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株主と金融機関に向けた音声発信という選択肢

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この記事でわかること

  • 決算説明会がウェブへ出ている割合
  • 機関投資家がアーカイブを使っている度合い
  • 金融機関が融資判断で重視している項目
  • 対話ができている会社とそうでない会社の差
  • 音声で届けられるものと、届けられないもの

御社には、株主に向けた発信と、金融機関に向けた説明という2つの仕事があります。この2つを別々のものとして扱っておられる会社は多いように思います。

ただし、相手が知りたがっている中身のほうは近いところにあります。両者が見ているのは決算書の数字よりも、その数字がどうして出たのか、これから何をするつもりなのかという部分になります。

この記事では、日本IR協議会・野村インベスター・リレーションズ・金融庁・経済産業研究所が公表している調査を並べます。そのうえで、私たちは音声という形で何を届けられるのかを考えます。


決算説明会は、すでにウェブへ出ている

日本IR協議会が2025年に「IR活動の実態調査」を公表しています。この調査は全上場会社4,113社へ配布され、962社から回答を得ています。

項目割合
IR活動を実施95.2%
本決算説明会を実施90.7%
本決算説明会をウェブ公開(実施企業のうち)86.6%
中間決算説明会をウェブ公開(実施企業のうち)87.5%

回答したのは主にIRを実施している企業ですので、この数字を全上場企業の実測値としては読めません。それでも、会場に来た人だけに説明を閉じる形は、もう主流から外れているように見えます。

ウェブ公開をしている企業のうち、日本語で動画配信を行っている割合は74.5%です。2023年の調査では69.6%でしたので、この割合はこの2年で増えています。

日本語のQ&Aを公開している割合は62.8%で、2023年の50.8%から伸びています。説明内容の文章報告を公開している割合も、41.5%から52.0%へ上がりました。

機関投資家は、アーカイブを実際に使っている

野村インベスター・リレーションズが、機関投資家とアナリストへ行った調査があります。回答者は84名です。

決算説明会の動画・音声配信の利用割合
頻繁に利用47.6%
時々利用まで含めた合計85.7%

2019年の調査では、頻繁に利用が19.7%、時々利用までを含めて75.8%でした。オンデマンドで聴く行動のほうは、この数年で明らかに増えています。

ただし回答者は84名と少なく、しかも同社の登録者が対象になります。市場全体の平均としては読めませんので、その前提でお受け取りください。

同じ調査では、新規の投資対象を見つけるために使う情報源も聞かれています。上位は決算説明会・会社説明会が26.7%、企業ホームページが18.4%、個別取材が16.6%です。

個人株主は、まずWebサイトを見ている

日本証券業協会が2025年に、全国の18歳以上の有価証券保有者5,000人へ調査を行っています。

投資をするときに最も多く使う情報源は、Webサイトが37.9%です。動画や画像を中心としたSNSが10.5%、新聞・雑誌が9.4%と続きます。

個人株主に向けては、音声だけで完結させる設計は向きません。IRサイト、動画、短い尺のSNS、検索できるテキストへ再編集する形が要ります。

金融機関が見ているのは、経営者の資質と開示姿勢

上場していない会社にとって、資本を出す相手は金融機関になります。ここにも公表された調査があります。

経済産業研究所が2023年11月から12月にかけて、地域金融機関の支店長2,516人へアンケートを行いました。融資判断で「非常に重視する」と「重視する」を合わせた割合は、次のとおりです。

融資判断で重視する項目合計
財務の健全性・収益性94.2%
経営者の資質・やる気92.2%
ビジネスプランの質84.7%
従来からの取引関係81.1%
過去の返済状況79.7%
売上・成長見込み78.4%
企業の情報の質・開示姿勢78.0%
財務諸表に現れない非財務価値73.3%
経営者保証の差し入れ13.9%

経営者の資質・やる気が92.2%で、財務の健全性・収益性の94.2%とほとんど並んでいます。一方で、経営者保証の差し入れは13.9%にとどまっています。

ここでいう非財務価値には、顧客基盤、技術、商流、組織、人材、経営者のリーダーシップ、事業の継続性が含まれます。決算書だけでは完全には出てこない価値のことです。

ただし、金利へ直接反映されるとは限りません

同じ経済産業研究所が、金融機関へのインタビューを基にした実態調査も公表しています。

この調査によれば、非財務情報が使われる場面は主に3つあります。その3つは、決算書を実態に即して補正するとき、融資可否の稟議で判断材料にするとき、そして保証や担保の要否を検討するときになります。

