給与や福利厚生を整えても応募が集まらず、採用で何を伝えるべきか見直していませんか?条件面の情報だけでは、「この会社で働く意味」や「誰と働くか」を考えるための材料が足りない可能性があります。
この記事では、求職者が企業を選ぶ基準の変化と、求人票・採用サイト・面接で経営者の想いを伝える際の限界について取り上げます。文字・面接・映像の役割を分け、求職者に伝えたい経営者の言葉を書き出すための視点もお伝えします。
この記事でわかること
- 条件を整えても応募が集まらない問題の背景
- 求職者が企業を選ぶ基準と働く意味への関心
- 求人票・採用サイト・面接で想いを伝える限界
- 経営者の想いを応募・入社の判断材料にする条件
「条件は良いのに応募が来ない」という問題
給与・福利厚生だけでは選ばれない時代
給与や福利厚生は、求職者が企業を選ぶ際の判断材料です。ただし、給与を高くしたり福利厚生を充実させたりすれば、必ず応募が増えるとは限りません。
給与や福利厚生だけで、求職者が応募を決めるとは限りません。厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」(2023年)も、転職者が仕事を選ぶときに重視する項目を取り上げています。求職者が応募を判断するための材料を増やす方法の1つは、給与に加えて、仕事内容ややりがいを採用情報で説明しておくことです。
若年層の求職者の中には、「この会社で働くことに意味があるか」を重視する人もいます。条件が同程度の企業を比べるとき、判断を分ける材料の1つが、その企業にどれだけ共感できるかです。
求職者が本当に知りたいこととは
求人票には、給与、勤務時間、休日、福利厚生といった情報が記載されています。これらは重要な情報ですが、求職者が本当に知りたいのは「この会社はどんな会社なのか」という点です。
具体的には、以下のような疑問を抱いています。
- この会社は何を大切にしているのか
- 経営者はどのような人物なのか
- 社員はどのような想いで働いているのか
- 自分はこの会社で成長できるのか
これらの疑問に対して、求人票のテキスト情報だけで答えることには限界があります。「アットホームな職場です」「風通しの良い社風です」といった言葉は、どの企業も使っており、差別化にはなりません。
求職者が企業を選ぶ基準の変化
「この会社で働く意味」を求める傾向
リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査2023 全国版データ集」(2023年)は、働く人の就業実態をまとめた資料です。若年層の求職者が「仕事を通じた成長」や「社会への貢献実感」をどの程度重視するかは、人によって異なります。
こうした求職者が探しているのは、働く場所に加えて、「自分の人生において意味のある時間を過ごせる場所」です。給与や福利厚生は応募の前提となる条件ですが、それだけで応募を決める求職者ばかりとは限りません。
求職者は、企業のホームページ、SNS、口コミサイトなど、さまざまな情報源を使って企業を調べます。調べた情報から「この会社で働く意味」を見出せるかどうかも、応募を決める材料の1つです。
経営者の顔が見える企業への信頼
企業の「想い」を自分の言葉で語れる代表的な人物が、経営者です。創業の経緯、事業に込めた想い、社員への期待は、経営者自身が語ることで、その背景も含めて求職者に伝えやすくなります。
経営者の顔が見えるかどうかは、求職者が企業に抱く印象を左右する要素の1つです。経営者の顔が見えると、求職者は「この人のもとで働きたい」「この人の想いに共感できる」と思えるかどうかを判断できます。経営者の顔が見えることは、求人票の条件だけでは得にくい判断材料です。
中小企業では、社員と経営者の距離が近く、経営者の人柄や想いが企業文化に表れやすいと考えられます。求職者にとって、経営者がどのような人物かは、応募を考えるときの材料の1つです。
「想い」が伝わらない採用活動の限界
求人票・採用サイトのテキスト情報の限界
採用サイトに経営者メッセージを掲載している企業は、珍しくありません。ただし、テキストによるメッセージには限界があります。
まず、差別化が難しいという問題があります。「お客様第一」「社員を大切に」「挑戦を恐れない」といったメッセージは、ほかの企業でも使われている表現です。求職者から見ると、どの企業も同じようなことを言っているように映りかねません。
次に、本気度が伝わらないという問題があります。テキストでは、経営者がその言葉をどれほど本気で語っているのかが伝わりません。同じ「社員を大切にしています」という言葉でも、経営者によって込められた想いの深さは異なります。しかし、文字だけではその違いは見えません。
さらに、人柄が伝わらないという問題があります。経営者の表情、声のトーン、話し方といった非言語情報は、テキストからは読み取れません。求職者は、経営者の人柄に触れてはじめて、「この経営者のもとで働きたい」と思えるかどうかを判断しやすくなります。
面接だけでは伝わらない企業文化
「経営者の想いは、面接で伝えればいい」という考え方もあります。ただし、面接で話を聞けるのは、すでに応募を決めた人だけです。
問題は、応募の前段階にあります。求職者は、応募するかどうかを決める段階で、すでに企業を評価しているためです。経営者の想いが伝わっていなければ、応募に至らない求職者もいると考えられます。
また、面接は限られた時間の中で行われます。経営者が面接に同席できない場合もあり、同席したとしても、想いを十分に伝える時間を確保できるとは限りません。
その結果、求職者が「条件は悪くないが、経営者の想いが見えないから応募を見送る」と判断していても、企業はその判断に気づきにくくなります。
経営者の想いを応募・入社の判断材料にする条件
自分に合う企業かを考えられる情報
経営者の想いを映像で伝える際は、求職者が企業の価値観と自分の考えを照らし合わせられる内容かどうかが大切です。映像を公開するだけで、入社後のミスマッチが減るとは限りません。
