#35 「まずは仲間から」と言われたら ── 成果報酬型契約に潜む影
的場仁利
メインMC
纐纈智英
MC
今日のテーマは「成果報酬型のデザイン契約」です。初期費用はいただきません、売上の何%をください——初期投資を抑えたい経営者にとって、この条件は魅力的に映ります。デザイナー側にも、当たれば大きいという話に見える。ですが的場仁利さんは、ここには影があると言います。売上はデザイン以外の変数で決まる部分が大きく、その責任を片側だけに負わせる契約になっているからです。そして、その影は「まずは仲間として」という言葉でやってくることがあります。
このエピソードで話していること
- 冒頭は的場仁利さんからのご報告。6月2日付でWebフォントジャパン株式会社の取締役に就任した。きっかけはこのポッドキャストで、社長が毎回聞いてくださっていたことからご縁が発展した。売り込みのメールやSNSの告知はなかなか読まれないが、番組を作りましたとお伝えすることは受け取られ方が違う。冷たくなっていた関係に少しずつ熱が戻り、それが形になった一例
- 成果報酬型は、営業でいうフルコミッションに近い。初期費用をゼロにして、売上が立った分のパーセンテージを受け取る。ただし売上という結果には、営業力、市場環境、価格が高いか安いか、そしてチームの本気度といったデザイン以外の変数が山ほど絡み合っている。それを無視して結んでしまうと、発注側は丸投げになりやすく、双方の本気度が上がらない契約になる
- だから普通に契約したほうがいい。大事なのは責任の範囲が明確になっていること。デザインの価値はプロセスと機能に対するものなので、デザイン料は固定費として支払われるべきで、成果報酬をやるならプラスアルファのインセンティブとして取り決める。デザインは商品ではなくサービスであり、お客様ごとにカスタマイズするもので、同じテンプレを売るわけではない。成果報酬にすると共同作業の責任がデザイナー側だけに寄り、要件定義の甘さや意思決定のブレが置き去りになる
- 成果報酬を前提に来る発注側は、失敗をイメージしているようにも見える。いつでも辞められる契約だからで、ふわっと始めたものはふわっと終わる。それを繰り返せば、信用がないという事実を自らばらまくことになる。デザインは継続のレイヤーではなく立ち上げのレイヤーで、最初の負荷が一番大きい。広告費は出したがお客様が捕まらなかったので辞めます、パーセンテージはゼロですお疲れ様でした——そういう契約でもある
- 纐纈智英のもとにも、LinkedInの1on1からこの手の話が数ヶ月で数回きた。コミュニティを作りたいので取材をしてほしい、ただ形になるかはこれからなので、まずは仲間としてやってくれないか。中学からの付き合いなら分かるが、初めて会った相手からの話としては乱暴すぎる。仲間という表現を使った時点で、成果ではなく忠誠心へのコミットを求めていることになる。対策は料金表を示すこと。本来これだけの工数がかかり費用はこれだけです、と伝えると相手の目の色が変わるし、判断のよりどころにもなる
こんな方におすすめ
- 売上の何%という条件でデザインやクリエイティブを依頼しようとしている経営者
- 成果報酬でやりませんかと持ちかけられて、受けるか迷っているデザイナー・制作者
- 実績を積みたいので無償でも数を重ねたい、と考えている若いつくり手
- SNSやLinkedIn経由の「まずは仲間から」という誘いに、違和感を覚えたことがある
- デザインの見積もりを、どこまで固定費として説明すべきか整理したい
このエピソードからわかるQ&A
成果報酬型のデザイン契約とは何ですか?
初期費用を抑えるかゼロにして、売上が立った分のパーセンテージを支払う契約です。営業でいうフルコミッションに近い形で、初期投資を抑えたい経営者にとっては魅力的に見え、デザイナー側にも当たれば大きいという話に映ります。
成果報酬型のどこに問題があるのですか?
売上という結果には、営業力、市場環境、価格設定、チームの本気度といったデザイン以外の変数が数多く絡んでいます。それを無視して契約すると、デザイン以外の要因で決まる結果の責任まで片側が負うことになり、発注側は丸投げになりやすく、双方の本気度が上がりません。
ではデザインの費用はどう決めるのが適切ですか?
デザインの価値はプロセスと機能に対するものなので、デザイン料は固定費として支払うのが基本です。成果報酬を組み込むなら、固定のデザイン料に加えるプラスアルファのインセンティブとして取り決めます。責任の範囲が明確になっていることが何より大切です。
「まずは仲間として一緒にやりませんか」と誘われたときはどう考えればよいですか?
仲間という表現を使った時点で、成果ではなく忠誠心へのコミットを求めていることになります。長年の付き合いがある相手なら別ですが、初対面で持ちかけられる話としては乱暴です。事業として発生してから改めて声をかけてもらえばよい、というのがこのエピソードの結論です。
断りにくいとき、どう伝えればいいですか?
料金表を示すことです。この内容にはこれだけの工数がかかり、本来の費用はこれだけです、と伝えると相手の受け止め方が変わります。軽い気持ちで声をかけている場合も多いため、判断のよりどころとしても有効です。
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メインMC
的場仁利
Mat N. Studio代表
https://japan-designers.jp/profile/1453/
タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。
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纐纈智英
アストライド-Astride- 代表
「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。
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私たちアストライドは、経営者のインタビュー映像の制作に圧倒的な強みを持っています。
課題や要件が明確でなくても問題ございませんので、お気軽にご相談ください。
アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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