展示会で多くの名刺を交換しても、その後の連絡が途切れたままにしていませんか?名刺交換を商談へ進めるには、会話に沿った早いフォローと、相手が購入を検討する間も接点を保つ仕組みが必要です。
この記事では、展示会後のフォローの実態と購買期間、早いフォローと長い接点を作る方法について取り上げます。番組の取材を通じて対話の機会を作る進め方と、名刺交換した企業から取材候補を選ぶ際の考え方もお伝えします。
この記事でわかること
覆面調査で分かったフォローの実施率
「80%」の数字の出どころと使用上の注意点
出展企業が認識するフォロー体制の不足
来場者の側が感じている不満の内訳
すぐ商談に進められるリードの割合と内訳
B2Bの平均購買期間と調査の対象範囲
名刺交換後に必要な早いフォローと長い接点
長期的な接点を保つ手段と個別の対話の役割
展示会後のフォローに番組を活用する手順
番組の活用が難しいケースと取材候補の選び方
目次
覆面調査では、出展者の62%がフォローしなかった 「80%がフォローされない」という数字について 出展企業も、フォロー体制の不足を課題として認識している 来場者の71.6%は、展示会後のフォローに不満を持った経験がある すぐ商談に進められるリードは、3分の1ほど B2Bの平均購買期間は10.1か月 名刺交換後に必要な2つの仕組み 長期的な接点をどうつくるか 展示会後のフォローに番組を活用する この方法を適用しにくいケース まとめ この記事からわかるQ&A 出典
覆面調査では、出展者の62%がフォローしなかった
イベントテクノロジー企業のRefTechが公開している調査があります。MICE業界の大規模な国際展示会で行われた覆面調査です。
RefTechは架空のイベント運営会社を設定し、ウェブサイトと名刺、国際イベントの架空の提案依頼書を用意しました。調査員はこの会社の担当者として、サービスの提供会社や観光地、会場などの出展者106ブースを回っています。各ブースで開催予定のイベントの概要を説明し、名刺を渡すかバッジを読み取ってもらったうえで、展示会後に資料を送付してほしいと依頼しました。
フォローの有無・方法 割合 何もしなかった 62% 何らかの形でフォローした 38%(40ブース) うち、個別に内容を調整したメール 19% うち、メーリングリストへの追加のみ 19% 電話 0件
資料の送付を依頼した相手に対して、62%の出展者が何も返していません。フォローを実施した38%のうち、半分にあたる19%はメーリングリストへ追加しただけです。
電話でフォローした出展者は、106ブースのうち0件でした。調査員がブースの中に5分ほどいても、出展者から一度も声をかけられなかったブースが7つあります。一方で、調査員のバッジを読み取った出展者に限ると、半数がフォローしていました。
この調査は1つの展示会の106ブースでの結果で、RefTechの資料に調査実施年は明記されていません。RefTechが配布しているPDF版の資料は、2022年9月に作られています。
「80%がフォローされない」という数字について
展示会後のフォローをめぐっては、「展示会リードの80%がフォローされない」という数字が広く引用されています。
ただし、この80%については一次調査の設計、対象、実施年を確認できる資料が見当たりません。二次情報での引用が繰り返され、一次資料にたどり着けない状態です。社内の資料に使う場合は、上のRefTechの62%のように、調査の設計が確認できる数値を使うことをお勧めします。
出展企業も、フォロー体制の不足を課題として認識している
株式会社展示会営業マーケティングは、2026年4月16日から20日に、国内でインターネット調査を行っています。対象は、直近1年以内に展示会の出展に責任者または担当者として携わった会社員536人です。調査の結果は、2026年6月に「展示会白書」として公開されました。
展示会出展の課題を複数回答で尋ねた設問では、「出展後のフォローアップ体制が不十分」を選んだ人は32.5%でした。同じ設問で最も多く選ばれたのは「費用対効果が見えにくい」の50.0%で、「準備・運営にかかる社内の人員や工数が不足している」も39.7%ありました。フォローアップ体制の不足は、人手や工数の不足と並んで挙がる課題の1つです。
同じ調査では、リードを獲得した出展者529人に、商談化率についても尋ねています。
回答した商談化率 出展者の割合 10〜29% 31.8% 30〜49% 26.3% 5〜9% 18.3% 50%以上 13.4% 1〜4% 5.5% 1%未満 0.9%
最も多いのは10〜29%の層で、31.8%を占めます。この層の出展者では、獲得したリードの7割から9割が商談化していません。
来場者の71.6%は、展示会後のフォローに不満を持った経験がある
同じ白書には、来場者を対象にした調査も載っています。2026年4月8日から9日に、直近1年以内に業務目的で展示会へ来場した会社員1,089人が回答しました。
展示会のあとに出展企業から受けたフォローについて、不満やストレスを感じた経験がある人は71.6%でした。
