求人票に給与や休日、業務内容を書いても、応募が集まらず、採用した人も定着しない状況を、条件の見直しだけで解決しようとしていませんか?求人票の項目だけでは、自社の仕事の実態や、働くうえでの難しさまで十分に示せません。
この記事では、求人票で伝わりにくい情報を、応募を促す訴求と、候補者が自分に合う仕事かを見極める選別の観点から整理し、採用で音声を使う範囲について取り上げます。文字で明示すべき情報と、自社に音声が向くかを判断する確認点もお伝えします。
この記事でわかること
人手不足と採用難がいまどの水準にあるのかという実数
求職者が応募前に最も知りたがっている情報の順位
求人票の定型書式では伝えにくい仕事の実態
良い面の訴求が入社後の落差を広げる理由と研究の裏づけ
候補者の自己選択と定着を支える経路
求人票・採用サイト・説明会・記事・音声の情報特性
同じ内容を文字で読む場合と音声で聴く場合の評価の違い
音声を利用しやすい層と採用への活用を考える際の注意点
事業者が公表した効果の数値の読み方と自社で測る指標
音声で扱う情報と文字で明示する情報、発信を避ける内容
自社の採用広報に音声が向くかを判断する確認点
目次
採用難は、いまどの水準にあるか 求職者が最も知りたいのは、仕事内容 求人票では伝えにくい情報 訴求を強めるほど、入社後の落差は大きくなる 候補者の自己選択を促す採用は、なぜ定着につながるのか 求人票・採用サイト・説明会・記事・音声で、候補者に伝えられる情報 同じ内容でも、音声で伝えると評価が変わる 音声を利用しやすい層と、利用しにくい層 事業者が公表した効果の数値を、どう読むか 音声で扱う範囲と、扱わない範囲 自社に向くかを判断する4つの確認点 まとめ この記事からわかるQ&A 出典
採用難は、いまどの水準にあるか
まず、企業の採用を取り巻く状況を数字で確認します。
帝国データバンクは、全国の企業に人手の過不足を毎月たずねています。2026年7月の調査(有効回答1万518社)では、正社員の人手不足を感じている企業の割合が51.3%、非正社員では28.8%でした。正社員の不足を感じる企業は、7月の調査としては4年続けて半数を超えています。
人手不足の影響は、倒産件数にも表れています。同社が集計しているのは、従業員の退職や採用難、人件費の高騰などが原因で法的整理となった、負債1,000万円以上の倒産です。2025年度は441件で、前年度の350件から約1.3倍に増え、過去最多を更新しました。建設業や道路貨物運送業に加えて、老人福祉事業や飲食店、労働者派遣業といった労働集約型の産業で増加が目立っています。このうち、従業員や経営幹部の退職が原因の倒産は118件で、年度として初めて100件を超えました。
賃金の差も、統計に表れています。厚生労働省の2025年の賃金構造基本統計調査によると、短時間労働者を除く一般労働者の月の所定内給与は、従業員1,000人以上の企業で38万5,100円、100〜999人の企業で32万6,200円、10〜99人の企業で30万5,600円でした。賃金や休日数で大企業と競いにくい企業ほど、条件だけでは伝わらない仕事や組織の情報を充実させる必要があります。
求職者が最も知りたいのは、仕事内容
求職者の側が何を知りたがっているのかも、調査に出ています。
人材採用支援を行うONEは、2020年2月ごろ以降に就職・転職活動を行った全国の20歳から39歳の540名に調査を行いました(2021年6月9〜10日実施)。採用サイトで最も知りたい情報としては、仕事内容が約8割で第1位に挙がっています。企業情報が第2位、福利厚生が第3位で、具体的な働き方と募集要項が続きました。
ただし、この調査から直接確認できるのは、「仕事内容」が上位に挙がったという点までです。その仕事では1日のなかで何をするのか、どこで判断に迷うのか、何が大変なのか。求職者が知りたい「仕事内容」には、職種名や業務の一覧に加えて、こうした実務の中身も含まれると私たちは考えています。
同じ調査では、採用サイトを見る理由として「社員のインタビューや写真を見ると入社後がイメージできるので面接への意欲が上がる」という声も挙がっています。
この調査は2021年に実施されたもので、対象は20歳から39歳に限られていました。年代の広がりと調査時期の古さは、読むときに踏まえておく必要があります。
求人票では伝えにくい情報
求人票は、条件を正確に伝える書式として優れています。給与も勤務地も勤務時間も休日も必要な経験も、この書式のなかに収まる項目です。求職者が比較するために必要な項目は、各社で同じ順序に並んでいます。
条件を正確に示すことは、法律でも求められています。職業安定法の施行規則が改正され、2024年4月からは、募集のときに明示する労働条件に、従事する業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(更新の上限を含む)が加わりました。
