HomePodcast Programガンジス川でスクロール#21 19円を探す時間は、いくらですか ── 間接材の合理と、触れない聖域
ガンジス川でスクロール 2026.08.20 19分14秒

#21 19円を探す時間は、いくらですか ── 間接材の合理と、触れない聖域

内藤健司

メインMC

纐纈智英

MC

今日のテーマは「間接材」です。調達マンスの3回目。図面とセットで買う直接材に対して、文房具やヘルメットのように図面なしで買うのが間接材です。直接材は効果が大きい代わりに評価に時間と費用がかかり、2年3年、時には7年かかる。間接材は次の発注から効きます。内藤健司さんがコンサルタントとして実際に手を入れてきた領域であり、同時にそこには、安く買えると分かっていても触ってはいけない「聖域」も存在します。

このエピソードで話していること

  • 調達は直接材と間接材に大きく分かれる。直接材は図面とセットなので変えるには評価が必要で、評価そのものに時間と費用がかかる。サプライヤーから年間300万円の効果が出る提案があっても、衝突試験に1億かかると言われれば進まない。完成車メーカー側の試験タイミングに合わせるしかなく、2年3年、場合によっては7年を見込んで動くことになる
  • 間接材は図面が変わらないため、一定の条件をクリアしていれば安いほうを選べる。次に発注するときから効果が出る。30円のボールペンが28円になれば1本2円、それに年間購買数を掛けた分が効果になる。調達額の1割弱が間接材と言われ、大手なら年間1億円の1割で1000万円、グローバル企業なら桁がもう一つ上がる
  • ただし「安ければいい」ではない。ホッチキスの針を百均の安いものに切り替えたら枚数が綴じられず、結局買い直しになった実例がある。ガムテープもちぎりやすさが違う。ダメだったら戻せる、サイクルを回しやすいというのが間接材の強み
  • 探す時間もコストとして数える。Amazonで20円のものが他所で19円で買えたとして、100本なら効果は100円。その差を探して比較検討し、レポートを作って上司の承認をもらう時間は時給換算していくらか。発注書を出して検収をもらって請求書を出すというペーパーワークも含まれる。だから「文房具はアスクル、ヘルメットはミドリ安全、工具はモノタロウ」と部分最適で買い先を決めておく会社もある
  • 触れてはいけない聖域がある。自社の商品を納めている取引先からは、もっと安く買えると分かっていても買い続ける——バーター取引の関係値。切り替えれば自社の市場が狭くなるだけで、理屈ではない。コンサルとして入るとき、最初に確認するのはそこ。一方で、うまい棒の柄のボールペンに200円多く払うことを許可する会社もある。モチベーションや定着という形で返ってくるなら、それはコストではなく価値になる

こんな方におすすめ

  • 製造業で原価低減に取り組んでいるが、直接材が動かず手詰まりを感じている
  • 調達・購買部門で、短期のうちに効果を出す必要がある
  • 間接材の購買ルールが社内でバラバラになっている
  • 取引先との関係を理由に、見直せない購買先を抱えている
  • 備品や消耗品の費用を、コストとしてだけ見るべきか迷っている

このエピソードからわかるQ&A

直接材と間接材は、どう違うのですか?

直接材は図面とセットで買うもので、変えるには評価が必要になり時間と費用がかかります。間接材は文房具やヘルメットのように図面なしで買うもので、一定の条件を満たせば次の発注から切り替えられます。

原価低減で、まず間接材から着手すべきなのはなぜですか?

即効性があるためです。直接材は評価に2年3年、場合によっては7年かかりますが、間接材は次に発注するときから効果が出ます。調達額の1割弱が間接材と言われ、年間1億円買っていれば10%下がるだけで1000万円の効果になります。

間接材は「安ければいい」と考えてよいのでしょうか?

いいえ。ホッチキスの針を安価なものに切り替えたら必要な枚数が綴じられず、買い直しになった例があります。ただし間接材はダメだったら戻せるので、試して判断するサイクルを回しやすい領域でもあります。

最安値を探す手間は、どう考えればよいですか?

探す時間もコストとして数えます。100本の購入で1本1円安くなっても効果は100円で、比較検討やレポート作成、承認にかかる時間を時給換算すれば見合わないこともあります。「文房具はこの会社、ヘルメットはこの会社」と部分最適で買い先を決めておく方法が現実的です。

取引先との関係で切り替えられない購買先がある場合は、どうしますか?

自社商品を納めている関係から生まれる購買は「聖域」として扱います。切り替えれば自社の市場が狭くなるため、理屈だけでは判断できません。コスト削減に着手する際は、最初にその範囲を確認しておくことが必要です。

メインMC

内藤健司

みなりパートナーズ株式会社 代表取締役

https://minari-partners.co.jp/

アイシン(旧アイシン精機)で13年間、製造業の調達業務に従事。うちインド駐在4年を含む現場経験を持つ。その後KPMGコンサルティングでシニアマネージャーとして5年間を経て、2025年に独立。現在はサプライチェーン戦略・調達コスト削減・インド北部における業務支援を専門とする。インド企業・インド人との直接的なパイプを持ち、日本人ネットワーク経由ではない現場のリアルを知り尽くした実践者。美術学生サポート財団 理事長。著書に『それでもWin-Winなコンサル転職』。

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纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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