不満を感じた780人に不満の内容を複数回答で尋ねると、最も多かったのは「ブースで話した内容と無関係な営業をされた」の50.6%です。これに「名刺交換しただけなのに強引な売り込みをされた」の43.2%、「興味のない製品・サービスのメールが大量に届いた」の40.4%が続きます。「フォローのタイミングが遅すぎた(展示会から数週間以上後)」は29.6%でした。
理想的なフォローについて複数回答で尋ねたところ、「ブースで話した内容を踏まえた提案や情報提供があること」が56.3%で最も多く選ばれています。「継続的に役立つ情報(メルマガ・レポート等)の提供」は32.4%、「展示会翌日〜3日以内のタイミングで連絡がくること」は25.0%でした。
来場者の不満として多く挙がったのは、連絡の遅さよりも、ブースでの会話と関係のない営業連絡でした。
すぐ商談に進められるリードは、3分の1ほど
フォローの設計を考えるうえで、もう1つ重要な数字があります。
同じ出展者の調査では、直近の展示会で獲得したリードのうち、すぐに営業活動や商談に進められる「今すぐ客」の割合も尋ねています。「今すぐ客は31〜40%」と回答した出展者が24.3%で、最も多くなりました。
調査元は、回答の区分ごとの代表値に、その区分を選んだ回答者の割合を掛け合わせて、リードの構成を推計しています。各区分の中央値を使った標準推計では、「今すぐ客」が約33%、「そのうち客」が約34%、対象外が約33%です。各区分の下限値を使った保守的推計の値は、それぞれ約29%、約43%、約29%でした。
対象外として例に挙がっているのは、同業者や競合、逆営業先、学生などです。名刺を交換した相手のうち、すぐ商談に進められる相手は3分の1ほどで、残りは「そのうち客」と対象外に分かれます。
B2Bの平均購買期間は10.1か月
では、まだ買う時期にない相手は、どれくらいの時間をかけて購買に至るのか。ここにも調査があります。
6senseは、世界のB2Bの買い手を対象に、購買の進め方を毎年調査しています。2024年10月9日に発表した2024年版では、B2Bの平均購買期間は11.3か月でした。4,000人近いB2Bの買い手を対象にした2025年版では、平均購買期間は10.1か月へ短縮しています。
同じ2025年版によると、買い手がベンダーへ初めて連絡した時点で、購買のプロセスは平均で61%まで進んでいました。最終的に選ばれたベンダーの95%は、購買の検討を始めた初日の候補リストに、すでに入っています。
6senseの数字は、世界のB2Bの買い手全体の平均です。展示会で名刺を交換した相手に絞った値は、この調査からは読み取れません。それでも、「そのうち客」との接点は、数か月から1年ほどの長さで考えておく必要があります。買う時期が来てから接点を作ろうとしても、その時点で、相手の候補リストはほぼ固まっているためです。
名刺交換後に必要な2つの仕組み
ここまでの調査結果から、必要な仕組みは2つ見えてきます。
1つ目は、ブースでの会話に沿った、迅速なフォローです。来場者が理想として最も多く挙げたのは、会話内容を踏まえた提案や情報提供(56.3%)でした。翌日から3日以内の連絡を挙げた人も25.0%います。不満を持った人の29.6%は、数週間以上たってからの連絡を遅すぎると答えました。
2つ目は、長期的な接点です。「そのうち客」にあたる3分の1ほどの相手については、平均10.1か月に及ぶ購買期間を通じて接点を維持する仕組みを、出展企業の側で用意しておく必要があります。
RefTechの覆面調査では、106ブースのうち、相手ごとに内容を調整したメールを送った出展者は20ブースでした。会話内容に沿った初回フォローも、その後の継続接点の設計も、多くの出展者では十分に整っていません。
長期的な接点をどうつくるか
長期的な接点を維持する手段は限られます。
メールマガジンは、継続的な情報提供に使いやすい手段です。展示会白書の来場者調査では、名刺交換した出展企業から月1回程度のメールマガジンを受け取った場合、「内容が自社の業務に関連する情報であれば目を通す」が56.9%、「基本的に目を通す」が28.2%でした。「配信を停止する」と答えた人は4.9%です。
ただし、一斉配信メールだけでは、個別の関係を深める効果に限界があることを示す研究もあります。韓国の学術誌に2020年に掲載された、サービス分野の顧客を対象にした研究では、電話のような個人的な接触のほうが、一斉配信メールのような非個人的な接触よりも、関係に対する満足度が高いという結果が出ました。同じ研究では、接触頻度そのものは企業に対する満足度と直接は結びつかず、担当者に対する満足度を介して、企業への満足度に影響しています。
これに対して、自社の番組を持っていれば、出展企業は相手をゲストとして招く理由をつくれます。展示会で課題や関心が重なった相手に、後日あらためて取材を依頼する方法です。
取材依頼が受け入れられやすい理由は、関連記事「取材の依頼はなぜ通るのか 」で詳しく解説しています。
専門性を伝えるために何回語ればよいかについては、関連記事「専門性は何回語れば伝わるのか 」をご覧ください。
展示会後のフォローに番組を活用する
ここからは、具体的な進め方を順に説明します。