この書式の強みが、そのまま制約にもなります。項目が定まっているぶん各社の記述は似通い、求職者が求人票から読み取れる差は、最後には条件の数字だけです。
条件の数字で比較される土俵に上がると、中小企業は不利な位置に立ちます。給与も休日数も知名度も、中小企業の数字は大企業の数字と並べて見られるためです。求人票だけで差別化しようとすると、比較の軸は給与や休日数などの条件に偏りやすくなります。
もう一つ、求人票では伝えにくいことがあります。それは、書き手の判断が入り込む余地です。求人票は決まった項目に条件を書き込む形をとるため、その会社が何を重視し、どのように仕事を進めているかは伝わりにくくなります。求職者が知りたい仕事の実態が伝わりにくい背景にあるのは、こうした定型書式の制約です。
訴求を強めるほど、入社後の落差は大きくなる
応募を増やすために、多くの会社が良い面を強く打ち出してきました。しかし、良い面の訴求に偏ると、別の問題が生じます。
産業心理学の分野には、現実的職務予告(Realistic Job Preview、以下RJP)と呼ばれる研究の蓄積があります。採用段階で仕事の魅力だけでなく、負荷や制約、難しさも含めて伝える考え方です。現実の情報を候補者に伝えた企業の例は1960年代から報告され、1973年の論文でこの呼び名が広まりました。その後、複数のメタ分析が行われています。
ジーン・フィリップスは、40件(うち26件は論文として公刊)の研究を統合したメタ分析を1998年に発表しました。掲載誌は Academy of Management Journal の第41巻6号、673〜690頁です。全体として、RJPは職務成績の高さと関連し、選考途中での離脱、入社前の期待の水準、自発的離職、離職全体の低さとも関連していました。また、現実的な職務情報を伝える時期や媒体によって効果が変わることも、この分析で示されました。
RJPをめぐるメタ分析は、このほかにも3件が行われています。米国のQIC-WDという研究機関は、これら4件をまとめた要約を2020年に公表しました。要約は、RJPが定着や職務成績に及ぼす効果はごく小さいと整理しています。
この結果の読み方には、注意が要ります。報告されているのは控えめな改善で、劇的な効果とは違う水準でした。RJPは、離職をゼロにする手法として扱わず、離職率をいくらか押し下げる手法として理解するほうが正確です。
日本の調査にも、同じ方向の数字があります。エン・ジャパンが、直近3年間に社員が入社した企業の人事担当者に行った調査(2025年3月11日〜4月7日、291社が回答)では、半年以内の早期離職があった企業が57%でした。従業員49名以下の企業でも46%にのぼります。早期離職があった企業が挙げた要因の第1位は、仕事内容のミスマッチの57%でした。
候補者の自己選択を促す採用は、なぜ定着につながるのか
なぜ現実を示すと定着が上がるのか。研究では、3つの経路が検討されてきました。
1つ目の経路にあたるのが、入社前の期待の充足です。入社前に抱いていた仕事や組織のイメージと、入社後の現実が近いほど、社員は裏切られたという感覚を持ちにくくなります。
2つ目の経路は、役割の明確さです。仕事の内容や制約を事前に知っている候補者は、入社後に自分が何を求められているかを早く把握できます。
3つ目の経路は、組織の誠実さの認知、つまりこの会社は誠実だと候補者が受け止めることです。仕事の難しさや制約まで話してくれた会社に対して、候補者は正直な組織だという印象を持ちます。QIC-WDの要約は、この印象が、会社が自分を気にかけ支えてくれるという合図として新入社員に受け取られる、と説明しました。
3つのうち、どの経路が離職を減らしているのかを調べた研究もあります。Earnest、Allen、Landisの3氏は2011年、52件の研究、およそ1万7,000人分のデータを統合して経路を分析しました(Personnel Psychology 第64巻4号)。RJPが自発的離職を減らす主な経路として浮かび上がったのは、組織の誠実さの認知でした。
良い面だけを強調し、不都合な点を十分に伝えない場合、候補者は入社してから初めて不都合を知ることになり、会社に対する信頼を損なうおそれがあります。
ここで出てくるのが、応募数が減ってしまう懸念です。この懸念には根拠があります。QIC-WDの要約は、RJPが候補者から見た組織の魅力を下げると整理し、応募者が足りない状況でRJPを使うときは注意が要ると書きました。応募の減少を和らげる方法として同じ要約が挙げるのは、入社直後にRJPを伝えるやり方です。
一方で、フィリップスのメタ分析では、RJPは採用プロセスの途中で候補者が離脱する割合の低さと結びついていました。応募前の段階で応募を見送る人が出ることと、選考に進んだ人が途中で降りることは、分けて考える必要があります。
