既存のお客様へのメールマガジンで、開封率やクリック率が伸びず、送る回数を増やそうとしていませんか?音声を足すと変わるのは、リンクを押した先での時間の使い方です。
この記事では、BtoBのメールマガジンの数字と開封率の限界、音声を足したときの変化、一斉配信の限界と続ける理由について取り上げます。送る回数だけに目を向けず、遷移した先での行動から評価する考え方と、メールに音声へのリンクを添える具体的な組み方もお伝えします。
この記事でわかること
BtoBメルマガの開封率とクリック率の実測
配信プラットフォームの集計値と比較の前提
開封率が指標として使いにくくなった理由
音声を足した遷移先で変わる時間の使い方
一斉配信の回数を増やしても関係を進めにくい理由
購買までの期間にメールマガジンを続ける理由
番組の配信に合わせたメール本文とリンクの組み方
目次
BtoBメルマガの数字は、どのあたりにあるか 配信プラットフォームの数字も見ておく 開封率が、指標として使いにくくなった 音声を足すと、変わるのは遷移した先 一斉配信そのものの限界 それでもメールマガジンを続ける理由 実際の組み方 まとめ この記事からわかるQ&A 出典
BtoBメルマガの数字は、どのあたりにあるか
株式会社IDEATECHが2025年に、日本のBtoB企業でメールマガジンに関わる会社員314名へインターネット調査を行っています。
指標 最多の回答帯 割合 開封率 11〜20% 22.0% 開封率(次点) 21〜30% 18.8% クリック率 1〜5% 25.7% クリック率(次点) 6〜10% 17.2%
クリック率について最も多かった回答は、1〜5%という帯でした。1,000通を配信した場合、リンクを押すのは10通から50通ということになります。
なお、この調査の数字は、企業ごとの自己申告による数値の範囲です。全配信通数から算出した平均値とは違うため、その前提を踏まえてお読みください。
配信プラットフォームの数字も見ておく
配信を担うプラットフォームの側にも、大規模な集計による調査データがあります。
Benchmark Emailが公開した2026年版のレポートでは、同社ユーザー約68,000件、90を超える業種、21の地域が対象になっています。
区分 開封率 クリック率 日本 33.74% 1.30% 全体 25.54% 1.45% ITサービス 28.16% 0.61% 経営コンサル 22.79% 2.07% 機械製造 30.16% 2.32%
Mailchimpが2023年12月に更新した、ベンチマークのデータもあります。Business + Finance の区分では、開封率31.35%、クリック率2.78%という数字が出ました。この集計の規模は、月間で数十億通です。
ただし、この2つはBtoB専業の標本とは違います。自社の業種、リストの温度、そして配信の目的に近い値を比較の対象にしてください。
聴かれる場所がどう移ってきたかは、ポッドキャストの20年 をご覧ください。
開封率が、指標として使いにくくなった
ここで1つ注意が要ります。この統計で使われている開封率という指標そのものが、以前より読みにくくなっているためです。
メールプライバシー保護(Apple Mail Privacy Protection)は、Apple のメールアプリで受け手が有効にできる機能です。有効にすると、メールをどう操作したかにかかわらず、メールに含まれる画像など、外部から読み込む内容がバックグラウンドでダウンロードされます。Apple が説明する目的は、受け手がいつ、何回メールを開いたかといった情報を送り手に知られないようにすることです。
Mailchimp や Klaviyo などの配信サービスが開封を数える手がかりは、メールに埋め込んだ小さな画像が読み込まれた記録です。Mailchimp の公式ヘルプによれば、この機能を有効にした受け手のメールは、操作にかかわらず「開封」として報告されます。その結果として Mailchimp が挙げるのは、実際より高く、不正確な開封率です。
この開封を集計から除く設定を用意している配信サービスもあります。Mailchimp の利用者が、マーケティングのダッシュボードとカスタムレポートでこの開封を除けるのは、2024年6月22日以降に送ったメールです。HubSpot は、この機能によるものを含め、機械による操作と推定したものを、マーケティングメールの集計から初期設定で除いています。ただし Klaviyo によれば、この機能が有効な端末で記録された開封が、自動の読み込みによるものか、受け手が実際に開いたものかを見分ける方法はありません。
配信サービスがこの開封を集計に含めるか除くかで、同じ配信でも開封率の値が変わります。自社の開封率を Benchmark Email や Mailchimp の値と比べる前に、配信サービスの設定を確かめてください。
したがって、施策そのものの良し悪しを開封率だけで判断することは避けてください。代わりに置くべき指標は、クリック率、開封者に対するクリック率、そして遷移した先での行動の3つです。
音声を足すと、変わるのは遷移した先
ここからが本題です。メールマガジンに音声のコンテンツを足すと、どこが変わるのか。
音声を足したときに変わってくるのは、リンクを押したあとの遷移先です。
読むページへ遷移した場合、読み手に求められるのは、その場で時間を取ることです。長い記事の場合、読み手は最後まで読まずに閉じてしまいます。