展示会会場では、名刺交換の際に「後日、改めてお話を伺う機会をいただきたい」と伝えます。この段階では、商談の打診まではしません。
出展企業は、展示会翌日から3日以内に、取材の依頼を送ります。依頼文に盛り込むのは、ブースで話した具体的な内容です。来場者が理想のフォローとして挙げた、会話内容を踏まえた連絡(56.3%)と、翌日から3日以内の連絡(25.0%)の両方に、この形で応えられます。
収録時間は、1エピソードあたり30分程度を目安にします。
たとえば週1回、年間48本を配信する番組であれば、番組を運営する企業は、そのうち12本をゲスト回に充てられます。1年で12社と、収録を通じて対話する機会をつくれる計算です。
この方法を適用しにくいケース
この方法には、適用しにくいケースもあります。
1日で200枚の名刺を獲得するような展示会では、全員へ取材を申し込むことはできません。ゲスト回が年間12本なら、取材候補が200社あっても、招けるのは12社です。
この場合は、名刺交換した相手の中から、取材を依頼する相手を選ぶ作業が先に要ります。選ぶ基準は、その場の会話で自社の考え方や取り組みに関心を示したかどうかです。
獲得したリードの約3割は対象外と推計されているため、すべてのリードに同じ優先順位で対応する運用は成り立ちません。出展企業はまず対象外のリードを分類・除外し、取材を依頼する企業を残った有望リードの中で選定します。
展示会で出会った企業を番組の取材に招きたい場合は、アストライドの「ポッドキャストで新規開拓に取り組む」 をご覧ください。
まとめ
MICE業界の国際展示会での覆面調査では、資料の送付を依頼した106ブースのうち62%が何も返していません。フォローを実施した38%のうち、19%はメーリングリストへの追加だけでした。電話でフォローした出展者は0件です。
国内の出展者の調査では、32.5%が出展後のフォローアップ体制の不十分さを課題に挙げています。商談化率で最も多い回答は10〜29%で、31.8%でした。
来場者の側では、71.6%がフォローに不満を持った経験があります。不満の内容で最も多いのはブースで話した内容と関係のない営業連絡(50.6%)で、理想のフォローとして最も多く選ばれたのは会話内容を踏まえた提案や情報提供(56.3%)でした。
一方で、名刺を交換した相手のうち、すぐ商談に進められる相手は3分の1ほどです。B2Bの平均購買期間は10.1か月とされていますので、「そのうち客」とは長期的な接点を維持する仕組みを用意しておく必要があります。
来年も展示会出展を予定しているなら、名刺交換した企業の中から、取材を依頼する候補をまず3社だけ選んでみてください。すべてのリードを一律に追うより、選んだ相手との関係が手元に残ります。
この記事からわかるQ&A
展示会のリードはどれくらいフォローされていないのですか
イベントテクノロジー企業のRefTechが、MICE業界の大規模な国際展示会で行った覆面調査があります。架空のイベント運営会社の担当者として106ブースを訪問し、資料の送付を依頼しました。出展者の62%は、資料送付の依頼に対してフォローを行っていませんでした。フォローを行った38%のうち、半分の19%はメーリングリストへの追加にとどまり、電話でフォローした出展者は0件です。
「80%がフォローされない」という数字は使えますか
一次調査の設計、対象、実施年を確認できる資料は見当たらず、二次情報での引用が繰り返されている状態です。社内の資料には使わず、調査の設計が確認できる数値として、RefTechの62%へ置き換えることをお勧めします。
展示会のリードは何割が商談になりますか
株式会社展示会営業マーケティングが2026年4月に、リードを獲得した出展者529人へ行ったインターネット調査があります。商談化率として最も多かった回答は10〜29%で31.8%、次いで30〜49%が26.3%、5〜9%が18.3%、50%以上が13.4%という並びです。
フォローはいつ送ればよいですか
業務目的の来場者1,089人を対象にした調査では、理想的なフォローとして「ブースで話した内容を踏まえた提案や情報提供があること」が56.3%で最も多く、「展示会翌日〜3日以内のタイミングで連絡がくること」は25.0%でした。フォローに不満やストレスを感じた経験があると答えたのは71.6%で、そのうち29.6%が「展示会から数週間以上後」の連絡を遅すぎたと答えました。これらの回答を参考に、ブースでの会話内容に触れた個別の連絡を展示会翌日から3日以内に送る案を、自社のフォローの時期として検討してみてください。
すぐに買わない相手はどうすればよいですか
出展者の調査の推計では、獲得したリードのうち、すぐ商談に進められる相手は3分の1ほどで、残りは「そのうち客」と対象外に分かれます。6senseの2025年版の調査では、B2Bの平均購買期間は10.1か月でした。対象外を分類したうえで、「そのうち客」には中長期で接点を維持する仕組みが必要です。その方法の1つに、展示会で話が合った相手に後日あらためて取材を申し込み、収録して公開した回を、その後も続く接点として活かすやり方があります。
出典