入社後の定着については、別の記事「中途社員が半年で辞めるのはなぜか 」で詳しく扱っています。
求人票・採用サイト・説明会・記事・音声で、候補者に伝えられる情報
入社前に情報を伝える手段には、それぞれ伝えやすい情報と伝えにくい情報があります。
求人票は、条件を正確に示します。制約になるのは、書式の標準化です。各社の記述が似通うため、求職者が読み取れる差は条件の数字へ収束していきます。
採用サイトには、求人票のような決まった枠がありません。写真も文章も、会社が選んで置けます。課題は、そもそも求職者に採用サイトまで来てもらわなければ届かない点です。
会社説明会は、双方向のやりとりができる点で優れています。候補者が知りたい部分を、その場で直接たずねられる点も利点です。一方で、開く側には準備の負荷がかかり、候補者は日時を合わせて参加しなければなりません。
社員インタビューの記事は、働いている人の言葉を載せられます。あとから読み返せる点も、文章ならではの利点です。制約は編集にあり、文字に起こす過程で、言いよどみや迷い、間といった話し方に含まれる情報は省かれやすくなります。
音声なら、社員が話した言葉を声のまま届けられます。オトナルと朝日新聞社の調査では、ポッドキャストを聴く人の8割が、何かをしながら聴いていました。候補者は、移動や作業の合間にも社員の話を聴けます。給与や勤務条件の正確な数値は、音声だけでは確かめにくい情報です。
5つの手段を比べて分かるのは、役割を分けて使うべきだということです。労働条件は求人票などの文字情報で明示し、現場での判断や迷いは音声で補うことが、入社前の情報量を増やす現実的な形だと私たちは考えています。
同じ内容でも、音声で伝えると評価が変わる
音声には、同じ内容でも受け取られ方が変わるという特徴もあります。
ジュリアナ・シュローダーとニコラス・エプリーは、採用の場面で実験を行いました(Psychological Science 第26巻6号、2015年)。比べたのは、同じ内容を読んだ場合と聴いた場合で、評価がどう変わるかです。求職者が、自分を採用すべき理由を説明する話を用意し、評価者は、その内容を文章で読む、本人の音声を聴く、映像を見る、のいずれかの条件で評価しました。
評価者は、同じ内容を読んだときより聴いたときに、その候補者をより有能で、思慮深く、知的だと評価し、採用への関心も高めました。候補者本人の代わりに訓練を受けた俳優や一般の成人が同じ文章を読み上げた実験3でも、同じ差が残っています。職業として採用に携わる採用担当者が評価した実験4でも、同じ方向の結果が出ました。聴く条件に映像を加えても、評価は変わりませんでした。
同じ研究チームは、意見が食い違う場面についても調べています(Psychological Science 第28巻12号、1745〜1762頁、2017年)。賛否の分かれる社会問題や、支持する大統領候補をめぐる3つの実験では、自分と反対の意見を音声で聴いた参加者は、書き起こしなどの文章で読んだ参加者よりも、相手を、より人間らしく思慮深い人物として評価しました。
この論文の4つ目の実験は、声のどの特徴が評価に関係するかを調べています。関係していたのは、抑揚(声の高さの変化)と、話の中の間の割合でした。文字だけの文章には、こうした声の特徴がありません。
この2つの研究が測ったのは、候補者が企業から評価される向きと、意見の対立する相手を評価する向きです。企業が候補者から評価される向きを直接測ってはいません。それでも、声が話し手の思考量を伝えるという機構そのものは、向きを変えても働くと私は考えています。
音声を利用しやすい層と、利用しにくい層
音声を利用する人の広がりには、限界もあります。
オトナルと朝日新聞社は、15〜69歳の1万人を対象に「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」を行いました(2025年12月5〜6日実施、2026年2月25日公表)。月に1回以上ポッドキャストを聴く人の割合は18.2%です。年代別では15〜19歳が40.5%、20代が28.8%と、若年層の利用率が高くなっています。
新卒採用や第二新卒の採用を考えている会社にとって、この年代別の数字は、音声の活用を検討する材料です。公開されている調査の概要に年代別の数字が出ているのは、20代まででした。中途採用が中心の会社は、自社が採用したい年齢層に、ポッドキャストを聴く習慣がどの程度あるかを、応募者への聞き取りなどで確かめる必要があります。
この調査の読み方にも、注意が1つあります。公開されている調査の概要には、採用情報を集めるために聴いているかをたずねた結果がありません。利用率が示しているのは月1回以上なんらかの番組を聴いた人の割合で、採用の文脈で聴かれているかどうかは、この数字の外にあります。