一方で、基準金利そのものは内部格付によって決まる傾向が強いという整理になっています。非財務情報の金利算定への直接的な利用について、この調査は「ほとんどない」と報告しています。

理念が立派であれば金利が下がる、という話とは違います。理念や将来性は、事業計画の一貫性、経営者の実行力、開示の信頼性として具体化されたときに、融資の可否や無保証化へつながります。

対話ができている会社と、そうでない会社の差

金融庁が2025年に、地域金融機関等をメインバンクとする中堅・中小企業10,474社から回答を得ています。

メインバンクが悩みを「よく聞く」または「ある程度聞く」と答えた企業は80.8%です。課題や評価を「よく伝える」「ある程度伝える」は64.6%、その説明に納得感があると答えたのは66.2%です。

この3つの条件をすべて満たす企業を、金融庁は「課題共有先」と呼んでいます。全体の55.2%が、この課題共有先にあたります。

事業計画を作成している企業のうち、その計画を基に必要な融資を受けた割合は全体で26.6%です。課題共有先では33.8%、その他の先では15.4%になります。

計画を基にした対話をしていない割合のほうも、両者で開いています。全体は48.8%、課題共有先は37.1%、その他の先は67.1%という結果です。

なお、これは横断のアンケート調査になります。厳密な因果関係を示すものとは違いますので、強い関連を示すデータとしてお読みください。

小規模な会社ほど、理解が届いていない

同じ金融庁の調査に、もう1つ気になる数字があります。

「メインバンクが事業内容、将来性、技術力、経営手腕等を十分理解し、必要な融資を行っている」と答えた企業は、全体で70.1%です。

従業員1〜5人の小規模企業では、この割合が59.8%まで下がります。要注意先以下の区分でも59.4%にとどまります。規模が小さい会社ほど、理解と融資の両立に課題が残っています。

2026年の調査では、開示との関係も示されています。金融機関がよく話を聞く企業ほど、中長期経営計画、資金繰り表、ビジネスモデル・商流、強み・弱みを開示している比率が高くなっています。

中長期計画の開示率は、「よく聞いてくれる」先で32.8%です。「全く伝えてくれない」先の9.8%と比べると、3倍以上の開きがあります。

経営者保証は、説明が求められるようになった

2023年4月から、経営者保証改革プログラムが始まっています。

保証を求める金融機関は、2つのことを個別具体的に説明し、記録することが求められています。何が不足しているために保証が必要なのか。そして、何を改善すれば変更や解除の可能性が高まるのか。

保証の解除や無保証での融資を判断する基準は、3つ挙げられています。その3要素は、財務基盤の強化、適時・適切な財務情報の開示、そして法人と経営者個人の資産・経理・資金授受の明確な分離になります。

金融庁の2025年調査では、保証の必要性について説明を受けた企業の取組も集計されています。財務内容の改善が42.6%、適時適切な財務情報の提供が27.3%、金融機関とのコミュニケーション改善が20.5%です。

音声で届けられるもの、届けられないもの

ここまでの数字を踏まえて、私たちは音声という形の位置づけを整理します。

届けられるのは、決算書の外側にある文脈のほうです。なぜこの投資を決めたのか、下振れしたときに何をするつもりなのか、いま何を課題として見ているのか。こうした内容は、数字の一覧では伝わりません。

音声には、話し手の判断の順序がそのまま残ります。どこで迷い、何を根拠に決めたのかという流れを、聞く側は追えます。

届けられないのは、検索できる形と、比較できる形のほうになります。音声は流れて消えますので、あとから特定の発言だけを引くことが困難になります。ですから書き起こしを併置してください。

日本IR協議会の調査で、Q&A公開が62.8%、文章報告が52.0%まで伸びているのは、この弱点を補う動きにあたります。

音声配信そのものが株価や資金調達へ与えた因果効果を測った公的統計は、見当たりません。ここに書いたのは、投資家と金融機関が何を見ているかというデータであって、音声の効果を実測したものとは違います。

