぎり、この手法は不利に見え続けます。

この4つの問いに具体的に答えられる会社であれば、入社前の情報提示は検討に値します。答えられない項目が残る場合は、採用広報を始める前に、その項目への対応を経営者が先に進めるほうが早道です。

入社前に仕事の現実を社員の声で伝える採用広報を始めたい場合は、アストライドの「採用広報のポッドキャスト制作」をご覧ください。

まとめ

エン・ジャパン『人事のミカタ』の291社調査では、半年以内の早期離職があった企業は57%を占め、要因の第1位は仕事内容のミスマッチの57%でした。ところが実施されている対策は入社後のフォローに集中しており、最も効果があった対策として「特にない」が23%を占めています。

現実的職務予告をめぐる研究は、1960年代の事例から始まり、4件のメタ分析が公表されています。40件の研究を統合したメタ分析では、RJPは採用プロセスでの辞退、自発的離職、離職全体の低さと関連していました。報告されている効果は、在職率の穏やかな改善です。

研究で主に検討されてきた経路は、期待と現実の一致、役割の理解、そして「この会社は正直だ」という認識の3つです。52件の研究をまとめた2011年のメタ分析は、3つ目の認識を、自発的離職を下げる主な仕組みとして示しました。

音声が向いているのは、仕事のきつい部分についての語りです。給与や勤務条件は文字で示し、まだ実現していない制度は事前情報に含めないでください。

最初にやることを1つだけ挙げるなら、直近1年で入社した社員に「入社前に聞いていた話と、実際に働いてみた印象が最も違ったのはどこか」を1人ずつ聞いてみてください。その回答が、自社の情報提示から抜け落ちている点を見つける手がかりです。

この記事からわかるQ&A

きつい面を伝えると、応募が減りませんか

Phillips のメタ分析(40研究)では、RJPを受けた候補者のほうが、採用プロセスの途中で辞退する割合が低く、入社後の自発的離職も低くなっていました。一方、QIC-WD の要約によると、RJPは組織の魅力の評価を下げることがあり、採用人数を満たすだけの応募者を確保できていない職種では注意が要ります。そうした職種について要約が挙げるのは、入社直後の研修の時期にRJPを行う方法です。

入社後のフォローを厚くするほうが確実に思えます

エン・ジャパンの調査(291社)では、定着率向上の施策を実施している企業のうち、58%が上司との定期面談を行っていました。ところが最も効果があった施策では、この面談が24%、「特にない」が23%でほぼ並んでいます。この数字が示しているのは、入社後の面談やフォローだけでは、入社前に生じた期待と現実のずれを解消しきれない場合があるという点です。

音声で何を話せばいいのか分かりません

仕事のきつい部分について、実際にその仕事をしている社員に語ってもらってください。題材の例は、繁忙期の業務量、判断に迷いやすい場面、この仕事に向く人・向きにくい人の特徴などです。給与や勤務時間といった数値は、求人票や募集要項に文字で正確に示してください。

効果はどう測ればいいですか

事業者が公表する数値を、そのまま自社に当てはめないでください。PitPa が公表したデジタルガレージ社の事例の12.15%増と8.55%減は、1社の数値で、指標は「1面談あたり」、母数と測定期間は公表されていません。応募から入社までの辞退率と入社半年後の在職率と入社者への聞き取りの3つであれば、外部の調査を行わずに、経営者が社内のデータで継続的に確認できます。

やらないほうがいいのは、どんな場合ですか

社員が現状に強い不満を持っている場合です。収録した音声をそのまま外へ出せないため、発信の前に社内の課題へ手をつける必要があります。まだ実現していない制度を事前情報に含める場合も、入社後の期待外れを大きくするため避けてください。

出典

  • Phillips, J. M. (1998). Effects of realistic job previews on multiple organizational outcomes: A meta-analysis. Academy of Management Journal, 41(6), 673–690. 40件の研究(うち26件が公表済み)を統合。RJPは高い職務成績、および採用プロセスからの辞退・入社前の期待・自発的離職・離職全体の低さと関連。RJPを伝える時期と媒体が効果を左右する https://journals.aom.org/doi/abs/10.5465/256964
  • Earnest, D. R., Allen, D. G., & Landis, R. S. (2011). Mechanisms linking realistic job previews with turnover: A meta-analytic path analysis. Personnel Psychology, 64(4), 865–897. 52件の研究、約1万7,000人。組織の誠実さの認知が、RJPが自発的離職に影響する主な経路。最も効果の高い形は、入社後に口頭か文書で伝えるRJPである可能性 https://doi.org/10.1111/j.1744-6570.2011.01230.x
  • Premack, S. L., & Wanous, J. P. (1985). A meta-analysis of realistic job preview experiments. Journal of Applied Psychology, 70(4), 706–719 https://doi.org/10.1037/0021-9010.70.4.706
  • McEvoy, G. M., & Cascio, W. F. (1985). Strategies for reducing employee turnover: A meta-analysis. Journal of Applied Psychology, 70(2), 342–353 https://doi.org/10.1037/0021-9010.70.2.342
  • Graef, M. (2020年2月19日). Umbrella summary: Realistic job previews. Quality Improvement Center for Workforce Development(QIC-WD。米国保健福祉省 児童局の資金で2016〜2023年に運営)。4件のメタ分析をもとに、RJPの在職・職務成績への効果はごく穏やかで、役割の明確さと組織の誠実さの認知を高め、入社前の期待と組織の魅力の評価を下げると要約 https://www.qic-wd.org/umbrella-summary/realistic-job-previews
  • エン・ジャパン株式会社『人事のミカタ』「早期離職」実態調査(2025)2025年5月9日公表。2025年3月11日〜4月7日実施、インターネット調査、『人事のミカタ』を利用する企業 291社。半年以内の早期離職あり57%(49名以下46%/300〜999名80%/1,000名以上73%)、要因1位「仕事内容のミスマッチ」57%、定着率向上の施策を実施63%・うち「直属の上司との定期面談」58%、最も効果があった施策は同面談24%・「特にない」23% https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/41448.html
  • Schroeder, J., & Epley, N. (2015). The Sound of Intellect: Speech Reveals a Thoughtful Mind, Increasing a Job Candidate’s Appeal. Psychological Science, 26(6), 877–891(2015年4月29日オンライン公開)。著者はシカゴ大学 Booth School of Business。実験1〜3bは仮想の雇用者、実験4は職業として採用に携わるリクルーターが評価者 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25926479/
  • Schroeder, J., Kardas, M., & Epley, N. (2017). The Humanizing Voice: Speech Reveals, and Text Conceals, a More Thoughtful Mind in the Midst of Disagreement. Psychological Science, 28(12), 1745–1762. 意見が対立する話題での3実験と、心の働きを伝える声の手がかりを調べた1実験 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29068763/
  • 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」(2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則。業務と就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準を追加) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
  • 株式会社オトバンク「音声採用支援サービス『リクルーティングラジオ』提供開始」2025年3月17日。企業ポッドキャスト事業 PitPa が、サービス開始前のデジタルガレージ社の事例として、1面談あたりの採用率12.15%増・1面談あたりの辞退率8.55%減を公表。母数・測定期間・比較条件は非公表 https://www.otobank.co.jp/news/n8p2QEOD

この記事の著者

纐纈智英

纐纈智英アストライド-Astride- 代表

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「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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