HomePodcast Programデザイン審美眼#19 「なんとなくいい」が経営を危うくする ── 再現性のあるデザイン判断とは
デザイン審美眼 2026.05.07 21分24秒

#19 「なんとなくいい」が経営を危うくする ── 再現性のあるデザイン判断とは

的場仁利

Mat N. Studio代表

メインMC

纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

MC

今日のテーマは「『カッコいい』『美しい』には定義がある──主観の好みから客観的な秩序へ」です。 「カッコいい」「美しい」は主観の問題と言われがちですが、実は造形の秩序がそこには存在しています。点・線・面の配置、リズム、バランス、比率──人間が共通して整っていると感じる法則がある。経営者が「なんとなくいい」でデザイン判断するのは再現性がなく危うい、と的場さんは指摘します。デザインを言語化できるようになることが、社長の審美眼のスタートライン。今回は次回以降のシリーズ導入として、紙面上のリズム感やバランスの考え方に触れます。

このエピソードで話していること

  • 「カッコいい」「美しい」は主観や好みの問題と言われがちだが、実際は造形の秩序がある
  • 点・線・面の配置、リズム、バランス、比率──人間が共通して整っていると感じる法則がある
  • もちろん主観的な部分はあるが、共通するメソッドも明確に存在する
  • 経営者が「なんとなくいい」でデザインを判断するのは再現性がなく危うい
  • なぜ美しいか、なぜ力強く見えるかを自分の言葉で言語化することが審美眼のスタートライン
  • 「言葉ができて初めて知覚できる」── 青リンゴの比喩で語る概念と認識の関係
  • デザイナーでさえ感覚的に「カッコいい」と言うだけの人もいる
  • 紙面上の「リズム感」とは何か──余白、文字の大きさ、ジャンプ率、フォントのコントロール
  • パソコンで作っている間に意図せず本文が12級から13級になる、フォントが変わる、これはリズム感が悪い
  • 「バランス」は平行感覚や物の重さだけでなく、見た目の重さ・軽さ・抜け感として現れる
  • 日経新聞の100年積み上げたバランス──「いろんなことができないからこそ取れている」
  • 適切なフォーマットを定めることが、リズム感とバランスを保つ秘訣
  • 後半は活版印刷の研究書「カッパン原型」を紹介、フォント出すさんとデザイナー坂野さんの仕事
  • 次回は「カッコいい」を深掘り──「何かを捨てて形を立たせる」ことから生まれる

こんな方におすすめ

  • 「なんとなくいい」でデザインを決めてしまう自分の判断軸に不安を感じている経営者
  • デザイナーへの発注やフィードバックを言語化したい方
  • 社内のデザイン基準やビジュアル統一を設計したい方
  • 自社のブランドや広告の「なぜ整って見えるか」を理解したい方
  • タイポグラフィや活版印刷など、デザインの歴史と原理に興味がある方

このエピソードからわかるQ&A

「カッコいい」や「美しい」は本当に主観だけの問題ではないのですか?

主観的な部分も確かにあるが、それと並んで「造形の秩序」というメソッドが明確に存在すると的場さんは語っています。点・線・面といった造形の基礎要素がどんなルールで配置されているか、そこにはリズム・バランス・比率など、人間が共通して「整っている」と感じる法則がある。学術的な心理学・研究の蓄積もあり、美しさにはある程度の根拠がある──「主観だよね」で片付けてしまうのではなく、両方が存在することを切り分けて考えることが大事だと話されています。

経営者が「なんとなくいい」でデザインを判断するのが危ない、というのはどういうことですか?

再現性がなくなってしまうから、と的場さんは指摘しています。前提となるルールがないため、その場その場で「いい」と感じるものを取り上げることになり、判断が気分や状況に左右されやすくなる。なぜ美しいのか、どうしてこちらの形の方が力強く見えるのかを、たとえ自分なりの言葉でも言語化できるようにしておく──これが経営者にとっての審美眼であり、ブレない判断軸を持つための出発点だと語られています。

「言葉ができて初めて知覚できる」とは、どういう意味ですか?

リンゴしかなかった世界に「青リンゴ」という言葉が生まれて初めて、その色の違いを明確に区別して知ることができる──的場さんがエピソード内で例えた話です。デザインも同じで、「リズム」「バランス」「ジャンプ率」といった概念や言葉を知ることで、それまでぼんやりとしか認識できなかった違いが具体的に見えるようになる。経営者が審美眼を磨く第一歩は、これらの語彙を自分のものにしていくことだと話されています。

紙面上の「リズム感」とは、具体的にどういうことですか?

余白の取り方、文字の大きさ、見出し・小見出し・本文のジャンプ率、フォントのコントロールなどを指すと的場さんは説明しています。例えばパソコンでデザインを作っている間に、意図せず本文サイズが12級から13級に変わってしまったり、フォントが入れ替わってしまったりすることがある。意図的でなく崩れているものは「リズム感が悪い」状態。これを社長が見抜いて指摘できるようになるだけでも、デザインの仕上がりは大きく変わると話されています。

日経新聞のバランスが100年積み上がっている、というのはどういう意味ですか?

新聞のような厳格なフォーマットがあるメディアは「いろんなことができないからこそバランスが取れている」と的場さんは語っています。文字サイズが意図せず変わってしまうことが起きないシステム、限られたフォントの選択肢、何段組かが決まっている──こうした制約があるからこそ、レイアウトに自然なリズムが生まれる。デザインの自由度を高めるよりも、適切なフォーマットを定めることがリズム感とバランスを保つ秘訣だと話されています。

メインMC

的場仁利

Mat N. Studio代表

https://japan-designers.jp/profile/1453/

タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。

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纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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