Home > Podcast Program > ガンジス川でスクロール > #30 その夜の12時で、最高額の紙幣が使えなくなった ── 白井紀充さんゲスト④
ガンジス川でスクロール 2026.10.22 23分30秒

#30 その夜の12時で、最高額の紙幣が使えなくなった ── 白井紀充さんゲスト④

Podcastアプリでこのエピソードを聴く

内藤健司

メインMC

纐纈智英

MC

白井紀充

ゲスト

TMI総合法律事務所の白井紀充弁護士をお迎えする5回シリーズの4回目で、テーマは賄賂です。白井さんは、モディ政権のもとで許認可や税務調査のオンライン化が進み、インドで賄賂が問題になる場面は減ってきたと話します。2016年11月に高額紙幣がその夜の12時で使えなくなった日のことや、賄賂を禁じる各国の法律の違い、インドの弁護士の事情も聞きました。

このエピソードで話していること

  • 白井さんによると、インドでは裁判を起こすハードルが低く、個人にとっては大きな不満でも、周りから見れば小さなことで訴訟になる。弁護士の全国試験ができたのは10年ほど前で、安い報酬で何でも引き受ける弁護士も多い。弁護士会の規制で宣伝が制限され、ホームページを持たない事務所も多いため、白井さんはよい弁護士を探すことも自分の役目にしている。白井さん自身は、日本一敷居の低い弁護士を目指していると話す
  • 日本では、争いになる前に弁護士へ相談する予防法務の考え方がまだ広がっていない。契約書が必要になるのは、トラブルが起きたときだからだ。白井さんは、居酒屋で話すくらいの気持ちで早めに相談してほしいと言う。弁護士に頼んだことのない内藤健司さんが費用の相場を知らないと話すと、白井さんは、あとで起きるかもしれない問題にかかるコストと比べて考えてほしいと答えた
  • 白井さんは、賄賂は新興国のビジネスで避けて通れない話だとしたうえで、モディ政権になってから撲滅への意識が強く、肌感覚として減っていると話す。許認可の手続きがオンラインになれば、窓口で賄賂を渡す場面そのものがなくなる。所得税のフェイスレス査定では、担当官が誰かも明かされない。インドの裁判官は高貴な職業とされ、高等裁判所より上で賄賂が問題になることはほぼないという。一方で、警官が信号無視を見逃す代わりに金を求めるような小さな賄賂は残り、ファミリー企業の不透明なお金の流れもあるため、合弁会社をつくる前の相手の調べが欠かせない
  • 2016年11月8日の夜、当時の最高額の1000ルピー札と500ルピー札が、その夜の12時で使えなくなると発表された。白井さんはグルガオンの法律事務所でその知らせを聞いた。インド経済の半分ほどが表に出ないお金だとする説もあり、そうしたお金を排除するための政策だった。発表のあと、近くのスーパーから「とにかくセールやるからキャッシュ持ってこい」という知らせがSNSで流れてきたという。そこから電子マネーが急速に広がり、納税の透明性も上がったと白井さんは見ている。内藤さんも、外国人登録の手続きが紙から電子に変わったことを挙げた
  • 賄賂を禁じる法律は、インドにも、アメリカ、イギリス、日本にもある。アメリカのFCPAは、条件を満たせばインドでの行為にも適用される。FCPAは日常的な行政手続きを早めるための少額の支払いを例外としているが、インドの法律はそうした支払いも賄賂として扱う。ディワリの贈り物のような儀礼の範囲をどこで線引きするかが難しく、白井さんは企業の規程づくりを手伝うこともある。最後は、車に書かれた「ホーンプリーズ」が「ノーホーンプリーズ」に変わってきたことや、道路の車線の話から、インドの変化を3人で振り返った

こんな方におすすめ

  • インドで合弁会社の設立や、現地企業との提携を検討している
  • インドの役所の手続きや税務調査で、賄賂を求められないか不安がある
  • ディワリの贈り物など、現地の慣習と社内規程の線引きに迷っている
  • インドで頼れる弁護士の探し方を知りたい
  • 高額紙幣の廃止のあと、インドの決済がどう変わったか知りたい

このエピソードからわかるQ&A

インドで賄賂は、いまも求められるのですか?