始めるなら、何から作るか

株主と金融機関の両方を相手にする場合、私たちがお勧めしているのは四半期に1本の構成です。

この年4本という数であれば、御社は決算のたびに1本という区切りで話せます。話す内容は、その期に決めたことと、その理由の2つで足ります。

原稿を先に書かないでください。原稿を読み上げた音声は、資料を配るのと変わらない結果になります。質問を用意しておき、それに答える形で収録するほうが、判断の順序を残せます。

収録した内容は、書き起こしと一緒に置いてください。金融機関の担当者は、稟議書を書くために引用できる形を必要としています。

配信の頻度と本数の考え方については、再生数を目標にすると何が起きるかで詳しく記載しています。取引先との接点の作り方は、取引先と年1回しか会わない。この間隔を月1回に変える方法をご覧ください。

決算書に出てこない資産については、財務諸表に載らない資産にまとめています。

まとめ

日本IR協議会の2025年調査では、本決算説明会をウェブ公開している企業が実施企業の86.6%に達しています。日本語の動画配信は74.5%、Q&A公開は62.8%です。

野村インベスター・リレーションズの調査では、機関投資家とアナリストの85.7%が、決算説明会の動画・音声配信を少なくとも時々利用しています。回答者84名という小さな標本ですので、数字は幅を持って読む必要があります。

経済産業研究所が支店長2,516人へ行った調査では、経営者の資質・やる気を重視する割合が92.2%、情報の質・開示姿勢が78.0%です。経営者保証の差し入れは13.9%にとどまっています。

金融庁の調査では、対話の3条件を満たす「課題共有先」が55.2%を占めています。計画を基に融資を受けた割合は、課題共有先33.8%に対してその他の先15.4%です。

株主も金融機関も、決算書の外側を見ようとしています。その外側を伝える形の1つとして、音声という選択肢があります。

この記事からわかるQ&A

決算説明会の音声配信は、どれくらい普及していますか

日本IR協議会の2025年調査では、本決算説明会をウェブ公開している企業が実施企業の86.6%です。そのうち日本語で動画配信を行っている割合は74.5%になります。ただし調査票が「音声のみ」を動画から分離していませんので、音声単独の普及率は公表資料から分かりません。

機関投資家は、アーカイブを聴いていますか

野村インベスター・リレーションズの調査では、決算説明会の動画・音声配信を「頻繁に利用」が47.6%、「時々利用」まで含めて85.7%です。2019年の調査では頻繁が19.7%、時々までで75.8%でしたので、オンデマンドで聴く行動は増えています。回答者は84名と少なく、同社の登録者が対象である点には留意が要ります。

金融機関は融資審査で何を見ていますか

経済産業研究所が2023年に、地域金融機関の支店長2,516人へ調査を行っています。「非常に重視する」と「重視する」の合計は、財務の健全性・収益性94.2%、経営者の資質・やる気92.2%です。ビジネスプランの質は84.7%、企業の情報の質・開示姿勢は78.0%になります。経営者保証の差し入れは13.9%にとどまっています。

発信をすれば金利は下がりますか

その因果を示す調査は見当たりません。経済産業研究所の実態調査では、基準金利は内部格付によって決まる傾向が強いと整理されています。非財務情報の金利算定への直接的な利用について、この調査は「ほとんどない」と報告しました。非財務情報が使われるのは、財務分析の実態補正、融資可否の稟議、保証や担保の要否の検討という場面です。

音声だけで足りますか

足りません。音声は流れて消えますので、あとから特定の発言だけを引くことが困難になります。日本IR協議会の調査でQ&A公開が62.8%、文章報告が52.0%まで伸びているのは、この弱点を補う動きにあたります。書き起こしを併置してください。