経営者が大切にしていることを本人の言葉で語り、求職者がその理由を理解できれば、求職者は自分に合う企業かどうかを考えるための判断材料を得られます。ただし、経営者への共感と、仕事内容や働く条件への納得は、分けて確かめたい点です。
ミスマッチへの影響を確かめるには、応募時の理解と入社後の実感に違いがあったかを確認することが必要です。応募者が減ったという結果だけで、採用効率が高まったとは判断できません。
共感の内容を確かめる対話
経営者の想いに共感したことだけで、応募者の能力や入社後の主体性を判断することはできません。採用で確認したいのは、どの言葉に共感し、それが本人の仕事への考え方とどう関係しているかです。
経営者の言葉の内容を求職者が自分の経験や希望と照らし合わせられるなら、企業は面接でその言葉を応募理由について話し合う材料として使えます。ただし、映像を視聴した事実だけを、企業研究の深さや志望度の高さの根拠にすることには注意が必要です。
応募者の理解を確かめる際は、視聴の有無に加えて、応募理由や企業への質問の内容を確認してください。入社後の働き方まで評価する場合は、応募時の共感とは別に、その後の状況を確かめる必要があります。
内定承諾の判断を補う情報と確認
経営者の想いが伝わったことだけで、内定承諾率が向上すると断定することはできません。求職者が経営者の考えを理解し、仕事内容や条件と合わせて検討できる内容かを確認します。
経営者の人柄や想いに触れることは、誰と働きたいかを考える材料です。ただし、条件が同程度でも、共感できる企業が必ず選ばれるとは限りません。
内定承諾への影響を確かめるには、承諾・辞退の理由と、映像で知った内容が判断に関係したかを確認する必要があります。承諾率に変化があっても、その変化を映像だけの効果として扱うことは避けてください。
まずは、求職者に伝えたい経営者の言葉を一つ書き出してみてください。その言葉の内容を文字で示す部分、声や表情も含めて映像で示す部分、面接で求職者と確かめる部分に分けて考えます。
採用の場面での使い方は、経営者インタビューを採用活動に活かす映像活用術で取り上げています。経営者インタビュー映像の制作を検討する場合は、アストライドの「経営者インタビュー映像制作」をご覧ください。
まとめ:採用活動の起点としての経営者インタビュー
採用活動では、条件面を整えることが前提ですが、それだけで求職者が応募を決めるとは限りません。「この会社で働く意味」を求める求職者にとって、経営者の想いは企業を選ぶ材料の1つです。
本記事のポイントを整理します。
- 給与・福利厚生だけでは選ばれない時代になっている
- 求職者は「この会社で働く意味」を重視している
- テキスト情報だけでは経営者の想いは十分に伝わらない
- 経営者の想いを「見える化」する際は、求職者が自分の考えや希望と照らし合わせられる内容であることが、応募・入社の判断材料として活用するための条件です。
経営者インタビュー映像は、採用活動の「起点」として考えられる選択肢の1つです。企業が採用サイトに掲載し、求職者が最初に目にするコンテンツとして使えば、条件だけでは伝わりにくい仕事の意味や経営者の人柄を示せます。
「なぜ優秀な人材が集まらないのか」という問いに対して、「経営者の想いが伝わっていないから」という答えが当てはまる会社もあるかもしれません。
この記事からわかるQ&A
なぜ給与や福利厚生を整えても応募が来ないのですか?
給与や福利厚生を整えても、求職者が仕事内容や企業の価値観を判断するための情報が足りなければ、応募を見送る可能性があります。厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」(2023年)は、転職者が仕事を選ぶときに重視する項目を取り上げた資料の1つです。条件面に加えて、「この会社でどのような仕事をするか」「経営者が何を大切にしているか」を説明できているかを確かめてください。
求職者が本当に知りたいことは何ですか?
求職者が本当に知りたいのは「この会社はどんな会社なのか」という点です。具体的には、この会社は何を大切にしているのか、経営者はどのような人物なのか、社員はどのような想いで働いているのか、自分はこの会社で成長できるのか、といった疑問を抱いています。「アットホームな職場です」「風通しの良い社風です」といった言葉はどの企業も使っており、差別化にはなりません。
テキストによる経営者メッセージには、どんな限界がありますか?
テキストによるメッセージには、3つの限界があります。1つ目は、「お客様第一」「社員を大切に」といったメッセージがほかの企業でも使われており、差別化が難しいことです。2つ目として、文字だけでは、経営者がその言葉をどれほど本気で語っているのかが伝わりにくくなります。3つ目は、テキストからは経営者の表情、声のトーン、話し方といった非言語情報を読み取れず、人柄が伝わらないことです。
面接で経営者の想いを伝えればよいのではないですか?
面接で話を聞けるのは、すでに応募を決めた人だけです。求職者は、応募するかどうかを決める段階で、すでに企業を評価しています。経営者の想いが伝わっていなければ、応募に至らない求職者もいると考えるのが自然です。「条件は悪くないが、経営者の想いが見えないから応募を見送る」という求職者の判断は、企業からは見えにくくもあります。
経営者の想いを「見える化」する際、求職者の判断材料にするための条件は何ですか?
求職者が経営者の言葉を自分の考えや希望と照らし合わせ、仕事内容や条件と合わせて検討できる内容であることが条件です。ただし、共感したことだけで入社後の主体性を判断したり、ミスマッチの減少や内定承諾率の向上を保証したりすることはできません。採用への影響を確かめる際は、応募・承諾・辞退の理由や入社後の実感を確認し、経営者の言葉が判断にどう関係したかを検討します。
引用・参考資料