音声のページへ遷移した場合、受け手のほうはその場で聴かなくても構いません。移動や作業の時間へ回せますので、まとまった時間を取りにくい相手にも届きます。
一斉配信そのものの限界
もう1つ、押さえておくべき研究のデータがあります。
延世大学のリア・ジョンと済州大学のソルウ・パクは、2020年に韓国のサービス利用者199名を対象とした調査を発表しました。この調査は、企業からの接触が顧客満足にどう関わるかを分析しています。
電話や対面といった個人的な接触では、回数が担当者への満足を高める経路が有意でした(β = .197, p < .01)。これに対して、一斉メールのような非個人的な接触では、どちらの経路も有意になっていません。
つまり、この結果から読み取れるのは、メールマガジンの回数を増やすこと自体は関係を進める力を持ちにくいという点です。音声を足したとしても、この構造そのものは変わりません。
関係を進める方法については、取引先との対話の場を月1回作る方法 で詳しく記載しています。
それでもメールマガジンを続ける理由
では、メールマガジンそのものが無用なのか。ここは分けて考える必要があります。
一斉配信が持っているのは、関係を保つ経路としての働きのほうです。送り手はこの経路を使って、いま買う時期にはない相手に自社を思い出してもらえる状態を保てます。
BtoBの平均購買期間は11.3か月とされています。この期間をまたいで残る経路として見た場合、メールマガジンの利点は、低い費用で維持できることです。
そこへ音声を足した場合、経路の中身のほうが変わってきます。「新商品のご案内」に代えて、「今回はこういう話をしました」という形で送れるためです。
実際の組み方
ここからは、具体的な進め方を並べます。
週1回配信の番組であれば、送り手は新しい回が出るたびにメールマガジンで告知できます。年48本の番組なら、メールマガジンを送る理由も年48回ぶん揃う計算です。
メールの本文には、その回で扱った話題を3行ほどで書きます。リンクの先は、番組の配信ページです。
アストライドがお引き受けしている月額の作業には、公開後の運用支援が含まれます。三重県の経営者を中心としたメーリングリストで番組を告知することも、私たちがこの運用の中で行っている作業の1つです。
既存の顧客に向けた番組をメールマガジンと組み合わせて始めたい場合は、アストライドの「既存顧客との関係づくりに音声を活用する」 をご覧ください。
まとめ
日本のBtoB企業でメールマガジンに関わる会社員314名への調査では、クリック率の最多帯が1〜5%で25.7%を占めました。1,000通を配信した場合、リンクを押すのは10通から50通という計算です。
開封率という指標は、Apple Mail Privacy Protection の影響で読みにくくなっています。施策の評価は、クリック率、開封者に対するクリック率、遷移した先での行動の3つへ置き直してください。
音声を足したときに変わるのは、リンクを押したあとの場所です。読むページであればその場で時間が要りますが、音声であれば移動や作業の時間へ回していただけます。
ただし、音声を足した場合のA/Bテストについて、公開されたデータは見つかりませんでした。音声を足した効果を数字で示すことは、この記事ではできていません。
もしメールマガジンを続けておられるなら、次の1回だけ、記事に代えて音声へのリンクで送ってみてください。クリックしたあとにどれだけ最後まで届いたかを比べていくと、自社の数字が出てきます。
この記事からわかるQ&A
BtoBメルマガのクリック率はどれくらいですか
株式会社IDEATECHが2025年に、日本のBtoB企業の会社員314名へ調査を行っています。クリック率の最多帯は1〜5%で25.7%、次いで6〜10%が17.2%でした。配信プラットフォームの数字では、Benchmark Email の2026年版で日本1.30%、全体1.45%という結果が出ています。
開封率を指標にしてよいですか
開封率だけで施策の良し悪しを判断することは避けてください。Apple Mail Privacy Protection は、受け手の操作にかかわらず、外部から読み込む画像などをバックグラウンドでダウンロードする機能です。Mailchimp によれば、この機能を有効にした受け手のメールは操作にかかわらず「開封」と報告され、開封率が実際より高く出ます。集計から除ける配信サービスもありますが、Klaviyo によれば、この機能が有効な端末の開封が自動の読み込みか受け手による開封かは見分けられません。
何を指標にすればよいですか
次の3つをお使いください。指標にするのは、クリック率、開封者に対するクリック率、そして遷移した先での行動です。遷移後の行動には、資料のダウンロード、問い合わせ、番組の再生完了などが含まれます。
音声を足すとクリック率は上がりますか
その効果をA/Bテストで測った公開データを、私たちは見つけられませんでした。ですので、何パーセント上がるという書き方はしていません。構造の面から言えるのは、リンクを押したあとの遷移先が変わるという点です。読むページのほうはその場で時間が要りますが、音声は移動や作業の時間へ回せます。
メールマガジンを続ける意味はありますか
一斉配信が持つのは、関係を保つ経路としての働きのほうです。BtoBの平均購買期間は11.3か月とされています。送り手にとってメールマガジンは、この期間をまたいで思い出してもらえる状態を保つための経路です。関係を進めたい場合は、個別性のある接触が別に要ります。
出典