白井紀充さんは、モディ政権になってから賄賂の撲滅への意識が強く、肌感覚として減っていると話しています。許認可の手続きや税務調査がオンラインになり、窓口で賄賂を渡す場面そのものが少なくなりました。一方で、警官が信号無視を見逃す代わりに金を求めるような小さな賄賂は、いまも残っているそうです。

インドの裁判で、賄賂が問題になることはありますか?

白井さんによると、インドの裁判官は高貴な職業とされ、高等裁判所より上で賄賂が問題になることはほぼありません。東南アジアには、裁判官への賄賂が理由で裁判を選ばないほうがよいとされる国もあり、それと比べるとインドの裁判はクリーンだと白井さんは話しています。ただ、判決までに時間がかかる点は変わりません。

2016年の高額紙幣の廃止とは、どんな出来事でしたか?

2016年11月8日の夜、当時の最高額の1000ルピー札と500ルピー札が、その夜の12時で法定通貨として使えなくなると、モディ首相が発表しました。表に出ないお金を排除するための政策です。グルガオンの法律事務所でこの知らせを聞いた白井さんは、その後電子マネーが急速に広がり、納税の透明性も上がったと見ています。

アメリカのFCPAは、インドでの賄賂にも関係しますか?

関係する場合があります。FCPAは米国の海外腐敗行為防止法で、米国で上場している会社など条件を満たせば、インドでの行為も対象です。FCPAは日常的な行政手続きを早めるための少額の支払いを例外としていますが、インドの法律はそうした支払いも賄賂として扱っています。

ディワリの贈り物は、賄賂にあたるのですか?

クッキーやお菓子のような儀礼の範囲の贈り物で問題になることは、通常はありません。ただ、儀礼の範囲をどこで線引きするかが難しく、会社によって金額の基準を設けるところも、個別の判断に任せるところもあります。白井さんは、企業のこうした規程づくりを手伝うこともあると話しました。

ゲスト

白井紀充

TMI総合法律事務所 名古屋オフィス パートナー弁護士

https://www.tmi.gr.jp/people/n-shirai.html

愛知県出身。英国セント・アンドリュース大学、慶應義塾大学法科大学院を卒業後、パナソニック株式会社での勤務を経て弁護士に。2014年から約3年間インドに駐在し、ムンバイやグルガオンの法律事務所・会計事務所で勤務。インドの法律だけでなく、現地のビジネスや文化、人々の考え方を肌で学んだ。
帰国後も一貫してインドに関わり、日系企業のインド進出から、M&A・合弁(JV)、労務、コンプライアンス、紛争解決まで、幅広いインド法務を手掛ける。現在はTMI総合法律事務所名古屋オフィスを拠点に、頻繁にインドへ足を運びながら、日本とインド双方の視点を持つ弁護士として、日印ビジネスのさらなる発展のため奔走している。
インドとの付き合いは10年以上。「法律」だけでは語れないインドビジネスの面白さや難しさ、そして急速に変化するインドの今を、現場で見続けてきた一人でもある。
プライベートでは、英語落語にも挑戦中。ビジネスだけでなく、笑いを通じても日本とインドをつなぐ「日印の架け橋」を目指して活動している。

メインMC

内藤健司

みなりパートナーズ株式会社 代表取締役

https://minari-partners.co.jp/

アイシン(旧アイシン精機)で13年間、製造業の調達業務に従事。うちインド駐在4年を含む現場経験を持つ。その後KPMGコンサルティングでシニアマネージャーとして5年間を経て、2025年に独立。現在はサプライチェーン戦略・調達コスト削減・インド北部における業務支援を専門とする。インド企業・インド人との直接的なパイプを持ち、日本人ネットワーク経由ではない現場のリアルを知り尽くした実践者。美術学生サポート財団 理事長。著書に『それでもWin-Winなコンサル転職』。

MC

纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

ポッドキャスト番組一覧

catalyst(カタリスト)-経営者とPodcastを繋ぐ触媒- 番組カバー

knowledge / ナレッジ

私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。