HomePodcast Programデザイン審美眼#37 「作り放題」なのに、何も積み上がらない ── デザインのサブスクと資産の話
デザイン審美眼 2026.09.10 17分52秒

#37 「作り放題」なのに、何も積み上がらない ── デザインのサブスクと資産の話

的場仁利

メインMC

纐纈智英

MC

今日のテーマは「デザインのサブスク契約が、会社の資産にならない理由」です。月額定額でバナーもチラシも作り放題。SNSでは広告をよく見かけますし、金額も安価に見えます。的場仁利さんは、量産したい場面には向くと認めたうえで、それは作業の切り売りであって、企業の思想やブランドを積み上げる営みとは別物だと言います。何を頼み、何は頼まないのか。その線を引く回です。

このエピソードで話していること

  • デザインのサブスク(定額制)が増えている。デザイナーである的場仁利さんのところにまで広告が届くほど。調べてみると契約形態は、月10時間・30時間までといった時間チャージ型、依頼回数は無制限だが1案件ずつ完了させて次に進むキュー型、専任に近い形など、コミットする領域や責任の重さによって分かれている
  • デザイン審美眼が問い続けている本質は、社長の理念に帰結する。量産することがメインになると、それは作業の切り売りというイメージになり、どのプランを選んでもそこに行き着く。企業の思想やブランドの価値を積み上げるための設計というデザインの役割とは、結びつかない
  • 一番危ないのは、会社の根幹にあたるロゴや、会社のありようをしっかり見せなければならない制作物を、低額のサブスクに任せてしまうこと。ロゴひとつ作るにも、会社の歴史、業界、地域の中での位置、強みとしている商品・製品の領域、さらに他社がどうかまで調べたうえで理念を落とし込む。造形の前と後にある仕事こそ、デザイナーとして主張したいところだと的場さんは言う
  • 逆のミスマッチもある。しっかりしたデザイナーに「Instagram広告用のバナーを明日まで」と頼めば、その人は1週間考える。良いものにはなるが、A案B案、場合によってはC案を毎週回して広告効果を見たいというニーズには合わない。デザイナーごとに制作の方法論が確立されていて、簡単なバナーを生業にしてきた人は時間を与えられても深く掘り下げた経験がない。それぞれの仕事の領域がある
  • 順番がある。まず理念を表現するデザインがあり、その上で短期の運用物をどう作るかを考える。逆にすると表面だけになる。作り放題という設計は、発注する側の依頼への抵抗を薄くし、考えずに投げる状態を生みやすい。誰が何をどこまでの責任で担うのかが消えると、失敗しても成功しても手応えが残らない。安ければ安いなりであり、同じ一枚の画像にもレイヤーの違いがある。何を発注しようとしているのかを一度踏みとどまって確認し、しかるべきところに出すのがいい

こんな方におすすめ

  • デザインのサブスク契約を検討している、あるいはすでに契約している経営者・広報担当
  • 毎月のバナーやチラシの発注にかかる手間を、なんとか減らしたいと考えている
  • ロゴやコーポレートサイトを、どこに頼むべきか迷っている
  • 制作会社によって見積もりの金額が大きく違う理由が、判断できずにいる
  • 社内にデザインの判断基準がなく、依頼のたびに迷いが生じている

このエピソードからわかるQ&A

デザインのサブスクには、どんな契約形態がありますか?

月10時間・30時間までといった時間チャージ型、依頼回数は無制限だが1案件ずつ完了させて次に進むキュー型、専任に近い形などがあります。コミットする領域や責任の重さによって内容も金額も変わります。

サブスクは、どんな用途なら向いていますか?

量産したい場面には向きます。SNS広告のバナーのように、A案B案を毎週回して効果を見たいものは、スピードと手軽さが利点になります。的場仁利も、そうした使い方そのものは否定していません。

なぜ会社の資産にならないのですか?

量産することが目的になると、それは作業の切り売りになるからです。企業の思想やブランドの価値を積み上げるための設計というデザインの役割とは結びつかず、どのプランを選んでもそこに行き着きます。

ロゴをサブスクで頼んでもいいですか?

会社の根幹にあたるものは避けたほうがいいと的場仁利は言います。ロゴひとつ作るにも、会社の歴史、業界、地域の中での位置、強みとしている商品や領域、さらに他社の状況まで調べたうえで理念を落とし込むためです。

サブスクと専門家は、どう使い分ければいいですか?

順番があります。まず理念を表現するデザインを作り、その上で短期の運用物をどう回すかを考えます。逆にすると表面だけになります。何を発注しようとしているのかを一度踏みとどまって確認し、しかるべきところへ出すことです。

メインMC

的場仁利

Mat N. Studio代表

https://japan-designers.jp/profile/1453/

タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。

MC

纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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