音声を採用へ使う場合、ポッドキャストを単独の接点として運用するよりも、採用サイトの中へ埋め込む形が現実的です。求人票から採用サイトへ来た候補者が、その場で聴ける状態にしておきます。
事業者が公表した効果の数値を、どう読むか
採用支援に音声を用いた事例の数値を、事業者が公表しています。
オトバンクの企業ポッドキャスト事業「PitPa」は、2025年3月に音声による採用支援サービス「リクルーティングラジオ」を始めました。その発表では、サービス開始前に手がけたデジタルガレージ社の事例として、1面談あたりの採用率が12.15%増、1面談あたりの辞退率が8.55%減という数値が示されています。
この数値を評価するには、いくつか注意点があります。この数値は1社の事例で、事業者側の公表です。発表のページには、母数も測定期間も比べた条件も書かれていません。「1面談あたり」の数字は面談の数が分母になるため、採用した人数が同じでも、面談の数が変われば動きます。
自社で効果を測るのであれば、別の指標を置くほうが確実です。応募から入社までの辞退率と、入社半年後の在職率と、入社した社員への聞き取りの3つを候補に挙げます。この3つは、経営者が社内のデータで継続して確認できる指標です。
音声で扱う範囲と、扱わない範囲
採用の音声で扱う情報には、文字と分けて考えるべき領域があります。
給与や勤務時間や休日の日数は、文字で示してください。2024年4月からは、業務や就業場所の変更の範囲、有期労働契約の更新の基準も、募集のときに明示する事項に加わっています。音声だけで伝えた数値は、候補者が正確に確認・記憶できるとは限らず、後日の認識違いやトラブルにつながるおそれがあるためです。
音声が向いているのは、仕事の難しさや負荷についての語りです。繁忙期の忙しさも、判断に迷う場面も、この仕事で力を発揮しやすい人と難しさを感じやすい人の傾向も、声であれば背景を添えて伝えられます。文字だけでは冷たく、断定的に受け取られやすい内容も伝えられるのは、話し手の声に前後の文脈が乗るためです。
音声で扱えない話もあります。まだ実施されていない制度や取り組みの話で、これから整備する制度や、来期から始まる予定の取り組みがその例です。入社時点で存在しない制度を、すでに利用できる制度であるかのように伝えた場合、会社は入社後の現実との差を自分の手で広げてしまいます。
社員が職場環境に深刻な不満を抱えている場合、収録内容をそのまま対外公開することは避けてください。この状態で必要なのは、発信の前に社内の課題へ手をつけることです。
自社に向くかを判断する4つの確認点
採用の場面で音声を使うかどうかは、次の4つの確認点で判断できます。
自社の主要課題は、応募数の不足か、定着率の低さか。応募数だけが問題であれば、新たな媒体を増やす前に、求人内容や労働条件を見直すほうが先です。両方が起きているなら、訴求と選別の設計を分けて考えてください。
仕事の難しさや制約を候補者に率直に伝える合意が、社内にあるか。良い面だけを示す設計へ戻るのであれば、RJPが前提にしている、現実を伝えるという条件そのものが欠けてしまいます。
社内に話せる社員がいるかどうか。経営者の発信だけでは、候補者が知りたい現場の実態までは伝えきれません。実際にその仕事をしている社員の語りが要ります。
採用したい層に、音声を聴く習慣があるか。国内の月間利用率は18.2%で、15〜19歳が40.5%、20代が28.8%です。自社が採用したい人材層が、この利用傾向とどの程度重なるかを、先に確かめてください。
この4つに自社の言葉で答えられる会社であれば、音声を使う採用広報は検討に値します。答えられない項目が残る場合は、発信に進む前に、経営者がその項目に取り組むことが先決です。
ポッドキャストの使い道を聴き手ごとに整理した内容は、社内でポッドキャストを使いたいという意図は、なぜ伝わりにくいのか で確認できます。採用広報に音声を使いたい場合は、アストライドの「採用広報のポッドキャスト制作」 をご覧ください。
まとめ
正社員の人手不足を感じている企業は2026年7月時点で51.3%を占め、人手不足倒産は2025年度に441件と過去最多を更新しました。賃金や休日数だけで競いにくい企業ほど、仕事の実態や組織の考え方といった条件以外の情報を充実させる必要があります。
求職者の約8割が最も知りたい情報に挙げたのは、仕事内容でした。求人票は条件を正確に伝える一方で、書式が標準化されているために各社の記述が似通い、比較の軸は給与や休日数などの数値に偏りやすくなります。
現実的職務予告の研究は、良い面だけを示さない採用が、控えめながら定着を改善すると報告してきました。検討されてきた経路は、期待の充足、役割の明確さ、組織の誠実さの認知の3つです。2011年のメタ分析では、自発的離職を減らす主な経路は3つ目の組織の誠実さの認知でした。
