#20 「できません」と言わせるまでに、数ヶ月 ── インドの鉄と、輸入規制の攻防
内藤健司
メインMC
纐纈智英
MC
Rajat Thukral
ゲスト
小坂井章吾
ゲスト
今日のテーマは「材料費と、インドの鉄」です。調達論の2回目。原価の6〜7割、ときに8割を占めるのが材料費です。交渉が難しいからと手をつけずにいる領域ですが、3年後・5年後を見据えれば動かせる。インドではBISという輸入規制のもと「タタスチールが作れると言っているのに、なぜお前は作れないと言うのか」と問われ、「できません」と証明させるために鉄鋼省と何ヶ月もやりとりした——内藤健司さんが実際に経験した攻防です。鉄鉱石から一貫生産できるインドは、当時4〜6割安いという試算も出ていました。
このエピソードで話していること
- 原価に占める材料費は6割、7割、場合によっては8割。大手の材料メーカーと価格交渉できるわけがないと諦めがちだが、この半年ではなく3年後・5年後に向けてなら検討できる。7割を占める中の4〜5%が下がれば、それだけで極めて大きい
- 材料が変われば加工費も金型のメンテナンス費用も変わる。単価そのものだけでなく「材料が変わることによる他の良いこと」を見る価値がある。脱炭素の文脈では、価格が変わらなくても環境負荷の低い材料に切り替えておくこと自体が、ヨーロッパへ輸出できなくなるリスクへの備えになる
- インドの鉄はバラつきが問題。「1から10まで使っていい」という指示に対し、日本のメーカーは4.8〜5.2を狙ってくるのに、インドのメーカーは2から9まで目一杯使ってくる。日本の材料はそのレンジありきで他の工程が設計されているため、スペック上は使えるはずでも量産できなくなる
- BISによる輸入材の規制。タタスチールやエッサールが作れるのだからインドで買えという囲い込みで、関税ではなくそもそも輸入できない。作れない証明のために鉄鋼省とやりとりするが、材料物性を見せること自体がノウハウの開示になる。しかもインドの文化では「できない」と言わない。結局、輸入のたびに承認を取る運用になった
- 鉄鉱石から国内で一貫生産できるインドは、当時の試算で4〜6割安い。材料比率7割のうちの半分が下がればインパクトは相当なもの。一方で調達は想像以上に理系で、分子レベルの結合の仕方が強度を決める。化学をやっておけばもっと面白かった。研究室と量産の決定的な違いは「再現性」
こんな方におすすめ
- 製造業で原価低減・コストダウンに取り組んでいる方
- インドでの現地調達やサプライヤー開拓を検討している
- BISなどインドの輸入規制で足止めを食った経験がある
- 設計・材料技術・生産技術と調達の連携を考えている
- 調達という仕事の面白さを、もう少し知りたい
このエピソードからわかるQ&A
原価に占める材料費はどのくらいですか?
製品によりますが6割、7割、場合によっては8割に及びます。加工費や管理費より圧倒的に大きい構成要素であるにもかかわらず、交渉が難しいという理由で手をつけられていないことが多い領域です。
材料費は交渉が難しいと聞きますが、それでも取り組む価値はありますか?
この半年での成果を求めると難しいですが、3年後・5年後を見据えれば検討できます。7割を占める中の4〜5%が下がるだけでも効果は大きく、材料が変われば加工費や金型のメンテナンス費用まで変わることがあります。
インドの材料は、なぜそのまま使えないことがあるのですか?
品質のバラつきが理由です。「1から10まで使っていい」という許容範囲に対し、日本のメーカーは4.8〜5.2を狙ってくるのに対し、インドのメーカーは2から9まで目一杯使ってきます。日本側の工程はその狭いレンジを前提に設計されているため、スペック上は使えても量産できなくなります。
BISとは何ですか。輸入にどう影響しますか?
インドの規格・認証の制度で、国内メーカーが作れるものは輸入させないという囲い込みが行われました。関税ではなくそもそも輸入できないため「作れない」ことを証明する必要がありますが、材料物性を開示すること自体がノウハウの流出になるという難しさがあります。
調達の仕事に必要なのは交渉力ですか?
人間関係の側面もありますが、突き詰めると技術と数字の世界です。分子レベルの結合の仕方で強度が決まるため化学の知識が効き、さらに「何回作っても同じものが作れる」再現性が問われます。これが大学の研究室と量産の決定的な違いです。
Podcastアプリで聴く
通勤中や作業中に聴くなら、お好みのアプリでフォローしていただくと便利です。
※ フォローすると、新しいエピソードが自動で届きます
ゲスト
Rajat Thukral
A SAN Hospitality Support Company Managing Director
ラジャット・トゥクラル。インド・グルグラム(グルガオン)に本社を置く A SAN Hospitality Support Company の Managing Director。日本の建設業界で7年以上働き、約10年にわたり通訳を務めた「日印の架け橋」。在インドの日本人駐在員・日系企業に向け、不動産、送迎、ビザ・FRRO手続き、施設管理、物流までをワンストップで支援する。社名の「A3」が示す「正確・手頃・支援(Accurate / Affordable / Assistance)」を理念に、日本式のおもてなしと細やかなサービスを徹底。姉妹会社Yuhi Hospitalityの運営にも携わる。
小坂井章吾
A SAN Hospitality Support Company
不動産仲介会社にて5年間、賃貸アパートの仲介営業や顧客サポートのキャリアを積む。2026年7月より「A san hospitality support」にて日本人駐在員のための窓口業務に従事予定。自身初の海外勤務となるため、新たな環境に期待と不安を抱きつつも、これまでのサポート経験を活かして現地駐在員の生活を支えるべく挑戦中。
メインMC
内藤健司
みなりパートナーズ株式会社 代表取締役
https://minari-partners.co.jp/
アイシン(旧アイシン精機)で13年間、製造業の調達業務に従事。うちインド駐在4年を含む現場経験を持つ。その後KPMGコンサルティングでシニアマネージャーとして5年間を経て、2025年に独立。現在はサプライチェーン戦略・調達コスト削減・インド北部における業務支援を専門とする。インド企業・インド人との直接的なパイプを持ち、日本人ネットワーク経由ではない現場のリアルを知り尽くした実践者。美術学生サポート財団 理事長。著書に『それでもWin-Winなコンサル転職』。
MC
纐纈智英
アストライド-Astride- 代表
「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。
ポッドキャスト番組一覧
knowledge / ナレッジ

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。
Astride(アストライド)
〒510-0016 三重県四日市市羽津山町1-6
© Astride All rights reserved.