出典

  • 日本IR協議会「2025年 IR活動の実態調査」全上場会社4,113社へ配布、962社が回答。IR活動を実施95.2%、本決算説明会を実施90.7%、本決算説明会のウェブ公開は実施企業の86.6%(中間決算87.5%)。ウェブ公開企業のうち日本語の動画配信74.5%(2023年69.6%)、日本語Q&A公開62.8%(同50.8%)、説明内容の文章報告52.0%(同41.5%)、英語の動画配信18.4%。IR実施企業の73.5%が株主・投資家の意見を取締役会・経営会議等へ報告する機会を設けている https://www.jira.or.jp/
  • 野村インベスター・リレーションズ「IR活動の評価に関するアンケート調査」機関投資家・アナリスト84名が回答。決算説明会の動画・音声配信を「頻繁に利用」47.6%、「時々利用」まで含め85.7%(2019年は19.7%/75.8%)。新規投資対象の発掘に使う情報源は決算説明会・会社説明会26.7%、企業ホームページ18.4%、個別取材16.6% https://www.nomura-ir.co.jp/
  • 日本証券業協会「2025年 証券投資に関する全国調査」全国の18歳以上の有価証券保有者5,000人。投資時に最も多く使う情報源はWebサイト37.9%、SNS(動画・画像系)10.5%、新聞・雑誌9.4% https://www.jsda.or.jp/
  • 経済産業研究所(RIETI)「地域金融機関の融資行動に関する支店長アンケート」2023年11〜12月実施、支店長2,516人が回答。融資判断で「非常に重視する+重視する」は財務の健全性・収益性94.2%、経営者の資質・やる気92.2%、ビジネスプランの質84.7%、従来からの取引関係81.1%、過去の返済状況79.7%、売上・成長見込み78.4%、企業の情報の質・開示姿勢78.0%、財務諸表に現れない非財務価値73.3%、経営者保証の差し入れ13.9% https://www.rieti.go.jp/
  • 経済産業研究所(RIETI)金融機関インタビューによる実態調査。非財務情報は財務分析の実態補正・融資可否の稟議・保証や担保の要否の検討に用いられる一方、基準金利は内部格付により決まる傾向が強く、金利算定への直接的な利用は「ほとんどない」 https://www.rieti.go.jp/
  • 金融庁「企業アンケート調査結果(2025年)」地域金融機関等をメインバンクとする中堅・中小企業10,474社が回答。悩みを「よく/ある程度聞く」80.8%、課題・評価を「よく/ある程度伝える」64.6%、説明に納得感がある66.2%、3条件を満たす「課題共有先」55.2%。事業計画を基に必要な融資を受けた割合は全体26.6%/課題共有先33.8%/その他の先15.4%。計画を基にした対話をしていない割合は全体48.8%/課題共有先37.1%/その他の先67.1%。「メインバンクが事業内容・将来性・技術力・経営手腕等を十分理解し、必要な融資を行っている」70.1%(従業員1〜5人では59.8%)。横断アンケートであり因果推定ではない https://www.fsa.go.jp/
  • 金融庁「企業アンケート調査結果(2026年)」金融機関がよく話を聞く企業ほど開示比率が高い。中長期経営計画の開示率は「よく聞いてくれる」先32.8%、「全く伝えてくれない」先9.8% https://www.fsa.go.jp/
  • 金融庁「経営者保証改革プログラム」2023年4月以降、保証を求める金融機関は、何が不足しているため保証が必要か、何を改善すれば変更・解除の可能性が高まるかを個別具体的に説明・記録することが求められる。判断の3要素は財務基盤の強化/適時・適切な財務情報の開示/法人と経営者個人の資産・経理・資金授受の明確な分離。2025年調査では、説明を受けた企業の取組は財務内容の改善42.6%、適時適切な財務情報の提供27.3%、金融機関とのコミュニケーション改善20.5% https://www.fsa.go.jp/
  • アストライド「ポッドキャスト制作・運用代行 月15万円〜|収録は月1回|三重・全国対応」提供内容10項目、番組尺15分、配信頻度別の年間本数(2026年8月時点) https://ast-ride.com/service/service-podcast/

記事を書いた人

アストライド代表 纐纈 智英

アストライド代表。「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した「論理的思考(左脳)」と、音楽コンテストでグランプリを受賞するなど「芸術的感性(右脳)」を併せ持つ、異色のバックグラウンド。これまでに200社以上の経営者インタビューを行った経験を活かし、経営者すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出して映像化する。

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