音声が向いているのは、仕事の難しさや負荷についての語りです。給与や勤務条件は文字で示し、まだ実現していない制度は事前情報に含めないでください。国内の月間利用率は18.2%にとどまるため、候補者像との重なりを先に確かめる必要があります。
最初の確認として勧めたいのは、自社の求人票を1枚印刷し、社名を隠したうえで社員に見せることです。それが自社の求人だと分かる社員の人数から、現在の求人票に、自社ならではの仕事や組織の特徴がどの程度表れているかを確認できます。
この記事からわかるQ&A
きつい面を伝えると、応募が減りませんか
RJPには、応募の入口で組織の魅力を下げる面があります。RJPの研究を要約したQIC-WDは、応募者が足りない状況では注意が要るとし、入社直後に伝えるやり方も挙げました。一方、フィリップスのメタ分析(40研究)では、RJPは採用プロセスの途中での離脱や、入社後の自発的離職の低さと結びついていました。応募前の段階で応募を見送る人と、選考に進んでから降りる人は、分けて考えてください。
採用サイトを作り直すほうが先に思えます
ONEの調査(n=540)では、採用サイトで最も知りたい情報として仕事内容が約8割で第1位に挙がりました。サイトを作り直して求職者の役に立つのは、その仕事内容が1日の実感の水準まで書かれている場合です。項目の並べ替えだけでは、求職者が知りたい部分は増えません。
中途採用が中心でも、音声は届きますか
オトナル・朝日新聞社の第6回調査(2025年12月実施)では、15〜69歳で月1回以上ポッドキャストを聴く人の割合が18.2%、15〜19歳が40.5%、20代が28.8%でした。公開されている概要に、30代以上の年代別の数字は出ていません。中途採用が中心なら、応募者に聴く習慣があるかを確かめてから始めてください。ポッドキャストを単独の接点として運用するよりも、採用サイトの中へ埋め込んで、その場で聴ける状態にする設計が現実的です。
効果はどう測ればいいですか
事業者が公表する数値をそのまま持ち込まないでください。オトバンクのPitPaが示した12.15%増と8.55%減は、サービス開始前の1社の事例で、指標は「1面談あたり」です。発表のページには、母数も測定期間も書かれていません。応募から入社までの辞退率と入社半年後の在職率と入社者への聞き取りの3つであれば、経営者は社内のデータだけで追えます。
やらないほうがいいのは、どんな場合ですか
社員が現状に強い不満を持っている場合です。収録した音声をそのまま外へ出せないため、発信の前に社内の課題へ手をつける必要があります。応募数だけが課題で定着に問題がない会社にとっても、媒体の追加より募集の出し方の見直しが先です。
出典
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」2026年8月17日公表。調査期間2026年7月17日〜31日、全国2万2,350社のうち有効回答1万518社。正社員の人手不足を感じている企業51.3%、非正社員28.8% https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260817-laborshortage202607/
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」2026年4月9日公表。集計対象は負債1,000万円以上・法的整理による倒産。2025年度の人手不足倒産は441件(前年度350件)、従業員退職型は118件 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260409-laborshortage-br25fy/
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」2026年3月24日公表。企業規模別の所定内給与(男女計):大企業(常用労働者1,000人以上)385.1千円、中企業(100〜999人)326.2千円、小企業(10〜99人)305.6千円 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html
厚生労働省「職業安定法施行規則改正(令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます)」。従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