RefTech「Why pay to exhibit, then not follow up the leads?」(RefTech が配布する PDF 版は2022年9月作成。調査を行った年の記載なし)。大規模な国際ビジネスツーリズム展示会で、架空のイベント運営会社の担当者が106ブースを訪問し、資料の送付を依頼。62%がフォローせず、フォローは38%(40ブース。パーソナライズされたメール19%、メーリングリストへの追加のみ19%)、電話0件。5分ほど立っていても応対の無かったブース7、バッジを読み取った出展者のフォローは50% https://www.reftech.com/blog-follow-up-the-leads.php
株式会社展示会営業マーケティング『展示会白書』2026年6月30日公開。出展者調査:2026年4月16日〜20日、直近1年以内に展示会出展の責任者・担当者として携わった会社員536人へのインターネット調査。出展で感じている課題(複数回答)は「費用対効果が見えにくい」50.0%、「準備・運営にかかる社内の人員や工数が不足している」39.7%、「出展後のフォローアップ体制が不十分」32.5%(図4-8)。リード獲得出展者529人の商談化率は10〜29%が31.8%、30〜49%が26.3%、5〜9%が18.3%、50%以上が13.4%、1〜4%が5.5%、1%未満が0.9%(図4-7)。「今すぐ客」の割合は31〜40%が24.3%で最多(図4-5)。リードの構成は標準推計で今すぐ客約33%・そのうち客約34%・対象外約33%、保守的推計で約29%・約43%・約29%(表4-1) https://tenjikaieigyo.com/whitepaper/figures/
株式会社展示会営業マーケティング『展示会白書』2026年6月30日公開。来場者調査:2026年4月8日〜9日、直近1年以内に業務目的で展示会へ来場した会社員1,089人へのインターネット調査。フォローに不満・ストレスを感じた経験ありが71.6%(図5-15)。不満の内容(n=780、複数回答)は「ブースで話した内容と無関係な営業をされた」50.6%、「名刺交換しただけなのに強引な売り込みをされた」43.2%、「興味のない製品・サービスのメールが大量に届いた」40.4%、「フォローのタイミングが遅すぎた(展示会から数週間以上後)」29.6%(図5-16)。理想的なフォローアップ(複数回答)は「ブースで話した内容を踏まえた提案や情報提供があること」56.3%、「継続的に役立つ情報(メルマガ・レポート等)の提供」32.4%、「展示会翌日~3日以内のタイミングで連絡がくること」25.0%(図5-17)。月1回程度のメールマガジンへの反応は「内容が自社の業務に関連する情報であれば目を通す」56.9%、「基本的に目を通す」28.2%、「配信を停止する」4.9%(図5-18) https://tenjikaieigyo.com/whitepaper/figures/
6sense「6sense Launches 2024 Buyer Experience Report Unveiling Global B2B Buyer Trends」2024年10月9日。北米・欧州・中東・アフリカ・アジア太平洋のB2Bの買い手が対象。B2Bの平均購買期間は11.3か月 https://6sense.com/newsroom/6sense-launches-2024-buyer-experience-report-unveiling-global-b2b-buyer-trends/
6sense「The B2B Buyer Experience Report for 2025」(ページに公表日の記載なし。2026年10月6日に確認)。4,000人近いB2Bの買い手の調査。平均購買期間は2024年の11.3か月から2025年の10.1か月に短縮。売り手に初めて連絡する時点は購買のプロセスの61%。最終的に選ばれた売り手は95%の場合、初日の候補一覧に入っていた https://6sense.com/science-of-b2b/buyer-experience-report-2025/
Jung, L., & Park, S. (2020). The effect of contact frequency with customers on relationship satisfaction. Global Business & Finance Review, 25(3), 75–83. サービス分野の顧客を対象にした研究。接触の頻度は会社への満足に直接は有意な影響を持たず、担当者への満足を介して影響した。電話などの個人的な接触は、グループメールなどの非個人的な接触より、関係への満足に好ましかった https://doi.org/10.17549/gbfr.2020.25.3.75
アストライド「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」週1回配信プランの年間エピソード数48本・番組尺15分(2026年10月6日に確認) https://ast-ride.com/service/service-podcast/