HomePodcast Programガンジス川でスクロール#19 チョークで丸を描いて、その中に立っとれ ── 調達は「現場」で育つ
ガンジス川でスクロール 2026.08.06 20分37秒

#19 チョークで丸を描いて、その中に立っとれ ── 調達は「現場」で育つ

内藤健司

メインMC

纐纈智英

MC

今日のテーマは「調達という仕事の、本当の面白さ」です。8月は内藤健司さんの調達論を1ヶ月かけて掘り下げます。2007年の入社当時、調達は営業と並ぶ花形部署だと思っていた。ところが転職後に出会った調達部門の人からは「花形の逆です」と返される。要求仕様を投げて見積を比べ、根拠のない前年比マイナス10%を押しつける——それでは誰も幸せになりません。若手時代に上司から「チョークで丸を描いて、その中に立っとれ」と現場へ放り出された経験が、見積書を読む解像度をつくった話です。

このエピソードで話していること

  • 2007年の入社当時、調達は営業と並ぶ花形部署のはずだった。ところが転職後に出会った調達部門の人からは「花形の逆です」と言われる。営業される側であるがゆえに、高圧的な態度に出る人も少なくない
  • 下請法で買い叩き禁止が注目されるが、本来は良いものを適正価格で調達すること。要求仕様を投げて見積を比べ、いくらで作れるかも分からないまま「もっと安く」と言うのは、誰も幸せにならない仕事
  • 根拠のない前年比マイナス10%という購買目標。応じざるを得ない会社から零細企業まで疲弊が連鎖する。電気代・最低賃金・廃液処理の法規制が上がる中、すべてを「管理費」で丸められる理不尽
  • 若手時代は「オフィスにいると怒られる」時代。上司の指示は「チョークで丸を描いて、その中に立っとれ」。安全靴とヘルメットで作業観測を続けるとオペレーターが声をかけてくれ、改善のネタが出てくる。取引先と膝を突き合わせて深い話ができるのは調達だけ
  • 現場と原単位を知ると図面も見積書も読める。「これは安すぎませんか」と言える調達になる。インドは「去年100円だから今年は95円、以上」の世界だが、適正価格へ上げる交渉は拒まれない。100円を98円で作る議論に時間を使いたい

こんな方におすすめ

  • 製造業の調達・購買部門で働いている方、これから配属される方
  • 「買い叩き」や下請法への対応を考えている経営者・調達担当
  • 見積書の妥当性を、自分の目で判断できるようになりたい
  • サプライヤーや取引先との関係づくりに悩んでいる
  • インドの調達文化と日本の調達の違いを知りたい

このエピソードからわかるQ&A

ガンジス川でスクロール #19のテーマは何ですか?

製造業の調達という仕事の本当の面白さがテーマです。8月は内藤健司さんの調達論を1ヶ月かけて掘り下げます。初回は、調達が「花形の逆」と言われる現実、買い叩きが起きる構造、そして現場に立つことで身につく見積書を読む力を扱っています。

なぜ「もっと安く」という交渉では誰も幸せにならないのですか?

いくらで作れるかが分からないまま、出てきた金額だけを見て値下げを求めているためです。要求仕様を投げて集めた見積を比べ、安いところに発注し、さらに他社へ「もっと安く」と当てる。根拠のない前年比マイナス10%のような目標が下請け、さらに零細企業まで連鎖し、みんなが疲弊するだけになります。

「チョークで丸を描いて、その中に立っとれ」とは何ですか?

内藤さんが若手時代に上司から受けた指示です。オフィスにいると怒られる時代で、現場に出て取引先と関係をつくることが仕事でした。安全靴とヘルメットで丸の中に立ち続けて作業観測をしていると、オペレーターの方から声をかけてくれるようになり、休憩中に改善のネタを教えてもらえるようになります。

現場を知ることが、なぜ調達の力になるのですか?

物がどのように作られるかが分かると図面が読めるようになり、見積書を見る解像度が変わるからです。「これは安すぎませんか」「これぐらいで作れるはずです」と根拠を持って言えるようになります。設計から出てきた実現できない図面を突き返せるかどうかも、調達のスキルです。

インドの調達は日本とどう違いますか?

適正価格という考え方がほとんどなく、「去年100円で買っていたから今年は95円、以上」という世界です。いくらで作れるか、どう利益を出すかは相手の会社が考えることとされ、品質は品質部門が見ます。ただ内藤さんは、安すぎる場合は利益が出る金額に上げる調達を実践し、それは異文化でも拒まれなかったと語ります。

メインMC

内藤健司

みなりパートナーズ株式会社 代表取締役

https://minari-partners.co.jp/

アイシン(旧アイシン精機)で13年間、製造業の調達業務に従事。うちインド駐在4年を含む現場経験を持つ。その後KPMGコンサルティングでシニアマネージャーとして5年間を経て、2025年に独立。現在はサプライチェーン戦略・調達コスト削減・インド北部における業務支援を専門とする。インド企業・インド人との直接的なパイプを持ち、日本人ネットワーク経由ではない現場のリアルを知り尽くした実践者。美術学生サポート財団 理事長。著書に『それでもWin-Winなコンサル転職』。

MC

纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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