株式会社ONE「求職者の採用サイトに関する調査」(HRzine 2021年7月26日掲載)。2021年6月9〜10日実施、2020年2月ごろ以降に就職・転職活動を行った全国20〜39歳 n=540。採用サイトで最も知りたい情報は仕事内容が約8割 https://hrzine.jp/news/detail/3429
Phillips, J. M. (1998). “Effects of realistic job previews on multiple organizational outcomes: A meta-analysis.” Academy of Management Journal, 41(6), 673–690. 40件(うち26件公刊)の研究を統合 https://journals.aom.org/doi/abs/10.5465/256964
Earnest, D. R., Allen, D. G., & Landis, R. S. (2011). “Mechanisms linking realistic job previews with turnover: A meta-analytic path analysis.” Personnel Psychology, 64(4), 865–897. 52研究・約1万7,000人。自発的離職への主な経路は組織の誠実さの認知 https://doi.org/10.1111/j.1744-6570.2011.01230.x
Graef, M. (2020). Umbrella summary: Realistic job previews. Quality Improvement Center for Workforce Development(2020年2月19日)。Premack & Wanous (1985)、McEvoy & Cascio (1985)、Phillips (1998)、Earnest et al. (2011) の4メタ分析を要約 https://www.qic-wd.org/umbrella-summary/realistic-job-previews
エン・ジャパン株式会社『人事のミカタ』「早期離職」実態調査(2025)2025年5月9日公表。2025年3月11日〜4月7日実施、直近3年間に社員が入社した企業 291社。半年以内の早期離職あり57%(49名以下46%)、要因1位「仕事内容のミスマッチ」57% https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/41448.html
Schroeder, J., & Epley, N. (2015). “The Sound of Intellect: Speech Reveals a Thoughtful Mind, Increasing a Job Candidate’s Appeal.” Psychological Science, 26(6), 877–891 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25926479/
Schroeder, J., Kardas, M., & Epley, N. (2017). “The Humanizing Voice: Speech Reveals, and Text Conceals, a More Thoughtful Mind in the Midst of Disagreement.” Psychological Science, 28(12), 1745–1762. 実験4で、抑揚と間の割合が評価と結びついた https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29068763/
オトナル×朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN 第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」2026年2月25日公表。2025年12月5〜6日実施、15〜69歳の全体10,000人と、月1回以上聴く人800人。月1回以上の利用率18.2%、15〜19歳40.5%、20代28.8%、ながら聴きが8割。公開されている概要に、採用情報の収集についての結果はない https://otonal.co.jp/news/50748
オトバンク「音声採用支援サービス「リクルーティングラジオ」提供開始」2025年3月17日。PitPa がサービス開始前に手がけたデジタルガレージ社の事例で、1面談あたりの採用率12.15%増・1面談あたりの辞退率8.55%減。1社の事例で、事業者の公表。母数・測定期間・比較条件はページに記載がない https://www.otobank.co.jp/news/n8p2QEOD